QRコード決済アプリの最新データはどうなっている?
それではまず、主要QRコード決済アプリ【PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ、ファミペイ】の過去2年のユーザー数推移を見ていきます。
分析ツール:「eMark+」、分析期間:2019年6月〜2021年5月、対象デバイス:スマートフォン
2021年5月時点で、PayPayが月間利用者数(MAU)3,000万を超え独占状態となっていました。PayPayは、まだ各社サービスリリースが出揃っていない頃に先行して実施した「100億円あげちゃう! キャンペーン」が起爆剤となり、それ以降、圧倒的強さでスマホ決済業界を牽引しています。
▼2019年10月の消費増税のタイミングから既にPayPayは独走状態でした。マナミナの過去記事も参考にご覧ください。
消費増税の追い風で、スマホ決済アプリPayPayが独走!1日の起動ユーザー数は900万人以上に
https://manamina.valuesccg.com/articles/653インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、一般ユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、消費増税前後の決済アプリ利用ログからキャッシュレス決済の利用実態を調査しました。また国内の20歳以上の男女18,517人を対象に、キャッシュレス決済やポイ活の認知度、利用意向に関するアンケート調査を実施しました。
PayPayの代名詞ともいえる大盤振る舞いのキャンペーンは周年記念や3,000万ユーザー突破記念などの節目に開催されますが、その他にも導入店とのコラボキャンペーン(特定のお店でPayPayを利用するとボーナスポイントが付与されるなど)を常時実施。話題性に長け、ユーザーの利用動機を提供し続けているところが、PayPayの強さの秘訣でしょう。
常時複数のキャンペーンを実施するPayPay
ユーザー数でPayPayの次を追うのは「d払い」です。d払いは、ドコモの基盤の強さを活かし、ポイント支払い時の還元キャンペーンを強化するなど、dポイントの汎用性を活かした企画に積極的に取り組んでいます。これらの効果もありキャリアユーザーを囲い込めていることが、d払いの強みでしょう。
dポイント支払いで1億ポイントをユーザーで山分けするキャンペーン
アプリのアクティブ率でもPayPayが1位、次にファミペイが続く
それでは次に、アプリ所持ユーザー数を比較してみます。
分析ツール:「eMark+」、分析期間:2019年6月〜2021年5月、対象デバイス:スマートフォン
ここでも、PayaPayが1位で、直近では約3,600万ユーザーがアプリを所持しており、先述したMAUともほとんど乖離がありません。PayPay以降の順位傾向も、MAUと類似しています。
では、アプリ所持ユーザーのうちの利用ユーザー率(アクティブ率)ではどうでしょうか。
分析ツール:「eMark+」、分析期間:2019年6月〜2021年5月、対象デバイス:スマートフォン
アクティブ率でも、PayPayが1位。キャンペーンで集客するだけでなく、実際の利用者も多いことが分かります。話題性に加え、導入店舗の多さや優れたUIなどから、ユーザーの満足度も高いと考えられます。
また、アクティブ率2位はファミペイでした。QRコード決済はコンビニ利用が多いと言われています。ただ大手3社のうち、セブンイレブンとローソンは、クーポンやポイント付与機能を搭載した自社アプリは運営しているものの、QR決済アプリは運営していません。
それに対し、ファミリーマートは自社運営の決済アプリファミペイを早くから導入し、特定商品購入時のポイント還元キャンペーンなどで、利用を促しています。メインのコンビニとしてファミリーマートを利用するユーザーは、毎日あるいは1日に複数回アプリを起動することも考えられ、これがアクティブ率の高さに繋がっているのでしょう。
年代別ユーザー数をチェック
次に、年代別の利用状況を確認してみましょう。こちらは、過去半年のユーザー属性です。
分析ツール:「eMark+」、分析期間:2020年12月〜2021年5月、対象デバイス:スマートフォン
若年層比率が比較的高いのはPayPayと楽天ペイ。一方、高年代比率が高いのはauPayとd払いのキャリア系サービスでした。
PayPayや楽天ペイは、オンラインサービスに慣れ親しみ、キャンペーンなどの話題性にも敏感な若年層の利用が多い傾向です。また、Yahoo!とLINEの経営統合によってLINEペイとPayPayが連携したことも、若年層の割合を増やした要因のひとつかもしれません。
一方で、高年代の比率が高かったのはキャリア系サービス。キャリア経済圏内のユーザーへのリーチに成功していると推測できます。
まとめ
スマホ決済業界は、各社が参入した2019年から約2年が経ち、PayPayが独走状態でいることが明らかになりました。アクティブ率もPayPayが最も高く、キャンペーンによる一過性の盛り上がりではなくユーザーに定着していることが分かります。
また、その他のサービスも、キャリア系は高年代の利用が多い、コンビニ系はアクティブ率が高いなど、それぞれの傾向が目立つようになってきました。これらの特性を活かし、今後はサービス独自の展開が繰り広げられるかもしれません。1位のPayPayに対し、他社はどんな追い上げを見せるのか。今後の動向に注目です。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2019年6月~2021年5月のネット行動ログデータを分析しました。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。