消費増税の追い風で、スマホ決済アプリPayPayが独走!1日の起動ユーザー数は900万人以上に

消費増税の追い風で、スマホ決済アプリPayPayが独走!1日の起動ユーザー数は900万人以上に

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、一般ユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、消費増税前後の決済アプリ利用ログからキャッシュレス決済の利用実態を調査しました。また国内の20歳以上の男女18,517人を対象に、キャッシュレス決済やポイ活の認知度、利用意向に関するアンケート調査を実施しました。


消費増税、そしてキャッシュレス決済を対象にした政府のキャッシュレス・消費者還元事業がいよいよスタートしました。昨年2018年12月のPayPay「100億円あげちゃう! キャンペーン」を端緒としたキャッシュレス決済アプリ市場の最新動向を分析しました。

圧倒的な強さを見せるPayPay

2019年9月-10月の主要決済アプリ日次起動ログからは、昨年からスマホ決済市場拡大を牽引してきた「PayPay」の圧勝ぶりが明らかになりました。

1日平均414万人前後で推移していた9月の日次起動ユーザー数は、9月最終週から急増し、消費増税当日の10月1日(火)には683万人に。さらに増税後最初の週末である10月5日(土)には、PayPayの1周年を記念したキャンペーン「PayPay感謝デー」を開催し911万人をマーク。10月の1日平均起動ユーザーは677万人に達しました。

続いて利用が多かったのはau WALLETやd払いといった通信キャリア系決済アプリです。1日平均起動ユーザーはau WALLETが9月278万人から10月313万人へ、d払いは9月181万人から10月269万人へ、それぞれ増加しました。

7月に投入されたコンビニ系決済アプリ・ファミペイは、キャンペーン等の影響なのか日によってばらつきがありますが、多い日だと約400万人程度が起動しています。ただし9月と10月で日次平均起動ユーザーに大きな差異はなく、他のアプリほどは消費増税の影響を受けていないようです。

図表 1 主要キャッシュレス決済アプリの日次起動ユーザー推移(2019年9月-10月)

図表 1 主要キャッシュレス決済アプリの日次起動ユーザー推移(2019年9月-10月)

9月と10月で主要キャッシュレス決済アプリの起動日数を比較すると、ほとんどのアプリで日数が増えていますが、増税の影響度合いには濃淡があります。

月11日以上起動と日常的に利用するユーザーは、もともと30%ほどだったPayPay、au WALLET、ファミペイで増加が顕著です。なかでも月に21日以上、ほぼ毎日起動するヘビーユーザーは10月にau WALLETが21.4%、ファミペイは15.5%、PayPayは14.3%に達しています。

図表 2 主要キャッシュレス決済アプリの起動日数

図表 2 主要キャッシュレス決済アプリの起動日数

アプリ起動回数も同様の傾向で、10月はLINE Payを除きいずれのアプリも11回以上起動するユーザーが増えました。とくにPayPayとau WALLETは21回以上起動のヘビーユーザーがそれぞれ33.1%、29.6%に達しています。(※起動回数は1時間毎に計測)

図表 3 主要キャッシュレス決済アプリの起動回数

図表 3 主要キャッシュレス決済アプリの起動回数

新規インストール数もPayPay独走、楽天ペイが健闘

「100億円あげちゃう! キャンペーン」以来、熾烈なキャンペーンバトルを繰り広げてきたキャッシュレス決済アプリ。勢いには差があるものの、年間で見ると今のところほとんどのアプリがユーザーを増やしていて、市場自体は着実に拡大しています。

月次の起動ユーザー数の推移をみると、9月以降はPayPayが独走態勢に入っていますが、d払いや楽天ペイの伸びも顕著です。

図表 4 主要キャッシュレス決済アプリの月次起動ユーザー数推移(2018年10月-2019年10月)

図表 4 主要キャッシュレス決済アプリの月次起動ユーザー数推移(2018年10月-2019年10月)

※「ファミペイ」アプリは、2019年7月1日に「ファミリーマートアプリ」から移行してリリースされた

2019年9月-10月の日次の新規インストールユーザーログからは、消費増税がキャッシュレス決済ユーザーの裾野拡大にも奏功したことがわかります。

新規ユーザー獲得でも圧倒的な強さを示したのはPayPayで、増税当日の10月1日(火)には約50万人がインストール。最初の週末10月5日(土)は約60万人に達し、第1弾「100億円あげちゃう! キャンペーン」期間中2018年12月8日(土)にマークしたインストールユーザー数とほぼ同規模にまで伸びました。10月1日(火)は楽天ペイも約30万人がインストールしていますが、新規獲得に関してはPayPayほど大きな動きではありませんでした。

2019年9月-10月の新規インストールユーザー数は、PayPayが946万人、楽天ペイが376万人、d払いが256万人。主要アプリ合計だとのべ約1900万人に達します。

図表 5 主要キャッシュレス決済アプリの日次インストールユーザー(2019年9月-10月)

図表 5 主要キャッシュレス決済アプリの日次インストールユーザー(2019年9月-10月)

他方、3,600ページに及ぶPDFや店舗の重複が話題になった経済産業省のポイント還元対象店舗検索アプリですが、9月最終週からインストールユーザー数が10万人を超えて急増しました。10月1日(火)当日には約57万人を獲得していて、2ヶ月間の新規インストール数は330万人にのぼりました。

キャッシュレス・消費者還元事業の認知度は7割超、ポイ活の認知が高いのは20-40代女性

「消費者がキャッシュレス決済の利便性を実感するきっかけを創出」する目的を掲げたキャッシュレス・消費者還元事業。スマホ決済アプリユーザーは着実に増え、政府の発表によると実際1日平均10億円ほどのポイントが還元されているといいますが、認知度はどうでしょうか。「キャッシュレス・消費者還元事業」と「ポイ活」について、認知度と実際の行動変容を18,517人のアンケート調査で確認しました。

「キャッシュレス・消費者還元事業」は全体の71.8%が言葉を認知調べたユーザーも40.4%に上り、関心の高さがうかがえます。男女ともおおむね年代と比例して認知度が上がる傾向で、60代以上の女性は77.5%が「知っている」と回答しました。実際に調べたユーザーは30代男性43.2%、40代男性42.2%、20代男性41.9%が他を上回り、還元に対するニーズがより切実といえそうです。

ポイントを貯めたり使ったりしてお得にしようという活動、略して「ポイ活」は男性の認知度17.7%に対し女性は30.6%と、男女差が見られます。とくに30代女性41.2%、20代女性39.2%、40代女性30.4%の認知度が高く、実際ポイ活を行っている層も20-40代女性が中心です。男性は30代12.9%を除くと認知度・行動とも低く、とくに60代男性でポイ活を行っているのは4.6%にとどまりました。

図表 6 「キャッシュレス・消費者還元事業」と「ポイ活」の認知度及び行動

図表 6 「キャッシュレス・消費者還元事業」と「ポイ活」の認知度及び行動

消費増税対策としてのキャッシュレス・消費者還元事業は2020年6月末で終了しますが、政府は次なる景気対策として、同9月を目処にマイナンバーカード保有者を対象にした25%程度のポイント還元制度「マイナポイント」を検討中です。

図表 7 総務省「マイナポイント」を活用した消費活性化策について(検討の方向性)

消費増税を機にキャッシュレス決済に対する抵抗感が一気に払拭されたいま、ポイント政策はマイナンバーカード普及の決め手になるのでしょうか。

ヴァリューズは今後もユーザー行動ログとアンケート調査等を通じて、キャッシュレス決済市場とユーザーニーズの変化を発信してまいります。

調査・分析概要

全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、2019年10月16日~30日にアンケート調査を実施(回答者18,517人)。また、全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、主要決済アプリの行動ログを分析しました。

※アンケート調査は性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計をおこなっている。
※行動ログはネット行動ログと属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※「LINE Pay」は決済機専用アプリのログのみで、「LINE」アプリから「LINE Pay」機能を使用した分は含まない。

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

もうすぐ年末年始。時間のあるこのタイミングで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを利用してコンテンツを一気見しよう、という方も多いのではないでしょうか。今回は、「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」それぞれについて、ここ数年の年末年始の集客状況を調査。実際に年末年始に利用者が増えているのか、各サービスでどんなコンテンツに注目が集まっているのかを分析し、来たる2024年の年末年始を占いました。


話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

日々の疲れを癒し健康的な生活へと回復させるためのサポートとして、医薬品やサプリ、健康食品など、巷にはさまざまな情報が溢れています。中でも最近よく見聞きするのが「リカバリーウェア」。着るだけで疲労感などが軽減されると謳う救世主的な商品ですが、一体どのような物で、どのような人たちの関心を掴んでいるのか、データを用いて検証します。


デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

即時払いで決済を行うデビットカード。キャッシュレス決済全体に占める割合はまだまだ低いものの、利用者や利用場面は着実に増加しており、成長の兆しを見せています。本稿では、そんなデビットカードの検討状況について、キャッシュレス決済カテゴリのマーケットリーダーであるクレジットカードと比較し、今後の市場動向を占います。


後払い(BNPL)やプリペイド決済は誰がどう使っている? 特化型決済アプリユーザーを比較調査

後払い(BNPL)やプリペイド決済は誰がどう使っている? 特化型決済アプリユーザーを比較調査

ここ数年、非接触型のキャッシュレス決済を中心に多様な決済手段が発展してきました。その中で、ユーザーはどのようにして決済方法を選択しているのでしょうか? 本稿では後払い(BNPL=Buy Now Pay Later)に特化したアプリ(Paidy、Smart Pay)と、プリペイドに特化したアプリ(Ultra pay、バンドルカード)を比較し、それぞれのユーザーの興味を分析します。


Why are certain AI English conversation apps “chosen” over others? Exploring how each app is used

Why are certain AI English conversation apps “chosen” over others? Exploring how each app is used

Spring is the season for trying something new, and many want to commit to learning English. Many apps have emerged that offer easy, self-paced English-learning. We will focus on Speak, ELSA Speak, SpeakBUDDY, and Duolingo and analyze the data to investigate the latest trends in AI English conversation apps.


最新の投稿


現役大学生のうち約4割がマスメディアよりSNSを信用!情報は正確性よりも"早さ"で選ぶのが主流【RECCOO調査】

現役大学生のうち約4割がマスメディアよりSNSを信用!情報は正確性よりも"早さ"で選ぶのが主流【RECCOO調査】

株式会社RECCOOは、同社が運営するZ世代に特化したクイックリサーチサービス『サークルアップ』にて、最新のZ世代調査として「情報リテラシー」をテーマにした調査を実施し、結果を公開しました。


コスモヘルス、シニア世代の保険加入に関する実態調査結果を公開

コスモヘルス、シニア世代の保険加入に関する実態調査結果を公開

コスモヘルス株式会社は、同社が運営するシニア専門の調査プラットホーム「コスモラボ」にて、保険に関する市場調査・アンケートリサーチを実施し、結果を公開しました。


カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

カスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はカスタマージャーニーマップ(体験設計のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


コンタクトレンズを使用したい子どもは6割以上!対して9割超の親が子どものコンタクトデビューに不安あり【メニコン調査】

コンタクトレンズを使用したい子どもは6割以上!対して9割超の親が子どものコンタクトデビューに不安あり【メニコン調査】

株式会社メニコンは、小学4年生以上中学3年生以下の子どもを持つ親を対象に「子どものコンタクトレンズ選びに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Z世代が最も利用しているSNSは「YouTube」で利用率8割超!前年から利用率が最も伸びたのは「BeReal.」に【サーバーエージェント調査】

Z世代が最も利用しているSNSは「YouTube」で利用率8割超!前年から利用率が最も伸びたのは「BeReal.」に【サーバーエージェント調査】

株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告事業の「サイバーエージェント次世代生活研究所」において、「2024年 Z世代SNS利用率調査」を実施し、Z世代が利用しているSNSおよび各世代のSNS利用率・認知率を発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ