Yahoo!の無料動画サービス「GYAO!」とは
「GYAO!」はヤフー系列の「株式会社GYAO」が運営する動画配信(VOD)サービスです。その最たる特徴は、一般的な会員登録が必要なVODサービスと異なり、"会員登録なしでも動画の無料視聴が可能"である点です。
本稿ではGyao!の利用者、閲覧者がどんな人なのかを調査していきます。まずは「GYAO!」の媒体資料を元に、利用ユーザーの属性を確認してみましょう。
「GYAO!」媒体資料(2021年8月時点のもの)
媒体資料によれば、「GYAO!」の月間訪問者数は1,550万UB ※ で、スマホとPCの閲覧割合はおよそ7:3です(※「ユニークブラウザ数」の略、特定のウェブサイトを訪れたユーザー数を差す指標)。
スマホユーザーに焦点を絞るとやや女性の割合の方が高く、最も大きな割合を占めるのが35~54歳の女性ユーザーです。また、男性の35~54歳の利用ユーザーも24%と割合が大きく、両性別で約5割を占めるミドル層の利用が多いサービスであると言えます。
「GYAO!」媒体資料(2021年8月時点のもの)
「GYAO!」ユーザーのプロファイルをさらに見てみると、興味関心を持つコンテンツは「音楽」「旅行」の割合が最も高く14%という結果。次いで、「スポーツ&アウトドア」「ショッピング」の13%、「エンターテイメント」の11%と続きます。資料にもある通り、利用ユーザーの多くが「映画」「アニメ・マンガ」といったエンターテイメントや、「音楽」「買い物」に関心を高く持っている媒体です。
また、ユーザーの年収や資産に関するデータでは、比較対象となっているその他のVODよりも「個人年収」や「金融資産」の金額が高い傾向です。これは、前述した年齢別のデータにおいて、男女ともに35~54歳という円熟期に入ったミドル層が多かったことが影響している可能性があります。
「GYAO!」利用ユーザーの属性を定量データから分析
次に、ヴァリューズのデータを用いて、「GYAO!」ユーザーの嗜好する具体的なコンテンツや、興味関心のある分野を分析していきます。
■「GYAO!」ユーザーを大きく4つにクラスタ分けすると
まずは、「GYAO!」ユーザーが興味関心を寄せるジャンルについて、検索キーワードに基づいてクラスタ分析をしていきます。
上記は、類似した「GYAO!」の利用ユーザーを4つのクラスタに分けたうえで、それぞれが興味を持つジャンルを可視化した図です。図を俯瞰してみると、4つのクラスタはそれぞれ「ドラマ・アニメ好き」「バラエティ好き」「韓流ドラマ好き」「アイドル応援好き」といった属性に分けられそうです。
左上の「ドラマ・アニメクラスタ」においては、具体的な作品名だけでなく「無料動画」「無料視聴」といった視聴の方法などが並んでいます。「お金をかけずに好きなドラマやアニメを見たい」とったニーズを持つクラスタが、「GYAO!」の無料視聴が持つサービス特性にマッチしていることが窺えます。
右上の「バラエティクラスタ」では各お笑い番組やバラエティタレントの名前が並びますが、その中でも大きなボリュームになっているのが「見逃し」「見逃し配信」といったキーワードです。テレビで毎週放送されているバラエティ番組の見逃しがあり、バックナンバーを視聴したいというニーズがこのクラスタは強そうです。
左下の「韓流ドラマクラスタ」では、「韓国ドラマ」といったキーワードに加え、各ドラマのタイトルが並んでいます。韓流ドラマはGyao!ユーザーのうちもっとも割合が高かった35~54歳の女性ユーザーにも人気の高いジャンル。様々な韓国ドラマの作品を無料視聴できる点でユーザーを集めていると考えられます。
最後に、右下の「アイドル応援クラスタ」については、女性シンガーやアーティスト名と共に、韓国発のオーディション番組である「プロデュース101」がクローズアップされています。本番組は日本版の「PRODUCE 101 JAPAN」というシリーズも人気を博しており、媒体内では少数派な10~20代の女性ユーザーのサービスリーチを拡大するための起点となっていそうです。
■興味・関心データから浮かび上がる「大人な」ユーザーの存在
続いては、「GYAO!」ユーザーが興味を持っている分野について、データをプロットした図です。
上記図の、縦軸「リーチ率」と横軸「特徴値」は以下の定義に基づいて算出されています。
リーチ率 | 対象者のうちアンケートで当該項目に回答した人数の比率 |
特徴値 | 対象者が一般的なネット利用者と比べて特徴的に利用するサイトや起動するアプリ、 検索するワードを可視化するための指標。 (対象者のリーチ率)ー(ネット人口全体のリーチ率)で計算 |
簡単に言えば、「リーチ率」が高いほど、興味・関心を持っているユーザーが多いジャンルです。また、「特徴値」は一般的なネットユーザーよりも顕著に出ている分野ほど高くなるため、「リーチ率」と合わせて考えると、グラフの右上に位置する項目ほど「GYAO!」ユーザーに特有で興味・関心の大きいジャンルであると考えることができます。
媒体資料でも触れられていたように、「映画」「音楽鑑賞」「テレビ番組」といったジャンルはやはり関心が高く、ユーザーがサービスを選ぶ動機となっていそうです。一方、意外とリーチ率が高いのが「デンタルケア」や「結婚」といったワードです。これらの語句は媒体資料のユーザープロファイルに記載されていた「健康を意識している」「キレイめ、いつもキチンとした身なり」といった内容を連想させ、比較的に成熟している大人なユーザーが「GYAO!」を利用していることが想像できます。
■併用サイトのデータには「テレビ放映作品」「無料視聴」へのニーズが色濃い
最後に、「GYAO!」を閲覧したユーザーがその他にどのようなサイトを特徴的に利用しているか調べるため、閲覧サイトランキングを見てみましょう。
前項同様に「特徴値」の指標で降順にサイトを並べてみると、「GYAO!」の訪問者は他に「Tver」「ビデオマーケット」といったVODメディアにもアクセスしています。
前者は「バラエティクラスタ」「ドラマ・アニメクラスタ」に民放の番組の需要が高いため、「GYAO!」と併用して目当てのテレビ番組を探しているユーザーがいるからだと考えられます。一方、後者は「初月の会費が無料」のVODであるため、視聴無料を掲げる「GYAO!」のユーザーとは親和性が高いことが推察できます。
また、その他の特徴的なサイトとしては、「アイドル応援クラスタ」で登場していた「PRODUCE 101 JAPAN」のオフィシャルサイトへのアクセスも多いようです。「PRODUCE 101 JAPAN」のシーズン2が「GYAO!」独占配信となっていることから、同コンテンツに興味を持つユーザーを集客できていることがわかります。
「GYAO!」のメディア特性まとめ
ここまで分析してきた内容から、「GYAO!」の利用ユーザーの特徴をまとめると以下のとおりです。
・利用ユーザーにはやや女性が多く、半数が35~54歳のミドル層で他媒体よりも金銭的に裕福な「大人」が利用
・利用ユーザーは大きく「ドラマ・アニメ好き」「バラエティ好き」「韓流ドラマ好き」「アイドル応援好き」に分かれる
・「アニメ」「ドラマ」「バラエティ」といったテレビ放映作品の"見逃し配信"へのニーズが強い
・特に、「アニメ」や「ドラマ」に関心があるユーザー層には「無料視聴できる」というサービス特性がフックになっている
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、2020年7月〜2021年6月のネット行動ログデータを分析しました。
※閲覧サイトランキングはGyaoのWebサイト閲覧の前後180分の行動ログから分析
※n=5,000人
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。