「カーボンニュートラル」検索者が1年で約13倍に増加!世間の関心をWeb行動ログで分析

「カーボンニュートラル」検索者が1年で約13倍に増加!世間の関心をWeb行動ログで分析

ここ最近、各種メディアでよく目にするようになった「カーボンニュートラル」という言葉。国を挙げての取り組みも多く始まっており、企業を経営する方や、どこへ資産を投じるか悩む方にとっては無視できないキーワードなのではないでしょうか。本記事では、カーボンニュートラルへの関心がどのように伸びてきており、興味を持つ背景にはどういったものがあるのかを調査・分析します。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用い、カーボンニュートラルの情報を求めているユーザー像を探っていきます。


「カーボンニュートラル」の前提知識

「カーボンニュートラル」とは日本語で「炭素中立」とも言われる環境科学の用語です。端的に言えば、「人々の生産活動などで生まれる二酸化炭素の排出量から、その吸収量と除去量を差し引いた値がゼロになること」を意味します。

「カーボンニュートラルな社会」といった使われ方をしますが、つまりは「脱炭素エネルギー」を掲げるにあたっての概念だと言えるでしょう。

「カーボンニュートラル」が注目を集める背景

「カーボンニュートラル」という語句がここ最近よく聞かれるようになったのは、2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」がされたことも一因です。菅総理は、2050年までに国内の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすると宣言し、広くメディアでも報道されました。

なお、日本が目指すカーボンニュートラルには二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタンやフロンガスといった「温室効果ガス」全般の削減が含まれています。

「全体としてゼロにする」ための取り組み

現実問題として国内の脱炭素を急激に進めることは難しい状況にあります。様々な要因がありますが、例えば「脱ガソリン車」の文脈であれば、日本が世界をリードするHV(ハイブリッド車)の生産をEV(電気自動車)へシフトせざるを得なくなるため、海外メーカーとの市場競争や生産拠点・生産体制の整備…といった一筋縄ではいかない課題が多数、発生します。

そのため、「全体としてゼロにする」という目標を達成するために、排出量の「削減」と合わせて「吸収」や「除去」といった手段が出てきます。特に、「CCS」や「CCUS」と呼ばれる二酸化炭素の回収・貯蓄・再利用を行う取り組みも、技術の実用化に向けて注力されています。

「カーボンニュートラル」検索者は1年で約13倍に増加

カーボンニュートラルに関して、人々の興味関心はどのように上昇してきているのでしょうか。検索者のユーザー数や興味関心を分析できるWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、「カーボンニュートラル」の検索ユーザー数の推移を見てみます。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」キーワードの検索ユーザー数の推移を集計
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

上記の検索ユーザーの推移を見ると、「カーボンニュートラル」は2020年の夏頃まではほとんど検索がされていなかった語句であることがわかります。2020年7月に検索ユーザーが少し伸び、前項でお伝えした政府の「カーボンニュートラル宣言」があった2020年10月で急上昇すると、約1年で検索数が13倍ほどまでに増えています。

ちなみに2020年7月に検索数が伸びているのは、Apple社が「2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成」という目標を発表し、関心を集めた時期だからだと思われます。Appleでは以前から自社生産における「自然エネルギー100%」を目指す方針を表明していましたが、具体的な達成時期の明言はこのタイミングが初めてだったようです。

参考:Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束

政府の「カーボンニュートラル宣言」が行われた2020年10月以降は、国内の関心や関連企業の方針表明などが立て続いており、急速に「カーボンニュートラル」へ人々の目が向き始めていることが見て取れます。

「カーボンニュートラル」に興味を持つのはどんなユーザー?

「カーボンニュートラル」へ関心を寄せているのは、どのような属性の人々なのでしょうか。Dockpitの「ユーザー属性」から、「カーボンニュートラル」と検索するユーザーのインサイトを探ってみましょう。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」検索ユーザーの性別・年代別の割合を集計
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

まずは検索者の「性別」と「年代」のデータです。性別の比率は男性が73.6%と、圧倒的に男性の検索者が多いことがわかります。年代については、ネット利用者の全体と比較すると50代以上の年配者が多い様子です。このことから、「カーボンニュートラル」に興味を持っているのは"バブル世代の男性"が中心であると読み解けるでしょう。

つづいて、「世帯年収」のデータも取り上げてみます。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」検索ユーザーの世帯年収の割合を集計
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

上記の年収のデータを見ると、600万円以上の高所得者の割合が大きいことが分かります。特に、「1000-1500万円」のレンジはネット利用者全体と比べても突出して多いです。

これらのことから、「カーボンニュートラル」について興味関心を寄せるユーザーは50代以上の男性が中心となりつつ、1000-1500万円以上の高資産を持つ企業の部長クラス以上や役員、経営者などの肩書の人もいると考えられるます。国策とも言える「カーボンニュートラル宣言」に対して自社の企業方針や経営判断を迫られる立場、または資金の投資先を熟考する必要がある人々が、興味を持っている語句の1つなのではないでしょうか。

掛け合わせ語句から読み解くカーボンニュートラルへの懸念とは

検索ユーザーの属性が把握できたところで、検索者が具体的に「カーボンニュートラル」にどのような興味を持っているのか深掘りしていきます。Dockpitの「掛け合わせワード」の機能を用い、「カーボンニュートラル」という語句と合わせて検索されているキーワード(上位10語句)を見てみましょう。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」の掛け合わせワードを集計(ユーザー数降順/上位10位まで)
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

掛け合わせの検索で最も多いのは「おかしい」というキーワードです。これは、「日本がカーボンニュートラルに注力するのは"おかしい(間違っている)"のでは」という意味での検索語句であると想像されます。

冒頭のカーボンニュートラルの概要でも記載の通り、「全体としてゼロにする」という大きな目標達成は非常に難易度が高く、現実的に難しい、と考える人々も多いようです。

また、ビジネスリーダーと呼ばれるような経営者の一部もカーボンニュートラルに対する懸念を発しているケースがあります。例えば、先ほどの掛け合わせワードTOP10で8位には「トヨタ」が登場していますが、トヨタ自動車の豊田章男社長が「間違った政策は日本経済を破壊する」と痛烈な批判を行ったことなども話題になっています。

参考:豊田章男社長の「警鐘」…カーボンニュートラルで日本経済は沈没する

このような背景もあり、カーボンニュートラルに対して懐疑的である・反対である、といった人々が一定数おり、「おかしい」というキーワードに現状が反映されていると考えられます。

続く2位~5位には「日本」「企業」「環境省」「取り組み」といった語が登場しています。これらのキーワードは、それぞれの機関がカーボンニュートラルにどのような取り組みを行っていくのか、もしくは方針を掲げているのか、という情報収集のワードであると想定されます。また、9位には「わかりやすく」というキーワードも出てます。

検索数の推移からもわかる通り、「カーボンニュートラル」という語句自体に聞きなじみがない・概念を理解していないというユーザーもまだ多いのでしょう。まずは「カーボンニュートラル」の概要を把握し、関係各所が何をしようとしているのかを調べていく…という様子がうかがえ、情報収集の早期のフェーズにあるユーザーも多いようです。

公的機関や記事メディアで情報をキャッチアップする傾向

「カーボンニュートラル」という語句の検索ユーザーが、どのようなサイトへ流入しているか(上位10サイト)のデータも抽出してみます。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」の検索ユーザーの流入サイトを集計(ユーザー数降順/上位10位まで)
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

情報収集フェーズのユーザーが多いため当然と言えば当然ですが、流入先のサイトは「自然エネルギー庁」や「環境省」といった公的機関が大半です。また、「カーボンニュートラル」という語句の意味を知るのに適当な、Wikipediaへのアクセスも多い様子です。

公的機関と並んで多いのが、3位の「EMIRA(エミラ)」や4位の「IDEAS FOR GOOD」などの記事メディアです。EMIRAはTEPCO(東京電力)が「エネルギー」という大きなテーマで情報発信をしているオウンドメディアで、カーボンニュートラルだけでなく自然エネルギーの分野に関する記事が豊富に揃っています。また、IDEAS FOR GOODは「社会を「もっと」よくする」という方針を掲げているメディアで、環境科学や企業の取り組みなども含め、広い分野の情報発信がされています。

具体的に、どのようなページの閲覧が多いのかも見てみます。

「Dockpit」で「カーボンニュートラル」の検索ユーザーの流入ページを集計(ユーザー数降順/上位10位まで)
期間:2019年8月〜2021年7月
デバイス: PC・スマートフォン

閲覧の多いページの内容としては、「カーボンニュートラルとは何か?」という基本的な説明をしているものが大半であり、まずは概念を把握したい・知りたいと考える検索者が多い様子が窺えます。掛け合わせキーワードのデータでも出てきたように、情報収集を始めたばかりのユーザーが多いようです。

まとめ|カーボンニュートラルの世間の関心は

本調査を総括して、カーボンニュートラルに対しての世間からの興味がどのように向いているのか、わかったことは以下の通りです。

・政府の「カーボンニュートラル宣言」以降、ネットの検索数は13倍ほどに増加
・興味を持っているユーザーは「50代以上の男性」を中心に「企業の上役や投資家」などもいる
・現状ではカーボンニュートラルに反対、懐疑的なユーザーもいるよう
・カーボンニュートラルの基本的な概念理解や、情報収集に動き始めている人が多い

新しい言葉だけに、自身の判断や経済活動に影響が大きい企業の重要ポストや、投資を行う人々による関心が、今の段階では大きい印象です。そして、国の掲げる方針に対して反発的な声が多数上がっているのも事実です。

ただし、調査結果にもあったように情報収集を始めているユーザーも多く、ここから世間一般へカーボンニュートラルの知識が浸透し、そこへ向けて考える層が増えてくれば、政府・各企業も含めて多数の選択肢や方法論も議論されていくことと思います。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年8月〜2021年7月の検索流入データ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

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この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

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