こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズでリサーチャーを務めている古田と申します。
株式会社ヴァリューズ リサーチャー 古田 美穂(ふるた みほ)
岡山県出身、東京大学工学部卒業。1998年生まれ、Z世代のリサーチャー。2021年にヴァリューズへ新卒入社。
私はZ世代のリサーチャーとして、株式会社ヴァリューズにてアンケート調査×Web行動ログ分析を日々行っています。そのかたわら、インスタを中心としたSNSから収集したトレンド情報を社内に発信するといったトレンドセッター的役割も担っています。
2022年になりコロナ3年目が近づいていますが、コロナ禍でのトレンドといえば、おうち時間の増加・健康志向の高まりがあります。本記事では、そんな中で昨年後半に話題を呼んだ、移動でマイルが貯まるアプリ「Miles」について調査していきます。
リリース直後に利用を始めたユーザーの属性、支出行動、移動行動や利用しているサイト・アプリについて、株式会社ヴァリューズの保有するWeb行動ログデータにアンケート結果を掛け合わせることで分析します。また、似たサービスを提供するアプリとして「トリマ」のユーザーとも比較をすることで、移動で得をするアプリに惹かれた人々の人物像をより掘り下げていきます。
移動で得をするアプリ「Miles」「トリマ」とは
「Miles」は、あらゆる移動でマイルが貯まり、貯まったマイルでお得に商品やサービスを購入できるアプリです。特に徒歩や自転車などの密を回避でき、なおかつサステナブルな移動手段だと、マイルが貯まりやすくなるという特徴があり、今の時代らしいポイントと言えるでしょう。
もとは米国のシリコンバレー発のアプリで、2021年10月に日本での提供が開始されました。リリース直後から、テレビなどのメディアでも多く取り上げられ、ユーザー数は急増。新規会員登録を一時休止する程の反響がありました。
一方、「トリマ」も、移動するだけでポイントが貯まり、貯まったポイントを現金や商品券等に交換できるアプリです。Milesより1年早く提供を開始していましたが、サービス形態は似た部分が多く、比較されることも多いです。
では、実際にこの2アプリが現在どれほどユーザー数を獲得しているのか、ヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツールを利用して見てみましょう。
「Miles」「トリマ」の各アプリユーザー数推移
(集計期間:2021年7月~2021年12月、デバイス:スマートフォン)
Milesがリリース直後の2021年10月〜11月に一気にユーザー数を伸ばしており、約350〜400万MAU規模であることが分かります。ただし、新規会員登録を一時休止したこともあり、12月は伸び悩んでいたようです。
一方トリマも、Milesリリース前から月間400万人前後のユーザーを獲得しており、11月には600万人にまでユーザーが増加しています。Milesが話題になった影響を受けたと考えられます。
「Miles」「トリマ」のユーザーはどんな人?WEBログ×アンケートで調査
次に、「Miles」「トリマ」のユーザー像について深堀りしていきます。調査方法としては、ヴァリューズが保有している全国の一般モニターのインターネットアクセスログデータから、「Miles」「トリマ」のスマートフォンアプリ利用者をそれぞれ抽出。Milesリリース直後の2021年11月に5日以上各アプリを起動しているユーザーを対象に、ログデータおよびアンケートデータを用いた分析を行いました。
はじめに各ユーザーの属性を比較してみましょう。
■デモグラフィック
▼Milesユーザー・トリマユーザーの性年代属性
まず、「性年代」の特徴に着目してみましょう。パネル全体と比較して、Milesユーザーは20~40代男性の比率がかなり高く、ユーザーの5割弱を占めています。一方、トリマユーザーは男女ともに20~30代の若年の比率が高く、早速2アプリのユーザーに違いがあることが分かりました。
※比較対象として「全体」の指標を入れていますが、これは弊社のパネル全体の平均の値になります。
続いて、「職業」「世帯年収」の特徴に着目してみましょう。
▼Milesユーザー・トリマユーザーの職業・世帯年収
Milesのユーザーは世帯年収が高めの会社員の比率が高くなっています。一方、トリマはパネル全体と似た分布になっています。トリマは公式で「超かんたんポイ活アプリ」と謳っており、調査前には家計を節約する主婦のユーザーが多いのではと仮説を持っていましたが、むしろ幅広い職種の人に利用されていると言えそうです。
では、各ユーザーは普段どのようなお金の使い方をしているのでしょうか?
■支出行動
まずは、項目別の平均支出から、各ユーザーがどこにお金を使っているのかを見てみましょう。
▼Milesユーザー・トリマユーザーの支出先
各項目に対する1ヶ月あたりの支出額を選択式でアンケート聴取し、その結果を各ユーザーごとに平均して表したもの
Milesユーザーは、外食・旅行といった外出先への支出額が多くなっています。交際費も兼ねたような出費でしょうか。また、Milesユーザー・トリマユーザーともに、食費や服・靴・かばん等への支出額が全体より少なくなっています。自分にはあまりお金をかけないような人々とも考えられますね。
続いて、貯めているポイントから、各ユーザーの節約意識を見てみましょう。
▼Milesユーザー・トリマユーザーが意識的に貯めているポイントサービス
意識して貯めているポイントを選択式でアンケート聴取し、その回答率を各ユーザーごとに表したもの
「超かんたんポイ活アプリ」と謳っているトリマのユーザーだけあって、やはり複数のポイントを貯めてお得に買い物をしているようです。一方のMilesユーザーも、あらゆるポイントを貯めるという傾向ではないものの、特に楽天経済圏でポイントを活用している面が見えてきました。
さて、Miles・トリマは、ポイ活の中でも「移動」で得をするアプリです。そこで、さらに各ユーザーの移動行動から、サービスとの相性を見てみましょう。
■移動行動
▼Milesユーザー・トリマユーザーが利用している交通手段
各交通手段の利用頻度を選択式でアンケート聴取し、その回答分布を各ユーザーごとに表したもの。上段が「電車」、中段が「バス」、下段が「飛行機」の利用頻度の結果を示す
Milesユーザーはどの交通手段においても、パネル全体より利用頻度が高くなっていたことが分かりました。移動の多いビジネスマンなどが利用していると考えられ、「移動でマイルが貯まる」というキャッチコピーが刺さったのでしょう。
一方、興味深いことに、トリマユーザーはパネル全体と同程度にしか交通手段を利用していません。トリマユーザーに対しては、「移動で貯まる」ことが強く刺さった訳ではなく、数多く取り組んでいるポイ活の一種として捉えられているのかもしれません。
閲覧サイト・利用アプリから「Miles」「トリマ」のユーザーを比較
続いて、各ユーザーが特徴的に閲覧しているサイトや利用しているアプリを分析し、違いを考察していきます。
■Milesユーザーのサイト・アプリランキング
Milesユーザーが特徴的に利用しているサイトを表したもの。スコア(ネットユーザー全体と比較した接触率の差)が大きい順にランキングされており、上位のサイトほど、Milesユーザーの特徴が強く表れている
サイトランキングを見ると、「Yahoo!ニュース」や「日本経済新聞」といったサイトが上位に来ており、日々最新ニュースをチェックするビジネスマンのネット行動が伺えます。同時に「日本空港(JAL)」や「楽天トラベル」も特徴的に見られ、前項で述べたようなMilesユーザーの移動の多さが伺える結果となっています。
Milesユーザーが特徴的に利用しているアプリを表したもの。スコア(ネットユーザー全体と比較した接触率の差)が大きい順にランキングされており、上位のアプリほど、Milesユーザーの特徴が強く表れている
また、アプリランキングを見ると、「PayPay」「楽天ペイ」を始めとする複数のキャッシュレス決済の利用が特徴的に見られます。リリース直後のMilesを利用しているユーザーは、他にも現代的なサービスを使いこなしてお得に便利に生活しており、新しいモノへの適応力が高い人物像が見えてきます
■トリマユーザーのサイト・アプリランキング
トリマユーザーについても、同様に見てみましょう。
トリマユーザーが特徴的に利用しているサイトを表したもの。
サイトランキングでは、「LINE証券」「楽天証券」といったサイトの閲覧が特徴的に見られます。
次にアプリランキングも見てみます。
トリマユーザーが特徴的に利用しているアプリを表したもの。
アプリランキングでは、ポイントを貯めるアプリや管理するアプリが複数上位に来ています。トリマユーザーは、ポイ活を行いながら株も活用しており、お得な生活に対して手を抜かない人物であることが見えてきます。
「Miles」「トリマ」のユーザー像のまとめ
ここまでの分析結果から、Milesとトリマのユーザー像をまとめていきます。ネット上で比較されることも多い2つのアプリでしたが、その人物像には違いが見られました。
ユーザー像の違い | |
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Milesユーザー | 20〜40代男性で年収高めのビジネスパーソンが多く、移動の多い日々を送る。外食や旅行にお金をかけるが、自分への支出は少なく、キャッシュレス決済や楽天経済圏を活用しお得・便利に生活する。 |
トリマユーザー | 男女問わず20〜30代の若者が多く、移動が多い特徴はない。 ポイ活・投資に励み、よりお得に生活しようと努力している。 |
また、このユーザー像の違いから、各アプリのユーザーに刺さった訴求点の違いも仮説立てすることができました。
ユーザーに刺さった訴求点の仮説 | |
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Milesユーザー | 移動が多いビジネスパーソンに対して「移動でお得に」という点が刺さったのではないか。特に「ポイント」ではなく「マイルが貯まる」という訴求の仕方も、ビジネスパーソンに刺さりやすいワードだったのではないか。 |
トリマユーザー | 普段からお得意識が強くポイ活を行っている人々に対して「超かんたんポイ活アプリ」という訴求が刺さったのではないか。Milesとは違い、移動で貯まるという手法の部分がキーだったのではなく、ポイントが貯まる簡単さが重要だったのではないか。 |
ただし、Milesはリリースされてまだ3ヶ月程。今回「Milesユーザー」と定義したのは、リリース直後に反応し利用を開始した、アーリーアダプターの特徴ある人々でした。前項記載のMilesユーザーのアプリランキングを見ると、Milesとトリマを併用している人も現状一部存在することが分かります。
現時点では、2アプリのユーザー像には明確に違いが見られたものの、サービス形態が似ている以上、今後の訴求の仕方・拡大の仕方によって、2アプリのユーザーはどんどん重なりあっていくかもしれません。一方のアプリがユーザーを吸収してしまう可能性も考えられます。
また、最近では、アンケート回答やスマホ利用情報の提供により、“持っているだけ”で自動で簡単にポイントを貯められるポイントアプリ「Uvoice(ユーボイス)」も登場しています。
様々なデータを活用し、サービス提供形態も多様化しているポイントアプリ。
今後の動向にも注目して見ていきたいところですね。
【調査概要(デモグラフィックの図以降)】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとアンケートにもとづき分析
・集計対象期間:2021年11月
※対象デバイス:スマートフォン
▼ヴァリューズでは、今回のようにアンケート調査とネット上での行動ログとを掛け合わせたデータ分析を得意としています。下記ボタンよりお気軽にご相談ください。
株式会社ヴァリューズ リサーチャー 古田 美穂(ふるた みほ)
岡山県出身、東京大学工学部卒業。1998年生まれ、Z世代のリサーチャー。2021年にヴァリューズへ新卒入社。
アンケート調査×WEBログ分析を日々勉強するかたわら、インスタを中心としたSNSから収集したトレンド情報を社内発信するといったトレンドセッター的役割も担う。