アットコスメWebサイトでのライブコマース、閲覧ユーザーにはどんな特徴が?ログデータで分析

アットコスメWebサイトでのライブコマース、閲覧ユーザーにはどんな特徴が?ログデータで分析

日本国内でも徐々に注目を集めている、ライブコマース。販売側と視聴者の双方向性を強みとして、業界問わず採用する企業が増えています。今回はコスメ・美容の総合サイト、アットコスメが取り入れているライブコマースサービスに焦点をあて、ライブコマースを利用するユーザー層にどんな特徴があるのか、調査してみます。


ライブコマースの国内における現状は?

コロナ禍の影響で、ますます勢いを増すEC市場。2021年7月に発表された経済産業省による調査では、家電や衣料といった物販系分野(BtoC)におけるEC市場規模は伸長率21.71%となっており、今後も勢いを増すことが期待されます。そんな盛り上がりを見せるEC市場で今、熱い視線を浴びているのが「ライブコマース」です。

ライブコマースとは、InstagramやYouTube等でのライブ配信を利用した販売手法のこと。2016年ごろから、アメリカや中国を中心に注目が集まっています。特に中国では大きな盛り上がりを見せており、2021年には約33兆9,150億円(2021年時点の元/円レート)の市場規模に達する見込みです。

テレビショッピングにも似た手法ではありますが、ライブコマースとテレビショッピングとの大きな違いは、双方向性。販売側と視聴者側がリアルタイムでやり取り出来る点が、このライブコマースの強みです。視聴者は、ライブ中に疑問点やもっと知りたい点を直接伝えることができ、販売側もECでは伝わりにくい商品の詳細を、視聴者が求める形で伝えられる仕組みとなっています。

そんな注目を集めるライブコマースですが、新型コロナウイルスの流行により巣ごもり需要が増加した影響などで、日本国内でも2020年頃から話題になり始めています。国内での第一人者は「モテクリエイター」としてYouTubeなどで活動中の、”ゆうこす”こと菅野裕子さん。自身がプロデュースする商品などを、ライブコマースを積極的に活用して販売しています。

「ソーシャルメディアは、視聴者と一緒になり、番組を作り上げているという感覚があります」というゆうこすさんのマーケジン記事内での発言からも、ライブコマースの強みは”リアルタイム感””一体感”であるとうかがえます。また、ゆうこすさんが過去出演したライブ配信では、30分で1ヶ月分の売上を達成するなど、EC販路としてのポテンシャルの高さもうかがえます。

そのほかにも、アパレルストア「.st」が実店舗からライブ配信を行っていたり、ライブ配信サービス「SHOWROOM」がライブショッピング機能を実装するなど、日本国内でも様々な業界でライブコマースへの注目が集まっています。

アットコスメのライブコマースの取り組みとは

今回は、そんなライブコマースを取り入れているひとつの実例として、化粧品総合情報サイトの最大手アットコスメを取り上げて調査します。

アットコスメではライブコマース「教えて!美容部員さん ライブショッピング」を2022年1月に開始。「教えて!美容部員さん ライブショッピング」は、アットコスメによるライブコマースサービスです。アットコスメ店舗で実際に働く美容部員の方々が配信者となり、自社ECサイトにて月に数回ライブ配信を行っています。

以降はこのページの訪問者を分析することで、ライブコマースのユーザー動向の特徴を調査します。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。

まずDockpitによれば、ユーザー数は今年5月から6月にかけて倍増しており(5月:約3.2万人、6月:約8万人)、
急成長を見せています。

「ライブショッピング | アットコスメトーキョー」のサイト訪問ユーザー数推移

「ライブショッピング | アットコスメトーキョー」のサイト訪問ユーザー数推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年1月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン

配信は毎回「夏のメイク」「セルフケア」といったテーマを設定し、それに沿った商品を紹介するという形式。視聴者はリアルタイムでコメントができるため、配信を見ていて気になった点や、もっと話を聞きたい点について、直接販売員の方に質問することができます。

ライブ配信の様子。紹介されているリップについて、視聴者が落ちやすさや使用感を質問できる

また、配信ページ下部には、紹介されている商品の詳細説明と購入ページへのボタンがあり、ライブ配信を見て気になったものはすぐに購入できるシステムとなっています。

パソコンのサイト。配信ページ下部にスクロールすると、画面右側に配信画面がポップアップで表示され、配信を見ながら商品をチェックできる

アットコスメによるライブコマースユーザーの特徴とは?

アットコスメ全体と比較して、ライブコマース「教えて!美容部員さん ライブショッピング(以下ライブショッピング)」のユーザー層にはどんな特徴があるのでしょうか? Web行動ログ分析ツール「Dockpit」のデータを活用し、ライブコマースを利用しているユーザー層を紐解いていきましょう。

まずは、ユーザー層の男女比を比較してみます。

「アットコスメ(@cosme)」と「ライブショッピング | アットコスメトーキョー」のサイト訪問ユーザーの性別(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン

アットコスメを利用する女性の割合は75.4%、ライブショッピングは96.4%となっていました。アットコスメ全体と比較すると、ライブショッピングユーザーの方が女性割合が高いことが特徴的です。

次に、年代別の利用状況を見てみましょう。

「アットコスメ(@cosme)」と「ライブショッピング | アットコスメトーキョー」のサイト訪問ユーザーの年代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン

アットコスメ全体(赤色)については、20-40代が同程度の割合で利用しており、30代が緩やかにボリュームゾーンとなっていることが読み取れます。一方ライブショッピングを利用するユーザー(青色)については、40代が突出してボリュームゾーンとなっており、20代のユーザーは約10%と少ない印象です。

KDDI総合研究所が2021年に行ったライブコマースに関する調査では、ライブコマース利用率について、20代・30代女性が約4%、40代女性が2.4%と報告されており、20-30代の女性と比較して40代女性の利用率は低くなっています

こちらの調査を踏まえると、アットコスメのライブショッピングにおいて40代がボリュームゾーンであることは特徴的な印象です。

背景として推測できるのは、アットコスメが活用する他媒体の存在です。アットコスメでは、今回ご紹介した「教えて!美容部員さん ライブショッピング」以外にもYouTubeやInstagram等の様々な媒体でライブ配信を行っており、そのような媒体に20-30代のユーザーが流入しているのでは……とも考えられます。

 ・番組表>@cosmeがライブでビューティ情報を発信!「素敵なコスメと出会いたい」を叶えます
 ・@cosme( アットコスメ )- YouTube
 ・アットコスメ公式 (@at_cosme) Instagram

また、以下はアットコスメのライブショッピングページの訪問者が関心を持つ他サイトのランキングです。

「ライブショッピング | アットコスメトーキョー」のサイト訪問ユーザーの、一般と比較して閲覧率が高いサイト(ランキング形式)(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年6月
デバイス: PC・スマートフォン

第1位にアットコスメがランクインしていることから、そもそもある程度アットコスメに対して関心を持ち利用しているユーザーがライブショッピングへ流入していることが推測できます。

また、7位には主婦層を中心に利用者が拡大していて、スーパーやドラッグストアのチラシが無料で見られるWebサイト「シュフー Shufoo!」がランクインしていました。日頃スーパーをよく利用し、店舗の情報を頻繁にチェックするようなユーザーが、特徴的にアットコスメのライブコマースに訪問していると考えられます。

まとめ

今回は、コロナ禍の後押しにより日本国内でも熱気を帯びる「ライブコマース」をテーマに、アットコスメのライブコマースサービス「教えて!美容部員さん ライブショッピング」を取り上げ、ユーザー層についてその特徴を調査しました。

調査の結果、アットコスメ全体と比較して、ライブショッピングのユーザーには以下の特徴があることが判明しました。

 ・女性の割合が高い(アットコスメ全体:75.4%、ライブショッピング:96.4%)
 ・40代がボリュームゾーン(アットコスメ全体は30代がボリュームゾーン)


またライブショッピングユーザーが関心を持つ他サイトの情報から、もともとアットコスメを利用しているユーザーがライブショッピングへ流入している印象を受けました。

今後しばらく続くとみられるコロナ禍により、ますます盛り上がるであろうライブコマース市場。アットコスメの自社サイトで配信されているサービス「教えて!美容部員さん ライブショッピング」に上記のような特徴が見受けられたことを踏まえると、「何を売るのか」と同様、「どの層をターゲットにするのか」がライブコマース戦略の重要な鍵となりそうです。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

大学ではマーケティングを専攻。ヴァリューズにて内定者インターンに参加中です。

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