話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

日々の疲れを癒し健康的な生活へと回復させるためのサポートとして、医薬品やサプリ、健康食品など、巷にはさまざまな情報が溢れています。中でも最近よく見聞きするのが「リカバリーウェア」。着るだけで疲労感などが軽減されると謳う救世主的な商品ですが、一体どのような物で、どのような人たちの関心を掴んでいるのか、データを用いて検証します。


リカバリーウェアとは?

「リカバリーウェア」には厚生労働省の基準が定められている

リカバリーウェアとは、着用することで疲労回復や筋肉のコリ、むくみ、冷えなどの改善が期待できる衣類の総称です。

2022年、厚生労働省が「一般医療機器」に新カテゴリーとして「家庭用遠赤外線血行促進用衣」を設けました。そして、日本医療機器工業会が定めた自主基準があり、それをクリアした上で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に届けを出すことで市場に販売が許されている製品です。

リカバリーウェアの仕組みとしては、鉱物や炭などの特殊な加工が施された生地が遠赤外線を輻射して血行を促進することにあります。実際に着用することで、疲労回復、筋肉のハリやコリの軽減、むくみの改善、冷え性の改善、 損傷した筋肉の修復が認められています。

リカバリーウェアにはふたつに分けて着圧タイプと非着圧タイプがあり、目的や好みに応じて使い分けが可能です。睡眠時やリラックスタイムには非着圧タイプでゆったり使用することができ、運動の後には着圧タイプで疲労を軽減させることができます。

「リカバリー市場」は今後、大きな市場規模となる可能性あり

ちなみにこのリカバリーウェアを含めたリカバリー(休養・抗疲労)市場ですが、市場規模は、2023年時点で5.4兆円と推定されています。(一般社団法人 日本リカバリー協会による)
これは、2019年の3.9兆円と比較して1.4倍の規模に成長を鑑みると、2030年には14.1兆円になるとも言われており、2023年と比較して実に約2.6倍の伸びが予想される成長市場と言えるでしょう。中でも衣類関係の伸長が最も高いとの報告もあり、今後の市場規模拡大も楽しみです。

出典:一般社団法人日本リカバリー協会 

リカバリーウェアと密接な関係にある“疲労回復”への関心度は?

リカバリーウェアを求めるユーザー心理に近づくために、その前段階とも言える「疲労回復」というキーワードにどれほどの関心が持たれているのかをデータで見てみましょう。

毎月更新されるWeb行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用し、1年を通じて「疲労回復」というキーワードの動きを見ます。こちらは2023年12月から2024年11月に「疲労回復」を検索したユーザー数の推移となります。

年末の疲れの駆け込みで検索上昇が予想されましたが、夏季に検索しているユーザーが多いことがわかります。今年の記録的猛暑が起因しているのかもしれません。

図:「疲労回復」検索ユーザー数推移
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

続いて性別・年代別のそれぞれの関心度を見てみます。
男性が41.3%、女性が58.7%と、やや女性の方が関心度が高いようです。
また年代を見てみると、40代が一番多く、続いて30代、20代と続き、その後に50代との順序になっています。働き盛りと言われる40代が最も多いのは想定内でしたが、続いたのが30代、20代の若年層という結果には少し意外な気もしました。壮年層よりも自己のコンディション管理に関心が高いようです。

図:「疲労回復」検索 性別・年代別
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

では「疲労回復」と考えた時、一緒に検索している気になるワードはなんでしょう。
下図は掛け合わせワードのランキングです。

目に付くのは「食品系」のワードで、どれも手軽に摂取できて疲労回復したいという気持ちが現れているようです。そのような中で2位につけているのが「パジャマ」。今回の鍵となりえる衣料系ワードが上位に現れています。

図:「疲労回復」検索 掛け合わせワードランキング
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

リカバリーウェア検索者はどんな人?

それではどれほどのユーザーが「リカバリーウェア」に関心を持っているか、「リカバリーウェア」の検索データから見てみます。

「疲労回復」の検索データと同様に夏季にも盛り上がりを見せていますが、2024年8月から検索数は右肩上がりとなっています。

図:「リカバリーウェア」検索 ユーザー推移
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

同様に検索者の性別・年代別のグラフも見てみましょう。

性別では男性が31.5%、女性が68.5%となっています。「疲労回復」の検索と比べて、若干女性の割合が高くなりました。年代を見ると40代が先と同様に一番多いのですが、続いては50代、そして30代、60代となっています。同じ疲労感を回復させる方法として、食品の摂取よりもさらに手軽な「着るだけ」という利便性に壮年層はより関心があるようです。

図:「リカバリーウェア」検索 性別・年代別
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

ここで「リカバリーウェア」の他に類似ワード検索している類似度ランキングを見てみます。まだ一般的とは言い切れない「リカバリーウェア」は他にはどのようなワードで検索されているでしょう。それらを見ることで、ユーザーのニーズや認識度、思惑などをさらに探ることができるのではないかと考えます。

こちらを見ると、やはり「パジャマ」として就寝時「寝るだけで効果を得たい」といった利用方法を考えていて、商品については気になるメーカーや商品があることがわかります。

図:「リカバリーウェア」類似ワード検索 
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

認知度の高い4ブランドの違い、関心を持っているユーザー像は?

先のランキングに上がっていた4ブランドの商品(BAKUNE・セリアント・VENEX・リライブシャツ)に関心のあるユーザー像を比較検証してみます。
リカバリーウェアの関心度をどのような商品が牽引していたのか、どんなユーザー層に響いているのかを探ります。

BAKUNE

TENTIAL

2018年創業。

スリープケア製品やフットケア製品を中心に、日常の健康課題を解決することを目的とした製品を取り扱う。

特殊機能繊維「SELFLAME(R)」による血行促進や疲労回復、筋肉のコリの軽減、快適な睡眠のサポートなど、さまざまな効果が期待されている。

シリーズやカラーバリエーションが豊富で、季節に合わせて選べるのも特徴。また、トップスやボトムスのみの購入も可能。リカバリーウェアだけでなく、寝具やサンダルなどの幅広いラインナップを用意。

セリアント

(イオン・TOPVALU

1994年に誕生したイオンのプライベートブランド。

セリアントについては、20193月より販売開始され、同年9月に一般医療機器として登録。

セリアントとアメリカのホロジェニックス社が開発したCELLIANT®は、身体から放出された熱を赤外線エネルギーに変換するミネラルを含んだ機能繊維。着用することで休養をサポートし、血行促進や疲労回復、筋肉の疲れの軽減などの効果が期待できる。耐久性が高く、洗濯で洗い流されることもない。

メンズ・レディースともに季節に合わせたインナーやパジャマを展開。

ネックウォーマーやアイマスクといったアクセサリーも販売されている。

VENEX

(株式会社ベネクス)

2005年創業。神奈川県を拠点とし、リカバリーウェアを開発。正式販売は20102月。

機能性の高さからスポーツ関係者にも認められ、トップアスリートの口コミが拡散。

DPV576PHT繊維内含有成分)を独自開発し、繊維製造からリカバリーウェアを製品化している。生地は伸縮性に富み、やわらかく締め付けの無い着心地で全身の血流を妨げず、筋肉の緊張をほぐし疲労回復を図るための安眠をサポートすると考えられている。

基本的には睡眠中の着用がおすすめ。移動時、運動後、リラクゼーションタイムなど、着て休める時はいつでも着用できる。

リライブシャツ

(株式会社りらいぶ)

2017年宮城県に創業。2019年より販売開始した第一号商品のリライブシャツは、延べ15万着が販売されるヒット商品に。

特殊鉱石を繊維に練り込むことで、身体の健康にさまざまな効果が期待できる。また、圧力をかけない間接テーピング技術を使用することで、鍼灸のように経絡を刺激して身体パフォーマンスを引き出し、肩こりや腰痛の改善、体幹強化、疲労回復、冷え性の改善、睡眠の質の向上などが期待できる。スポーツパフォーマンスの向上やダイエット効果にも期待できる。

メンズ・レディースともにインナーとしての商品ラインナップが充実。

出典:
https://tential.jp/ 
https://www.topvalu.net/celliant/ 
https://www.venex-j.co.jp/
https://relive-shirt.myshopify.com/

まずはそれぞれのユーザー数推移の比較です。

青線がBAKUNE、橙線がセリアント、緑線がVENEX、黄線がリライブシャツとなっています。
BAKUNEとリライブシャツには大きな動きが見られており、特に直近では、BAKUNEがユーザー数を伸ばしています。
それぞれの商品概要にも掲載しましたが、タレント起用のCM効果が少なくとも作用しているのではないかと考えられます。

図:4商品 検索ユーザー数推移比較 
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

続いて男女比を見てみます。
全体的には女性の方が多く、男性の割合が最も高いのはリライブシャツという結果になりました。

4つのリカバリーウェアの中でも、「睡眠改善」よりも「肩こり・腰痛改善」といった要素の強いリライブシャツ。日中のインナーに取り込んで、慢性的な痛みに対処したいといった要望がありそうです。

女性はセリアントが68.9%と一番高い結果に。セリアントはイオンリテールによるTOPVALUのラインで販売されています。高品質・お値打ち価格を謳うイオン製品は家事や家計に携わることの多い女性にとって身近であり、強い訴求力があるのかもしれません。

図:4商品 検索ユーザー性別比較 
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

最後に年代別の関心度を見てみましょう。
それぞれの商品で関心のある年代にばらつきが見られます。
まずBAKUNEに関しては50代が一番多く見られますが、その曲線はなだらかで、40代、30代にも人気があることがうかがえます。同じく50代に人気が高いのがセリアント。30代から60代まで満遍なく支持を得ているようですが、20代はあまり関心がない模様です。

続いて一番波形が大きくでたのはVENEXでした。40代から高い関心を得ているようです。VENEXは4ブランドの中では一番早くにリカバリーウェアを販売し始めたブランドです。介護用マットの開発や海外有名大学など、国内外19校と共同研究を行ったりと、比較的医療よりの製品といった印象が持てます。そういった専門性、もしくはパイオニア的なブランドの立ち位置が何らか起因しているのでしょうか。

そして、リライブシャツは60代の関心を掴んでいる様子です。これは前述した「肩こり・腰痛改善」という効果が、老化と共に現れる体の不調を改善させたいというニーズに叶う商品だということかもしれません。

いずれにせよ、4ブランドの商品共に40代、50代’、60代の関心度が高いことがわかりました。「疲労回復」「睡眠改善」を含め、「肩こり・腰痛改善」といった、壮年期以降に多い体の悩みを解決してくれる商品として、リカバリーウェアが注目されていることが垣間見えたと言えるでしょう。

図:4商品 年代別比較 
期間:2023年12月〜2024年11月
デバイス:PCおよびスマートフォン

まとめ

最近耳にするようになった「リカバリーウェア」。それは、普段の何気ない生活になんら問題のない人なら通り過ぎてしまうものかもしれません。しかし、生活習慣が乱れがちな今を生きる現代人のどの世代にもそれぞれの健康・身体の悩みがあり、その解決には過去にもさまざまな解決方法があったことかと思います。その解決法は手間のかかること、面倒なこと、難解なこともあったでしょう。

そのような過去を経て、今や「着るだけで健康や睡眠の悩みが改善できる」という医療の技術革新を衣類にまで取り込んだ「リカバリーウェア」が生まれ、浸透し始めています。

そして、冒頭でも参照したように、リカバリー市場の伸びしろはまだ大きくあり、新しいスタンダードが生まれる可能性も同じく大きいものです。
今後、どのような企業がこの市場へ参入し、どのような新しい機能を備えた製品が生まれるのかも注目です。

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https://manamina.valuesccg.com/articles/3792

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。
Dockpitでは毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、ご興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。

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