トヨタ・日産・ホンダ。自動車業界のトップ企業サイトに見る動向分析

トヨタ・日産・ホンダ。自動車業界のトップ企業サイトに見る動向分析

新型コロナウイルス感染症やウクライナ侵攻を端緒とした半導体不足で、苦戦を強いられる自動車業界。一方で、世界で加速するEVシフトが象徴するように、業界は今大きな転換期を迎えています。自動車生産大国・日本でも、自動車産業のデジタルマーケティングに変化の兆しが見えているかもしれません。今回は、自動車メーカー3社の企業サイトから、各社動向を探りました。


自動車メーカー3社で業界セッション数の3分の1を占める

2022年上半期の「車種別販売台数」トップ10は次の通りです。販売台数トップ10に名前を連ねるのはトヨタ自動車(以下トヨタ)・日産自動車(以下日産)・本田技研工業(以下ホンダ)の3社でした。

乗用車ブランド通称名別順位(2022年1月〜6月)
一般社団法人 日本自動車販売協会連合会のデータをもとに、ヴァリューズが作成。

上位3社の企業サイトの動向を、ヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて分析していきます。

直近1年間(2021年9月〜2022年8月)におけるセッション数ベースの業界シェアは、やはりトヨタ(12.6%)・日産(11.8%)・ホンダ(9.6%)がトップ3を占めています。3社をあわせると、業界合計セッション数の3分の1に達しました。

「車 企業」業界シェア(セッション数)
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン
※業界カテゴリはヴァリューズが独自に定義

なお業界シェアの経年変化を見てみると、2022年7〜8月に日産のシェア増加が見られたものの、主要プレイヤーの全体的な立ち位置に経年での大きな変化は見受けられませんでした。

業界シェア推移(セッション数)
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

ホンダの年齢構成は若干「若者寄り」

サイト接触者の属性に、各社で違いはあるのでしょうか。

まずは性別です。3社とも男女比率は「男性6〜7割」「女性3〜4割」の範囲に収まりました。自動車という商材柄からなのか、サイト接触者は「男性」のほうが多く、特にホンダは男性接触者の割合が7割を超えるなど、若干の男女差が生じています。

ユーザー属性・性別
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

年代の属性を見ると、トヨタ・日産は40〜60代、ホンダは30〜50代がボリュームゾーンでした。トヨタ・日産はほとんど同じ年齢構成を示しますが、ホンダは若干「若者寄り」と言えそうです。

ユーザー属性・年代
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

世帯年収では400万円未満がボリュームゾーンですが、自動車=高級商材であることもあってか「ネット利用者全体」の平均値よりも高所得者が接触しています。中でもトヨタとホンダは高収入の傾向が高く、年収構成がぴったりと重なっていました。このことから、ホンダユーザーは「高収入の若手ビジネスマン」が多めであると考えられそうです。

ユーザー属性・世帯年収
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

【トヨタ】検索とディスプレイ広告の「バランス型」、中古車が強み

サイト接触者の属性に顕著な違いは見られませんでしたが、2021年9月〜2022年8月期間中のサイト流入数(セッション数)推移を見ると、ホンダが「1年を通じて横ばい傾向」にあるのに対し、トヨタ・日産は1年間のなかで激しい上下変化を示しました。

セッション数推移
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

この上下運動の起因は「ディスプレイ広告」出稿と考えられます。

集客構造を3社で比較してみると、3社共通して「自然検索」からのサイト流入が高く出ていますが、トヨタ・日産は「ディスプレイ広告」経由の流入も多く見られました。

集客構造(セッション数ベース)
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

ではここからは3社のサイト別に、集客構造の時系列変化を見てみましょう。

まず、トヨタの企業サイトは年間を通じて「自然検索」と「ディスプレイ広告」両方からバランスよく流入しています。全体傾向としては若干自然検索の比率のほうが高いですが、2022年2月をはじめとして、ディスプレイ広告の比率が飛躍的に跳ね上がる月もありました。

トヨタ(toyota.jp) 集客構造推移
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

では、これらディスプレイ広告に当たるユーザーは、どのページに流入していることが多いのでしょうか。検証のため、流入の多かったランディングページ(以下LP)のランキングを見てみました。

トヨタ(toyota.jp) LP・ディスプレイ広告からの流入
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

ディスプレイ広告経由で最も流入が多かったLPは「トヨタ認定中古車」の中古車検索サイトで、流入数が増加してきていることも伺えます。同社は「頭金0円・ボーナス払い0円の月々定額」などを謳い文句にトヨタ中古車を購入できることを訴求したLPを複数展開しており、新車販売で業界トップの地位を確立しながらも、中古車市場にも注力していることがわかりました。

【日産】ディスプレイ広告からの流入に注力、EVが強み

日産の企業サイトも年間を通じて「自然検索」「ディスプレイ広告」からの流入割合が高い傾向がありますが、トヨタに比べると自然検索の割合が少ないです。2022年は特に「7月・8月」にディスプレイ広告からの流入比率が飛躍的に伸びており、セッション数推移とも一致しています。

日産(www.nissan.co.jp) 集客構造推移
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

では日産のディスプレイ広告に当たるユーザーは、どのページに流入していることが多いのでしょうか。トヨタ自動車と同様に、ディスプレイ広告で流入の多かったLPのランキングを見ていきましょう。

日産(www.nissan.co.jp) LP・ディスプレイ広告からの流入
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

日産のLPで上位に入ったのは人気電気自動車(EV)の特設サイトでした。特にテレビCMでも知られる人気車種「リーフ」「サクラ」のLPでPVが上昇。特にリーフは2022年夏に一部仕様向上した車種が発売されており、そのことも影響していそうです。いずれにせよ「EVの先駆者」と言われる日産ならではの特徴といえるでしょう。

【ホンダ】安定した集客施策、バイクが強み

ホンダの企業サイトでは年間を通じて大きな変化が見られず、集客構造が安定しています。トヨタ・日産と比較しても、1年を通して「自然検索」が50%前後と高割合を占めているのが特徴で、ディスプレイ広告からの流入は極めて少ないことがわかります。

ホンダ(www.honda.co.jp) 集客構造推移
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

では、自然検索からの流入を強みとするホンダでは検索後、実際にどのページに流入していることが多いのでしょうか。期間中に自然検索からの流入が多かったLPのランキングを見ていきましょう。

ホンダ(www.honda.co.jp) LP・自然検索からの流入
集計期間:2021年9月〜2022年8月
デバイス:パソコン・スマートフォン

自然検索流入のLPでは、カーラインアップや人気車種のほか、バイク関連のページが上位にランキングされました。自動車のみならず、オートバイ・バイクの市場でも高いシェアを獲得する同社ならでは、の結果と言えます。

まとめ

2021年9月〜2022年8月におけるセッション数ベースの業界シェアは、トヨタ・日産・ホンダが上位3社で業界全体セッション数の3分の1を占めていました。

また3社サイト流入者を分析すると「男女比は6〜7:3~4ほど」「30〜60代がボリュームゾーン」「ネット利用者全体の平均値よりも高所得者が接触している」ことなどがわかりました。

サイトの集客構造は3社とも「自然検索」「ディスプレイ広告」からの流入が比較的多くを占めますが、3社比較では「トヨタ=自然検索・ディスプレイ広告をバランスよく配分」「日産=自然検索よりもディスプレイ広告からの流入に注力」「ホンダ=年間を通じて変化なく自然検索が大半」といった特徴が見てとれました。さらに、トヨタは中古車、日産はEV、ホンダはオートバイ・バイクといった具合に、各社商材の強みを活かした集客構造も見て取れました。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

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