【解説者紹介】
短尺機能だけでない!進むSNS間の機能差別化の薄まり
岩間:2023年2月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、各SNS間における機能差別化がより薄まりつつあることを取り挙げていますね。以前も同様の内容を発信していたと思うのですが、どうして今回改めて紹介したのですか。
蒋:おっしゃる通り、2022年11月 コンテンツマーケティング最新動向レポートでも、同様のことをお伝えしました。これまでは特に短尺機能の領域でそのような傾向が見られていましたが、最近では他の領域にも広がっているようなのです。
今回は、最新動向として、2022年12月から2023年2月までに各SNSからリリースされる新機能について紹介していきたいと思います!
「2022年11月 コンテンツマーケティング最新動向」レポートより
どうしたら利用者の可処分時間を奪えるか?
岩間:そもそもどうして各SNS間における機能差別化が薄まりつつあるのでしょう。機能を改善しようとする際は、既存と似たものをつくることと、独自のものをつくることという2つの方向性があると思います。機能差別化が薄まっているということは、各SNSは前者の方向性に動いているのですよね。
蒋:まず押さえておきたいことは、各SNSは、ユーザーの時間をさらに奪うことを目指しているということです。ユーザーに受け入れられるかわからない新機能よりも、既に受け入れられている機能を追加したほうが、開発コストもリスクも抑えられるといった面があるのではないでしょうか。例えば、短尺機能はTikTokがすでに結果を出していますね。そのため、各SNSがこぞって同機能を追加したのだと思います。
岩間:確かに、他ですでにうまくいっている機能を導入するほうがいいという考え方はありそうですね。ちょっとした機能改善だったとしても、それがネガティブなものと捉えられた場合、ユーザーの反応はすぐに広まると感じます。以前、Twitterの「ふぁぼ」ボタンが黄色の星マークからピンク色のハートに置き換わったときもそうでした。
あとは、今の「シェアをする」というSNSの概念では、新しいことを発見する余力というか、拡大余地があまりないこともあるかもしれません。今後はメタバースなどに新しい価値を求める動きも出てくる可能性もありますね。
Facebookユーザーが流入する?Twitterの文字数制限拡大
蒋:では、一つひとつのリリースを見ながら、いかに各SNS間の機能差別化が薄まりつつあるかを見ていきましょう。
まずTwitterについて紹介します。イーロン・マスク氏の投稿によって、2023年2月以降に文字数制限が現在の280文字から4000文字まで拡大することが明らかになりました。日本語の場合だと140文字から2000文字までですね。
蒋:今までは、短い文章でニュース性を伝えることがTwitterのメインの目的となっていましたが、これからは長文を一括投稿できるようになります。
背景としては、UXの改善が挙げられます。これまでの文字数制限では、長文で自分の意見を伝えたいときにスクリーンショットで投稿するユーザーが多く見られました。これは悪いUXだとイーロン・マスク氏は考えているようです。また、スクリーンショットを投稿する以外に、外部サイトにリンク遷移させる投稿もありました。これではユーザーがTwitterというプラットフォームから流出することにつながるため、望ましくない状態だと言えるでしょう。
そのほかにも、今後文字数制限の拡大をすることで、Twitter内でワンストップで短い文章から長文まですべての情報を収集できるようにしたいのではないかと思います。そうすることで、より多くのユーザーの時間を奪えると考えているのではないでしょうか。
岩間:今回のトピックである、他のSNSとの機能差別化の縮小という観点だと、今回のTwitterのケースは、どのSNSと似てきているイメージでしょう。Facebookなどでしょうか。
蒋:そうですね。Facebookやブログの機能に近づいていると考えられます。特にFacebookユーザーは、ビジネスパーソンや情報収集を目的とする人が多いと思うので、そのような人たちがTwitterにどんどん流入する可能性があるでしょう。
InstagramがDM機能を強化。“映えない”写真シェアアプリ「BeReal」の影響も
蒋:続いてInstagramについて紹介します。Instagramは今年、新機能が複数リリースされる予定です。そのなかから、今回は2つをピックアップしてみました。
1つ目は「Notes」。「Notes」は簡単に言うとストーリーズ版のDM機能で、Instagramのユーザーが、相互フォローしている相手や「親しい友達リスト」に含まれるユーザーに、自分の考えを共有するツールです。受信箱のトップにアクセスし、テキストや絵文字で60字以内の短いメッセージを入力すると、フォロワーの受信箱に24時間表示されるようになります。
「Notes」を使うと、正式に送るにはハードルが高いアイディアや感想、感情などを気軽に投稿できるようになるでしょう。チャットツール領域、日本でいえばLINEのような領域を狙っているのではないでしょうか。
岩間:なるほど。確かに「Notes」はLINEの立ち位置を狙っていそうですね。でも、LINEの機能を模倣するというより、新しい機能を出しているという印象です。
蒋:そうですね。最近の日本の若者の動向を見ると、10代や20代で、普段LINEではなくInstagram上のDM機能を利用して、友達とコミュニケーションをとっている人がどんどん増えているんです。これに合わせて、Instagramは「Notes」のようなDM機能を積極的にリリースしていくかもしれません。
今後新しいコミュニケーションの仕方が生まれる可能性があるのではないかと、非常に期待しています。
もうひとつのInstagramの新機能は「Candid Stories」というもので、まだテスト中の機能です。実際どうやって使うかといったイメージは、まだ公式に発表されていません。
蒋:「Candid Stories」がリリースされた背景としては、アメリカで人気の”映えない”写真シェアアプリBeRealの影響があるとされています。BeRealは、1日1回ランダムに通知されるお題にしたがって、制限時間内に撮った写真を自分のストーリーにシェアするアプリです。「Candid Stories」も通知が送られてきたら、制限時間内にお題に沿った写真を撮って自分のストーリーズにシェアすることが必要な機能となっています。
ただ、機能が似ているといっても、BeRealが映えなさを特徴としているのに対し、Instagramは映えるSNSの代表です。Instagramの特徴を守るため、装置フィルタ機能やスタンプ機能なども一緒につくのではないかと個人的に推測しています。
岩間:BeRealはインストール数がかなり増えてきていますよね。「お題に沿ってみんなで投稿する」という面に、Instagramは価値があると思ったのかもしれませんね。Instagramだとカッコいい景色を撮ろうなど、映えるお題が送られてきそうです。
蒋:ユーザー同士の繋がりをもっと強くしていきたいというのが、Instagramの狙いだと考えています。
TikTokがYouTubeに対抗?横長動画をテスト中
蒋:最後に紹介するのは、TikTokが横長動画のテストを開始したことです。
TikTokといえば、これまで短尺動画機能を他のSNSから模倣された側でしたが、今回はTikTokがYouTubeに対抗するため、横長動画をテストしています。
普通のYouTube長尺動画と違う点は、TikTokの横型動画はスワイプしながら見られること。YouTubeのように1つの動画を見終わったら閉じて新しい動画を探す手間がないため、より多くユーザーの時間を奪っていくだろうとされています。
ちなみに中国版TikTok「抖音(Douyin) 」では、4、5年前から長尺動画の機能がリリースされているのですが、動画を見るときは「どこまで見たい」「速く見たい」など、タイムラインで自由に調整できるようになっています。
マーケター向けの対策:機能軸ではなく、ユーザー軸の特徴を見る
岩間:これまで以上に、各SNS間で機能の差別化が薄まっていることがよくわかりました。これらの動きを受け、マーケターが今後とるべき対策はありますか。
蒋:各媒体の機能ではなく、媒体の特徴を見て、自社の商材に一番ふさわしい媒体を選ぶことです。
これまでは、動画ならYouTubeやTikTok、文字でプロモーションするならTwitterというように、機能でどのSNSを活用するかを選んでいた企業も多いのではないでしょうか。しかし、今回お伝えしたように、機能の差別化が薄まっている状況では、媒体利用者の特徴、その媒体にどのようなインフルエンサーやクリエイターがいるかなどを見て選ぶことをおすすめします。
どんなユーザーがどのSNSを選び、どのような購買活動をしているのか、具体的に知りたい方は、ぜひ以下の記事をチェックしてみてくださいね。
4大SNSのヘビーユーザーをデータから徹底比較!~ Facebook, Instagram, LINE, Twitterのユーザー特徴を調査
https://manamina.valuesccg.com/articles/1118スマートフォンの普及によって、情報収集源としての役割をますます拡大しているSNS。アプローチしたいセグメントに到達するためには、適切なSNSを広告媒体として活用することが重要です。様々に選択肢がある中で、どんなユーザーがどのSNSを選び、どのような購買活動をしているのか。今回は4大SNSとも言える、Facebook、Instagram、LINE、Twitterそれぞれのヘビーユーザーの属性、購買動機や興味関心などのサイコグラフィック、メディアの利用状況や消費行動などを調査し、ユーザープロファイルを作成しました。(ページ数 | 26)
蒋:以上、2月のコンテンツマーケティング動向「SNS編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。