店舗DXにWeb行動ログを生かす!中古時計の買取事業を立ち上げたキタムラのデータ戦略

店舗DXにWeb行動ログを生かす!中古時計の買取事業を立ち上げたキタムラのデータ戦略

店舗DXをリアル店舗だけで進めるには限界がある。「カメラのキタムラ」や「スタジオマリオ」を全国展開している株式会社キタムラは、新規事業においてWeb行動ログを活用し、事業運営につなげています。どうDXを進めているのか、同社の上田氏と、データ分析パートナーである株式会社ヴァリューズの和田が対談しました。


【話者紹介】

株式会社キタムラ 上田 寛人

株式会社キタムラ
デジタル推進部 部長
上田 寛人


一橋大学法科大学院を卒業後、制作会社を経て、リクルートマーケティングパートナーズで、カーセンサーの集客を担当。在籍中、UXENT株式会社を共同創業し、CMOを担当。2017年にCCCグループに入り、2018年12月よりキタムラのデジタル推進室にCRM責任者として出向。2021年4月よりデジタル推進部部長。

株式会社ヴァリューズ 和田 尚樹

株式会社ヴァリューズ
ソリューション局 DX推進支援グループ
シニアマネージャー
和田 尚樹


2009年京都大学情報学研究科修士課程早期修了。2013年京都大学情報学研究科博士後期課程単位認定退学。2013年株式会社ヴァリューズに新卒1期生として入社し3年間新規営業を経験したのち、現在はデータ分析組織のマネジャーを務める。

新規事業立ち上げにWeb行動ログを活用

株式会社ヴァリューズ 和田 尚樹(以下、和田):キタムラ様は、ヴァリューズとともに、Web行動ログを活用した市場分析・戦略策定を進められています。本日は改めてお取り組みの一つについて詳細をお伺いできればと考えていますが、まずは上田さんが担当されている業務について、お聞かせいただけますでしょうか。

株式会社キタムラ 上田 寛人(以下、上田):株式会社キタムラのデジタル推進部で、DX全般に関わる企画の責任者を務めています。

ミッションとしては、こども写真館「スタジオマリオ」や買取事業、イメージングと言われる画像・動画を扱う商品のデジタルマーケティングの企画・実行支援のほか、プロダクトデザインに携わることもあります。

和田:ありがとうございます。キタムラ様とは長くご一緒させていただいていますが、今回はキタムラ様の新規事業である中古時計の買取事業について、お話できればと思います。

カメラのキタムラ ネットショップ「中古時計販売」
出典:https://shop.kitamura.jp/ec/special/reuse/watch

上田:当社では、これまでカメラで培ってきた中古買取の知見と独自の仕組みで、時計買取を行っています。高級ブランド時計を全国の店舗で買い取るほか、出張査定や電話査定、LINE買取など、お客様のニーズにあわせた買取・査定に対応しています。

本事業を立ち上げる際に、ヴァリューズのWeb行動ログを活用して分析を行いました。

和田:最初は、どの商品を取り扱うかから決めましたね。

上田:リユースというのは、時計やブランドバック、着物など、商品カテゴリによって強い企業が違うものです。和田さんとWeb行動ログを使って「どの会社の」「どのサイトの」「どの商品カテゴリ」が、販売・買取それぞれで、どれほど強いのかといったことを細かく見ていきました

強さを判断する際は、「サイト内のブランド名検索」「CV数」「CVしているユーザーの属性」などを各サイトで比較。当社が買取事業をするべきなのはどの商品カテゴリか、そしてどの競合をベンチマークすべきかを分析しました。

このような綿密な分析の結果、始めたのが中古時計の買取事業です。競合と戦いやすく、当社のお客様とも相性が良いことのほか、買取方法も店頭とネットを組み合わせやすいことがデータから読み取ることができました。

なかなか入手できない、商品カテゴリ別の詳細データを取得

上田:今回、特に有効だと感じたのは、商品カテゴリ軸で分析ができたことです。

事業戦略に使えるような、商品カテゴリ軸でのCV数やCVR、ユーザー属性まで見られるデータは他では見たことがありません。このようなデータはIRにも出ていないので、非常に有効だと思います

また、お客様が商品の購入を検討する際、ネットと比較して、店舗はそこまで価格が重視されないといわれています。だからこそ、シンプルに商品カテゴリごとの傾向を見ながら検討できたことは、かなり大きかったですね。

これまではファネルで見ていたのですが、モールのようなサイトでは「どの商品が強いのか」が大事なので、そこが可視化できたのは非常に意味のあることでした。商品カテゴリ軸で見られるようになったことで、リード獲得商品と利益を生み出す商品の構造などもわかるようになり、商品戦略につながっていると思います。

Web行動ログをリアル店舗、事業運営に生かす

和田:ここまでのお話から、店舗を使った事業であっても、Webのデータが有効だということがわかります。

上田:そうですね。店舗DXをリアル店舗だけで進めるには限界があると考えます。Webのデータからは「あの競合は店舗は強いけれど、ネット戦略が弱い」といったこともわかるので、「それなら当社はその部分を攻めよう」というように事業戦略に使いました。

また、活用したのが、行動ログであることも外せないポイントでしょう。店頭で行うアンケートなども有効な調査手法ではありますが、聞く人や聞き方などに大きな影響を受けることがあるため、定量調査として見るには難しい面があると思います。

店舗での展開はネットと比べてコストがかかるからこそ、失敗はできません。事業戦略策定などにつなげるのであれば、やはり行動ログのほうが勝っていると改めて思いました。

データ解釈のプロという心強い存在

和田:今回の事例を含め、データを見るときに、難しいと感じられる点はありますか。

上田:自分たちが思っていたようなデータが一発で出てきたら問題ないのですが、こちらの肌感とは違うような信じられないデータが出てきたときは、ディスカッションをしないと難しいと思います。そうしなければ、事業戦略のデータとしては使えないでしょう。

和田:確かに数字として見えているものだけでなく、そこから読み解いていかないとわからないものがありますね。今回も上田さんと一緒にデータを見てディスカッションしながら、裏側にあるものを読み解いていきました。

上田:そうですね。解釈力が必要だと感じています。社内にいるデータを分析する人と受け取る人、その両方に解釈力がいると思いますが、社内だけで育てるのは難しいのが現状です。だからこそ、和田さんのようなデータ解釈のプロがサポートしてくれるのは助かります。

和田:ありがとうございます。私たちは、クライアント様に主体となってマーケティング・データ活用を進めていただくことを大切にしており、システム面はもちろん、組織・意識面での改革も一緒に行う伴走支援を行っています。これからもぜひ、様々なデータの読み解きをご一緒させてください。

取材協力:株式会社キタムラ

関連記事

チェーンストア・多店舗ビジネスのDX事例を解説!小売業界のマーケティング課題に迫る

https://manamina.valuesccg.com/articles/2188

コロナ禍で消費者のライフスタイルや価値観が大きく変化し、また昨今の値上げトレンドの中、チェーンストアのデジタルマーケティングでは何を行っていくべきなのでしょうか?本稿では、チェーンストアのDX・デジタルマーケティングについて、企業の分析事例や最新の消費者トレンドを取り上げ、今後のポイントを解説します。(ページ数|55ページ)

これから始める「デジタルマーケティング」「DX」〜戦略設計とWeb行動ログを活用した市場把握とは?

https://manamina.valuesccg.com/articles/1161

本講演では、「カメラのキタムラ」や「スタジオマリオ」を全国展開し自社ECサイトでもカメラ機器販売や関連サービスを提供する株式会社キタムラが、データ分析パートナーである株式会社ヴァリューズとどのようにデータ分析を進めたのかを解説。地に足のついた一歩を踏み出すための、Web行動ログを活用した市場分析・戦略策定の方法を、実際の事例を交えながら紹介しました。

▼株式会社ヴァリューズでは、企業様ごとの状況や課題に応じた完全オーダーメイドのコンサルティング、 データ活⽤において広く共通する課題を解決する⾃社開発プロダクトと他社ツールの提供の組み合わせで、最適な内容をご提案しています。自社のDX推進に課題感をお持ちの方は、ぜひ下記よりご相談ください。
資料請求はこちら

この記事のライター

IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。

関連する投稿


tripla、宿泊施設の宿泊客滞在中業務を一元化するWEBサービスの提供を開始

tripla、宿泊施設の宿泊客滞在中業務を一元化するWEBサービスの提供を開始

tripla株式会社は、宿泊中の必要情報を集約した旅ナカ専用のWEBサービス「tripla Guide」の提供を開始したことを発表しました。


リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

コロナ禍を経て活況が戻った観光業において、データドリブンの施策を展開する広島県観光連盟(HIT)。本稿では「圧倒的な顧客志向」を掲げるHITでの、VALUESのデータ分析伴走支援サービスを通じたチャレンジに迫ります。


データ活用の内製化、約6割の企業で進むも人材育成・採用・人員確保が課題に【メンバーズ調査】

データ活用の内製化、約6割の企業で進むも人材育成・採用・人員確保が課題に【メンバーズ調査】

株式会社メンバーズの社内カンパニー、メンバーズデータアドベンチャーカンパニーは、DX・データ分析業務に携わる就業者に対して、データ活用に関する調査を行い、結果を公開しました。


DAC、マーケティングDX領域の新しい仕組み作りを支援するコンサルティングサービスを提供開始

DAC、マーケティングDX領域の新しい仕組み作りを支援するコンサルティングサービスを提供開始

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)は、広告会社やメディア企業、さらに事業会社のマーケティング部門に対し、オリジナルのDX診断やAI活用により、各社のマーケティング機能を最大化するための仕組み作りを支援するコンサルティングサービス「プロセスイノベーションスタジオ」を提供開始することを発表しました。


サイボウズ、国内企業におけるDX推進の現状と浸透・定着に向けた提言をまとめたホワイトペーパーを公開

サイボウズ、国内企業におけるDX推進の現状と浸透・定着に向けた提言をまとめたホワイトペーパーを公開

サイボウズ株式会社は、国内企業におけるDX推進の現状と、DXの浸透・定着に向けた提言をまとめた「日本企業のDX:これからの5年に向けた提言」を公開しました。


最新の投稿


Z世代はYouTube、TikTokなど動画主体のSNSの利用時間が長くなる傾向【CCCMKホールディングス調査】

Z世代はYouTube、TikTokなど動画主体のSNSの利用時間が長くなる傾向【CCCMKホールディングス調査】

CCCMKホールディングス株式会社は、全国16~24歳の男女を対象に『Z世代のSNS利用実態や生活満足度との関係性』について調査を実施し、結果を公開しました。


Z世代にとってSNSは承認欲求を満たす場ではない?身近な人とのコミュニケーション手段としての利用が多数【SHIBUYA109 lab.調査】

Z世代にとってSNSは承認欲求を満たす場ではない?身近な人とのコミュニケーション手段としての利用が多数【SHIBUYA109 lab.調査】

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、同社が運営する若者マーケティング機関『SHIBUYA109 lab.(読み:シブヤイチマルキュウラボ)』にて、Z世代を対象に「Z世代の承認欲求に関する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

フリマ市場を比較調査。メルカリとYahoo!系サービス、それぞれの特徴や集客の強みとは?

節約やお小遣い稼ぎの手段としても注目が高まるフリマ市場。「メルカリ」「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」を対象に、フリマ市場の最新動向について調査しました。各サービスのサイト・アプリについて、利用者数やユーザーの人となりに加えて、サイト集客構造の違いについても深掘りし、それぞれの特徴について明らかにしていきます。


約6割の企業が法人向けデジタルギフト利用経験あり 利用シーンは「アンケート収集施策」が最多【DIGITALIO調査】

約6割の企業が法人向けデジタルギフト利用経験あり 利用シーンは「アンケート収集施策」が最多【DIGITALIO調査】

株式会株式会社DIGITALIOが運営するデジタルギフト「デジコ」は、勤務先の業務で福利厚生やプレゼントキャンペーンなどの販促を実施する際にデジタルギフトを購入したことのある方を対象に「法人向けデジタルギフトに関する調査」を実施し、結果を公開しました。


KDDIとAIQ、バーチャル空間上でデジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始

KDDIとAIQ、バーチャル空間上でデジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始

KDDI株式会社とAIQ(アイキュー)株式会社は、KDDI株式会社が提供するαU place(アルファユープレイス)において、デジタルスタッフを活用したAI接客の実証実験を開始することを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ