「人的資本」への注目が高まるHR業界。HR関連ツール5サイトの集客状況を調査してみた

「人的資本」への注目が高まるHR業界。HR関連ツール5サイトの集客状況を調査してみた

HR業界では、HR Tech(HRテック)による組織改善や人事・組織マネジメントが進んでいます。HRツールの開発には多くの企業が参入していることから、集客には適切な施策の選定や活用が欠かせません。今回は、HR関連ツール5サイトの集客状況を調査しました。


近年、「人的資本」がホットワードになっています。「人的資本」とは、従業員の知識やスキルなどの能力を資本としてとらえる考え方を意味しています。それをふまえて、人的資本経営とは「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義されています(※)。
※人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

以下の図は、キーワード「人的資本」と「人的資本経営」のセッション数の推移です。変動はあるものの、とくにキーワード「人的資本経営」は右肩あがりであることがわかります。2022年9月に「人的資本」のセッション数が突出しているのは、内閣官房から「『人的資本可視化指針』(案)に対するパブリックコメントの結果の公示及び同指針の策定について」が公表されたからだと推測できます。それに関連して、2023年1月には金融庁から「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」が公表されました。これにより、有価証券報告書における人的資本の情報開示が義務づけられるようになりました。この報道発表によりセッション数が増加した可能性があるといえます。

図:「人的資本」検索数推移

図:「人的資本」検索数推移
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

制度改正が行われたことからも、HR業界では「人的資本」にますます注目が集まると予想されます。そこで今回は、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、HR関連ツール5サイトの集客状況を調査・分析しました。

HR関連ツール開発には多くの企業が参入

今回取り上げたのは、以下の5サイトです。

・カオナビ
・HRMOS(ハーモス)
・SmartHR(スマートHR)
・HRBrain(HRブレイン)
・MOTIVATION CLOUD(モチベーションクラウド)

それぞれのツールは以下、カオナビが公開しているマップのように、各カテゴリに分類されます。HR Techのツール開発には、5サイト以外にも、すでに多くの企業が参入していることがわかります。

図:HRTechカテゴリ別マップ

HR Techとは、最先端のデジタル技術とHR分野を融合させた新しい人事・組織マネジメントサービスのことです。HR Techの発展により、HR分野での情報管理の一元化や効率化が実現しました。蓄積されたあらゆるデータの分析ができると、さまざまなシミュレーションが可能になります。データに基づく最適な人材の提案や離職率の改善にも活用できます。人的資本への注目が集まる今、HR Techのツール開発には多くの企業が関心を寄せています。

組織改善への注目が高まる?

5サイトのなかでは、ユーザー数のトップはカオナビです。SmartHR、HRBrain、MOTIVATION CLOUDの3サイトは新規ユーザー率が高いのが特徴です。とくにMOTIVATION CLOUDは新規ユーザー率が9割を超えており、データ分析による組織改善への注目度が高まっていることがうかがえます。COVID-19の流行により、多くの人が仕事や働き方を見直すことになりました。人だけでなく、企業としても組織のあり方を見直すきっかけとなり、組織改善への注目が高まったのかもしれません。

図:基本指標

図:基本指標
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

HRMOSは2023年2月に新機能をリリース

ユーザー数の推移を見てみると、HRMOSが2023年2月に突出しています。これは、HRMOSの新機能のリリースが影響していると考えられます。HRMOSは勤怠管理システムを展開していますが、2023年中に新機能を段階的にリリースする予定です。拠点を選択して打刻できる機能や月60時間超の時間外労働時間の集計機能などが追加されます。法改正が進んでいることもあり、今後も制度に合わせた機能追加が行われるでしょう。

図:ユーザー数推移

図:ユーザー数推移
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

HRMOSは新機能のリリース時期に、ディスプレイ広告からの集客が増えています。このことから広告を上手に活用し、集客につなげていると推測できます。

図:ディスプレイ広告

図:ディスプレイ広告
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

集客構造は各サイトで戦略がわかれる

集客構造を見てみましょう。並べてみると、各サイトの戦略に差が出る結果になりました。

図:集客構造

図:集客構造
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

自然検索はカオナビが強い

自然検索に強いのは、カオナビです。流入キーワードの上位にランクインしているのは、「KPI」「PDCA」「社会保険」などの一般ワードです。このことから、カオナビはSEOに注力していると推測できます。たとえば、KPIを例にあげます。KPI(Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標のことで、目標達成に向けた業績の定量的な指標です。人材管理におけるKPIの具体例には、採用人数や研修実施数、配属に関する従業員の満足度などがあげられます。これらKPIの管理の負担軽減に向けた手段のひとつとして、カオナビの活用を提案しています。

図:「カオナビ」流入キーワード

図:「カオナビ」流入キーワード
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

HRBrainは流入キーワードに特徴あり

HRBrainは自然検索に力を入れていますが、流入キーワードに特徴があります。「MECE」「マルチタスク」「持株会」など、一見するとHR業界と関連づけるのが難しい一般ワードが上位にランクインしています。これは、HRBrainがHR大学と呼ばれるメディアを運営しているからだと考えられます。自社メディアを活用すれば、HR業界に直接的には関連づかない一般ワードでも、集客につなげられるでしょう。

図:「HRBrain」流入キーワード

図:「HRBrain」流入キーワード
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

図:HR大学トップページ

リスティングに力を入れているのはSmartHR

SmartHRは、労務管理クラウドにおいて5年連続シェアNo1の実績があり、認知度も高いと予想されます。そのため、確度の高いユーザーにアプローチしやすいリスティングに力を入れて、確実な集客とさらなるシェア拡大に向けて取り組んでいると考えられます。2022年11月に突出しているのは、従業員サーベイ分析機能のリニューアルによる影響でしょう。

図:リスティング

図:リスティング
期間:2022年6月~2023年5月
分析ツール:Dockpit
デバイス:PC、スマートフォン

まとめ

HR関連ツール5サイトの集客状況を調査しました。

直近1年のセッション数を見ると、組織改善を目的としたツールであるMOTIVATION CLOUDの新規ユーザー率が高いことがわかりました。それだけ組織改善に注目が高まっていると考えられます。法改正にともなう利便性の向上としてツールの新機能をリリースしたHRMOSは、広告を上手に活用しながら集客をしていました。カオナビはSEOに強く、SmartHRはリスティングに注力しています。HRBrainは自社メディアを活用して、集客につなげているといえるでしょう。

HR Techのツール開発には、すでに多くの企業が参入していることから、今回調査した5サイト以外にも注目されるツールが出てくると考えられます。集客には、状況に応じた適切な媒体の活用が求められます。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

Webライター。転職、キャリア、美容、不動産、金融ジャンルの記事を執筆中。新卒からシステムエンジニアとして働いていました。ライティングにおいては、わかりやすい文章を書くことはもちろん、どこかくすっと笑えるような、読み手が温かい気持ちになれる記事を書くことを心がけています。

関連するキーワード


「人材」市場調査 Dockpit

関連する投稿


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


【調査リリース】2024年夏の旅行トレンド全国調査~海外旅行は早めの予約が人気、20代女性の旅行意欲の高まりが目立つ

【調査リリース】2024年夏の旅行トレンド全国調査~海外旅行は早めの予約が人気、20代女性の旅行意欲の高まりが目立つ

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)は、国内の20歳以上の男女45,818人を対象に、今夏の旅行予定に関する消費者アンケート調査を実施しました。またヴァリューズが保有する約250万人の独自消費者パネルを活用したインターネット行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用して、消費者の観光ニーズを分析しました。


レトロブームで再燃? コンデジやチェキ、写ルンですの消費者ニーズをデータで深掘り

レトロブームで再燃? コンデジやチェキ、写ルンですの消費者ニーズをデータで深掘り

「コンデジ」「チェキ」「写ルンです」。この言葉を聞いて懐かしいと思う大人は多いかもしれません。スマートフォンの普及によって、カメラを買う機会は減少傾向にありました。しかしながら、最近はZ世代の間で「レトロ」が注目を集め始め、コンデジブームがやってきました。データ分析を通してそれぞれのカメラの関心層を分析します!


人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のポジション分析 | コロナ初期からの変化は?【2024年最新版】

人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のポジション分析 | コロナ初期からの変化は?【2024年最新版】

ここ数年で需要が高まったデリバリーアプリ。コロナ禍に利用し始めた人も多いのではないでしょうか。デリバリーサービスが注目され始めて数年が経った今、需要はどう変化したのか、また各社アプリを今利用しているのはどのような人たちなのか、人気デリバリーアプリの「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」を比較しながら分析します。


平成女児に人気再燃のセーラームーンとプリキュアはなぜ数十年にわたり愛される? ファン層の特徴から分析!

平成女児に人気再燃のセーラームーンとプリキュアはなぜ数十年にわたり愛される? ファン層の特徴から分析!

30周年を迎えた「美少女戦士セーラームーン」と20周年を迎えた「プリキュア」。この2つの作品名を聞いたことがない方はいないでしょう。セーラームーンは特に女性人気が高く、プリキュアは男女どちらからも愛されているようです。本記事では、この2つの作品のファンについてより深く分析します。また、ファンの特徴から作品が愛される理由を考察します。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ