「就活」の検索を時系列で分析してみた。既卒、CAB、キミスカって?

「就活」の検索を時系列で分析してみた。既卒、CAB、キミスカって?

大学生や大学院生、専門学生などの多くが経験する「就活」。彼らは就活を進めるなかで、どんな情報収集しているのか、どんな悩みを抱いているのでしょうか。今回は、120日分の「就活」検索者の検索行動データを分析し、就活生の動きや悩みを明らかにしていきます。


就活は約3、4か月で一区切り?

多くの人が経験する「就活」。みなさんは就活に際してどのようなことを検索していたでしょうか。最近では就活の早期化が進み、大学3年生からインターンや選考を受ける人が増えています。

今回は、就活生の検索行動を分析し、最近の就活の特徴や新たなキーワードを見ていきます。なお分析には、Web行動データとアンケートデータを用いたペルソナ分析やクラスタ分析で、誰でも簡単に顧客理解ができる、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用います。

以下の図は、「就活」を検索した人の前後60日間の検索行動を表しています。左から右へと時間の経過が示されており、上から下へと特徴値※の大きさが示されています。

※特徴値:抽出条件に当てはまるユーザーの中でよく検索されており、かつ一般ユーザー全体ではあまり検索されていないキーワードが高くなるような指標。

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(前後60日間)

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(前後60日間)
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「インターン」「業界研究」が検索されてから「内定者」が検索されるまで、90~120日です。個人差はありますが、情報収集を持ち始めてから就活が一段落するまで、約3、4か月ほどだと考えられます。

この記事では、この図を以下の3つの期間に分けて、「就活」検索者の検索行動を見ていきます。

①就活前:「就活」を検索する60日前~1日前まで
②就活前期:「就活」を検索した0日目〜23日目
③就活後期:「就活」の検索から24日後(「最終面接」というキーワードが登場した日数)以降

①就活前:「就活」検索の60日前~1日前まで

まずは、就活生が就活を始める前の検索行動を見ていきましょう。以下の図は、先ほどの図の60日前〜1日前の部分にフォーカスしたものです。

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(60日前〜1日前程度)

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(60日前〜1日前程度)
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「就活」検索より30日以上前の段階でも「インターンシップ(インターン)」「業界研究」「キャリアセンター」など、就活に関連するキーワードが検索されています。「シラバス」「レポート」「授業」など、大学生や大学院生に親しみ深いキーワードも散見されます。

「業界研究」や「インターン(インターンシップ)」について検索するところから就活関連情報を収集し始め、徐々に「自己分析」を進め、そして「エントリーシート」や「適性検査」などの選考対策についても検索するようになっていく、という就活への流れが見て取れます

「就活」検索の数日前には、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」や「履歴書」など、選考への応募をうかがわせるキーワードも検索されています。

また、「落ちた」「きつい」というキーワードも検索されており、就活の情報収集や選考対策の中で就活に対してややネガティブな印象を持つ人が一定数いると考えられます。

就活への入口「インターン(インターンシップ)」

この期間で特徴的なキーワードのひとつが、「インターン(インターンシップ)」です。インターンは、実施時期、日数や内容が開催元の企業によって大きく異なります。最近では大学3年生の夏や冬ごろに多くの企業で開催され、実施日数は半日・1日のものから数週間にわたるものまで幅広く存在します。

内閣府の調査によると、2022年度の大学4年生は大学3年生の7〜9月に、大学院2年生は大学院1年生の7〜9月にインターンに参加する割合が高いようです。筆者も大学3年生の夏にインターンに参加しました。最近では大学1、2年生から長期インターンを始める人も一定数存在するようです。
参考:https://www5.cao.go.jp/keizai1/gakuseichosa/pdf/20221130_gaiyou_2.pdf

「既卒(既卒者)」の就活検討者も?

「就活」検索の数日前に、「既卒」というワードが特徴値として現れています。既卒とは、明確な定義があるわけではありませんが、一般的に大学や高校を卒業して一度も就職したことがない人を指す言葉です。

在学中に希望の職の内定を得られなかった場合、卒業して就活を続ける「既卒」や、卒業せずあえて留年する「就職留年(就活留年)」などが選択肢としてあります。

決してボリュームが多いわけではありませんが、29歳以下で「就活」ワードの検索をするのは在学中の学生のみではなく、卒業後の若者もいると考えられます。

就活でも「キミスカ」など、スカウト系サービスが

「就活」の検索前後では様々な就活サービスのなめの検索があり、その一つに「キミスカ」があります。「キミスカ」とは企業から学生へスカウトが送られ、学生がスカウトメッセージや企業情報から興味を持ったらやり取りが始まる、といったサービスです。

キミスカ公式サイトのPC画面キャプチャ

スカウト型のサービスは中途採用のみならず、新卒採用の場でも使われていることが見て取れます。

②就活前期:「就活」を検索した0日目〜23日目

続いて、就活前期の検索行動を見ていきます。以下の図は、冒頭の図の0日目〜23日後の部分にフォーカスしたものです。

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(0日目〜21日後程度)

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(0日目〜23日後程度)
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「就活」検索直後の数日間では、「志望動機」「面接」「ES」といった選考対策キーワードに加えて、「難易度」「通過率」のような選考の難しさについてのキーワードが検索されています。また、「理念」「福利厚生」「募集要項」など、各企業の情報を得るためのキーワードも検索されています。就活が進むにつれ、企業と自分自身のマッチ度合いを見極めたり、マッチ度合いが高いことを伝えるために、企業情報や労働環境についての情報を収集していると考えられます。

何を聞くのがベスト?「逆質問」

この期間の特徴的なキーワードのひとつとして「逆質問」が挙げられます。逆質問とは、一般的には面接官に対して就活生が質問することを指します。多くの場合、逆質問は面接官から就活生への質問が終了したタイミングで行われます。

逆質問も面接の時間中であるため、就活生にとっては気の抜けない時間でしょう。逆質問までの受け答えがうまくいっていても、逆質問が上手くいかなければそれが原因で選考を通過できなくなる可能性もないとは言えません。筆者も就活中に逆質問を何度も経験しましたが、様々な質問に答え終わってから逆質問で何を聞こうかその場で考えることが難しい場合が多く、選考対策の一環として事前に逆質問を考えていました。

選考フロー外でも情報を得たい!「OB訪問」

一般的に、「OB訪問(OB・OG訪問)」とは、選考を受けたい、または受けている業界や企業の現役社員を個人的に訪ね、実際の仕事内容や労働環境などのお話を聞くことです。選考フローの中でも現役社員から話を聞くことはできますが、それだけでは得られない情報もあるでしょう。最近では、OB・OG訪問用のプラットフォームやアプリが存在しています。以下の図は、OB・OG訪問アプリのひとつです。

OB・OG訪問アプリ「Matcher」のGoogle Playストアアプリ紹介画面キャプチャ

多くの場合、OB・OG訪問プラットフォームやアプリは就活に役立つ機能を他にも備えており、OB・OG訪問をしない人でも利用する可能性があります。

③就活後期:「就活」の検索から24日後(「最終面接」のワード登場日)以降

最後に、就活後期の検索行動を見ます。以下の図は、冒頭の図の24日後〜60日後の部分にフォーカスしたものです。

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(22日後〜60日後)

29歳以下で「就活」を検索した人の検索行動(24日後〜60日後)
調査期間:2023年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「就活」検索から24日後には、「二次面接」「最終面接」という単語が登場し、選考が順調に進みつつある様子がうかがえます。26日後には「初任給」、38日後には「内定後」というキーワードが見られ、「就活」検索から約1ヶ月後には内定獲得後の情報収集を始めているようです。39日後には「卒論」が検索されており、就活が一段落して卒論について考えられるようになったことを表しています。

「選考フロー」といったキーワードも検索されており、内定獲得までの道筋を知りたいという心境がうかがえます。

適性検査「CAB」はIT系企業の選考で頻出?

「CAB」とは、企業の選考で使用される適性検査の一種です。CABを提供しているSHL社によると、CABは「コンピュータ職における技能習得のポテンシャル測定に特化した適性検査」で、「デジタル人材のポテンシャルに関連する知的能力とパーソナリティ」を測定しています。同社は「玉手箱Ⅲ」や「GAB」など、就活でよく使用される適性検査を複数提供しています。
参考:https://solution.shl.co.jp/materials/cab/

適性検査は選考の序盤や最終面接前後に課されます。それぞれの適性検査には特徴があるため、多くの人が適性検査の攻略のために過去問や参考書などを調べていそうです。

まとめ

就活生の検索行動には、就活生が何に悩み、どのように就活を進めていくのかが表れています。就活生の悩みを解決するサービスはすでに幅広く展開されていますが、まだ解決されていない悩みも隠されているかもしれません。就活が早期化しており、変化のなかにいる就活生たちの不安を解消するサービスが、これから先も求められていきそうです。

▼今回の分析には生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』を使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

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この記事のライター

2025年4月に入社予定の大学4年生。大学ではジャーナリズムのゼミに所属。言葉に触れることが好き。音楽を聴くのも演奏するのも大好き。よりよい文章を綴れるよう日々精進中。

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