ChatGPT利用者は、初期からどう変化した?ChatGPTユーザーの実態を調査

ChatGPT利用者は、初期からどう変化した?ChatGPTユーザーの実態を調査

生成AIの先駆けとして登場したChatGPT。2022年11月のリリース以降ユーザーは増加し続け、広範囲に認知されています。マナミナではリリースから約4ヵ月後の2023年3月時点でのユーザー数や人物像について調査しましたが、リリースから約9か月経った現在、ChatGPTユーザー層に変化はあるのか、改めて調査していきます。


アクセス数は減少傾向

では早速、ChatGPTのサイトへのアクセスデータを見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用します。

まずChatGPTのサイトにアクセスしているユーザーの数ですが、9月時点で約273万人となっており、4月の約549万人をピークに、徐々に減少していることがわかります。4月は入学や入社の時期であり、それを機に話題のサービスを使ってみたがあまり活用できず、利用をやめてしまった人もいるかもしれません。

ChatGPTのサイトの訪問者数
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

続いて1人あたりセッション数は、2023年3月には7.1回だったのに対し9月は4.4回と約3回分減少しています。しかし、2023年5月以降は傾斜が穏やかになってきたことから、定期的に使うユーザーの利用頻度が安定してきたことが分かります。

ChatGPTのサイトの訪問者1人あたりのセッション数
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

次に1人あたりのページビュー数ですが、約30pvだった2023年3月~4月をピークに、8pv前後にまで大幅に減少しています。ChatGPTでは一度チャットのやり取りを行うと、それが新たなチャットページとして保存され、URLが変化します。つまり、ページビュー数は新たなやり取りを始めた回数と相関していると考えられます。異なる様々な話題について聞くのではなく、限られた話題に関して、特定の文脈を保持したままやり取りをするという使い方がメジャーになってきているのではないでしょうか。

ChatGPTのサイトの訪問者1人あたりのページビュー数
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

また平均滞在時間もページビュー数と同様に大きく減少していますが、これは一回に聞く話題が減ったことに加え、使い方を理解し、短時間で知りたいことが分かるようになったことの表れと考えられます。

ChatGPTのサイトの訪問者の平均滞在時間
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

若者や男性が仕事やプライベート問わず使用

続いてユーザー像の変化を見ていきます。まず男女比は男性が約70%、女性が約30%となっており、年代は、20代が約30%、30代・40代がそれぞれ約20%、50代が約15%、60代が約8%、70代以上は約5%です。男女比・年代共に2023年3月時点とほぼ変わりません。

ここから、ユーザーの母数が変化しても、興味を持って使用する性別・世代と、継続して使用する性別・世代の傾向は変わらないことがわかります。

ChatGPTのサイトの訪問者の性別と年代
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

以下の記事にも、Z世代のChatGPT利用率が高いことが示されています。

Z世代はChatGPTを3日に1回利用 SNSや検索エンジンからの代替傾向あり【IDEATECH調査】

https://manamina.valuesccg.com/articles/2555

「リサピー®️」を運営する株式会社IDEATECHは、ChatGPTを使ったことがあるZ世代(2023年度で20~25歳)の男女を対象に、Z世代のChatGPTに関する実態調査を実施しました。

同様に、利用時間帯・曜日もほぼ変化がなく、仕事やプライベート問わず利用する傾向は変わっていないようです。

ChatGPTのサイトが訪問される曜日と時間帯
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

トレンドに敏感で情報収集に熱心

ではここから、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web 行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を使用して深掘り分析をしていきましょう。

まず各メディアの使用時間です。
2023年3月時点では、ChatGPTユーザーは、インターネット利用者全体と比べて、テレビよりもVODや電子書籍を多く利用していました。2023年9月現在も、各メディアの利用時間の割合は大きく変わっていません。

このことから、ChatGPTユーザーは、自分で欲しいコンテンツを選択しており、情報収集として新聞も利用している傾向は変わっていないと考えられます。

ChatGPTのサイトの訪問者のメディア利用時間
story bankより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

続いてSNS利用時間ですが、ChatGPTユーザーはインターネット利用者全体と比較してX(旧Twitter)、Instagramの利用者が多く、利用時間も長いのに加え、InstagramよりもX(旧Twitter)の方が利用者が多く、利用時間も長いです。これは2023年3月時点から変わっていません。ChatGPTユーザーは変わらずSNS、中でも特にX(旧Twitter)でトレンドを確認しているようです。

ChatGPTのサイトの訪問者のSNS利用時間
story bankより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

また、下記記事では生成AIを利用している人ほどSNSを参考にしている割合が高いことが示されています。

ChatGPTなどの生成AIの利用経験はどのぐらい?情報源としてSNSを利用するかしないかでAIに対する意識の違いあり【Beat Communication調査】

https://manamina.valuesccg.com/articles/2726

株式会社Beat Communicationは、日本全国の22歳以上65歳以下の男女を対象に、「Chat GPTなどのAIとソーシャルネットワークサービス、チームコミュニケーションツールと現政権のデジタル・トランスフォーメーションへの取り組み」の意識調査を行い、結果を発表しました。

学生や高年収層が多い

続いて職業と年収を見ていきます。目立って割合が多いのは、一般社員と学生で、インターネット利用者と比べてそれぞれ約5pt、約8pt高くなっています。また、年収は全体的に高く、最も顕著な「1000万以上1500万未満」の層はインターネット利用者全体と比べて約5pt高いことがわかりました。

ChatGPTのサイトの訪問者の職業と世帯年収
story bankより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

2023年3月時点では経営者と学生がインターネット利用者全体と比べて割合が高かったのですが、2023年9月時点では経営者の割合はインターネット利用者全体と変わらない程度にまで下がっており、それに反して一般社員の割合が増えています。しかし、年収が全体的に高く「1000万以上1500万未満」の層の割合が高いことは2023年3月時点と変わりません。

このことから経営者はトレンドを把握する一環としてChatGPTを使用していたにすぎず、実際にChatGPTを業務で活用しやすいのは一般社員だったのではないかと考えられます。また、ChatGPTの利便性を認識し、自社の社員に利用を奨励した結果とも予想できます。

変わらずエンジニアが利用・関連記事も充実

ではChatGPTのサイトの接触前後180分間に、接触者が閲覧している他のサイトについてみていきましょう。

ランクインしているサイトはほとんど変わっていません。多くはOpenAIの公式サイトやChatGPTのページであり、9位、10位、12位、17位、19位のサイトは、インターネット系のまとめサイトで、ChatGPTに関する記事を多数掲載しています。加えて、QiitaやGitHubといったエンジニア向けのサイトが変わらずランクインしていることから、エンジニアの利用が多いことがうかがえます。DeepLも変わらずランクインしていますが、ChatGPTの翻訳精度を確かめているにしてはかなり長期間併用されているため、翻訳の際に実益があってChatGPTとDeepLを併用している可能性があります。

さらに、16位にはGoogleがリリースし、2023年5月に日本語対応した生成AIであるBardがランクインしており、生成AI同士を比較しているユーザーがいることも分かります。

ChatGPTのサイト訪問者の閲覧しているサイトの特徴値(※)ランキング(上位20件を抜粋)
story bankより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

※特徴値:一般的なネット利用者と比べて、対象者がどれくらい特徴的に利用しているかを表す指標。以下の式で計算される。
 特徴値=対象者のリーチ率(※)ーネット人口全体のリーチ率
※リーチ率:抽出条件に当てはまった人のうち、当該サイトを訪問している人の割合。

ところで、ChatGPTの公式アプリがリリースされ、iOS版・android版が
それぞれ5月・7月から日本で利用できるようになりましたが、下図の通り、ユーザー数は伸びていない状況です。このことからも、爆発的なブーム自体は落ち着いており、興味のある人のみが継続して利用していると考えられます。

ChatGPTのサイトとアプリのユーザー数(左)/「ChatGPT アプリ」で検索した人の数(右)
Dockpitより集計。対象期間:2022年10月~2023年9月
デバイス:PC,スマートフォン

まとめ

以上、2023年3月と比較したChatGPTユーザーの特徴を比較してきました。ブームの真っ只中だった3月と、注目しているユーザー層はほとんど変わりませんが、その中でもトレンドを押さえるために利用していたユーザーが減り、当時から利用方法を理解して有効活用していたエンジニアなどが継続的に利用していると考えられます。

アプリのリリースが始まったことに加え、2023年10月にはイラストの生成も可能になったことで、さらに活用の幅がひろがったChatGPT。今後はよりクリエイティブな方面での活用も広がりそうですが、日本での注目度は再び高まっていくのか、今後も動向から目が離せません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2024年にヴァリューズ入社予定です。
大学では言語学を専攻しています。

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