年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

もうすぐ年末年始。時間のあるこのタイミングで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを利用してコンテンツを一気見しよう、という方も多いのではないでしょうか。今回は、「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」それぞれについて、ここ数年の年末年始の集客状況を調査。実際に年末年始に利用者が増えているのか、各サービスでどんなコンテンツに注目が集まっているのかを分析し、来たる2024年の年末年始を占いました。


年末年始のVOD利用者数に伸び

まず、2021年から2024年にかけて、各VODアプリの利用者数がどのように推移してきたのか見てみましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。

以下のグラフはアプリの起動者数を表しており(上:2021年11月~2023年11月、下:2022年11月~2024年11月)、その月に1度でも該当アプリを起動すると、1人としてカウントされるようになっています。

「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」のアプリ利用者数推移

「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」のアプリ利用者数推移
調査期間:2021年11月~2023年11月
デバイス:スマートフォン

「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」のアプリ利用者数推移

「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」のアプリ利用者数推移
調査期間:2022年11月~2024年11月
デバイス:スマートフォン

過去4年間の推移を見ると、年末年始で利用者数を伸ばし、翌2月に落ち着くという傾向にありそうです。年末年始等の長期休暇のタイミングだけ、気になる作品を扱っているのでそのアプリを契約する、という人も一定数存在するのかもしれません。

なお2024年の月あたり利用者数は、Prime Videoが1,200万人前後と突出しており、その半分ほどの規模感でNetflix、それを追う形でU-NEXTが続き、200万人前後でHuluとDisney+がほぼ同規模となっています。Prime Videoについては、Amazonプライム会員となったユーザー全員が必然的に会員となるため、その規模の大きさにも頷けます。

2021年末の盛り上がりが顕著

さらに各サービスの年末年始の伸びを深堀りするため、それぞれの年で、11月から年末にかけてどれほどアプリ利用者が増えたのか、前月比をもとに調べてみましょう。

「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」のアプリ利用者数の前月比
調査期間:2021年11月~2024年1月
デバイス:スマートフォン

2021年から2022年にかけては、前月比の伸び幅が大きいアプリが多く、年末のVODサービス利用が特に盛り上がった年と言えそうです。2022年末以降も前月比の伸びはあるものの、2021年~2022年よりは落ち着いていることがうかがえます。

新型コロナウイルスの国内での影響を振り返ると、2021年は9月30日まで緊急事態宣言が出ており、2021年末にはオミクロン株が流行し始めていました。このことから、2021年末は帰省や外出を控え、自宅でVODサービスを楽しむ人が多かったのかもしれません。そう考えると、現状感染が収束している2024年末は、2022年・2023年末程度の伸びに落ち着くVODサービスが多くなるのではないでしょうか。

年末年始はNetflix・U-NEXTの集客が特に好調

上記の前月比データをアプリごとに見ると、Netflixは2021年末以降のほぼ全ての年末年始で、前月比が105%を超えており、110%を超える月も2回見られます。U-NEXTも全ての期間で前月比増を達成しており、この2サービスが年末年始に特に集客が盛んになる傾向にあります。一方で、Disney+は年末年始の伸びが比較的小さくなっています。

2024年~2025年の年末年始も、引き続きNetflixとU-NEXTが業界を牽引していくのか、Huluなどの他サービスがさらに集客強化していくのか、注目していきたいところです。

年末年始、ユーザーはVODで何を観る?

年末年始にユーザーが気になっている作品や番組には、どのようなものが挙げられるのでしょうか。

各サービス名と掛け合わせて検索されたキーワードのうち、年末年始のタイミングでよく検索されたものを集計しました。集計期間全体の中での出現率と比較して、該当期間内での出現率が高いワードほど、中央に大きく表示されています。

Prime Video

Prime Videoとの掛け合わせ検索

まずはPrime Videoです。2022年11月~2023年1月は「ぼっちざろっく」「嵐」「WBC」「サイレント」「バトラー」「ラルク」「ニーアオートマタ」などが検索され、アーティスト関連が目立ちました。2023年11月~2024年1月には「私の夫と結婚して」「マリオ」「正直不動産」「薬屋のひとりごと」「フリーレン」などが挙がっています。「12月配信予定」「1月配信予定」と検索して、何が観れそうかを一覧で把握する人もいたようです。

Netflix

Netflixとの掛け合わせ検索

Netflixとの掛け合わせ検索としては、2022年11月~2023年1月は「ファーストラブ」「初恋」「RRR」「インフォーマ」「ザグローリー」「ウェンズデー」などが見られ、Netflixオリジナルドラマが目立ちます。2023年11月~2024年1月は、Netflix制作の実写版「幽☆遊☆白書」が特徴的でした。

U-NEXT

U-NEXTとの掛け合わせ検索

U-NEXTを見ると、2022年11月~2023年1月は「あいみょん」「紅白」が検索され、紅白歌合戦の見逃し配信への期待が高まっていたことがわかります。2023年11月~2024年1月は特徴的な検索は見られませんでした。

Hulu

Huluとの掛け合わせ検索

Huluでは、いずれの期間も「キャンペーンコード」が特徴的です。年末年始にスポットでお得に利用したいという層も一定数いるのかもしれません。2022年11月~2023年1月は「AAA」、すなわちHuluが独占ライブ配信した「2022 Asia Artist Awards」への関心も見られました。

Disney+

Disney+との掛け合わせ検索

Disney+とは、2022年11月~2023年1月は「ブラックパンサー」「コネクト」「ガンニバル」が、2023年11月~2024年1月は「大谷翔平」「マーベルズ」が掛け合わせ検索されています。マーベル作品をはじめとして、Disney+の独占配信を目当てに利用を検討する人が多そうです。

年末年始は複数のVODサービスを併用する?

これまで見てきたように、VODサービスの利用者は、特定の独占配信やオリジナル作品を見るために利用サービスを選ぶ、という使い方も多いと考えられる中で、年末年始のタイミングで「複数のVODアプリを利用する人」は増えるのでしょうか。

各アプリの併用割合の推移から見ていきます。下グラフの「併用なし」の割合が下がれば、そのタイミングで複数アプリを併用する人が増えたことを表します。

「Prime Video」「Netflix」のアプリ併用状況の推移

「Prime Video」「Netflix」のアプリ併用状況の推移
調査期間:2022年11月~2024年2月
デバイス:スマートフォン

まずPrime VideoとNetflixを見てみると、12月と1月のタイミングで劇的に「併用なし」の割合が変わることはありませんでした。Prime Videoは期間を通して「併用なし」が70%前後と圧倒的で、NetflixはPrime Videoとの併用者が40%前後という状態が続いています。

「U-NEXT」「Hulu」のアプリ併用状況の推移

「U-NEXT」「Hulu」のアプリ併用状況の推移
調査期間:2022年11月~2024年2月
デバイス:スマートフォン

U-NEXTとHuluでは、Huluで年末年始に「併用なし」の割合が若干減少する傾向が見られました。U-NEXTは、通年「併用なし」が半数以上を占めているのが特徴的です。

「Disney+」のアプリ併用状況の推移

「Disney+」のアプリ併用状況の推移
調査期間:2022年11月~2024年2月
デバイス:スマートフォン

Disney+でも、「併用なし」が大きく減少する傾向は見られませんでした。以上のことから、年末年始起因で、複数のVODサービスを横断してコンテンツを視聴するという人は、そこまで多くないということがわかりました。2024年の年末年始も、この傾向は変わらない可能性が高いと思われます。

まとめ

今回は、年末年始のVODサービス利用実態をテーマに調査してきました。

年末年始でVODアプリの利用者数は実際に増える傾向にあり、この傾向は2021年から2022年にかけての年末年始で特に顕著でした。サービスごとに見ると、Netflix・U-NEXTで年末年始の集客の伸びが特に大きいことがわかりました。

利用するVODサービスの選び方としては、コンテンツ面では「興味のある独占配信やオリジナル作品があるかどうか」が判断軸の1つになっていそうです。複数サービスをまたいで利用する人が、年末年始がきっかけで増える、という傾向は顕著には見られませんでした。

2024年の年末年始も、上記の傾向と近しい実態になると考えられますが、いずれかのサービスが大規模な年末年始キャンペーン等を行った場合は、少し勢力図が変わってくるかもしれません。各サービスがどのようにユーザーを勝ち取り、囲い込んでいくのか、今後も動向を分析していきたいと思います。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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【無料ダウンロード】総ページ数150P以上のライフスタイル・消費トレンドレポート|デジタル・トレンド白書2024

https://manamina.valuesccg.com/articles/3792

ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)

この記事のライター

1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。

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