若者層に広がるコンテンツの「考察」ブーム。検索データの分析からその思考に迫る

若者層に広がるコンテンツの「考察」ブーム。検索データの分析からその思考に迫る

ここ数年でよく耳にする、コンテンツへの「考察」。若年男女の間で特に人気になっています。対象となるコンテンツは幅広く、自分の意見を文章で表現できるメディアが「考察」の場として人気を集めています。「ネタバレ」「あらすじ」の検索者とは異なる「考察」人気の背景を、データから探ります!


「考察」検索ユーザーは過去2年でコンスタントに月15万人ほど

「RENOTE」映画の記事一覧

ここ数年で、「考察」という言葉を見聞きする機会が増えたのではないでしょうか? 

「考察」の定義は「物事を明らかにするために、よく調べて考えをめぐらすこと」ですが、特に、テレビドラマや映画、ゲームなどのコンテンツに対する考察の文化が起こってきています。それは、「ストーリーや登場人物のセリフなどが意味するところ・今後の展開などを、それまでの展開や伏線、コンテンツ外の知識等を組み合わせつつ考える」ような楽しみ方のことを指します。

「考察」への関心は、誰が、どのように寄せているのでしょうか。状況を紐解くためのデータを実際に見ていきましょう。分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まず次の図は、過去2年における「考察」キーワードの検索者数の推移を表したものです。

キーワード「考察」の検索者数推移
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

全期間を通じて、コンスタントに15万人以上が「考察」と検索していることがわかります。また、定期的に盛り上がりが見られることから、その時々で「考察」の対象になるコンテンツが移り変わっていると考えられます。

ドラマやアニメ、ゲームなどエンタメ作品は幅広く「考察対象」

次に、「考察」の対象になるコンテンツについて分析していきます。以下の図は、「考察」と掛け合わせて検索されているキーワードのランキングです。

「考察」検索の掛け合わせワードランキング
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

この図から、「映画」「歌詞」「ゲーム」などのやや抽象的な名詞が上位にランクインしていることがわかります。それに加えて、テレビドラマやアニメなど、様々なジャンルの作品名が上位にランクインしています。

以下に作品名とジャンルを整理しました。ここから、「考察」の対象とされる作品のジャンルは幅広いことがわかります。

テレビドラマ:「VIVANT」「マイファミリー」「最高の教師」
テレビアニメ:「進撃の巨人」
アニメ映画:「ワンピース」「君たちはどう生きるか」
ゲーム:「エルデンリング」

続いて、掛け合わせワードで2位にランクインしている「歌詞」と「考察」の関係について見ていきましょう。
近年人気のある邦楽曲の中では、一度聞いただけでは理解できないような単語や、内容の複雑な歌詞が増えつつあります。そのような歌詞の内容を理解したい人が、「曲名 歌詞 考察」のように検索していると考えられます。

また、K-POPや洋楽など、外国語曲の歌詞についても検索されているようです。歌詞全体の意味・内容を日本語で素早く知りたいという人が「考察」を検索しているのかもしれません。

20〜30代の若者が「考察」検索者の約6割を占めている

続いて、どんな人が「考察」に興味を持っているのか分析していきます。

まず、「考察」検索者の男女比を見てみましょう。以下の図から、「考察」検索者内では男女の偏りがほとんどないことがわかります。「考察」は対象となるコンテンツが多岐にわたるため、性別を問わず楽しまれているのでしょう。

「考察」検索者の男女比
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「考察」検索者の年代割合はどうでしょうか。以下の図によると、20代〜30代の若者が「考察」検索者の約6割を占めていることがわかります。

「考察」検索者の年代割合
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

前章で見てきたように、考察の対象となる映画・ゲーム・ドラマ・歌などのコンテンツは、その時々で新たに登場して話題を集めたものが中心。そのため、新しいコンテンツにいち早く触れやすい若者との親和性が高いと考えられます。若者が新しいコンテンツを考察することで、そのコンテンツが話題になり、さらに幅広い人が考察するようになる場合もあるでしょう。

続いて、「考察」検索者の未婚・既婚割合です。

「考察」検索者の未婚・既婚割合
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

以下の図から、「考察」検索者の7割以上が未婚であることがわかります。20代〜30代の若者が「考察」検索者の6割を占めていたことを考えれば、妥当な結果といえるでしょう。

未婚者層は一人暮らしの割合が相対的に高いと考えられます。そんな人々が、あるコンテンツについて誰かと意見を共有したい時や、他者の解釈を知りたい時に、「考察」を検索しているのかもしれませんね。

ドラマ終了直後に解釈を知りたくて検索している?

「考察」の検索時間帯も見てみましょう。

以下の図から、22時に検索のピークがあることがわかります。22時は各テレビ局が力を入れたドラマの放送終了時刻であるため、テレビドラマを見終わった直後に、ドラマの解釈を知りたくなって検索する人が多いのではないかと考えられます。

「考察」の検索時間帯
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

ユーザー投稿型メディアが「考察」文化を広げている

ここでは、「考察」を検索した人々がどのようなサイトを訪れているのかを見ていきます。

以下の図は、「考察」検索者が流入したサイトのランキングです。この図を見ると、「note」「アメーバブログ」「RENOTE」といったユーザー投稿型メディアが上位にランクインしていました。

「考察」検索者の流入サイトランキング
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

「note」は、note株式会社が運営している「創作をする人、それを応援する人のためのメディアプラットフォーム」。「アメーバブログ」は株式会社サイバーエージェントが運営する「ライフログを中心とした日本最大級のブログメディア」で、ブログ装飾が豊富であることが大きな特徴です。

過去にマナミナでは、noteについて取り上げています。ぜひ合わせてご覧ください。

今「note」がアツい!読み物好きな若者を魅了?noteの集客動向を調査<前編>

https://manamina.valuesccg.com/articles/3252

2023年夏頃から集客数を急激に伸ばしているメディアプラットフォーム「note」。人気を後押ししているのはどのような人々なのでしょうか?前編では、noteが集客しているユーザーの特徴を深掘り調査し、後編では、noteが規模を拡大している要因を探っていきます。

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また、「RENOTE」は、DoubleDown株式会社が運営する、「みんなでつくるポップカルチャー・エンタメの攻略本」を謳うメディアです。エンタメに特化したカテゴリーが大きな特徴です。

「RENOTE」PC版トップページ

次に、各メディア内で「考察」関連の記事がどのくらい投稿されているのかを調べてみます。それぞれのメディアの検索窓で「考察」ワードを打ち込むと、ヒットした記事の本数は以下の通りでした。

note:約1万件の記事
アメーバブログ:約1800件のブログタイトルと約5万件の記事
RENOTE:約16万件の記事

この結果から、確かにこれらのメディアで「考察」に関するコンテンツが多数投稿されていることがわかります。

これらのメディアはいずれも、自分の意見を文章で表現できるユーザー投稿型メディアという特徴があります。「考察」した内容を文章にすることで、自身の考えを整理できる。そして、それを発信することで様々な人からの反応や異なる考察を知ることができ、「考察」をさらに深めることにつながります。

「考察」と「ネタバレ」「あらすじ」の検索者層は異なる?

最後に、「考察」検索の類似ワード(検索のされ方が似ているもの)について見ていきます。以下の図は、「考察」の類似ワードランキングです。

「考察」の類似ワードランキング
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

この図から、「ネタバレ」「あらすじ」のユーザー数が特に多いことがうかがえました。では、「考察」と似たワードである「ネタバレ」「あらすじ」を検索窓に打ち込む人は、「考察」検索者とどのように考え方が違うのでしょうか?

そこで、それぞれのキーワード併用率(両方の検索ワードを検索している人の割合)を比べてみましょう。

まず、「考察」と「ネタバレ」の併用率から見ていきます。

「考察」「ネタバレ」の併用ベン図
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

上の併用ベン図から、「考察」と「ネタバレ」の両方を検索している人は全体のうち13.4%で、割合としてはあまり高くないことがわかります。

また同様に、「考察」と「あらすじ」についても同様に見てみます。

「考察」「あらすじ」の併用ベン図
調査期間:2022年4月〜2024年3月
デバイス:PC・スマートフォン

すると、両方を検索していた人は全体のうち10.6%で、割合としてはあまり高くないことがわかりました。

これらの点から、一緒に検索されるキーワードが似ていても、その検索者層は異なると推測できます。一般に、「考察」はコンテンツを既にある程度知っている人が興味を持つ場合が多く、「ネタバレ」や「あらすじ」はコンテンツについてほぼ知らない人がコンテンツの内容を素早く知るために検索する場合が多いと考えられます。「考察」検索がドラマの終了時刻の22時あたりに最も多いという結果を先ほど紹介しましたが、より深い解釈を知るための「考察」検索、という傾向が見て取れるでしょう。

まとめ

本記事では、コンテンツの「考察」に関して様々な視点から分析してきました。

「考察」検索者の多くは20代〜30代の若年男女であり、彼らは流行に敏感で新しいものにいち早く触れるという特徴があります。「考察」の対象は幅広いエンタメコンテンツ。個人の意見をはっきり表明できるユーザー投稿型メディアが「考察」の場として人気になっていました。そして、「考察」に興味を持つ人々は既に対象のコンテンツをある程度知っている人が多いと考えられます。

「考察」は若者層におけるコンテンツの新しい楽しみ方であると考えられます。自分の好きなコンテンツをただ享受するだけではなく、コンテンツ外の知識や経験を組み合わせることにより、さらに深くコンテンツを楽しむことができるのが、「考察」の醍醐味でしょう。そして、インターネットでも現実の会話でも、そして一人でも複数人でも楽しむことができるなど、楽しみ方の幅が広いことも「考察」が人気になった背景のひとつといえます。

今後も登場し続けるであろう「考察」意欲を刺激するコンテンツ。新たな「考察」好きを生み出し続けていくのではないでしょうか。

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ヴァリューズは、国内最大規模の消費者Web行動ログパネルを保有し、データマーケティング・メディア「マナミナ」にて消費トレンドの自主調査を発信してきました。その中から注目領域の調査・コラムをピックアップし、白書として収録。2021年の発行から4回目を迎える「デジタル・トレンド白書2024」は、Z世代トレンド・SNS動向編、ライフスタイル・消費トレンド編の2部構成になっています。(「ライフスタイル・消費トレンド編」ページ数|153P)

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この記事のライター

2025年4月に入社予定の大学4年生。大学ではジャーナリズムのゼミに所属。言葉に触れることが好き。音楽を聴くのも演奏するのも大好き。よりよい文章を綴れるよう日々精進中。

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