「618セール」とは?
「618セール」とは中国のネット企業の最大手である京東(ジンドン)が毎年6月18日に開催する中国最大のECセールのひとつです。1998年6月18日に劉強東(リウ・チャンドン)が中関村で京東公司を設立し毎年6月18日が京東の創立記念日と定められ「618セール」の発祥ともなりました。2013年からは多くの大手ECサイトもこれに倣い、「618セール」の日に多くの割引イベントを開催するようになりました。今や「618セール」は「ダブルイレブン」と並ぶもう一つの中国の全国的なオンラインショッピングセールとなっています。では今年の「618セール」は例年と比べてどのような変化があるのか見ていきます。
「予約販売」を取りやめる
最近天猫と京東が「予約販売」を取りやめることを発表しました。これにより、消費者たちは「史上最もシンプルな618セール」を迎えることになるとされています。実際には「予約販売」は中国の電子商取引のセールで長年にわたって存在していましたが、その設立の目的には事前に商品の在庫を準備し、物流の効率を高めることが含まれています。しかし消費者が購入までの待ち時間が長いため、「予約販売」は多くの苦情を引き起こしています。
より深刻な問題として、中国消费者协会が発表した2023年の全国消費者協会組織が受け付けた苦情の分析によれば、電子商取引プラットフォームの予約販売には商品の価格が保証されていない、約束された贈り物が実現されない、約束された時期に商品が発送されない、「最低価格」の宣伝が事実と異なるといった問題が存在しています。
業界関係者は10年以上にわたる電子商取引の発展により、「予約販売」がますます問題として見られており、消費者のショッピング体験を損ねるだけでなく、商家にとっても大規模なセール活動に疲れを感じさせ、現在の電子商取引のトレンドには合わないと述べています。現在の電子商取引のトレンドは消費者の実際のニーズを重視することであり、「予約販売」を取りやめることで、商家の販売プロセスと消費者の購入プロセスが大幅に簡単化され、電子商取引が便利な本質に戻ると述べています。
これにより過去と比べて今年の「618セール」はシンプルな運営となりそうです。 消費者向けに天猫は価格保証、送料保険などの一連の措置を打ち出し、消費者が簡単に購入し、安心して購入できるようにしています。 また、今年の天猫「618セール」では商家向けの参加申請プロセスも簡単化され、要件を満たす商家は直接商品の申請を行うことができます。 過去1年以上にわたり、アリババグループは多くの重大な改革を行ってきました。その中で、消費者の重要性を強調し、「消費者への回帰」がアリババの戦略的重点となっています。 これらショッピングセールのさまざまなルールの簡素化が電子商取引の一つのトレンドとなることが予想できます。
より理性的な消費者たち
電子商取引はさまざまな新しい取り組みを行い、その根本的な目的は消費者を喜ばせることが目的です。実際何十年ものショッピングセールを経て、中国の消費者はますますセールを理性的に見るようになっています。新型コロナウイルスの影響や経済の低迷に伴い、理性的な消費が中国の主要な消費トレンドとなりました。SNSでは従来の爆買経験の共有投稿よりもコストパフォーマンスの高い商品の共有が増えています。中国の消費者はもう過去とは違う嗜好を持つようになったと言えそうです。
去年から淘宝天猫は「ユーザー第一」をテーマに一連の変革を開始しました。これにはアプリのインターフェースの最適化、淘宝ウェブサイトの改版に加えて返品交換プロセスなど、消費者が関心を持つ問題を改善し、今年の「618セール」に備えています。
改版後の簡素化された淘宝ウェブサイト。
消費者により良いショッピング体験を提供するため、今年の「618セール」期間中、京東は消費者の問題に対応する基本サービスを200以上提供しました。そのうち80以上は業界で初めての試み、または独自のサービスです。また他にも京東は消費者のショッピング体験を保証しています。たとえば、「無料の返品交換」サービスではPLUS会員でも京東の一般ユーザーでも、商品のサイズや重さ、数量に関係なく、出張返品交換の送料すべてを無料としています。
過去を振り返ると、電子商取引の急速な発展期には、市場を獲得するために多くのプラットフォームがユーザー体験を無視し、消費者の権利が損なわれることがありました。しかし、競争がますます激しくなる現在において、消費者の信頼や好感を獲得することが各大手電子商取引プラットフォームの最重要課題となり、そのためユーザー体験の向上が競争の鍵となりました。過去の日本の発展過程にも似ていることが起こっていたかもしれない事象です。市場競争が激しい場合や商品の品質がほとんど変わらない場合、サービス品質の向上や消費者により良い体験を提供することが、各大手企業の競争の焦点となります。
AI技術を活用する「618セール」
AIの台頭以来、AI技術は徐々に電子商取引業界のさまざまな段階に適用されてきました。今年の「618セール」もAIを活用しています。
AI技術に関して今年の京東「618セール」では大規模モデルやAIGCなどの技術革新をビジネス全体に深く統合し、事業者がコストを大幅に削減し、効率を向上させるのを支援します。現在アリババではAI技術の開発に大きな成果を上げています。阿里雲の通義千問は淘宝や天猫の事業者や消費者に適用されています。同時にAIは「618セール」の事業者の活動にも活用されており、モデル写真の自動生成、スマートデータレポート、公式カスタマーサービスロボットなどのAIツールが商家の経営効率を向上させます。また、AIショッピングガイド、バーチャルカスタマーサポートなどのAIツールを活用することで、淘宝はユーザーにより良い消費体験を提供できます。
京東の創立者劉強東が4月16日にライブ配信しました。これはAIが生成したバーチャルデジタルヒューマンです。
全体的に言えば、AI技術は電子商取引業界に多くの変革をもたらしました。特にユーザー体験の向上、運営効率の最適化、精密なマーケティングの実現などの面で重要な役割を果たしています。将来AI技術の継続的な発展と適用により、中国の電子商取引業界はさらなる変革とイノベーションを迎え、ユーザーと事業者にとってより便利で効率的なショッピング体験をもたらすでしょう。
参考資料
https://www.stcn.com/article/detail/1199411.html
史上最简单618来了!天猫京东宣布:取消!
https://www.sohu.com/a/777194056_121948394
阿里巴巴打造史上最简单618
https://www.cbndata.com/information/292626
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https://www.guancha.cn/economy/2024_04_18_731973.shtml
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広東省出身の中国人留学生。現在は名古屋大学でメディアを専攻している。