国外旅行者の増加とその背景
中国旅遊研究院が今年の2月に発表した《中国出境游发展报告(2023-2024)》(中国国外旅行発展レポート(2023-2024))によると、中国における国外旅行者が2023年は8700万人を超え、2024年は1.3億人を超えると予想されました。経国家文旅部によると、2024年清明節休暇での国外旅行者数は99.2万人となり、感染症流行前の旅行者数ピークである2019年の同期に近づく結果となりました。また飛猪のデータによると、“五一 ” 休暇中のホテルの予約量は前年同期比約2倍となっており、国際客船の予約量は前年同期比15倍超となりました。また央視財経によると、“五一” 休暇の国外旅行者数は前年同期比約370%増に達しており、日本、韓国、アメリカ、オーストラリア、イギリス、ベトナム、カナダ、ニュージーランドといった国が旅行先として人気を得ています。
このような国外旅行者の増加の背景には、収入レベルが上がり続けていることや国際旅客便運営の回復、ビザサービスの回復及び最適化などが挙げられます。中国民航局のデータによると、国際旅客便は2023 年初めには毎週500便に届かなかったところが2024年4月時点では毎週4600 便余りにまで回復しており、国際線が感染症流行前の80%まで回復していくことが期待されています。
また、ビザサービスが便利になったことも国外旅行者数増加に大きく関係しています。2024年に入ると、シンガポールとマレーシアが中国人旅行客に対して30日間ビザ免除での滞在を許可することを発表し、同年3月にはタイが中国国民に対してビザの永久免除政策を実施しました。これによって「新馬泰(シンガポール・マレーシア・タイ)」が人気のツアールートになりました。タイ国民航局による2024年第一季航空輸送データの統計によると、中国―タイを往復する旅客総数は3,658,103人と、前年同期比422.79%に激増しました。
旅行形態のトレンド
国外旅行が回復していく中、特徴的な旅行形態が注目を集めています。まず一つは「自由行」です。「自由行」とは、旅行スケジュールを自由に調整できる旅行方式です。ガイドの同行がないことや食事を自身で手配することが特徴で、自由度・柔軟性が高い旅行ができることがメリットです。旅行客がカスタマイズ可能な体験と手軽で透明度の高いサービスを求める中で、自由行という旅行方式は国外旅行の主流となりました。また、ツアーと自由行を組み合わせた行程を組み、効率と自由度を両立させることもできます。飛猪のデータによると、今年の“五一”休暇における国外旅行の予約量全体のうち、自由行が占める割合は8割を超えました。
また、目的地として比較的ハードルが高いヨーロッパやアフリカなどへの旅行にも自由行がますます人気になっています。オーストリア、トルコ、モロッコ、ロシア、ポルトガル、ジョージア、エジプト、スペイン、カザフスタン、ブラジルなどといった長距離の旅行先の人気が上がり、“ 五一”休暇の予約量は去年と比べて平均4倍に伸びました。
もう一つの特徴的な旅行形態は、三人以上での団体旅行です。Z世代が活発に活動するソーシャルメディアプラットフォームにおいて、“旅行搭子”(旅仲間)、“找搭子”(仲間探し)などの検索ワードが頻繁に上がるようになっており、Z 世代の人々による共感できる仲間と一緒に旅行をしたいという需要が反映されています。このように人を集めて旅行するという方法は、Z 世代の交流と体験への需要を満たし、旅行者により多くの可能性と喜びをもたらします。愛彼迎のデータによると、この旅行形態は2024 年清明節期間中において前年同期比4倍以上の増加となりました。
旅行先選びのポイントと日本の人気
2023年末に同程旅行が発表した《2024中国居民出境游需求趋势前瞻报告(2024中国住民国外旅行需要トレンド予測レポート)》では、旅行者が2024年に国外旅行の目的地を選ぶ際に重要視する要素についてのデータが示されました。上位から「航空券やホテルなどのプランの価格」、「旅行先が十分安全かどうか」、「現地の人や文化、歴史及び風景」、「現地での言語コミュニケーションの難易度」、「旅行先の知名度」、「他の人の旅行評価」という結果になりました。特に上位3つの割合が多く、旅行者は費用の安さや安全性、現地の文化をより重視していることがわかります。
同程旅行《2024 中国居民出境游需求趋势前瞻报告(2024 中国住民国外旅行需要トレンド
予測レポート)》のデータを基にヴァリューズが作成
これらの需要に合致し、旅行先として人気を得ているのが日本です。円安が進み続けていることで、日本に旅行へ行く中国人旅行者が爆発的に増加し、“五一”休暇にピークを迎えました。「旅行+買占め」が来日旅行客の主な需要となっており、途牛による“五一”休暇国外旅行データによると、日本を目的地とした旅行パックプランの予約では「富山―大阪―東京往復航空券付き8日旅行」「大阪―京都―奈良6日旅行」など、2~8人の小グループ旅行や1~2日の自由行を主力としたプランが人気となりました。
“五一”休暇だけでなく、それより前の清明節でも日本は高い人気を得ました。旅行先の文化特色を重視する旅行客たちは、春には桜を目当てに日本を訪れました。愛彼迎中国のデータによると、Z 世代のユーザーによる日本の春季旅行についての検索トレンドは前年同期比7倍を超えました。過半数の愛彼迎ユーザーが「交通の要所である大阪で宿泊し、観光では京都を目的地にする」というプランで検索しています。また箱根、富士河口湖、高松などの目的地が桜の景勝地として人気が爆発的に上がり、前年同期比20倍以上になりました。
まとめ
コロナ禍の期間を抜けた中国で流行の高まりを見せる、2024年における国外旅行についてのトレンドを紹介しました。旅客便本数の回復やビザサービス便利化を背景に増加する国外旅行者は、自由行や団体旅行といった旅行形態を利用し、安いプランや文化特色を体験できる国を訪れています。今後も回復が見込まれる中国国外旅行産業が、これからどのように発展していくのかが注目されます。
参考URL
2024年出境旅游人数预计达1.3亿人次,供应链恢复进程加快
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去国外旅行,怎么比国内游还便宜了?
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封面有数丨五一假期出境游增长显著 县域旅游市场增速高于一二线城市
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春季出境游趋势报告:Z 世代组团探索多元目的地
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1794130560925925934&wfr=spider&for=pc
同程发布2024 出境游趋势报告:中国港澳受欢迎
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https://new.qq.com/rain/a/20240506A01H2S00?
早稲田大学在学中。