人気再沸騰中のアサイーって?
有名女性YouTuber中町綾さんが出店したアサイーボウル店「I♡ACAI」Instagramアカウントの画面キャプチャ
ここ最近、SNSやテレビで「アサイー」「アサイーボウル」という言葉を耳にする機会が増えています。有名な女性YouTuberである中町綾さんがアサイーを提供するお店をオープンするなど、多くの人の注目を集めつつあるのではないでしょうか。2014年頃にもアサイーブームが起こったため、懐かしく感じる人もいるかもしれません。
アサイーとは、ブラジルのアマゾンを原産とするフルーツです。日本でアサイーを販売する株式会社フルッタフルッタによると、「アサイー」は以下のように説明されています。
1粒あたり5%ほどしかない可食部にポリフェノールや鉄分、ビタミンE、不飽和脂肪酸など豊富な栄養素や抗酸化成分を蓄えていることから、現地では15世紀の大航海時代以前からアマゾンの先住民の貴重な栄養源として食されてきました。
現代では「スーパーフード」や「スーパーフルーツ」と呼ばれ人々の美と健康を支えています。
ここで、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、「アサイー」「アサイーボウル」検索者数の推移を見てみましょう。どちらも細かな増減はあるものの、2024年3月ごろから検索者数が大きく増加していることがわかります。
「アサイー(青色)」「アサイーボウル(赤色)」検索者数の推移
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
今回は、ヴァリューズのWeb行動ログデータを用いて、「アサイー」に注目している人の特徴や、彼らの興味関心を分析・考察し、今回のアサイーブームにはどのような背景があるのかを紐解きます。
アサイーに注目しているのはどんな人?
はじめに、アサイー検索者の属性を分析していきます。
「アサイー」「アサイーボウル」の検索者の中で、2つのキーワードをどちらも検索している人の割合、すなわち併用状況を見てみます。
「アサイー(青色)」「アサイーボウル(赤色)」検索者の併用状況
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
上の図によると、2つのキーワードを併用していない検索者の方が多いようです。つまり、「アサイー」の検索者と、「アサイーボウル」の検索者の属性は必ずしも一致しないと考えられます。こちらの点を念頭において、それぞれの検索者属性を見ていきましょう。
「アサイー」「アサイーボウル」検索者の男女比を見ると、どちらも約75%を女性が占めています。
「アサイー(青色)」「アサイーボウル(赤色)」検索者の男女比
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
「アサイー」自体の栄養価の高さやヘルシーなイメージが、美容に気を使う女性たちに刺さっているのかもしれません。また、バナナやいちご、ブルーベリーなど様々なフルーツやグラノーラがのった「アサイーボウル」は、写真映えしつつ栄養も取れるヘルシーなスイーツなので、女性が楽しめる要素が詰まっているのではないでしょうか。
年代割合を見ると「アサイー」検索者、「アサイーボウル」検索者ともに20代の割合が最も高くなっています。しかし、「アサイーボウル」検索者は年代が上がるにつれて割合が下がる一方で、「アサイー」検索者は40代、50代の割合もある程度高いことがわかります。
「アサイー(青色)」「アサイーボウル(赤色)」検索者の年代割合
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
「アサイー」は食品自体の名前であり、アサイーボウルの他にもドリンクやスムージーなど、様々な調理方法が存在します。アサイーに関する様々なニーズがこのキーワードとともに検索されるため、検索者も幅広い年代にわたっているのかもしれません。
一方、「アサイーボウル」の多くは写真映えと栄養価の高さを兼ね備えているため、検索者にはSNSネイティブ世代と考えられる20代の割合が高いのかもしれません。
続いて、既婚・未婚割合を見ます。ネット利用者全体と比較すると、「アサイー」「アサイーボウル」検索者ともに未婚の割合が高いようです。これはどちらのキーワード検索者でも20代の割合が高いことが影響していそうです。
「アサイー(青色)」「アサイーボウル(赤色)」検索者の既婚・未婚割合
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
アサイー検索者の関心は入手経路にある?
アサイーに興味を持っている人々がどんな検索ニーズを抱えているのかを見ていきましょう。
以下の図は「アサイー」「アサイーボウル」検索者が一緒に検索しているワード「掛け合わせワード」のネットワークを表しています。検索キーワードが第1階層に配置されており、そのワードと掛け合わせられたキーワードが第2階層に、さらに第2階層のワードと掛け合わせられたキーワードが第3階層に配置されています。
「アサイー」検索者のワードネットワーク
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
「アサイー」の第2階層にあるキーワードを見てみます。「コストコ」「業務スーパー」「カルディ」など、アサイーを購入できるお店の名前が並んでいます。いずれも幅広い食品を販売していることで有名なお店の名前であり、自宅でアサイーを食べたい人々が入手方法のひとつとして検索しているのかもしれません。特に、「コストコ」「カルディ」は海外の食品を多く取り扱っているため、輸入品であるアサイーを入手する手段として検討している人が多いと考えられます。
「タリーズ」では、アサイーを使用したドリンクやスイーツを購入できます。2024年の3月ごろには、「ヨーグルトアサイー」という商品がX(旧Twitter)で話題になり、一時期売り切れになっていました。筆者もこの商品が話題になっていた当時タリーズへ足を運びましたが、すでに売り切れてしまっておりいまだに飲むことができていません。
タリーズでは2024年5月に、数量限定で「フローズンカップ アサイーヨーグルトテイスト」が発売されました。アサイー専門店に行かなくともアサイーを手軽に楽しめるという点で、多くの人の注目を集めていたのではないでしょうか。
タリーズが提供する「フローズンカップ アサイーヨーグルトテイスト」
また、ワードネットワークによればアサイーの「効果」を知りたい人もいるようです。話題になっているアサイーにどのような効果があるのかを知りたい人が一定数いるのかもしれません。
■アサイーボウル検索者のニーズは?
「アサイーボウル」検索者のワードネットワーク
調査期間:2022年9月〜2024年8月
デバイス:PC・スマートフォン
一方、「アサイーボウル」はどうでしょうか。第2階層にあるキーワードを見てみましょう。
「東京」「池袋」は、アサイーボウルを購入できるお店を探すためのキーワードでしょう。実際にGoogleでマップ検索してみると、いくつかのお店が表示されました。写真映えする上に健康にも良いアサイーボウルの専門店を探して出かけるユーザーもいるようです。
「アサイーボウル 東京」でGoogle検索した際の検索結果(Googleマップ)の画面キャプチャ
加えて、「作り方」「レシピ」も掛け合わせて調べられており、アサイーボウルの作り方に関心を持つ人が一定数存在していることがわかります。先ほどの「アサイー」と掛け合わせられていた「コストコ」「カルディ」「業務スーパー」などで購入したアサイーを用いて、自宅でアサイーボウルを作ろうと考えて検索している人が多いのかもしれません。
加えて、「アサイー」と同様に「コストコ」も掛け合わせられているようです。コストコでは、アサイーを購入できる他に、フードコートでアサイーボウルを販売しているようです。販売価格は780円であり、外食の一般的なアサイーボウルの価格は1,000円を超える場合が多いことを考えると、かなりお手頃に感じます。手軽にアサイーボウルを食べたい人にとっては、とても魅力的な商品かもしれません。
コストコのアサイーボウルを紹介しているサイトの画面キャプチャ
アサイーブームは続くのか?
ここまでアサイー検索者の属性や検索内容を分析・考察してきました。それを踏まえて、アサイーブームが今後続くのか考察していきます。
まず、「アサイー」検索者の属性としては、以下のようにまとめられます。
①女性が約75%
②20代を中心に幅広い世代
③未婚の人が多い
また、「アサイーボウル」検索者の属性は「アサイー」検索者とあまり変わらないものの、②だけ異なる特徴を持っていました。「アサイーボウル」の検索者は20代がもっとも多く、年代が上がるごとに割合が減少しています。
「アサイー」「アサイーボウル」を検索する人々のニーズは以下のようにまとめました。
・アサイーをどこで入手できるのか知りたい
・自宅でアサイーを摂取したい
・アサイーを手軽に摂取したい
・アサイーにどんな効果があるか知りたい
・「映える」アサイーボウルを撮りたい
・アサイーボウルを一度食べてみたい
もともと、第1次アサイーブームは2013年頃に起こっていました。2013年当時と異なる点のひとつは、SNSの拡散力が格段に上昇したことです。これは、今回のブームの明暗を分ける要素になりそうです。参考までに、Instgramでは、「#アサイーボウル」や「#アサイー」など、アサイーに関するハッシュタグがかなりの件数使用されているようです。
Instagram「アサイー」の検索結果(タグ)
また、アサイーを「嗜好性が高いドリンク(フード)」だと捉えると、アサイーと同様に嗜好性が高いドリンクの代表的なものとして、コーヒーやタピオカが挙げられます。
コーヒーは日本全国どこに行ってもお店があり、家で楽しむ人も多く、日本で浸透したドリンクであると言えます。一方で、タピオカについては、一時期日本全国にタピオカ専門店が次々とオープンするほどの人気を誇っていましたが、今となってはいくつかの有名チェーンのお店が存在する程度に落ち着きました。
過去を振り返ると、タピオカ同様に一過性のブームとして消費されて終わった嗜好性ドリンクは数多くあります。一方で、長い目で見たときに、コーヒーのように国民に根づいていくカテゴリーも存在します。嗜好性が高いドリンク(フード)はブームの先を見通すのは難しいといえるでしょう。
アサイーはどうなるでしょうか。ブームの今後には引き続き注目です。
2025年4月に入社予定の大学4年生。大学ではジャーナリズムのゼミに所属。言葉に触れることが好き。音楽を聴くのも演奏するのも大好き。よりよい文章を綴れるよう日々精進中。