多くの企業が比較的長期的にCRMやカスタマーサクセスに投資
自社のCXデザイン/カスタマーサクセス部門の設立年数の調査に対する結果では、「1年未満」と回答した企業が5.9%と少なく、「3年未満」が23.7%、「5年未満」が20.3%を占めています。一方で、「10年以上」の運用経験を持つ企業が31.4%と最も多く、この結果から多くの企業が比較的長期的にCRMやカスタマーサクセスに投資していることがうかがえます。
また、「1年未満」の企業が少ない点はCRMの導入が短期的なトレンドではなく、長期的な取り組みとして定着していることを示しています。
半数以上の企業がSalesforceを利用
顧客エンゲージメント強化のために自社で利用している主なツールの調査に対する結果では、Salesforceが55.1%と最も多く利用されており、続いてZendeskが15.3%、Intercomが9.3%、HubSpotが8.5%、Gainsightが5.9%となっています。この結果から、企業の顧客エンゲージメント強化のアプローチにおいて特定の傾向が見えてきます。
Salesforceが半数以上の企業に選ばれているのは、高度なカスタマイズ性と営業、マーケティング、サポートの統合管理が可能な点にあると考えます。これにより、企業は複数の部門で一貫した顧客体験・サポートを提供しやすく、特に大規模な企業や複雑な顧客フローを持つ企業がこの点を重視していると考えられます。Salesforceの利用が多いことからも、顧客データの統合管理やエンゲージメント施策において、システムの強固な基盤が求められていることがうかがえます。
一方、ZendeskやIntercomのようなツールが一定のシェアを持っていることは、企業がカスタマーサポートやリアルタイムの顧客対応をエンゲージメント強化の要と捉えていることを示しています。特にZendeskは、顧客サポートに特化しているため、顧客の問い合わせ対応や問題解決がエンゲージメント向上に直接寄与していると考えられます。
これに対し、Intercomはチャットベースのリアルタイムコミュニケーションに強みがあるため、迅速な顧客対応が求められる業態で重視されていると考えられます。
これらのツールの利用が進んでいる企業では、顧客との即時の対話を通じてエンゲージメントを深める戦略がとられていると推察されます。
HubSpotやGainsightの利用率が低いことから、中小企業や特定の領域に特化したエンゲージメント戦略を持つ企業は依然として少数派であることがわかります。HubSpotは使いやすさとコスト効率化に優れたツールですが、エンタープライズ向けの機能ではSalesforceを選択する企業が多いため、中小規模の企業がHubSpotを選ぶ傾向にあります。
また、Gainsightはカスタマーサクセスに焦点を当てたツールですが、企業全体の戦略としてLTV(顧客生涯価値)の向上を主軸に置いている企業がまだ限られていることが、この数字から読み取れます。
エンゲージメント強化における主要チャネルはメールが最多
顧客とのエンゲージメントを強化するために主に利用しているタッチポイントの調査に対する結果では、「メール」が64.4%で最も利用されており、次いで「直接会話(電話、ビデオチャットなど)」が46.6%、「LINE」が22.0%、「Instagram」が19.5%と続いています。
メール(64.4%)が最多となっている点は、依然としてメールが顧客とのエンゲージメント強化における主要チャネルであることを示しています。メールは費用対効果が高く、個別対応やパーソナライズが比較的容易に実現できるため、顧客との継続的な関係を構築するために多くの企業で活用されています。
特に、顧客データを詳細に把握し、最適なタイミングでメールを送信することが可能かつ高度なCRMシステムを導入している企業は、エンゲージメントの強化を効率的に行っていると考えられます。
次に、直接会話(電話、ビデオチャットなど)(46.6%)の重要性が浮き彫りになっている点にも注目する必要があります。電話やビデオチャットなどの直接的なやり取りは、顧客との信頼関係を築く上で極めて有効です。
複雑な課題解決や重要な意思決定を伴うBtoB環境や高額商品の販売においては、直接的なコミュニケーションが欠かせません。CRMツールを用いて顧客の情報を一元管理し、顧客の状況に応じた的確なフォローアップを提供することで、長期的なエンゲージメントを確保できます。
この結果から、企業がデジタルコミュニケーションだけでなく、対面や電話などのパーソナルな接点を重視していることが明確です。
一方で、SNSの利用(「LINE」22.0%、「Instagram」19.5%)は比較的低い割合にとどまっています。これは、SNSが即時的で視覚的なエンゲージメントには適しているものの、CRMやカスタマーサクセスの観点から見ると、顧客との深い関係構築や複雑な課題解決には限界があるからです。特にBtoB企業や長期的な顧客関係を重視する企業では、SNSよりもメールや電話の方が効果的であることがうかがえます。
ただし、BtoCや若年層の顧客をターゲットとする企業では、SNSがブランドエンゲージメントの重要な役割を果たすため、特にカジュアルでエンターテイメント性の高いコミュニケーションが求められる場合には、SNSを強化する必要があります。
この結果から、企業が顧客とのエンゲージメントを強化するために、主にメールや直接会話といった伝統的かつ信頼性の高い手法を活用していることが明らかです。特に、CRMやカスタマーサクセス部門においては、顧客ごとの状況に応じたパーソナライズされた対応が重要視されており、これを実現するために適切なツールやプロセスが活用されています。
同時に、SNSなどの新しいチャネルは補完的な役割を果たしており、若年層やBtoCの企業で今後の成長が期待されます。
7割弱の企業に専任チームが存在
自社のCXデザイン/カスタマーサクセス部門の運営体制の調査に対する結果では、専任チームが存在する企業が66.9%と多数を占めていますが、28.0%の企業が他部門と兼任し、11.0%が外注している状況が見られます。
このことから、多くの企業が自社内でカスタマーサクセスやCRM運用を進めているものの、リソースや専門知識の不足が課題になっている可能性が示唆されます。
また、質問2では55.1%の企業がSalesforceを利用していることが分かりました。Salesforceは豊富な機能を持つ一方で、高度な設定や運用には専門知識が必要となる場合があります。
このような高機能ツールを効果的に活用するためには、導入だけでなく、継続的な最適化や改善が不可欠です。特に他部門と兼任している企業では、システムの運用に十分なリソースが割けず、CRMのパフォーマンスが十分に発揮されないリスクがあります。
このような状況では、外部のサポートを受けることで、Salesforceの高度な機能を活かしつつ、企業のリソースや知識不足を補うことが可能です。外注している企業はまだ少数派ですが、専任チームを持つ余裕がない企業にとって、ツールの活用を最適化しながら内部リソースを効率的に活用することが重要です。
全体として、この結果からは、特にリソースが限られている企業が、ツールの高度化に伴う運用の複雑さに対応するためには柔軟なアプローチが必要であることがわかります。
企業は自社の状況に応じて適切な運用体制を選び、専任チームの有無にかかわらず、ツールの効果を最大化する戦略を構築することが求められています。
半数以上の企業が顧客エンゲージメントの向上を課題視
自社のCXデザイン/カスタマーサクセスが直面している主な課題を調査した結果では、54.2%の企業が「顧客エンゲージメントの向上」を最も大きな課題として挙げており、これはカスタマーサクセスやCXデザインの成功に欠かせない要素です。
企業は、顧客との接点を強化し、長期的な関係を築くことが成長に直結するため、エンゲージメントの強化に注力しています。しかし、その達成には、パーソナライズされたコミュニケーションや適切なタイミングでの顧客アプローチが必要です。
また、33.1%の企業が「データ管理の一貫性と正確性」を課題として挙げています。顧客データの一貫した管理ができないと、顧客に対する対応がばらつくリスクがあり、結果としてエンゲージメント向上の障壁になります。
複数のチャネルやツールで収集したデータを統合し、一貫性のあるデータ基盤を構築することが重要です。さらに、24.6%の企業が「タッチポイントの最適化」に課題を感じています。顧客との接触が多様化する中でどのチャネルで、どのように顧客にアプローチするかがますます重要になっています。
効果的なタッチポイントの最適化をおこなうためには、顧客の行動パターンや好みに基づいたデータドリブンな戦略が必要です。
この結果から、企業がエンゲージメント向上とデータ管理の両方に課題を抱えていることが分かります。これらの課題を解決するためには、CRMツールの活用だけでなく、運用体制やデータ戦略を再評価する必要があると言えます。
顧客エンゲージメント強化に最も効果的な取り組みはパーソナライズされたコミュニケーションが最多
顧客エンゲージメント強化に最も効果的な取り組みを調査した結果では、「パーソナライズされたコミュニケーション」が51.7%でトップに挙げられました。これにより、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーション戦略がエンゲージメント向上に大きく貢献していることがわかります。
また、「顧客の声のフィードバックループの強化」(39.0%)や「マルチチャネルの活用」(38.1%)も多くの企業に評価されており、顧客とのやり取りやフィードバックの反映がエンゲージメントに重要であることが示されています。
パーソナライズされたアプローチが特に高く評価されている一方で、マルチチャネルの活用や顧客のフィードバックループを強化することも、エンゲージメントを深めるための有効な施策とされています。企業がこれらの取り組みを統合的に実施することで、顧客満足度の向上と長期的な関係構築が期待されます。
全体的に、顧客の声を反映しつつ、パーソナライズされた対応を通じて多角的なチャネルでコミュニケーションを行うことが、今後のエンゲージメント戦略の柱となると考えられます。
調査概要
調査実施会社:株式会社ゴンドラ
実施期間:2024年9月10日~2024年9月17日
対象:全国のカスタマーサクセス、CRM、CXデザイン業務経験がある20歳以上の男女118名
調査方法:インターネット調査
出典元:株式会社ゴンドラ
顧客エンゲージメントの現状を徹底調査!CXデザイン/カスタマーサクセスの最新トレンドと課題
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