2008年から続く「DAM★とも」の魅力
――生成AIによるインタビュー調査を実施した「DAM★とも」とは、どのようなサービスなのか、あらためて教えてください。
菅野光則氏(以下、菅野):「DAM★とも」は、通信カラオケ「DAM」と連動した会員向けサービスです。採点機能を通じて上達や成長を実感できるとともに、コラボ機能や他のユーザーとのコミュニケーションも楽しめるサービスとなっています。ユーザー同士で歌唱の録音や動画を共有できるほか、互いの歌声を重ね合わせることもできます。顔も名前も知らない相手と音声を重ねてコーラスやハーモニーを作り上げることができ、ひとつの作品として仕上げるところに魅力を感じていただけることが多いです。
株式会社第一興商 開発本部 副本部長 兼 コンシューマ事業部長 菅野光則氏。
エンドユーザー向けのカラオケ配信サービスやアプリの開発・運営のほか、Webサイトの運営なども手がける事業部にて、業務全体を統括する役割を担う。
中島恵美子氏(以下、中島):「DAM★とも」がサービスインしたのは2008年。ユーザーは40代以上が中心です。プロを目指してオーディションにチャレンジする方から、純粋に歌を楽しむ方まで、カラオケへの熱量が高い方々が多く集まっています。
現在は動画サービスや交流サービスが数多く存在しますが、サービス開始当初はそのようなものはほとんどなく、「DAM★とも」も最初は録音機能のみでした。その後、動画機能が追加され、コラボの種類も増えていきました。時代のニーズに合わせてサービスを拡充してきたかたちです。
株式会社第一興商 開発本部 コンシューマ事業部 Web運営課 リーダー 中島恵美子氏。
「DAM」や「DAM★とも」のサイト運営を担当するほか、問い合わせ対応などユーザーサポート業務などにも携わる。
サービス離反の理由を解明したい
――長く愛されてきたサービスですね。課題と感じることはありますか?
菅野:サービスからの離反理由の特定が難しかったことです。熱量の高いユーザーが離れていった理由を明らかにし、戻ってきていただくきっかけを深掘りしたいと考えていました。
中島:「DAM★とも」ユーザーは熱量が高い方が多く、ファンイベントなどにも全力で参加してくださいます。そのような熱量の高い方々でも、なぜ離反してしまうのか。その理由を特定できれば、より長く、より良いサービスを届けられるのではと思っていました。
会員向けサービス「DAM★とも」では、お店で自分の歌っている姿を撮影して、サイトで再生や公開ができるサービスを提供。ローンチ後20年近くにわたり、カラオケをより深く楽しみたいユーザーの受け皿となってきた。
菅野:他のコミュニティサービスが同様の課題にどのように取り組み、解決しているのかについて知りたいと考えていたタイミングで、ヴァリューズさんのことを知りました。試しにウェビナーを受講してみたところ、会員組織をいかに醸成していくかという事例が印象に残りました。そこでヴァリューズさんに協力いただきながら、「DAM★とも」で生成AIを活用したオンラインインタビュー調査「NautsHub(ノーツハブ)」の導入を決めました。
これまでマーケティング調査や業界の定点・定量調査は多数実施してきましたが、生成AIを活用したインタビューは初めての試みでした。社内でも生成AIの活用を積極的に進めていることもあり、利用に対する抵抗感や違和感はほとんどなく、むしろどこまで深い調査ができるのかという期待と興味を持って臨みました。
ユーザーの本音を引き出す調査設計
――離反理由を特定するため、ヴァリューズは、どのようにオンラインインタビュー調査の設計に取り組んだのでしょうか。
株式会社ヴァリューズ 竹川勇次:まず離反理由を「環境の変化によるもの」と「機能へのストレスによるもの」に分類し、その上で調査設計と質問の順序を検討しました。
特に気をつけたのが質問の順番です。「なぜ辞めたのか」を最初に聞くと、「お金がなくなったから」「使いたい機能がなかったから」といった答えに集中することが、過去の似たような調査から経験的に分かっています。しかし本当に知りたいのは、その背景にある不満や不安です。
そこで、まずサービスを使う中で感じた不安や不満を丁寧に掘り下げ、その後に離反の直接のきっかけを尋ねる順序で設計しました。「利用中の不満」と「最終的に辞めた理由」を切り分けて聞くことで、より実態に近い回答を引き出せると考えたためです。
菅野:従来の5段階評価のようなアンケートでは、傾向はある程度把握できるものの、回答の背景にある本音や気持ちまでは読み取りにくいという課題がありました。それに対して今回はインタビュー形式での深掘りが可能となり、数値では見えにくかったユーザーの本音に触れることができました。
ヴァリューズによる、生成AIを活用したオンラインインタビュー調査プラットフォーム「NautsHub(ノーツハブ)」。生成AIが聞き手になり、多数の生活者に自動でインタビューを実行することで、高速・低コストのインタビュー調査を実現。
得られた納得感と次の一手への道筋
――今回のインタビュー調査を行ってみて、期待していたような回答を得られましたか。また、新しい発見はありましたらお聞かせください。
中島:2008年にサービスインした「DAM★とも」は、運営期間が長くなるにつれユーザーの年齢層も上がっています。20代、30代、40代と年齢を重ねる中で、生活環境や交友関係、使えるお金の幅も変化するものです。有料会員の継続が難しくなる背景には、こうしたライフスタイルの変化が関係していることが示唆されました。
以前は熱心な「DAM★とも」ユーザーだったものの、カラオケから遠ざかっている人からは、「子供が手離れしたら戻りたいが、今は課金には至らない」という声も聞かれます。こうした層に対応するためには、スポット利用やライフスタイルに合わせた料金プランの拡充も案のひとつだと考えています。
菅野:長年「DAM★とも」に携わってきたメンバーの経験や勘による「おそらくこうではないか」という仮説が、調査によって裏付けられました。「やはりそうだったか」という納得感を得られたことが、大きな収穫のひとつだったと思います。
中島:有益な結果が得られたため、優先順位をつけながら改善に取り組んでいきたいと考えています。チーム内でも、具体的な施策につながりやすい形で共有できたと感じます。他部署への説明においても、データとして提示できる根拠があることで、話がスムーズに進みやすくなりました。
そして何より、ユーザーの熱い思いをあらためて実感しましたね。今回の調査対象は、離反された方々だったため、「協力していただけないのでは?」といった懸念もありましたが、実際には多くの方々が丁寧に回答してくださいました。「もっと良いサービスになってほしい」という思いが、サービスから離れても残っていることの表れではないかと感じています。
また、ヴァリューズの担当者の方は、調査に先立って実際に「DAM★とも」を体験していただくなど、サービス理解を深めてくれました。ヴァリューズの担当の方はサービスそのものに向き合ってくれているように感じていて、そうした姿勢が、ユーザーの実感に寄り添った調査設計につながったのではないでしょうか。
――調査結果から次の一手につながる示唆を得られたことがわかりました。最後に、今後の展望をお聞かせください。
菅野:今後も、多くの方々にカラオケや音楽を楽しんでいただけるようなサービスを届けていきます。また、「DAM★とも」のユーザーには1人で楽しまれる方も多いですが、音楽を通じたコミュニケーションや、みんなで楽しめるようなコンテンツやサービスも作っていきたいと考えています。
取材協力:株式会社第一興商
【本事例のサービス】NautsHub|生活者の声を効率的に集め企画案に変換するためのリサーチプラットフォーム
https://www.valuesccg.com/nautshub/NautsHubは生活者の声を効率的に集め企画案に変換するためのリサーチプラットフォームです






IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。