検索急上昇ワードデータでは「タイムリー性」が重要
今回は、ヴァリューズの保有するネット行動ログデータから、コロナ禍のゴールデンウィーク期間にあたる2020年5月4日〜10日における検索急上昇ワードをTableauで可視化。データを実際に見ながらオンラインでインタビューを行いました。
図:週間キーワードデータ(サンプル)
期間:2020年5月4日〜10日
デバイス:PC&スマートフォン
マナミナ編集部(以下編集部):最近はコロナ影響下からの消費者ニーズを捉えたいといった話など色々出てきているかと思うのですが、こういった検索ワードデータから見えることや、また、このデータ自体の特徴についてお聞かせください。
後藤:今一番求められているのは「タイムリー性」だと思います。「緊急事態宣言」が解除されたら人はどう動くのかという状況を予測するのには、月次のまとまったデータではタイミングも若干ずれてくるので、消費者の気持ちの盛り上がりの瞬間を掴むには、ちょっとしたことでも「タイムリー性」が重要と考えている人が多い気がしますね。
もちろん時間をかけた詳細な調査も、それは別物として必要ですが、このヴァリューズのデータのように、ざっくりとではあるけれど、「消費者がどう動いているのか」を、毎日新聞を読むようにさっと見られるデータはとても便利で貴重だと思いますね。
岩村:そうですね。あと、ヴァリューズのデータは世の中の人々の行動が見られるという、言うなれば当たり前ではあるんですが、それが良いところですよね。
他人の行動というのは、自分の眼鏡では見えない「自分の仮説や想定を超えるもの」であって、それを見ることができることにとても価値を感じます。
データに現れていることから裏を読み解くと、世の中の動向が読めるということ。自分の知らない世界の動向が見られるということがこのデータの面白いところだと思います。
後藤:マーケターであれば、自分の価値観とかサイコグラフィック、デモグラフィックだけでは世の中を語れないというのは分かっているはず。
色々なデータを見れば見るほど解釈は難しくなるのですが、そこを敢えてこうした検索データやタイムリーなデータを見るのは必要だと思います。
岩村:それともう一つ、こういったタイムリーでざっくりとしたデータを見る良い点は、「自分の違和感を押さえる」ということだと思うんです。
データを見ながら出てきた「違和感」を一つ一つ分析していくと、非日常の行動につながった「兆し」の発見に結びつくのではないかと思います。
「ショッピング」カテゴリでのプロモーション施策の成功例
編集部:では実際にデータを見て頂いて、気になるワードなどはありましたか?
後藤:まずは「ショッピング」のカテゴリですね。
例えばこのデータでいうと、上昇率の高かった「ジョーシン」を調べてみると、実は任天堂Switchの抽選販売をしてるというプロモーションの効果が見えたり、「高島屋」が休業要請解除から一足先に店舗を開店させるという告知を出して注目を集めていたりという、これからの結果につながると連想させるような、いま時点のPRの差が、このデータからは見つけられるんです。
図:「ジョーシン」検索データ
図:「高島屋」検索データ
後藤:あと次にサブカテゴリで「日用品」を選択して見てみると、「花王」の検索が伸びていることを知ったんです。別のデータで見ても月次ですごく伸びていた。単純に何故だろうと、ここで「気づき」がありました。やはりコロナ影響下で何かあったかな、と。
岩村:今の除菌・殺菌の必要性などの観点からか、商品自体も伸びているみたいですよ。そして、そもそもの企業認知度の高さも推測できます。
コロナ環境下で「花王さんに頼ろう」というような50代女性が多いといった属性結果も見えますね。
図:「花王」検索データ
後藤:これらのいくつかの例を見てみても、多少ノイズが入ったり結果の持続性は担保できないところはあるとしても、消費者の急な行動変異を掴める週次データは有効と言えるのではないかと思います。
コロナ禍でも有効なPRの存在をデータから発見
後藤:先ほど「違和感」という話がありましたが、「石屋製菓」の検索が伸びていたのも、それこそ自分にとって最初は「違和感」でした。早速調べてみたところ、通販サイトで該当商品を購入すると、「石屋製菓」が「白い恋人で北海道にエール!BOX」という商品を企画し、売上の一部を新型コロナウイルス感染症に立ち向かう地域医療へ寄附するというニュースが出てきた。今の状況に適したPRをうまく行っていると実感しましたね。
図:「石屋製菓」検索データ
岩村:コロナ禍という影響を、CSRマーケティングという観点で上手くマーケティングにつなげている例の発見ですね。
後藤:昨今のテイクアウトのモデルも同じように言えると思います。
そもそもは外食産業への支援が発端だけど、毎食自宅で食事を作る人に休んでもらう事にもにもつながりますよね。一方的な享受じゃなくて「これを購入すると自分の幸せが誰かの喜びになる」という良いイメージが持てるし、実に上手いPRをしているなという例ですね。
岩村:サントリーのさきめしも同様のマーケティングに当てはりますね。
後藤:こんな時だからこそ、上手く企業ブランドイメージを上げているという事例を、このデータから見つけ、今後にも活用できるのではないでしょうか。
まとめ
Tableau上でカテゴリを色々と選択し、様々なキーワードで話が盛り上がる中、最新のトレンド情報を求めるクライアントさんとの話題や、調査におけるデータのありようについても興味深い発言が多く聞けたインタビューでした。
その中でも、アンケート調査や時間をかけた行動ログ分析も重要な一方で、「タイムリーに消費者のトレンドを掴む手段も重要である」ことや、「”労力をかけず日常的に”消費者の動向をサーチし、そこで見つけた”違和感”に”兆し”を発見することが大事である」という意見は特に印象的でした。
様々なニーズに応えるべく、ヴァリューズの豊富かつリアルタイムで収集されるビッグデータを大いに活用した今回の週次キーワードデータ。マーケターのみなさんに必携をおすすめしたいツールのひとつとなりそうです。
マナミナ 編集部 編集兼ライター。
金融・通信・メディア業界を経て現職。
趣味は食と旅行。