スマホ時代に「紙の手帳」がブーム!人気の背景を調査

スマホ時代に「紙の手帳」がブーム!人気の背景を調査

書店や文房具店にズラリと並ぶ手帳。2024年は、手帳の売り上げが前年から4割も増えた店舗もあったとか。なぜ今、紙の手帳が盛り上がりを見せているのか、どんな人が注目しているのか、ニーズや使い方とあわせて調査しました。


売り上げ4割増!あえて「紙の手帳」を選ぶワケ

近年、様々なスケジュール管理アプリが登場している中で、紙の手帳に注目が集まっているのをご存じですか?

2024年11月4日に公開された日テレNEWSのYouTube動画によると、10月の渋谷ロフトの手帳の売れ行きは、前年同月比4割増になったそうです。手帳の使い道としては、体調や思い出記録の他、推しのライブやチケット販売のスケジュールをメモする、推し活用途も挙げられました。

チケットやレシート、パッケージなど、その日にあったことを貼り付けることで「かさ」が増し、「生きた証」になるところも紙の手帳の魅力だとか。好きなところに書き込んだり、切り貼りしたりできるのも、アナログだからこそ誰でも自由度高く楽しめる要素といえそうです。

今回はブラウザ上の「手帳」検索データから、ニーズが高まるタイミングや、「手帳」関心層の人となりを探っていきます。

「手帳」検索者は10月にピーク傾向

まず、2021年から4年間の、「手帳」検索者数の推移を見てみましょう。
なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

「手帳」検索者数の推移

「手帳」検索者数の推移
期間:2021年10月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

2021年は12月、2022~2024年はいずれも10月に検索者数のピークを迎えています。「来年こそ新しいことを始めたい」という層が、年末が近づくタイミングで手帳を買い始めるのかもしれません。また、10月は1月始まりの手帳が発売され始めるタイミングでもあることから、新年の手帳をいち早くチェックしておきたい、という手帳好きな層の存在もうかがえます。

年間の推移を見ると、ピーク時の検索者数は4年間で徐々に減少しています。ブラウザで手帳を検索する人は全ユーザーのうち一部で、SNSの発信で手帳の良さを知り、後に店頭に並べられた商品を目にして購入する人が増えているのかもしれません。

「手帳」に関心が高いのはどんな人?

女性が7割、30~40代がボリュームゾーン

ではどのような人が「手帳」検索をするのでしょうか。
検索者の男女比を見ると、女性が約7割と大半を占めています。

「手帳」検索者の男女比

「手帳」検索者の男女比
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

検索者の年代割合では、40代が約30%とボリュームゾーンであり、次いで30代が約25%となっています。

「手帳」検索者の年代割合

「手帳」検索者の年代割合
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

検索者の子供の有無を調べると、「子供なし」が60%を超えています。子供関連のイベントのスケジュール管理というよりは、自己管理を目的に手帳を活用する人が多いのかもしれません。

「手帳」検索者の子供の有無

「手帳」検索者の子供の有無
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

本好き・勉強熱心な自己実現タイプ

ここからはさらに「手帳」検索者の人となりを深堀りしていきましょう。
Web行動データとアンケートデータを用いたペルソナ分析やクラスタ分析で、誰でも簡単に顧客理解ができる、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用いて分析を行います。

まず、検索者の主な情報収集媒体です。「インターネット」の次に「書籍」「SNS」が続いており、習慣的に読書を行う層であることがうかがえます。

「手帳」検索者の情報収集媒体

「手帳」検索者の情報収集媒体
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

余暇の過ごし方を見ても、やはり「読書」がリーチ率、特徴値(※)ともに高く出ています。「勉強」も高いことから、自己成長、自己実現意欲の高い層が多いといえるのではないでしょうか。

※リーチ率:対象者のうち、アンケートで当該項目に回答した人数の比率
※特徴値:対象者のリーチ率−ネット人口全体のリーチ率

「手帳」検索者の余暇の過ごし方

「手帳」検索者の余暇の過ごし方
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

「SNSの視聴」についても情報収集媒体と同様、余暇の過ごし方として特徴的でした。また、「音楽鑑賞」や「イベント、コンサートへの参加」も高めに出ていることから、推し活文脈での手帳の活用もメジャーになってきていそうです。

「推しとの思い出を楽しくキロクする 推し活ライフ手帳2024」

気に入ったものへの投資は惜しまない

購入時の重視点では、「口コミ・評判」が最も高くなっており、SNSに投稿された口コミによって、手帳の購入を後押しされる人が多そうです。その他「ブランド」「デザイン」「機能・性能」が高く出ているのに対し「値段」が低くなっており、「気に入ったものなら少々値段が張っても買う」「自己投資は惜しまない」という層が多いことがうかがえます。

「手帳」検索者の購入時の重視点

「手帳」検索者の購入時の重視点
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

「ほぼ日」「ロルバーン」「高橋書店」などを検索

続いて、「手帳」検索者がどのような行動を取っているのか探っていきます。

まずは検索者に特徴的な検索キーワードです。
手帳の種類として、「システム手帳」「バーチカル」「スケジュール帳」、手帳のメソッドとして箇条書きで自分の行動や思考を管理する「バレットジャーナル」が上位に挙がりました。

「手帳」検索者の特徴的な検索キーワード

「手帳」検索者の特徴的な検索キーワード
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

手帳ブランドとしては「ほぼ日手帳」「ロルバーン」「ジブン手帳」「トラベラーズノート」が、手帳を取り扱う企業としては「高橋書店」「ラコニック」「ロフト」が挙がっています。

高橋書店のホームページ

LACONICのホームページ

紙の手帳ブランド・ECの他、「手帳の配信サイト」も

以下は、「手帳」検索者が閲覧した特徴的なサイトです。
「NOLTY」「高橋書店」「和気文具」「LACONIC」「マークス」「ミドリ」「マルマン」といった文房具系のブランドやメーカー、ECサイトの他、オリジナル手帳のテンプレート配信サイト「F-MEMO」も上位ランクインしており、自分に合ったデザインやスタイルの手帳を模索している様子がうかがえます。

「手帳」検索者の特徴的な閲覧サイト

「手帳」検索者の特徴的な閲覧サイト
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:PC&スマートフォン

利用アプリに見る、手帳の使い方

お気に入りの画像をプリントして、自分らしい手帳へ

最後に、検索者に特徴的な利用アプリのランキングを見ていきましょう。
特徴値2位には「Canon Mini Print」がランクイン。同じくキヤノンのミニフォトプリンターと連携して、画像をシール用紙にプリントできるというサービスで、手帳にお気に入りの画像を貼り付けて楽しむ様子がうかがえます。手帳で「自分らしさ」を出す上で、こうしたサービスの需要は高そうです。

「手帳」検索者の特徴的な利用アプリ

「手帳」検索者の特徴的な利用アプリ
期間:2023年12月~2024年11月
デバイス:スマートフォン

手帳とスケジュール管理アプリを併用

その他、ToDoリストや日記・メモ系のアプリとして「ROUBIT」「Evernote」「Google ToDo リスト」「引き出し日記」「Focus To-Do」などが挙がりました。その場でさっと書き込んだり確認したりする用途で、デジタルツールを紙の手帳と併用している人が多いのかもしれません。「Focus To-Do」の機能のように、「ポモドーロタイマー」(25分間の作業と5分間の休憩を繰り返す時間管理術)を使って集中してタスクをこなそうという意識の高さもうかがえます。

「旅のしおり」からは、相手と一緒に旅行の計画を立て、思い出をちゃんと残したいという手帳ユーザーの傾向も見ることができました。

メンタル・体調管理の意識も高い

「Awarefy」「頭痛ーる」といったアプリがランクインしていることから、メンタルや体調の把握・管理ニーズも読み取れます。上のYouTube動画では、「手書きの文字の様子で、体調の変化がわかる」という手帳ユーザーのコメントもありました。デジタルの良さも活かしながら、自分としっかり向き合う人が多いと考えられます。

まとめ

今回は、「手帳」検索者のデータを用いて、どのような人が、どのようなニーズのもと手帳を活用しているのか、考察してきました。最後に、調査で分かったことをまとめていきます。

「手帳」検索者数は、ここ3年間は10月にピークを迎えています。検索者は女性、30~40代がボリュームゾーンで、「本好き・勉強熱心な自己実現タイプ」「気に入ったものへの投資は惜しまない」といった特徴がありました。

検索者の行動としては、「ほぼ日」「ロルバーン」「高橋書店」「LACONIC」「NOLTY」といった手帳ブランドやECサイトの他、自分でダウンロードして使う「手帳の配信サイト」も見られていました。

検索者の利用アプリからは、手帳の使い方も見えてきました。お気に入りの画像をプリントアウトして、自分らしくカスタマイズしたいというニーズや、「紙の手帳派」と割り切るのでなく、メモ・スケジュール管理アプリと使い分けている人の存在がうかがえました。デジタルツールを利用して、メンタル・体調管理に役立てるという人も多そうです。

最近は、「レトロブーム」のように「デジタルから離れて、ちょっと不便なものを使って自分らしさを出したい」という人や、「形がある状態で手元に置いて、自分の足跡を残していきたい」という人が増えてきている印象があります。スマホ時代に紙の手帳に回帰する人が増えているのも、そうした背景があるのではないでしょうか。

「新しいことを始めたい」という人が増えるタイミング。2025年、手帳がさらなるブームを見せるのか、引き続き注目していきたいと思います。


▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

▼また、生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』も使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

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この記事のライター

1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。

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