大手ラジオ局のファン層はどう違うのか?Webサイトのユーザー属性からポジショニングの違いを考察

大手ラジオ局のファン層はどう違うのか?Webサイトのユーザー属性からポジショニングの違いを考察

最近注目が集まる音声コンテンツ市場。「耳の暇」の解消という切り口が以前から指摘されていましたが、新型コロナによる社会変化の影響もあいまって、ラジオもじわじわと人気が高まってきています。本記事では、市場分析ツール「eMark+」を使用し、大手ラジオ局のWebサイトユーザー数やその属性から、各社のファン層を分析しました。


ラジオ局主要5局の特徴を調査

音声コンテンツ市場が近年勢いを増しています。

「耳が寂しい」という人も散見される2020年、マナミナでも過去にインターネットに根差した音声コンテンツの比較紹介を行いました。

音声コンテンツ市場を調査。radiko利用者は700万人超、Voicyは若者に人気 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

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注目が集まる音声コンテンツサービス「radiko」「audible」「Voicy」の違いとは? ユーザー数とデモグラフィック属性を調べ、サービスの特徴を考察しました。

さて今回は、音声コンテンツの中でも長い歴史を誇るラジオに注目して、ラジオ局各社のWebサイトのユーザー数や、ユーザー属性を分析してみましょう。

まずは、今回比較分析の対象とするラジオ局大手5社について簡単に紹介していきます。

1.TBSラジオ

TBSラジオは長きにわたって大手でありつづける老舗のラジオ局です。

開局は1951年。2020年1月からは「何かが始まる音がする」というコーポレートメッセージとともに、新時代においてもますます発展していく意気込みを見せています。

長い歴史を誇る当局は数十年続く番組も抱えており、比較的高い年齢のリスナーからも支持を集めているとされています。

アナウンサーは自社では雇っておらず、TBSのテレビアナウンサーが兼業しているため、テレビ世代にも親しみが持ちやすいのではないでしょうか。幅広いユーザーの支持を集める大手局です。

2.TOKYO FM

株式会社エフエム東京が運営するラジオ局。キャッチコピーは「Life time audio 80.0」と、国際的でモダンな印象です。

歴史は長く、1960年に開局。当初は、東海大学のプロジェクトで生まれたラジオ局でした。

そのため80年代後半までは「高校教育通信講座」などアカデミックな放送も行っていましたが、その頃ライバル局の増加などの理由で放送内容が変容し始め、現在は有名人を迎えた生放送のトーク番組がメインとなっています。

3.文化放送

文化放送は今回ご紹介する中でも最も歴史のながいラジオ局です。

文化放送の前身となる宗教放送ネットワーク設立の計画は、1948年にはすでに行われていました。

当局は報道でも活躍を見せてきたほか、アニメなどのいわゆるサブカルを扱った番組も世に放ち人気を博してきました。

4.J-WAVE

J-WAVEは1988年に設立された、大手ラジオ局の中では比較的若い局です。「西武百貨店」や「パルコ」のセゾングループ、「109」の東急グループなどが主に出資し、おしゃれ感のある若者に響くラジオ局としてはじまりました。

今や多くの人に親しまれている「J-POP」という用語は、なんとJ-WAVEの番組の中で発見、定義されたとされています。

開局当初から国際色が強く、バイリンガルのナビゲーターを起用したり、国際ニュースの発信、また、当時は日本では普及していなかった「特定のジャンルの音楽を流し続ける」という試みなどが人気を博しました。

2020年8月現在の会社としてのステートメントは「For the Unique and Universal」、ミッションは「声と音楽と行動で、多様な東京の風景を作る」となっています。

5.ニッポン放送

ニッポン放送は1954年に開局した老舗です。

2020年4月からのキャッチフレーズは「いつでも一緒 ニッポン放送」。流行に敏感なラジオ局として知られるニッポン放送にふさわしいものとなっています。

誰もが知る「オールナイトニッポン」など、バラエティ色の強い番組が有名です。

ラジオ局サイトのユーザー数は今年2月〜4月に増加

※対象デバイスはPC&スマートフォン合算

それでは、各局のWebサイトのユーザー数を見てみましょう。

2020年2月から4月にかけては各社ともにユーザー数が増加しています。コロナ禍に伴うロックダウンによる需要の増大があったのではないでしょうか。ロックダウンが解除された4月より、おおむねユーザー数が減少していった傾向が見られます。

ニッポン放送は2019年12月から1月にかけて、ユーザー数が3分の1ほどまで減少しています。これは、2019年12月の「ニッポン放送 NEWS ONLINE」というニッポン放送の番組の内容を文字で読めるニュースサイトのリリースと時期を同じくしており、ユーザー数がニュースサイトの方に移行したからと思われます。

文化放送は若年層が多く、J-WAVEは40代が多い

次に、各ラジオ局のWebサイト訪問者のユーザー属性ごとに各局の特性を分析していきましょう。

1.年代

年代別ユーザー割合(上から、TBSラジオ、東京FM、文化放送、J-WAVE、ニッポン放送)
※対象デバイスはPC&スマートフォン合算

まずは年代別で比較してみましょう。最も顕著なのは、文化放送のWebサイト訪問者の年齢層の若さです。サイト訪問者=リスナーとまでは言い切れないものの、全体の40.6%を20代の若年層が占め、30代も含めると54.7%と過半数を占めることになります。

2番目に20代のユーザーが多いTOKYOFMの20代割合は21.1%と、文化放送のほぼ半分であり、文化放送の若年層比率の際立った大きさがわかります。サブカルに注力する文化放送の戦略と、現代日本においてラジオを聴く層の需要が合致した結果でしょうか。

他に特筆すべきは、意外にも若者向けのおしゃれなラジオ局の印象があるJ-WAVEが幅広い年齢層のユーザーから支持されている点です。先述の通り、長寿番組を抱えるTBSラジオも40代、50代からの支持はあついのですが、40代のみを比較すると最も割合が高いのはJ-WAVEで、全ユーザー数の31.9%を占めています。

2.性別

年代別ユーザー割合(上から、TBSラジオ、東京FM、文化放送、J-WAVE、ニッポン放送)※対象デバイスはPC&スマートフォン合算

性別でユーザー属性を比較すると、TBSラジオの男性ユーザーの割合が60.4%と高くなっていることがわかります。最も男性割合の低いJ-WAVEの51.5%と比較すると、8.9ポイント高いことがわかります。

まとめ

以上を踏まえて、ラジオ局大手5局のWebサイトについてまとめてみましょう。

1.全体を通して
COVID19の流行とそれに伴う緊急事態宣言の発令などのためか、2020年2月から4月にかけてラジオ局を問わずユーザー数が大いに増えました。2020年4月から6月にかけて、ユーザー数はそれ以前の水準に戻ったと言えそうですが、7月に入りまた全局押しなべて微増傾向にあり、今後ユーザー数が増えていく兆しとも見て取れます。

2.TBSラジオ
TBSラジオは2020年8月現在、ユーザー数において他局を圧倒しています。ユーザー属性は男性が6割を超えているのが特徴です。しかし、年代別に分析すると幅広い年齢層に支持されていることがわかります。

3.文化放送
文化放送の最大の特徴は、若年層のユーザーの多さです。20代のユーザーが4割と、他局のおよそ2倍の割合でした。また、男女比も比較的1対1に近く、文化放送の特徴は、そのユーザーのバランスの良さと言えるのではないでしょうか。

4.J-WAVE
J-WAVEは、設立当初のおしゃれなコンセプトや、国際志向から「東京の若者むけ」という印象が持たれがちですが、今回比較した大手5社の中では最も40代以上のサイト訪問者割合が高いラジオ局という結果になりました。

ただし、50代割合や60代以上の割合においてはトップでないことから、J-WAVEが人気を集めた80年代後半から90年代にかけて「流行に敏感な若者」であった世代がそのまま継続して聴取しており、このような年代分布、性別分布になったという可能性も考えられます。

5.ニッポン放送
ニッポン放送はTBSラジオとならび男性ユーザー割合が高く、男性ユーザーに対する求心力が比較的高いと言えそうです。

6.TOKYOFM
TOKYOFMに関して注目すべきは、そのユーザー数推移の堅調さではないでしょうか。文化放送やニッポン放送のユーザー数が大きく変動し他のに対し、堅実なユーザー数推移をみせるTOKYOFMは、2020年7月現在TBSラジオについでユーザー数が2位となっています。

年代別に見ると比較的40〜50代のユーザーが多いことがわかりました。

今回は各ラジオ局のユーザー属性を概観しました。分析に使用したのは市場・競合調査サービス「eMark+(イーマークプラス)」です。eMark+の無料機能では、ユーザー数やデモグラフィック属性といった基本指標を簡単にチェックできます。今後の市場動向が気になる方は、ぜひご自身の手で確かめてみてください。

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分析概要

全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、ラジオ局大手「TBSラジオ」「TOKYOFM」「文化放送」「J-WAVE」「ニッポン放送」の各公式Webサイトのユーザー数とユーザー属性を調査、各サービスのポジショニングをメインにそれぞれの特徴を分析しました。

※対象期間:2019年8月~2020年7月
※ユーザー数:該当サイトを訪れたUnique User数
※ユーザー数やセッション数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

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この記事のライター

ウィーン大学への留学を経て京都大学文学部卒業。
外資系大手ITコンサルティング会社に勤務後、フリーランスライターに転向。

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