外出自粛で需要増のYouTube。ユーザー数を伸ばしたチャンネルは?

外出自粛で需要増のYouTube。ユーザー数を伸ばしたチャンネルは?

コロナによる外出自粛の影響を受け、需要が増加しているYouTube。ユーザー数を伸ばしたチャンネルは?ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「eMark+」を使用し、2020年3月のデータから動画共有サービス「YouTube」について調査・分析しました。


外出自粛による需要増加により、回線混雑が話題になった大手動画共有サービスYouTube。YouTubeは需要に応えるため、4月いっぱいビデオ再生画質のデフォルトを標準画質にするなど対策を講じてきましたが、メディア消費量の増加は今後も継続すると予想されています。また#StayHomeとともに、インドアでも楽しめるコンテンツを増やす取り組みを開始。クリエイターたちに自宅でのアクティビティを楽しむためのコンテンツ制作を促し、国内では芸人やタレントの公式チャンネル開設も見られます。そこで本調査ではYouTubeを分析し、コロナによる影響の実態を明らかにすることを試みました。

利用者を伸ばしたユーザー属性は?

まず、ユーザー数やPV数の月次推移はどうなっているのでしょうか?
ユーザー数について、中国で初の感染者が発生しコロナウイルスの存在が広く認知され始めた2019年12月からの推移を見てみます【図1】。

ユーザー数は19年12月時点で約7800万人、20年3月には約8100万人と増加はしているものの、増加率は約103%と比較的緩やかです。ユーザー数の月次推移を年代別に見ると【図2】、特に20代、40代、60代以上で増加が見られます。増加数が最も多いのは40代で、12月から3月にかけての増加率は約125%でした。

【図1】YouTube利用ユーザー月次推移・デバイスはPC&スマホ

【図2】YouTube属性別利用ユーザー月次推移・デバイスはPC&スマホ

一方のPV数ですが【図3】、12月時点では約45億PV、3カ月後の20年3月には57億PVを記録し、増加率は約126%に達しました。特に2月から3月の1カ月間での増加が著しく、前2カ月の増加数を上回りました。

また訪問数を見ると【図4】、PV数同様に特に2月から3月にかけての増加率が116%と顕著でした。コロナが本格的に猛威を振るい始めた2月からの変化が大きいことが分かります。

【図3】YouTubePV数月次推移・デバイスはPC&スマホ

【図4】YouTube訪問数月次推移・デバイスはPC&スマホ

訪問数の推移を男女別に見ると、3か月の増加率は女性【図5】が約132%と男性【図6】が約120%であるのに対して比較的大きく、PV数の月次推移でも同様の傾向が見られました。

【図5】YouTube女性訪問数月次推移・デバイスはPC&スマホ

【図6】YouTube男性訪問数月次推移・デバイスはPC&スマホ

2020年3月の男性急上昇コンテンツ1位は?

では、どのようなコンテンツがよく閲覧されているのでしょうか?「eMark+」の「Site Analyzer」を用いて男女別に急上昇コンテンツを調べます。まずは男性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキングしました【図7】。以下のトップ20をご覧ください。

【図7】男性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキング化(2020年3月)

【図7】男性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキング化(2020年3月)

※デバイス:PC

男性のコンテンツランキング前月比トップ20には、アーティストや芸人の公式チャンネルが目立っています。それではさっそく、ランキングの1位から3位までを詳しく見ていきましょう。

1位:Johnny's official channel(ジャニーズオフィシャルチャンネル)

eMark+では、2020年3月の男性ユーザー数増加率1位は「Johnny's official channel」(ジャニーズオフィシャルチャンネル)でした。コンテンツを見ると、手洗い動画などこの時期ならではのコンテンツの再生回数が伸びている他、外出自粛を受けて少しでも視聴者に元気と笑顔を届けたい想いからと配信されているライブ映像もユーザーを集めているようです。

2位:avex(avax公式チャンネル)

第2位は大手音楽レーベルのavex(エイベックス公式チャンネル)でした。ユーザー数が大きく伸びたのはなぜでしょうか?
実際にチャンネルを見ると、avexも在籍アーティストのMV公開や、V6や浜崎あゆみ、AAAなど大物アーティストのLIVE映像の期間限定配信など、自宅で楽しめるコンテンツを充実させたことが、ユーザー数の増加に繋がっているようです。男性急上昇ランキングトップ20からは外れたものの、在籍アーティストの浜崎あゆみさんの公式チャンネルも上位に入っていました。

3位:グランブルーファンタジー公式チャンネル

第2位までのユーザー数増加は外出自粛の影響と推察されますが、3位にランクインしたのは、ケータイRPGゲーム「グランブルーファンタジー」の公式チャンネルでした。3月10日で配信開始から6周年を迎えたことが盛り上がっている理由のようです。

2020年3月の女性急上昇コンテンツは?

次に、女性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキングしました【図8】。以下のトップ20をご覧ください。

【図8】女性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキング化(2020年3月)

【図8】女性訪問ユーザー数の前月比が高い順にチャンネルをランキング化(2020年3月)

※デバイス:PC

女性のコンテンツランキングトップ20には、男性とは大きく異なる顔ぶれが並びました。特に目立ったのは、Vチューバー(バーチャルユーチューバー)で、上位20に4つ含まれていました。こちらもランキングの1位から3位までを詳しく見ていきましょう。

1位:Kaguya Luna Oficial(輝夜月オフィシャルチャンネル)

女性ユーザー数増加率の1位はKaguya Luna Official、Vユーチューバーの輝夜月(かぐやるな)公式チャンネルでした。#StayHomeがついたコンテンツや、コロナを意識したコンテンツは特に見られませんでした。

2位:inliving(インリビング)

女性2位のinlivingは料理やライフスタイルに関するコンテンツを中心に動画投稿をされているユーチューバーです。「おうち時間が楽しくなる10の習慣」など外出自粛要請を受けてのコンテンツを投稿されていました。自宅で過ごす時間をいつもより少し質を良くしたい、楽しくしたいというユーザーが視聴しているのかもしれません。

3位:獅子神レオナ/レオナちゃんねる

1位同様、3位にもVユーチューバーがランクインしました。3位はVチューバー、獅子神レオナ/レオナちゃんねるです。チャンネルを見ると、「歌ってみた」などのコンテンツが人気のようでしたが、現在話題沸騰の「あつまれどうぶつの森」に関するコンテンツなども見られました

番外編

ここから番外編として、時勢を反映している特徴的なチャンネルを紹介します。

20代女性の急上昇5位はNintendo公式チャンネル

ユーザー属性を20代女性に絞ってランキングを作成したところ、第5位に昨月比652%でNintendo 公式チャンネルがランクインしました。同チャンネルは任天堂がゲームに関する情報やコンテンツの配信を行っていますが、ユーザー数の増加は大ヒットしているNitendo Swithのゲームソフト「あつまれどうぶつの森」(通称:あつ森)の影響と推察されます。チャンネルを見ると、あつ森の生配信動画やCM動画などのコンテンツが再生回数を伸ばしていました。

首相官邸(首相官邸公式チャンネル)も全体ランキング上位にランクイン

内閣官房の公式HPが2020年3月急上昇サイトラインキング1位に入っていましたが、首相官邸の公式YouTubeチャンネルもユーザー数を伸ばし、昨月比344.7%の増加で全体の23位にランクインしていました。特に、2月3月に行われた記者会見動画の再生回数が伸びていました

#StayHomeのお供としてだけでなく、コロナに関する情報収集のための媒体としても、YouTubeは一役買っているようです。

まとめ

今回の調査の結果を下記にまとめました。

・ユーザー数の変化率には全年代大きな差はなし
・PV数と訪問数の変化率では40代と60代が20代を上回る
・男性急上昇コンテンツ
 1位:Johnny's official channel(ジャニーズオフィシャルチャンネル)
 2位:avex(avex公式チャンネル)
 3位:グランブルーファンタジー公式チャンネル
・女性急上昇コンテンツ
 1位:Kaguya Luna Official
 2位:inliving
 3位:獅子神レオナ/レオナちゃんねる
・20代女性の急上昇5位はNitendo 公式チャンネル
・首相官邸(首相官邸公式チャンネル)も全体ランキング上位にランクイン

調査・分析概要

全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、動画共有サービス「YouTube」について、ユーザー推移、属性などを調査しました。
※対象期間:2019年12月~2020年3月
※ユーザー数やセッション数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。

関連記事

新型コロナに対するAmazonプライム、Hulu、Netflixのコンテンツ無料施策でアプリユーザー数はどう変わったか

https://manamina.valuesccg.com/articles/807

新型コロナウイルスへの危機感に伴い、3月から学校が休校になり、生徒たちが自宅待機になりました。そんな中、コンテンツを一部無料公開などしていた動画サービス各社。実際にどのように利用されていたのか、Web行動ログによる市場分析ツール「<a href="https://www.valuesccg.com/service/emarkplus/" target="_blank">eMark+</a>」で調べてみました。

動画配信市場を牽引する「YouTube」のユーザーってどんな人?

https://manamina.valuesccg.com/articles/1103

年々拡大しつつある動画配信市場ですが、2024年には3,440億円(※)まで市場規模が成長すると言われています。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で生活におけるニューノーマル化も進み、外出を控え自宅で過ごす人が増加し動画配信市場にとっては追い風となっているはずです。また、これまでは若年層を中心に人気を博していた「YouTube」も、この数年で幅広い世代にも受け入れられるようになったのではないでしょうか。今回は動画配信サービスの中でも特に利用者の多い「YouTube」について調査・分析しました。<br> <small>※一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の『動画配信市場調査レポート2020』より</small>

「在宅時間増加による動画配信アプリ利用者の増加~コロナの影響はあるのか!?」レポート

https://manamina.valuesccg.com/articles/937

緊急事態宣言は解除されたものの依然として在宅志向は変わらず、長時間自宅で過ごす人が多いようです。そんな在宅時間の増加とともに伸びているのが「動画視聴時間」です。新型コロナウイルスの蔓延により、Amazonプライム・ビデオ、TVer、GYAO!、Netflixなど動画配信アプリへどのような影響があったのでしょうか。eMark+を用いて調査してみました。(ページ数|8p)

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

マナミナは" まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン "。
市場の動向や消費者の気持ちをデータを調査して伝えます。

編集部は、メディア出身者やデータ分析プロジェクト経験者、マーケティングコンサルタント、広告代理店出身者まで、様々なバックグラウンドのメンバーが集まりました。イメージは「仲の良いパートナー会社の人」。難しいことも簡単に、「みんながまなべる」メディアをめざして、日々情報を発信しています。

関連する投稿


The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

The latest trends provoke “empathy for real-life negative situations”? Analyzing popular characters and events

To generate buzz in a systematic manner, rather than by chance, it is important to look for commonalities in why certain things become a trend. We will analyze recent trends such as "cat memes," popular characters, and events to determine "what people are supporting these days, and why."


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!早くも「夏」の準備開始?「母の日」プレゼント選びも(2024年5月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!早くも「夏」の準備開始?「母の日」プレゼント選びも(2024年5月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第19弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「夏」「母の日」の2テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。Z世代の準備・楽しみ方が気になる「夏」、「母の日」のプレゼント選びの悩み など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


「おぱんちゅうさぎ」人気に迫る!トレンドの共通点は「等身大なネガティブに対する共感性」?

「おぱんちゅうさぎ」人気に迫る!トレンドの共通点は「等身大なネガティブに対する共感性」?

若者の間で、「ちいかわ」を超えて人気に火がついていると言われる「おぱんちゅうさぎ」。なぜ人々は魅了されてしまうのか?「おぱんちゅうさぎ」がどのような人を取り込み、なぜ人気なのか、昨今のトレンド「ちいかわ」「猫ミーム」「やだなー展」などとの共通点も探りながら、分析していきます。


最終章まであと少し!「鬼滅の刃」トレンド変遷

最終章まであと少し!「鬼滅の刃」トレンド変遷

2024年5月から、TVアニメ最新作「柱稽古編」が放送中の「鬼滅の刃」。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は国内歴代興行収入1位を記録するなど、社会現象的な大ヒットを飛ばした本作ですが、最終章に向けて、世間の関心はどのように移り変わっているのでしょうか。TVアニメシリーズ放送前から現在に至るまでの関心の度合いと、初期から関心層がどのように変化していったのか、分析していきます。


現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「名探偵コナン」「MBTI診断」はなぜ人気?「GW」の過ごし方は(2024年4月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

現役Z世代が検索ワードからトレンドを考察!「名探偵コナン」「MBTI診断」はなぜ人気?「GW」の過ごし方は(2024年4月)【現役Z世代が読み解くZ世代の行動データ】

Z世代のデータアナリストが、自らZ世代の行動データを分析する本連載。第18弾となる今回は、Z世代とミレニアル世代の検索キーワードランキングから、「名探偵コナン」「ゴールデンウィーク」「MBTI診断」の3テーマを取り上げてZ世代のトレンドをお送りします。 登場キャラクターや企業とのタイアップで話題を呼んだ劇場版「名探偵コナン」、Z世代の過ごし方が気になる「ゴールデンウィーク」、Z世代の出会いの場で活用される「MBTI診断」など、データとリアルな声を掛け合わせ、Z世代のニーズを読み解きます。


最新の投稿


アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

アパレル系の店舗アプリを知ったきっかけは「店員からの案内」が約6割【Repro調査】

Repro株式会社は、アパレル系店舗アプリのインストール前後の利用状況に関するユーザー調査を実施し、結果を公開しました。


認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

認知度の向上にはコンテンツマーケティングが必須と回答した人は9割以上!実施の結果、7割以上が成果を実感している【未知調査】

未知株式会社は、全国の企業に在籍する20〜60代の方を対象に「コンテンツマーケティングの実施・成果」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

「美容成分オタク」のオンライン行動を分析!スキンケアの情報収集実態に見る、コミュニケーションのヒント|セミナーレポート

近年、美容インフルエンサーの発信により特定のスキンケア成分がフォーカスされ、「成分関心層」が増加しています。今回は、@cosmeを運営するアイスタイル社が保有する、日本最大級の美容に関する生活者データと、ヴァリューズが保有するオンライン行動データを活用。成分に関する情報感度の高いアーリーアダプター層に注目し、その裏にあるユーザーインサイトから、成分関心層と取るべきコミュニケーションを探ります。※本セミナーのレポートは無料でダウンロードできます。


官民連携の智略 ~ PPP/PFI

官民連携の智略 ~ PPP/PFI

高い効率性が求められるのは今や個人の仕事や学業の範疇にとどまらず、国の施策運営である公共事業などにもその思考傾向は浸透しつつあります。その結果、国は民間企業の協力を得て「官民連携」で公共事業を進めることでそれらを効率化し、さまざまな事業を支えている例が多く存在します。本稿では、このような「官民連携」で効率化を目指す手法のPPPやPFIなどについて、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長を務めている渡部数俊氏が解説します。


観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

観るだけでポイントが貯まる「TikTok Lite」はSNSビジネスを革新するか。TikTokユーザーデータと比較調査

動画視聴を通じてポイ活を行うアプリ「TikTok Lite」が注目を集めています。「TikTok」に少し変化を加えただけに思えるこのアプリですが、実は「TikTok」と同じぐらい勢いがうかがえます。そこで、本記事では「TikTok Lite」と「TikTok」のアプリユーザーのデータを分析し、双方の違いから「TikTok Lite」の人気の要因を探っていきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ