無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?ブランドの強みをデータ分析でマーケコンサルが考察

無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?ブランドの強みをデータ分析でマーケコンサルが考察

気になるブランドや商品についてヴァリューズのマーケティングコンサルタントが調査する企画。今回の調査は根強いファンを持ち、ブランドを確立している『無印良品』についてです。無印良品ファンにはいったいどんな特徴があるのか。他ブランドとの比較を交えながら考察していきます。


無印良品のファンを調査します

こんにちは。データマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。息抜きは欅坂46の動画を見ること。

私は本メディア・マナミナ上でこれまで化粧品業界の調査分析記事を公開してきました。(『いま化粧品市場では何が起きている?新型コロナの影響を検索データからマーケコンサルが読み解く』など)

今回は、根強いファンを持ち、ブランドを確立している「無印良品」の差別化戦略について、ユーザーのサイコグラフィック属性や競合との比較から紐解いていきます。

無印良品について

言わずと知れた「無印良品」。特徴的なロゴやブランドのカラーがない「無印」こそをブランドとして築き上げた稀代のブランドです。2020年6月現在、日本では477店舗、海外でも556店舗を展開しており、日本を代表するブランドとなりつつあります。

そんな「無印良品」に魅了されている人は多く、一部熱狂的なファンも存在しています。特に
無地良品メンバーが10%OFFで商品が買える「無印良品週間」では多くの顧客が店舗へ殺到します。

無印の競合とは

商品としては雑貨・食品・インテリア・衣類などを取り扱う無印良品ですが、今回は比較対象として「UNIQLO」「ニトリ」をピックアップしました。どちらも無印良品同様、日本で知らない人はいないブランドです。

無印のビジネスは、UNIQLOは衣類で、ニトリとは雑貨・インテリアで競合しています。無印良品の強さを探るべく、UNIQLO、ニトリとの顧客層と比較しながらユーザーの特徴を見ていきましょう。

無印ファンはどんな人?WEBログ×アンケートで調査

調査方法

今回の調査方法についてあらかじめ記します。

ヴァリューズが保有している30万人の一般モニターのインターネットアクセスログデータから、無印良品、UNIQLO、ニトリのスマートフォンアプリ利用者を抽出。2019年11月※に5日以上アプリを起動しているユーザーを対象にログデータおよびアンケートデータを用いた分析を行いました。
※コロナウイルスの影響や年末年始などイベントの影響を受けていない期間を対象としています。

分析結果

まずはそれぞれのブランドアプリの利用者属性を比較してみましょう。

性年代別ユーザー属性を見てみると、どのアプリも女性利用者が多いことがわかります。いずれもブランドを支えているヘビーユーザーは女性が多いということでしょうか。

今回はブランドファンの特徴を深掘りすべく、さらに女性に絞って分析していきます。

可処分所得もポイント

▲各ブランドアプリ抽出対象者の属性データ

▲各ブランドアプリ抽出対象者の可処分所得・保有資産

上図では性年代や職業、居住地などのデモグラデータを一気にまとめています。その中で、特徴的なポイントはどんなところでしょうか。

それぞれのブランドごとに比較すると、無印良品は年代では40代が一番多く、単身または独身かつ親と同居世帯が他ブランドに比べて多いことがわかります。それに伴い、可処分所得や保有資産もUNIQLO、ニトリ、さらに全体と比較して多い傾向です。

一方、UNIQLO、ニトリは無印良品に比べ子供あり世帯の割合が多いことがわかります。全体と比較しても多いため、UNIQLO、ニトリは子供あり世帯に比較的選ばれやすいブランドと言えそうです。

メディア接触は

▲各ブランドアプリ抽出対象者のメディア接触

続いてメディア接触について特徴を見てみました。

すると、無印良品は雑誌の閲覧時間が長く、テレビ視聴時間はUNIQLO、ニトリと比較すると短い、という傾向が見られます。

一方、ニトリユーザーはテレビ視聴時間が今回の対象ブランドの中では最も長く、新聞や雑誌といった紙媒体の閲覧時間が短いという特徴が見られました。

新情報はどのチャネルで入手しているのか?

▲各ブランドアプリ抽出対象者の新しい情報の入手先

続いて新情報の入手先をそれぞれ比較します。

各ブランドとネットユーザー全体を比較すると、全体的にはそこまで大きな違いはないものの、無印良品のユーザーは雑誌記事から新しい情報を入手しているという特徴が見られました。

先ほどのメディア接触時間の分析でも無印良品ユーザーは雑誌閲覧時間が長く出ていましたが、新しい情報の入手の方法として、雑誌をよく利用するユーザーが多いようです。

購買のための情報収集で意識していることは

▲各ブランドアプリ利用者の購買・情報収集意識

購買や情報収集についての意識についても見てみましょう。

無印良品ユーザーは、上図の左側のグラフ「1_品質が高ければ価格が高くても買う」という項目ではネットユーザー全体よりわずかに低い傾向を示しています。一方、右側のグラフの「1_値段が安ければ品質は妥協する」という項目もネットユーザー全体と比較して低く出ています。

これらのことから、価格と質のバランスにシビアなユーザーが多いことが考えられます。

また、左のグラフ「13_仕事よりもプライベート優先の生活を送っている」と回答したユーザーは全体やUNIQLO、ニトリと比較しても特徴的に高いという結果が出ていました。無印のファン層はプライベートを大切にしている人が多いようです。

無印ユーザーの興味関心は

▲無印良品 抽出対象者の興味関心

こちらは無印良品アプリのヘビーユーザーの興味関心についてマップで表したデータです。

横軸は特徴値(ネットユーザー全体と比較して特徴的な回答)を表しており、右に行くほど無印良品ユーザーの特徴が強く出ています。また、縦軸は回答率を表しており、上に行くほど回答人数が多い、つまり興味があると答えたユーザーのボリュームも多いということです。

無印良品アプリのヘビーユーザーは読書やアート、インテリア、舞台・演劇などへの関心が高く出ており、カルチャーへの関心が高いことがうかがえます。一方、ゲームやアニメへの関心はそれほど高くないようです。

無印良品ファンの人物像をまとめてみる

ここまでの分析結果から、無印良品ファンの人物像をまとめました。

単身者や親と同居している人が他ブランドより多く、可処分所得も比較的多い
・雑誌を好み、情報収集も雑誌で行う人が多い傾向がある
・商品を選ぶ際、価格と質のバランスを見ながら買い物をする買い物上手が多い
・プライベートな時間を大切にしており、アートや読書、インテリア、舞台など文化的なことに興味関心を持っている

「無印良品らしい」といいますか、たしかにこんな人は無印良品を好みそう、という人物像が浮かび上がってきました。

今回、無印良品のファンはどのような人か?という調査を行いましたが、データから人物像を導き出した結果、「たしかに無印良品を好きそう」という感想を持てることこそ、無印良品のブランドが強固なものである証拠だと感じます。

その強さはどんなところにあるのでしょうか。無印良品が目指す未来を引用してみます。

無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり「が」ではなく「で」なのです。

しかしながら「で」にもレベルがあります。無印良品はこの「で」のレベルをできるだけ高い水準に掲げることを目指します。(中略)一方で「で」の中には、あきらめや小さな不満足が含まれるかもしれません。従って「で」のレベルを上げるということは、このあきらめや小さな不満足を払拭していくことなのです。そういう「で」の次元を創造し、明晰で自信に満ちた「これでいい」を実現すること。それが無印良品のヴィジョンです。

ここから感じるのは、ものづくりに対し、一貫した姿勢を持っているということ。それにより実現される無印ならではの統一性のある商品、世界観が多くのファンを魅了しているのかもしれません。

また、現在のトレンドとして
・シンプルライフ(断捨離・持たない暮らし)の流行
・ワークライフバランスの見直しにより、プライベートな時間を充実させたい人の増加
といったムーブメントがあります。

無印良品が提供しているのは、ユーザーが「自分の生活を理性的にコントロールして、シンプルで丁寧な暮らしを送れていると感じられる」ような商品です。現在のトレンドを考えてみると、無印良品のファン層がより広がっていくのではないかと考えられます。

雑貨、インテリアやカフェ、さらに家づくりまでと事業を展開している無印良品ですが、今後の展開も楽しみですね。

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この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

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