Go To Eatキャンペーンとは?
新型コロナの影響で一時営業自粛を求められ、多くの飲食店が経営不振に悩まされました。コロナと向き合いながら経済を動かす"withコロナ"へと社会は移行し、飲食店は感染予防対策に取り組みながら営業を再開。
ただ、未だ新型コロナ収束までの兆しが見られない中、以前の水準までは回復しないという飲食店の声も耳にします。「Go To Eatキャンペーン」は、それらの飲食店および食材提供者を応援するための国の支援策。10月1日からキャンペーンの一部が開始されました。
「Go To Eatキャンペーン」具体的な内容は、
①登録飲食店で使えるプレミアム付食事券の発行
②オンライン予約利用によるポイント付与
の2つ。
①は、販売額の25%を国が負担する食事券です。(12,500円の食事券を10,000円で購入できる仕組み)地域の窓口で販売され、原則としてチケットを購入した地域の登録飲食店で使用できます。10月から都道府県ごとに順次販売がスタートし、東京の販売時期は11月20日~の見込みとなっており、11月までにはほとんどの地域で販売されると言われています。
②は、オンライン飲食予約サイト経由で期間中に予約・来店すると、次回以降に登録飲食店で利用できるポイントが付与されるというもの。ランチタイム(15時まで)で500円分、ディナータイム(15時以降)で1,000円分が後日ポイントで付与される仕組みです。10月1日から全国で予約受付が開始され、ポイント付与は2021年1月末まで、ポイント利用は3月末までとされています。
このポイント付与キャンペーンについては、低額商品のみを注文して差額ポイントを稼ぐ、いわゆる「トリキの錬金術」が問題視され、農林水産省から「付与ポイント以上の飲食が必要」と発表されました。
Go To Eatキャンペーンの関心ポイントは?
それではまず、Web行動ログ分析ツール「Dockpit」のキーワード分析機能を使い、過去半年の「Go To Eat」キーワードの検索者数推移を見てみましょう。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年4月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
新型コロナショックで特に打撃を受けた4業界(観光・飲食・イベント・商店街)への支援策として「Go Toキャンペーン」を実施する方針が発表された6月から、徐々に検索する人が現れています。この頃はまだキャンペーンの全容が明らかにされていませんでしたが、情報に敏感なアーリーアダプターが先んじて検索したのでしょう。
「Go To Eatキャンペーン」の詳細が発表された7月末以降、ユーザーは一気に増加。具体的な内容が開示されたことで、利用目的の検索が増えたと考えられます。
続いて、キャンペーン開始に向けて特に消費者が関心を寄せるポイントを、検索キーワードとワードネットワークから探っていきます。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年4月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
検索キーワード・掛け合わせキーワードを見てみると、キャンペーン名称の次に「いつから(時期)」「東京・大阪(地域)」「ぐるなび・食べログ(ポイント付与対象予約サイト)」での検索が多くみられます。まずは「そもそもこのキャンペーンは何なのか?」という概要を調べた上で、より具体的な利用方法を調べる流れが推測できます。
また、このキャンペーンは都道府県ごとに開始時期や食事券の販売方法などが異なるため、時期や地域と掛け合わせて検索するユーザーが多い傾向です。
続いて、ワードネットワークを見ていきます。ワードネットワークでは、掛け合わせ検索件数が多く、関連性が強いワードが線で繋がれています。特定のワードに興味のあるユーザーは付近のワードにも興味を持つ傾向が高いことを示しており、潜在的な興味関心を把握できる分析手法です。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年4月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
ワードネットワークでも、時期や地域、予約サイトのワードが目立っています。また、キャンペーンが食事券とポイント付与の2軸になっていることから、ワードネットワークもそれぞれのまとまりがあり、同じ「いつから」でも「食事券の販売時期」と「ポイント付与の対象期間」の意味合いの違いがあるように見えます。消費者の関心の軸として、「食事券が特定の地域(特に東京・大阪)でいつから販売される(使える)のか?」「ポイント付与の対象予約サイトはどこで、いつから予約できるのか?」の2つがあると考えられます。
また、大阪は既に10月7日から食事券の予約販売が開始されており、キャンペーン公式サイト「Go To Eat Osaka」や大阪観光局のSNSなどで順次情報が公開されていたため、「対象店舗」や「食事券」、大阪府内の特定の地域など、より具体的なキーワードのネットワークが広がっている印象です。今後東京でも食事券販売の詳しい情報が開示されれば、同様に検索ワードの広がりが表れるでしょう。
ポイント付与対象予約サイトでは、特に「ぐるなび」が目立っています。ぐるなびは、Go To Eatキャンペーンで付与されるポイントに加えて「通常来店ポイント」も貯まることを打ち出しており、その効果もあって注目が高まっているのではないかと推測できます。通常来店ポイントは楽天ポイントとしても貯めることもでき、飲食以外にもグループの幅広いサービスで活用できる楽天ポイントをメリットとして感じるユーザーも一定数いるのかもしれません。
ぐるなびのGoToEat特設ページ
ポイント付与対象予約サイトの変化は?
ここからは「Dockpit」の業界分析機能で、食べログ、ぐるなび等が含まれる「グルメ 予約」業界のWebサイトを調査し、Go To Eatキャンペーンのポイント付与対象サイトの状況を見てみます。
まずは、過去1年間の「グルメ 予約」業界全体のWebサイトユーザー数推移を確認しましょう。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年10月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
新型コロナが深刻化した3月から下降し、緊急事態宣言が発令された4月をピークに落ち込んでいます。4月以降は緩やかな右肩上がりで回復傾向。業界全体では元の水準までは戻りきっていませんが、10月以降Go To Eatキャンペーンがスタートすれば、さらに復調傾向は続くと推測します。
また、こちらは「グルメ 予約」の業界シェアを示したグラフです。食べログが1位、ぐるなび、ホットペッパー、一休と続いています。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年10月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
また、「グルメ 予約」サイト全体での集客構造は次のグラフの通り。約6割を自然検索での流入が占めていました。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2019年10月〜2020年9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
では、どのようなキーワードで検索されたのか、そこに「Go To Eatキャンペーン」との関連性があるか、流入キーワードを見てみましょう。次のランキングは、直近半年(左)と直近3ヵ月(右)の流入キーワード上位10を示しています。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:(左)2019年10月〜2020年9月(右)2020年7月~9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
過去1年間の流入ワード上位には、Go To Eatキャンペーンに関するワードは見られません。一方で、過去3ヵ月の短期間で見ると「GO TO EAT」が8位にランクインしています。7月~9月は記事冒頭のグラフで示した通り、「Go To Eat」のキーワード検索が伸びた時期です。キャンペーンへの関心の高まりに従い、「対象サイトかどうか」「ポイント付与の流れ」など、キャンペーン利用目的の検索・流入が増えたと考えられます。
また、Go To Eatキャンペーン関連の流入が増えた7月~9月の集客構造の推移を見てみると、やや自然検索の割合が増えていました。「Go To Eat」関連のキーワードとの掛け合わせで自然検索されるケースが増えたのかもしれません。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年7月~9月、対象デバイス:PC、スマートフォン
10月1日に予約受付がスタートして以降は、さらに「Go To Eat」関連の流入も増えていっているでしょう。また、先ほど触れた「ぐるなび」の通常来店ポイント付与のように、一部のサイトでは「Go To Eatキャンペーン」と合わせて独自のキャンペーンを展開。例えば「一休.comレストラン」では、一休ポイントが10%還元され、即時利用できる企画を実施しています。(予約期間:2020年10月31日まで)
一休.comのGoToEat特設ページ
よりおトクに利用したいユーザーが、サービス独自のキャンペーン情報を踏まえ、予約サイトを比較・厳選する動きも今後より鮮明になっていくのではないでしょうか。
まとめ
10月からキャンペーンが開始された「Go To Eat」。ユーザーの関心は高まり、「いつから、どこで使えるのか?」という具体的な利用方法に焦点が当てられていることが分かりました。また、ポイント付与対象のグルメ予約サイトにも「Go To Eat」関連の流入が増えており、予約が開始した10月以降はさらに勢いを増すと予想されます。「Go To Eat」と平行して実施されているサービス独自のキャンペーンへの関心の高まりも見られ、グルメ予約サイトはそれらの展開次第で新規ユーザー獲得の機会になるかもしれません。
食事券販売が全国で始まり、ポイント付与とともに本格化した時には消費者の関心がどこに向けられるのか、今後の動向に注目です。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2019年10月~2020年9月のネット行動ログデータを分析しました。
※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
■関連記事
Uber Eatsなどデリバリーアプリが浸透するウィズコロナの今、グルメアプリとの利用シーンの違いとは
https://manamina.valuesccg.com/articles/934外出自粛に伴い外食機会は減り、食のデリバリーサービスの利用者が増加しています。実際利用者はどれくらい増えており、どんな人が使っているのでしょうか。本稿では、これら食をめぐるサービスの利用実態を調査。グルメ系サービスとデリバリーサービスのコロナ渦中の状況を最新データから読み解きます。
なぜmenuはコロナ禍ですぐに導入手数料0円施策を打てたのか?テレビCMも絡めたスピード感のあるプロモの裏側とは
https://manamina.valuesccg.com/articles/10032020年4月、マナミナで毎月公開している「ユーザー数急上昇アプリ」連載に、デリバリー&テイクアウトアプリの「menu」がランクインしました。前月比のMAUは+約986.4%という驚くべき数字に。多くの企業・サービスが未曾有の事態に右往左往していた中、なぜmenuはここまでのスピードでプロモーションを展開できたのでしょうか? menuを運営するmenu株式会社の執行役員・佐藤さんへの直撃インタビューから見えてきたこととは。コロナ時代の経営やマーケティングに携わる方、必見です。
フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。