なぜmenuはコロナ禍ですぐに導入手数料0円施策を打てたのか?テレビCMも絡めたスピード感のあるプロモの裏側とは

なぜmenuはコロナ禍ですぐに導入手数料0円施策を打てたのか?テレビCMも絡めたスピード感のあるプロモの裏側とは

2020年4月、マナミナで毎月公開している「ユーザー数急上昇アプリ」連載に、デリバリー&テイクアウトアプリの「menu」がランクインしました。前月比のMAUは+約986.4%という驚くべき数字に。多くの企業・サービスが未曾有の事態に右往左往していた中、なぜmenuはここまでのスピードでプロモーションを展開できたのでしょうか? menuを運営するmenu株式会社の執行役員・佐藤さんへの直撃インタビューから見えてきたこととは。コロナ時代の経営やマーケティングに携わる方、必見です。


「ニューノーマル」な外食のかたち

「新しい生活様式」「ニューノーマル」などの言葉が誕生し、いまや私たちの生活の制約条件となった新型コロナ。確かにこの疫病によって生活のありようは変化し、「ニューノーマル」な行動様式を取らざるを得ない状況となっています。

その中でも大きな変化が必要とされたのが「食」の領域。大人数が集まる会食も制限を受け、外食の習慣も変容していきました。そして代わりに台頭したのがテイクアウトやフードデリバリーの領域です。

2020年4月、マナミナで毎月公開している「ユーザー数急上昇アプリ」連載に、デリバリー&テイクアウトアプリの「menu」がランクインしました。前月比のMAUは約986.4%増という驚くべき数字に。menuでは4月13日に飲食店の導入費用を全国で0円に、また20日にはお笑いコンビ・オードリーを起用し飲食店を応援する新CMをすばやくリリースし、迅速なプロモーションによりサービスを急拡大させました。

コロナ禍中の4月にユーザー数が伸びたアプリとは?1位は食のテイクアウト「menu」、Zoomなども上位に

https://manamina.valuesccg.com/articles/872

2020年4月にアクティブユーザー数を伸ばしたアプリは? 市場分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使ってアクティブユーザー数の前月比が急上昇したアプリをチェック。3月のトレンドを調査しました。

多くの企業・サービスが未曾有の事態に右往左往していた中、なぜmenuはここまでのスピードでプロモーションを展開できたのでしょうか? 裏側のマーケティング戦略が鍵だったのか、あるいは組織やマインドにその秘訣があったのか。

そこで今回、マナミナ編集部がmenu社の執行役員、佐藤裕一(さとう・ゆういち)さんにインタビューさせていただきました。本稿では、その内容をお伝えします。

「おいしいデリバリーアプリ」menuとは

― menuとはどのようなコンセプトのアプリなのか、改めて教えていただけますでしょうか。

menuは「おいしいデリバリー」を掲げるデリバリー&テイクアウトアプリで、コンセプトは「お腹がすいたら一番はじめに開くアプリ」です。

menu株式会社 執行役員 佐藤裕一さん

現代人は忙しく働いていて、食事はコンビニや惣菜を買って済ませるというのがスタンダードになりがち。そんな中で、選択肢や楽しさのあるしっかりとした食事ができている人って、本当はどれくらいいるのでしょうか?

日本の食文化は文化遺産になっているくらいすごいもので、食事にはエンターテイメント要素もあります。そんな背景を考えたとき、スマートフォンひとつですぐにおいしい食事を選択できたら素敵だなと思いました。そして食べたことのない人気なお店でも、並ばずにすぐに手元に届く。そんな機能を持ったプラットホームとしてmenuを作りました。

― ローンチ時にはテレビCMで、働くビジネスマンに向けて「ランチ、それでいいの?」というメッセージを打ち出していましたよね。当初はテイクアウトアプリとしてスタートしたのですか?

はい。デリバリーサービスの場合、エリア拡大のためには配達してくれる人を集める必要があり、コスト面も考えるとスケールが難しい。そう考えてまずはテイクアウトから着手していたんです。

いずれはデリバリーも展開する予定だったものの、実証実験をしながら徐々に進めていく予定でした。それがコロナの影響で一変。4月頃の段階から、飲食店の方々はやはりとても困っていて。お客さんは全然来ないし、店をやめようかなといった声も多く届いていました。

このように食文化や外食市場がピンチの中で、私たちが業界のために何かしなければと。もともと飲食店の方にもご協力いただきながら整備を進めていましたが、総力戦で準備を進めてデリバリーサービスも4月に開始することができました。

menuのサービスサイトより。シンプルなUIでおいしいグルメを検索し、デリバリー・テイクアウトできるアプリとなっている。

オードリーCMは効果大。アジャイル化がスピードの鍵

―コロナ禍が広がってからすぐに、デリバリーの開始やテイクアウトサービスの導入費用0円などの施策を次々と進めていたのが印象的でした。併せてオードリーさん出演のCMなどプロモーションも行なっていましたが、反響はどうだったのですか?

効果はものすごく、店舗への問い合わせが殺到しましたね。もともとテイクアウト契約店は2月時点で2,000店舗だったのですが、8月現在は35,000店舗まで伸びました。5月だけでなんと17,000店の増加です。提供できる食事の種類も増えて、ユーザーも増加するという良い循環に入ることができました。

―それはものすごい数字ですね…!CMリリースまでのスピードもとても速いという印象でした。

コロナ拡大時期に一気に加速してプロモーションを進めていったので、もともと準備していたわけではありませんでした。だから制作は相当な短期間で仕上げてもらいました。

お店にとってメリットのある、テイクアウトサービスの導入費用・手数料0円としたことを、どう全国で知ってもらうかという考え方をしていました。ユーザー認知は東京に集中していた状態だったので、全国に広げるにはテレビCMが効果的だと。テイクアウトはユーザーが食事を取りに行くので配達料もかからないし、飲食店側から見れば配達員がいなくても成り立つ。より手軽に導入できるものだと思います。

―なぜここまでのスピード感でプロモーション施策を打てたのでしょうか?

急速に拡げられたのは意思決定がスピーディーだったこと、オペレーションがうまく機能したことの2つが大きく挙げられるかと思います。

意思決定に関しては、テイクアウトの飲食店への導入費用0円はかなり早い段階で決めました。私たちの会社自体も4月にはリモートワークにシフトしましたし、当初から新型コロナウイルスを重く見ていました。飲食店の方からの悲鳴の声も上がっていて、何かしなくてはと判断し、すぐに導入費用0円の実施を決めた流れでしたね。

また、4月頃はリモートワークへの移行の影響から、他企業はテイクアウトやデリバリー導入の新規受け付けを止めていたタイミングでした。しかし、逆にいまがもっとも飲食店にとって厳しい時期だろうという認識から、menuでは受け入れ体制を整え、全社一丸となってオペレーションを回しました。振り返るとこの2つがサービスの伸びにつながったかなと思います。

―プロモーションにおいてもスピードを重視し、施策を打ってPDCAを高速で回す「アジャイル型」で進めているのかと想像していたのですが、実際はいかがでしょうか。

確かにそうかもしれません。menuはテスト的に施策を重ねてどんどんピボット していく会社で、まずはやってみようという文化があります。もともと弊社の強みであるスマホゲーム事業ではアジャイル文化が備わっていることもあり、スピード感を意識しています。

結局、慎重にじっくりとサービスを開発したとしても、それがユーザーに刺さるかは完全には分からない。一定のリスクはあると想定して、そのリスクが取れるのかどうかという意思決定の際の思考が重要です。

今回のCMに関しても制作期間がかなり短かったのですが、その中でもどんな形だったら可能かと考えました。そういう意味では、Webマーケティングに近い形でマスプロモーションも進めていると思います。

▲今年4月に放映が開始されたオードリーさん出演のテレビCM

「素潜りで伊勢海老を」データでユーザー理解を目指す

―menuさんのデータ活用の取り組みと組織面についてもお聞きしたいです。サービス改善を回す際、効果検証のためにデータを見る動きなどは日常的に行われているのでしょうか。

データで判断する文化は当然ありますね。特にユーザー理解のためにデータを見る場合が多く、誰がどのようにアプリを使ってくれているのかという視点でデータを分析しています。直接施策につなげるためにデータを見ることもありますが、それ以前の段階の「ユーザーに喜んでもらうため」にデータを見ることが多いです。

―ゲーム事業ではユーザーのロイヤル化や離脱率といった項目での分析が多いかと思いますが、その分析力がmenu事業にも活かされていますか?

まだまだこれから広げていくフェーズなので完璧ではありませんが、アプリ改善のためのベーシックな分析は行なっています。

観点としては例えば、アプリ利用をリピートしやすいユーザーの特徴や、ユーザーがどういう飲食店を最初に体験したらリピートしやすいか、あるいはユーザーのタイプ別分類や利用のされ方の違い、リピートユーザーを初期の特定タイミングで判断できるか、などです。答えはまだ未発見の段階ですが、このような観点での分析の準備は進めていますね。

―データ分析の専門チームはあるのでしょうか? もしくは、それぞれの担当者が現場でデータを見ているのでしょうか。

それぞれがデータを見ますし、かつ専門のスタッフもいます。分析としては、ダッシュボード上での基本データの観察と、ダッシュボードに載せる前の「そもそもいまアプリ上で何が起こっているんだろう」を明らかにするような分析の両面があります。

例えば、雨が降ったことによって注文が増えたという状況があったとしますよね。このとき利用者はどんな人なのでしょうか? 普段から利用しているユーザーなのか、はたまた新規ユーザーが雨をきっかけに利用を開始したのか。現象の理由は深堀らないと分からないので、データの海から面白い仮説を拾ってくる、言わば「素潜りで伊勢海老を取る」ような形で、特定のテーマを決めて探っています。

現在はより多くのメンバーがデータを見れるように拡充しているタイミングですが、素潜りに関しては、経営層やハイレイヤー層も直接手を動かしてデータの海に飛び込んでいますね。私はかつて機械学習の研究者だったのですが、生データを触れる責任者も多いです。

―経営層の方など、意思決定に携わる方が直接データを扱えるのは大きな強みですね…!

マーケティングの責任者も自分でPythonを触ってデータの処理をしたりしています。ただ、私の実感としては、逆にデータを見ないと怖いと思います。

学生時代は飲食店に携わっていましたが、お客さんはすぐ目の前にいるから臨場感もあるし、こちらのサービスに対する感触も分かります。ですが、アプリだとたくさんのユーザーさん・店舗さんが向こう側にいる。目に見えない方々に対してどうしたら好かれるんだろうというのは、データを見ない限り全然分かりません。だからこそデータはとても重要だと思います。

―では最後に、今後のサービス展開や目指される方向性を教えていただけますでしょうか。

私たちが目指す場所は「お腹がすいたら一番はじめに開くアプリ」です。そこに対してはよりこだわっていきたいですね。地方だとまだまだ浸透はこれからですし、ユーザーに寄り添ったUI・UXの改善も進めています。menuがユーザーの生活の中でカジュアルに当たり前に使われるサービスとなるように、今後も全方位でレベルを上げていく予定です。

―スピード感のあるプロモーションの裏側にあるアジャイル思想やデータによるユーザー理解や、何よりも日本の食文化に向き合う姿勢のまっすぐさを感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材協力:menu株式会社

この記事のライター

マナミナ編集部ライター。医療系新規事業部を経て、現在医療系メディアの編集長をしています。インタビューやまとめ記事がメイン。料理したり植物を育てることがすきです。

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