「ECはまずベンチマーク調査すべき」ヤマトフィナンシャルがEC支援で同業データを使う理由

「ECはまずベンチマーク調査すべき」ヤマトフィナンシャルがEC支援で同業データを使う理由

コロナの影響で中小事業者のEC立ち上げが進む中、通販黎明期から30年以上にわたり代金引換を中心とした決済サービスを提供してきたヤマト運輸株式会社(取材当時:ヤマトフィナンシャル株式会社)。「ECのトータルパートナー」として、現在はワンストップでECソリューションを展開しています。そのひとつとして、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「eMark+」を利用した、Webサイトの分析・レポートで事業者を支援。その意図について、同社営業戦略部マネージャーの髙柳さん、営業戦略部の大場さん、東東京支店営業リーダーの増田さん、南東京支店の平岡さん(各部署名は取材当時)、ヴァリューズの田中に取材しました。


「ECのトータルパートナー」ヤマトフィナンシャルとは?

――ヤマトフィナンシャルはどのようなサービスを提供する会社なのか、あらためて教えてもらえますか。

髙柳拓紀さん(以下、髙柳):ヤマトフィナンシャルは主として決済代行業を行う、EC・通販事業のトータルパートナーです。現在、EC・通販事業における決済手段は代金引換やクレジットカード、コンビニ決済、携帯キャリアなど様々ですが、それらを導入したいEC事業者様と決済事業者様の間に立ち、一括で審査や契約手続き、売上の入金管理などを行っています。

ECサイトには多様な消費者様が訪れますが、例えば主婦や学生の方は、クレジットカードよりもキャリア決済やコンビニ支払いを望んでいたりします。そこで、事業者様はECでの機会ロスを防ぐため、できるだけ多くの決済手段を確保しておいた方が良いでしょう。このような消費者様のニーズに対応するための橋渡しとして、様々なソリューションで解決策を提供するのがヤマトフィナンシャルの大きな役割です。

ヤマトフィナンシャル株式会社のホームページより。ECソリューションから決済サービスまでトータルサポートを提供する。ヤマトグループの強みを活かし、全国各地の支店から国内全域のEC事業者への支援を行っている

――EC事業者へのソリューションのひとつとして、ヴァリューズのWebサイト分析ツール「eMark+(イーマークプラス)」を使っているとお聞きしています。まず、導入の背景はどのようなものだったのですか。

髙柳:EC事業者様へのソリューション提案ではもちろん、事前に当該企業の市場環境や同業他社の情報などを調べます。その際、以前はコーポレートサイトやECサイトを確認しつつ、デスクリサーチで情報を集めていました。しかし、それでは時間がかかってしまいます。

加えて、提案先のECサイトは他社と比較して良いのかあまり良くないのか、ポイントをおさえられない点も課題と思っていました。アポイントメントや一回目の商談で魅力的な提案と思ってもらうために、事前調査で簡潔に、かつ的確に市場環境を把握できるツールがあれば良いなと思っていたのです。

増田暁人さん(以下、増田):そう考えていた中、展示会でヴァリューズの田中さんとお会いしたんですよね。そこでお話を聞き、有用性を感じてトライアルを始めたのがきっかけでした。

ヤマト運輸株式会社(取材当時:ヤマトフィナンシャル株式会社)
(左上) 髙柳拓紀さん 営業戦略部 マネージャー…グループ内外のソリューション提案を推進する
(中央上) 大場隆道さん 営業戦略部…幅広いアライアンス提案や、EC事業者向けのセミナーにも登壇
(右上) 増田暁人さん 東東京支店営業リーダー…マネジメントとセールス、パートナーのECソリューションを事業者に合わせて提供する
(左下)平岡青葉さん 南東京支店

(右下)田中理佳子 株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント

同業サイトのデータを提案に活用

――eMark+のトライアル期間ではどのような取り組みをされたのですか?

髙柳:トライアルは2019年末に行い、まず、50件ほどアカウントを発行。そして営業メンバーの集合研修で1〜1.5時間、eMark+レポートのアウトプットやデータの着眼点、用語等を田中さんに説明いただきました。このレポートを使うと、商談のアポイント成約率がかなり上がったのです。

大場隆道さん(以下、大場): アポイント成約率が上がったのは、レポートの内容について事業者様に興味を持っていただけたからだと思っています。お客様の中には同業他社のデータを見る習慣のない方もいらっしゃり、そのようなデータをもらえるなら会ってみよう、と考えていただけたのかと。

――なるほど。では、eMark+を使ったレポートのアウトプット事例としてはどのようなものがありますか?

平岡青葉さん:例えば事業者様に対して、同業他社がどんな施策を打っているのか、SNSや検索、広告等の流入比率データをお見せしました。実際にお見せするとその業界ではこんな広告を打ったほうがいいのかなどと興味を持っていただけましたね。

大場:また、ベンチマークするWebサイトの分析を提供した事例では、そのサイトが検索で注力しているキーワードを明らかにしました。それと比較して、お客様は自社のお店の名前しか注力しておらず、課題点を浮き彫りにすることができたのです。

「eMark+」の画面より。同業サイトの流入状況がひと目で分かる「流入元」機能

髙柳:その他にも、全国各地の営業メンバーからも事例が上がってきています。例えば、女性向け商品に弱みを感じている会社に同業他社とのユーザー属性比較データを提供。また、最近ECを立ち上げた事業者様には、他社サイトのレポートをお見せしているそうです。

営業推進の目線で見れば、eMark+を活用することで、提案したいお客様の同業他社やユーザー属性が可視化できる。今までGoogleで検索していた現場の営業メンバーの時間の短縮になり、有用性を感じています。

データ分析ツール、運用のコツは?

――分析ツールは慣れない方だとなかなか日常的に使われない場合もありますが、eMark+を運用する上で意識されているコツはありますか。

髙柳:導入直後は活用している人としていない人の差がありました。そこで、当初は支店の営業メンバーが本社に調べたいURLを送り、レポートを作って戻すフローを採っていましたが、地域ごとにeMark+の担当者を立てレポートを作成する流れに変えました。ひとつステップを少なくしたことによって、スピード感を持ってレポート作成ができるようになりましたね。

あとは、営業の際に田中さんにオンライン同行していただき、実際にお客様にデータを説明していただいたりもしました。その様子を現場の営業メンバーが見ることで、トークの仕方を身に着けてもらいましたね。

田中理佳子:ヤマトフィナンシャルさんのお客様には、ネットショップを立ち上げたばかりの方も多いですよね。データの捉え方も不慣れだと思うので、ユーザー属性の違いに着目して仮説を導く考え方など、活用法を分かりやすく伝えようと意識しました。

――コロナの状況やQRコード決済、ECプラットフォームの台頭など、EC業界の動きも激しくなっているかと思います。ヤマトフィナンシャルとしての今後の展望をお聞かせください。

増田:決済代行業にとどまらず、お客様のECビジネス全般の課題に向き合っていければと思います。この文脈でデータ分析ツールは、LTVを伸ばして長期的にお客様に満足してもらうためのひとつの鍵です。お客様のEC事業全体を理解した上で、様々なソリューションを提供していければと。

――ありがとうございます。最後にEC事業者様に向けてのアドバイスをお願いできますか。

大場:コロナによって、今まで卸売をしていた農家さんや町の飲食店さんもECに注力し始めています。ただ、ECを立ち上げたら売れると思っている場合があり、つまずきがち。トラフィックを得るためには、広告を打つ、決済を充実させる、リピーター育成のためメルマガを打つといった施策が必要です。

最初に何をすればいいか分からない方もいらっしゃると思いますが、まずは同業他社の分析やベンチマークの分析、3C分析等を始めると良いでしょう。そのための情報を得る手段として、eMark+は非常に有効なツールだと思います。

髙柳:ネットショップでは売上を上げ、自社が大切に作った商品を消費者様に届けるのが目的です。ヤマトグループは販売・決済のシステムから、ラストマイルで消費者様に届けるところまで、川上から川下までワンストップで支援できるのが強み。ヴァリューズさんのレポートも使いながら市場や同業の調査データを組み合わせ、より売上を上げるための最適な提案ができます。悩まれている方はぜひお声がけいただければと思いますね。

取材協力:ヤマト運輸株式会社(取材当時:ヤマトフィナンシャル株式会社)

※本記事でご紹介したWebサイト分析ツール「eMark+」は、現在「Dockpit」としてバージョンアップ版を提供中です。

この記事のライター

マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。

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