在宅生活をちょっと豊かにする「贅沢家電」市場がコロナ禍で成長?需要をデータから分析

在宅生活をちょっと豊かにする「贅沢家電」市場がコロナ禍で成長?需要をデータから分析

長引くコロナ禍において、自宅で過ごす時間が増えたことは周知の事実です。また、先行き不安から消費行動の落ち込みも見られるというニュースも目にしますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。確かに通常時と同じ対象に支出はしていないかもしれませんが、支出の対象が変化しただけで、実は消費行動は引き続き起きているのではないかと思います。 今回はコロナ禍で逆に需要が高まっていると予測される贅沢家電について、分析していきます。


こんにちは。私はデータマーケティングの会社・ヴァリューズでコンサルタントを務めている伊東と申します。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、ヴァリューズに入社。現在は事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

マナミナでは、気になるブランドや商品について調査する連載を執筆しています。今回はコロナ禍において需要の高まりが見られる「贅沢家電」について、ユーザー分析データから考察していきます。

贅沢家電に注目高まる?消費行動の変化に対する推測

昨年2月に新型コロナウイルスが日本で話題になり始めてから1年、私たちの生活は以前とは比べ物にならないくらい変化しました。気軽に人に会うことができなくなり、旅行やテーマパークへのお出かけ、ライブやコンサートといったエンターテイメントを楽しむことも容易にはできなくなりました。

このような”非日常”体験が難しくなる中、人々の意識は普段の生活をいかに楽しむか、快適に過ごすかといった”日常”に向いてきているのではないでしょうか。

そこで、普段の生活において「無くても困らないけど、あったら嬉しいもの」の消費行動がコロナ禍において高まっているのではないかと予測しています。

例えば「コーヒーメーカー」。冷蔵庫や電子レンジ、エアコンといった私たちの日常生活に必要な家電と違って、無くても生活に支障はありません。しかし、もしコーヒーメーカーがあれば生活が豊かになりますよね。

このような、「日常を少しでも楽しく、快適に過ごすための贅沢家電」に注目が高まっていると考えられます。そこで、今回は「贅沢家電」がコロナ禍において消費者の注目を集めているのか、また、どのような消費者が興味を持っているのかなどを分析していきます。

贅沢家電の分類

分析のため、贅沢家電を大きく2つに分類しました。楽しむためのもの生活を快適にするものです。下記に具体的な家電の例を挙げます。

<生活を楽しむためのもの・例>

①食事系
トースターやホットプレート、コーヒーメーカー

②音楽・映像・エンタメ系
プロジェクター、スマートスピーカー

<生活を快適にするためのもの・例>

①食事系
電気圧力鍋

②生活家電(加湿器、ロボット掃除機)系
加湿器、ロボット掃除機

以下、それぞれの贅沢家電についてデータを見ていきます。

贅沢家電に関心がある人は増えている?検索データで調査

まず、各家電に対する注目度はどのように変化しているのでしょうか。上記の2つの分類「生活を楽しむための家電」「生活を快適するための家電」のそれぞれのカテゴリについて、検索者数の推移から注目度の変化を分析します。

生活を楽しむ家電〜食事関連〜

▼トースター、ホットプレート、コーヒーメーカーについて検索者数の変化(2020年3月~2021年2月)

トースターやホットプレートに関しては、1度目の緊急事態宣言が出た2020年4月~5月に検索者数の増加が見られ、緊急事態宣言明けは一度落ち着き、2020年10月頃からまた上昇傾向になっています。コーヒーメーカーは1度目の緊急事態宣言の時期にはやや上昇が見られたものの、そこまで大きな変化はありません。一方、2020年11月以降、検索者数が右肩上がりで上昇しています。

ただし、この3つについては季節性の変化であることも考えられるため、2019年3月以降、2年間の検索推移を見てみます。

トースター、ホットプレート、コーヒーメーカーすべてにおいて、2019年においても10月以降は検索者数の上昇傾向が見られていました。冬になると検索者数が増加するようで、季節要因も多少影響がありそうです。しかし、2019年10月以降と2020年10月以降を比較すると、各月ともに2020年の方が全体的に底上げされていることがわかりました。

生活を楽しむ家電〜音楽・映像・エンタメ〜

▼プロジェクター、スマートスピーカー検索者数の変化(2019年3月~2021年2月)

プロジェクターについては、右肩上がりで上昇が続いていることが分かります。一方、スマートスピーカーについては若干の増加傾向は見られるものの、すごく伸びている、というわけではなさそうです。

生活を快適にするための家電〜食事関連家電・生活家電〜

▼加湿器・ロボット掃除機・電気圧力鍋の検索者数の変化(2019年3月~2021年2月)

3つの中では加湿器(青線のグラフ)において、2019年の冬に比べて2020年冬で大きく検索者数が増加しています。これは、在宅勤務の広がりによって家にいる時間が増えた影響だと考えられます。

▼ロボット掃除機・電気圧力鍋の検索者数の変化(2019年3月~2021年2月)

また、ロボット掃除機や電気圧力鍋は2020年に入り、全体的に底上げされている傾向が伺えます。

トースター・ホットプレート・コーヒーメーカーの検索者属性の違い

では、それぞれの家電に興味を持って調べている人はどんな人なのでしょうか。トースター、ホットプレート、コーヒーメーカーにフォーカスして分析していきます。

▼トースター、ホットプレート、コーヒーメーカーについて検索者の属性(2020年3月~2021年2月)

それぞれの検索者の属性を見ると、トースターとホットプレートは女性が6割強で、年代は40代、30代がボリュームゾーンです。対してコーヒーメーカーは男女比が半々で、年代はトースターやホットプレートと比べると50代、60代が多く、興味を持っている属性が異なることがわかります。

また、世帯年収を比較すると、ホットプレートは400~800万円の割合が他2つよりも高いのに対し、コーヒーメーカーは1000~1500万円以上の割合が高いことがわかります。

未既婚や子供有無を見ると、3つとも既婚者の割合が多いものの、トースターは未婚者の検索比率が他2つに比べ5%程度高くなっています。また、子供有無を見ると、トースターは子供無の割合が他2つに比べ8%程度高いことも特徴と言えそうです。

以上の結果をふまえると、おおよそ商品ごとの関心層としては、下記のような人物像が浮かび上がってきます。

トースター
独身、もしくは子供がいない夫婦で関心を持っている人がある程度多くいるようです。
電子レンジやオーブンレンジなどと違い、用途が限られる家電に対して関心を持つということは、そこにかけられる金銭的(世帯年収というよりは可処分所得の)余裕や、時間があることが伺えます。

ホットプレート
既婚者が6割強で、子供ありの比率も5割強ということで、複数人で暮している人が多いと想定されます。
外食の機会が減っている中、家で複数人で楽しむために検討する人が多いのではないかと考えられます。

コーヒーメーカー
他2つと異なり、調べている人の年代が比較的高く、かつ既婚率も6割あることから、ある程度生活が落ち着き、趣味として検討する人が多いのではないでしょうか。

贅沢家電はどのようなブランドが注目されている?

では、それぞれの商品に関して、どのようなブランドが注目されているのでしょうか。
検索キーワードで調べられている内容から、関心の高いブランドを見ていきましょう。

▼それぞれの商品と掛け合わせて調べられているキーワードのランキング(2020年2月~2021年1月)

トースターはアラジンとバルミューダが2強のようです。また、ホットプレートはブルーノが人気で、コーヒーメーカーはデロンギが1番調べられていますが、そのほかのブランド名も多数ランクインしています。

どのようなニーズがありそうか?

上記の表を見ると、ホットプレートの検索において「焼肉」や「たこ焼き」が掛け合わせワードの上位にランクインしています。また、検索していた人の属性情報の分析を考えても、一見家族など複数人で楽しむためのニーズが多いように思われます。しかし、もう少し範囲を広げてキーワードを見てみると、別のニーズも見えてきます。

「ホットプレート」検索の掛け合わせワードについて、検索者がほかにどのようなニーズを持っているのかを分析するため、下記のワードネットワークを見てみましょう。

▼ワードネットワーク:ホットプレートと掛け合わせて検索されているキーワードを網目状に視覚化したもの(2020年2月~2021年1月)

「一人用」「一人暮らし」「コンパクト」「ミニ」などがあり、複数人で楽しむというニーズ以外にも、一人で使うのに丁度よい、コンパクトなものを探している人も一定数いることがわかります。

このように、需要が伸びている贅沢家電の中でも、一般的な用途として思いつくニーズ以外のニーズも生まれていることがわかります。

まとめ

今回の記事では、コロナ禍において贅沢家電のニーズが伸びていると仮説を立て、分析を行いました。その結果、商品カテゴリにより多少違いはあるもののやはり需要は増えていると言えそうです。

また、商品ごとに求めている人の属性が違っていることはもちろん、贅沢家電へのニーズも様々なものがありそうだとわかりました。ニーズの多様化は家電に限らず言われていることですが、今回の分析でもその片鱗が感じられます。

依然として新型コロナウイルスの影響は続きそうですが、そんな中で生まれた新たなニーズをキャッチし、自社商品への反映や、消費者へのアプローチを適切に行っていくことが重要となりそうです。

▼今回の分析ではヴァリューズの「マーケターのためのリサーチエンジン」Dockpitを使用しています。気になった方はぜひ無料版を使ってみてください。

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この記事のライター

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 伊東茉冬(いとう・まゆ)
新卒では出版社に就職。営業・社長秘書を務めたのち、2019年にヴァリューズに入社。現在は化粧品、日用品、住宅業界などの事業会社に対してマーケティング支援を行っている。

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