コロナ影響による中国での食スタイルの変化|中国トレンド調査

コロナ影響による中国での食スタイルの変化|中国トレンド調査

中国での食スタイルは、新型コロナウイルスの影響を受けて大きく変化しました。例えば、昔では大人数で外食をする人が多かったのですが、最近では一人で食事するスタイルに変わりつつあります。本稿では、このようなコロナ後の中国人の食スタイルの変化についてみていきます。


コロナの影響によって、中国人の食スタイルが大きく変化しました。2月12日に、中国では春節(旧正月)を迎えましたが、例年とは異なる春節の食事スタイルが見られました。

中国では、大晦日にリユニオン・ディナーが開催され、家族が集まってお祝いする伝統があります。例年であれば、家で手作りの豪華料理あるいはレストランで正月料理を楽しむのが一般的ですが、今年はコロナの影響で、レトルト正月料理や出前のおせち料理が人気だったようです。

「2021年全国オンラインお正月ショッピングフェスティバル」において、レトルト正月料理は最も売れ行きが良く、また、中国国家テレビ局の報道によれば、レトルト正月料理の売上は前年同期より375.6%増加したことが分かりました。

レトルト正月料理の売上の前年同期比

このようなリユニオン・ディナーにおける変化以外にも、中国では外食するスタイルから発熱剤入りのレトルト食品に頼るスタイルへの変化、家族と楽しく食卓を囲む共食スタイルから一人で食事をする一人食のスタイルへの変化、さらに食材調達の際にスーパーや八百屋の利用から食材宅配の利用への変化などが見られます。

外食から発熱式レトルト食品へ

コロナの影響で、一時的に売れ切れ騒ぎにもなったほど、発熱式レトルト食品は一年ほど前から爆発的な人気を得ました。

淘宝(タオバオ)のデータによれば、「発熱式火鍋」や「発熱式ご飯」などの発熱式レトルト食品を生産するメーカー数は既に1000を超え、インスタント食品の七分の一を占めています。また、発熱式レトルト食品のバラエティも2020年年始より大幅に増え、「発熱式火鍋」のような定番商品以外には、「発熱式焼き魚」や「発熱式マーラータン」、「発熱式サムゲタン」などもあります。

春節期間に帰省を自粛した1億越えの人々の中には、正月料理の代わりに、リユニオン・ディナーとして発熱式レトルト食品を選択した人もいました。

1月20日に、20万人近くが中国のECサイトである「天猫(Tmall)」や「淘宝(タオバオ)」で発熱式火鍋を購入し、前年同期より10倍も人数が増えました。また、中国最大の検索エンジンである「百度」の正月用品の検索データからも、発熱式食品は特に90後(1990年代生まれの世代)に人気があることがうかがえます。

百度2021年の正月用品の検索データ

発熱式インスタント食品の市場は特にここ数年で格段に大きく成長し、今後もさらに成長する見込みです。

2018年設立のインスタント火鍋専門の食品会社である「自嗨锅」は、2020年に開催された「無辺界小売増加連盟消費者サミット」において、以下のデータを公開しました。

自嗨锅の商品は2018年に天猫(Tmall)で発売されてから第3四半期までに1億元(約16.7億円)以上を売れ、2019年の年間売上高は5億元超(約83.4億円)、さらに2020年上期の売上高は6億元(約100億円)を超えました。

全体から見ても、発熱式レトルト食品の市場規模は年々大きくなっています。2017年の市場規模は既に22.5億元(約375.2億円)に達し、2019年ともなると、その市場規模は約35億元(約583.7億円)に達しました。さらに広発証券は、発熱式インスタント食品業界の市場規模は5〜7年後に150億元(約2501.4億円)となる可能性があると予測しています。

自嗨鍋の商品

共食から一人食へ

前述のように、レトルト正月料理が今年のブームになりました。4人前や6人前以上のレトルト正月料理もある中、特に大都市に住む若者を中心に、1〜2人前のディナーセットが最もよく売れています。

実のところ、近年中国では一人食が流行りつつあります。中国の無人スマートコンビニ「便利蜂(Bianlifeng)」の責任者によると、1人前の惣菜などの商品は量の多いものより売れやすく、顧客に人気があります。そのため、「便利蜂(Bianlifeng)」では、1人前の弁当や惣菜はもちろん、ワインなどのアルコール類もミニサイズを販売するようにしています。また、中国のグルメアプリでは、「一人食」は最も投稿数の多いハッシュタグの一つです。

一人食が盛んになった理由として、まず独身者の増加が挙げられます。中華人民共和国民政部のデータによれば、2018年に中国における独身者は2.4億人もいます。さらに、そのうちの7700万人は一人暮らしをしています。
そのため、一人食の需要は一人暮らしの独身者と比例して増加しました。

また、コロナの影響も一人食ブームを推進する要因であると考えられます。コロナウイルスの感染拡大を受け、中国では長い間外出を自粛していました。従って、友人と外食する機会も減り、独身者だけでなく、一人暮らしの非独身者も一人で食事をすることが多くなりました。

スーパー・八百屋から食材宅配へ

昨年、中国ではコロナ対策として、多くの地域においてロックダウン(都市封鎖)が実施され、住民は外出を禁止されました。それを機に、一度落ち込んだ食材宅配事業が拡大され、食材宅配サービスを提供する企業も急激に増加しました。

WeChatミニプログラムのデータによれば、昨年お正月の期間に、食材宅配の利用回数は前年同期比149%増加しました。また、昨年9月のiResearchのデータによると、2020年の食材宅配市場は急成長を果たし、その市場規模は720億元(約1兆1996億円)になる見込みでした。

日本の食材宅配サービスとは異なり、中国では公式サイトではなく、WeChatのミニプログラムを利用して食材宅配サービスを提供する会社に注文し、その翌日に、商品は会社の配達員から指定された場所に届くという、中国らしい形を取っています。

また、ミニプログラムで販売されている商品の種類もとても多いです。例えば、食材宅配大手の「興盛優選」では、野菜・果物や家電などを含めた、24カテゴリーの商品を購入することができます。ニールセン社の調査によれば、このような状況の中、中国の消費者は「引きこもり」になりつつあります。89%の中国消費者は食材や日用品を購入する際に、宅配サービスを優先することを表明しました。

食材配達ミニプログラムの注文画面

まとめ

コロナの影響を受けて、中国における食スタイルは大きく変わりました。コロナ終息後に、外出・外食はまた増えると予測されていますが、発熱式インスタント食品や一人食、食材宅配サービスは、今後もある程度定着することになるでしょう。

<参考文献>
「中法双语| 新冠疫情会彻底改变人们的饮食习惯吗?」
https://www.sohu.com/a/389785613_784699
「“半成品年夜饭”也能吃出“年的味道”」
http://k.sina.com.cn/article_1914035620_7215dda401900slhv.html
「春节将近 这有一桌“外卖年夜饭”可预订」
http://k.sina.com.cn/article_213815211_m0cbe8fab020014qvu.html
「[共同关注]新年有新味:就地过年 如何过出年味? 年味新潮流:吃饱喝足的“懒人”年夜饭」
http://tv.cctv.com/2021/02/03/VIDEdcazW4LEfUtyUXBW0pui210203.shtml
「1天20万单!自热食品成最火年货?」
https://www.sohu.com/a/452518561_120904652
「自热食品加速出圈:“一人食”消费群体激增 生意火爆」
http://finance.sina.com.cn/chanjing/cyxw/2020-08-13/doc-iivhuipn8456621.shtml
「新冠疫情下“社区团购”成为居民食材采购的首选」
https://www.sohu.com/a/376278332_99890760
「社区团购大步走进百姓生活」
https://k.sina.com.cn/article_2618638282_9c153fca02000v701.html?from=news&subch=onews
「谁撑大了自热食品的百亿市场?」
https://36kr.com/p/950970052455304
「40亿自热食品市场,只因“网红”?」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1667378712309642696&wfr=spider&for=pc
「“社区团购,我们不干了!”」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1686203399855039878&wfr=spider&for=pc
「巨头加码、资本角逐,重燃活力的社区团购能走多远?」
http://nreone.com/html/latoutiao/2020-03-06/1691.html
「今天你“团菜”了吗? “封城”下的社区团购新零售模式」
https://iesr.jnu.edu.cn/62/59/c17210a483929/page.psp

この記事のライター

中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。

関連する投稿


二次元文化ブーム:IPコラボが中国の新しい消費トレンドを牽引

二次元文化ブーム:IPコラボが中国の新しい消費トレンドを牽引

新型コロナウイルス後も経済が低迷し続けている中国において、二次元経済は異例の盛り上がりを見せています。実経済が衰退する中、二次元グッズショップは中国各都市で急速に拡大しています。2023年に上海静安大悦城(ジョイシティ)で開催されたIP展示のイベントは約1億元の売り上げを記録しました。また、上海静安大悦城の最新データによると、2024年7月から8月にかけてのIPポップアップストアの売上高は5,500万元を超えています。これらのデータは経済低迷という背景とは対照的に見えます。本記事ではこの盛り上がりを見せる中国の二次元ブームについて詳しくご紹介します。


中国トレーディングカードの人気を調査

中国トレーディングカードの人気を調査

1980年代のアメリカで、煙草と飴の会社から生まれたトレーディングカード。日本では、二次元文化の人気と結びついて1990年代から「ポケモン」や「遊戯王」を始めとした多様なトレカが流行し、私たちにも馴染み深いほどにトレカ文化が浸透しています。さらにそのトレカブームは近年、中国においても巻き起こっています。この記事では、中国のトレカブームの様子とその背景について探っていきます。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


中国シルバー経済の新傾向を調査

中国シルバー経済の新傾向を調査

日本と同様、年々高齢者の割合が高くなっている中国。中国民政部が発表した《2023年民政事業発展統計公報》によると、2023年末の時点で全国の60歳以上の人口は29,697万人に達し、総人口の21.1%を占めました。高齢者の増加に伴い、近年中国では“銀髪経済”(シルバー経済)という高齢者を主力とした現象が発生しており、高齢者の間で新たな生活様式が広がっています。


「感情」で消費する中国のZ世代

「感情」で消費する中国のZ世代

新型コロナウイルスが終息した後、経済が低迷しているように見える中国ではさまざまな新しい消費現象が現れています。以前から話題となっていたシティウォーク、ペット経済、リラックス感のあるファッションや「搭子社交」など、これらの現象をよく考えてみると、一つのキーワードに辿り着きます。それが「感情」です。社会的地位を証明するためにブランド品を追い求め、他人に自慢するのではなく、現在の中国のZ世代は、むしろ自己の癒しに注目し、一つの活動や商品を購入する際に自分に「感情的な価値」をもたらすかどうかを重要視しています。この現象は中国で「感情経済」を生み出すに至りました。本記事ではこの現象について詳しく紹介します。


最新の投稿


年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

年末年始はどのサービスで何を観る?動画配信アプリの利用実態

もうすぐ年末年始。時間のあるこのタイミングで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを利用してコンテンツを一気見しよう、という方も多いのではないでしょうか。今回は、「Prime Video」「Netflix」「U-NEXT」「Hulu」「Disney+」それぞれについて、ここ数年の年末年始の集客状況を調査。実際に年末年始に利用者が増えているのか、各サービスでどんなコンテンツに注目が集まっているのかを分析し、来たる2024年の年末年始を占いました。


映像・書籍・音楽・ゲーム・ラジオ横断でリーチ力、2024年のTOP3は「ポケモン」「ツムツム」「ONE PIECE」【GEM Partners調査】

映像・書籍・音楽・ゲーム・ラジオ横断でリーチ力、2024年のTOP3は「ポケモン」「ツムツム」「ONE PIECE」【GEM Partners調査】

GEM Partners株式会社は、メディアを横断してエンタメブランドの真のリーチを比較・評価することを目指した指標(リーチpt)をもとに、「映像」「マンガ」「書籍」「家庭用ゲーム」「アプリゲーム」「音楽(アーティスト)」「ラジオ・ポッドキャスト番組」の7メディア横断の年間ランキングを発表しました。


WebマーケティングとIT業務における"よくある失敗"はDB更新エラーが最多!失敗を防ぐために必要だと感じるスキルとは?【Hagakure調査】

WebマーケティングとIT業務における"よくある失敗"はDB更新エラーが最多!失敗を防ぐために必要だと感じるスキルとは?【Hagakure調査】

株式会社Hagakureは、同社が運営するWebマーケティングスクール「デジプロ」にて、業務上のミスを防ぐためのリスキリングに関する調査を実施し、結果を公開しました。本調査は、300名を対象に、WebマーケティングやIT業務でよくある失敗と、その失敗を防ぐために必要だと感じるスキルについて調査したものです。


話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

話題の「リカバリーウェア」のターゲット層は?人気の4ブランドをデータから比較

日々の疲れを癒し健康的な生活へと回復させるためのサポートとして、医薬品やサプリ、健康食品など、巷にはさまざまな情報が溢れています。中でも最近よく見聞きするのが「リカバリーウェア」。着るだけで疲労感などが軽減されると謳う救世主的な商品ですが、一体どのような物で、どのような人たちの関心を掴んでいるのか、データを用いて検証します。


Adjust、年末年始のアプリトレンドの予測とアプリを成長させるためのキャンペーンの作り方を発表

Adjust、年末年始のアプリトレンドの予測とアプリを成長させるためのキャンペーンの作り方を発表

Adjustは、昨年度のクリスマス後から1月下旬にかけての期間(第5四半期)を振り返り、本年度のポストクリスマスシーズンに向けてのトレンドを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ