ロケットスタート!ユーザー数は大幅な伸び
ウマ娘 プリティーダービー
『ウマ娘 プリティーダービー』は、競走馬を育成する競馬シミュレーションゲームですが、競走馬を萌え系のキャラクター「ウマ娘」が演じるというのがポイント。競走馬には、オグリキャップやメジロマックイーンなど、過去の名馬も登場。競馬好きのおじさんから、萌えアニメ好きの若者まで、幅広い層へのウケを狙っていると考えられます。
まずはそんな「ウマ娘」のアプリをダウンロードして利用したユーザー数をチェックします。
アプリユーザー数の分析には『eMark+』を使用しました。
■リリース1ヶ月でユーザー数はおよそ2.5倍に
リリースした2月から1ヶ月で、ユーザー数はおよそ2.5倍に。これはなかなかのロケットスタートと言えそうです。
「ウマ娘」アプリユーザー数推移
期間:2021年2月〜3月
分析ツール「eMark+」
■殿堂入りの「どうぶつの森」を差す!
2〜3月のGoogle Playの同カテゴリ(シミュレーションゲーム)の利用ユーザー数ランキングをみると、不動の1位だった「どうぶつの森 ポケットキャンプ 」をリリース翌月に抜く快挙でした。
カテゴリ:ゲーム>シミュレーション 利用ユーザー数ランキング
期間:2021年2月〜3月
分析ツール「eMark+」
「ウマ娘」にハマっているのは誰?
続いて、「ウマ娘」にハマっているユーザーの属性を見ていきましょう。分析には「Dockpit」を使用します。
■検索ユーザー数急増の影にコアなファン
まず、「ウマ娘」と検索したユーザー数を分析します。同じく2021年2月にリリースされた「ブルーアーカイブ」「バーディークラッシュ:ファンタジーゴルフ」の検索ユーザー数と比較するとその差は歴然です。グラフのように2020年12月以降一気に増加しました(上グラフ)。
実は「ウマ娘」のリリースはおよそ3年前から予告されており、アプリリリース前にアニメ放映がされたり、事前予約キャンペーンが実施されるなど、じっくり時間をかけてファンの期待を集めてきました。直近2年間の検索ユーザーの動きを見ても、ユーザー数は少ないものの、検索されている期間は長く、かつ検索後の流入サイトでの平均滞在時間も長く、コアなファンに長期間支持されてきたことがわかります(下グラフ)。
「ウマ娘」「ブルーアーカイブ」「バーディークラッシュ」検索ユーザー数推移
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
「ウマ娘」「ブルーアーカイブ」「バーディークラッシュ」検索ユーザーの平均滞在時間推移
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
■「ウマ娘」検索ユーザーは男性の若年層が多く占める
続いて、「ウマ娘」検索ユーザーの属性を見ていきましょう。
性別は男性がおよそ8割を占めています。年代は20代が31.8%、30代が27.9%と、若年層が多いことがわかります。
競馬ファンの若年化はリアルな世界でも少しずつ進んでいるとみられます。リアルの競馬ファンとの相関については後半で分析していきます。
「ウマ娘」検索ユーザー属性/性別
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
「ウマ娘」検索ユーザー属性/年代
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
また、ネット利用者全体と比較して、未婚で子どもがいないユーザーが多いようです。
「ウマ娘」検索ユーザー属性/未既婚
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
「ウマ娘」検索ユーザー属性/子どもの有無
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
「DMM」と掛け合わせ検索
次に、「ウマ娘」を検索したユーザーが具体的に何に興味を持ったのか、掛け合わせで検索されたキーワードから分析します。
掛け合わせ検索1位は「DMM」。DMM(PC)版が配信開始されたのが2021年3月。スマホ版とのデータ連携で特典がつくなどのキャンペーンも奏功したようです。
2位は「リセマラ」。リセマラとは、リセットマラソンの略語で、主にソーシャルゲームにおいて、アプリ・ソフトのインストールとアンインストールを繰り返し行うことを言います。どうしても入手したいアイテムがある場合に行うことが多いようです。「ウマ娘」ではリセマラによって育成に必要なサポートカードを集めることができます。
続いて、「攻略」「育成」などノウハウに関する検索が続きます。
「ウマ娘」掛け合わせワードランキング
2020年4月〜2021年3月
さらに「ウマ娘」検索後の流入サイトについても分析を行いました。
流入サイトは「ウマ娘」公式サイト、「神ゲー攻略」「Game8」が多いことがわかりました。
「ウマ娘」検索後流入サイトランキング
2020年4月〜2021年3月
流入サイト2位「神ゲー攻略」
実際、競馬ファンの若年化は起こっているのか
ここからは、リアルな競馬ファンの動向について分析していきます。
■JRA公式サイト、「競馬」検索で20代が急増
まずは日本中央競馬会(JRA)の公式サイトを訪れるユーザーについて、Dockpitを使って見ていきます。
JRAでは2017年から、20〜30代男女をターゲットにした「HOT HOLIDAYS!」というプロモーションを行ってきました。イメージキャラクターには、松坂桃李さん、柳楽優弥さん、高畑充希さん、土屋太鳳さんなどを起用し、”競馬はレジャー”を継続して発信してきました。
サイト訪問ユーザー属性の時系列変化を見ると、以下のグラフのように、直近の2021年3月に20代(グラフの青色)が急増したことがわかります。
JRA公式サイト訪問ユーザー属性/年代推移
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
また、「競馬」というキーワードを検索するユーザーでも同じ変化が見られました。下図の通り、緩やかに増加していた20代ユーザー(グラフのピンク色)が、2021年3月に急伸、他の年代を抜いて最も高い割合を占めています。
「競馬」検索ユーザー属性/年代推移
期間:2019年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
20代ユーザーの急増が「ウマ娘」と関係しているかどうかは定かではありませんが、競馬業界の若年化が起こっていると言えるでしょう。
■「ウマ娘」と引退馬の関係
一方、「ウマ娘」は過去の名馬を擬人化しているのが人気の理由の一つですが、引退馬に関係するユーザーの動きにも変化があったようです。
下のグラフは、認定NPO法人「引退馬協会」の訪問ユーザー数推移です。2021年3月の1ヶ月で、ユーザー数は前月の約8.8倍に急増したことがわかりました。
認定NPO法人「引退馬協会」訪問ユーザー数推移
期間:2020年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
認定NPO法人「引退馬協会」公式サイト
このユーザーの流入元を分析すると、以下表の通りでした。「ウマ娘」は6位にランクインしています。
認定NPO法人「引退馬協会」流入経路ランキング
期間:2020年4月〜2021年3月
デバイス:PCおよびスマホ
「ウマ娘」と引退馬、コンテンツとして名馬を登場させる以外に、実は深い関係があります。
「ウマ娘」アニメ版の売上の一部は、引退馬支援に関わる団体に寄付をしているのです。このことは3月30日に「引退馬支援」がTwitterトレンド入りしたことで拡散され、上グラフのようなユーザー急増の引き金になったと想定されます。
まとめ
今回は、競走馬を育成する競馬シミュレーションゲーム「ウマ娘」について分析しました。
「ウマ娘」はリリース後たった1ヶ月でアプリダウンロード数がおよそ2.5倍、どうぶつの森ポケットキャンプ を抜く大快挙を達成、一気に覇権タイトルに躍り出ました。
「ウマ娘」検索ユーザー数も2020年12月以降に急増し、同時期にリリースされた同カテゴリーゲームの追随を許さず独走中。期待と人気の高さがうかがえました。
「ウマ娘」検索ユーザーは男性がおよそ8割を占めています。年代は20代が31.8%、30代が27.9%と、若年層が多いことがわかりました。
「ウマ娘」を検索する際に興味を持っていたワードはPCとスマホの連携が可能な「DMM」と、「リセマラ」でした。
「ウマ娘」検索ユーザーとJRAユーザーとの相関を見ましたが、2021年3月にはJRA公式サイト訪問者で20代の割合が伸びており、今後も気になるところです。
「引退馬」との結びつきも見られました。コンテンツとして過去の名馬を登場させていること、また、アニメ版の売り上げの一部を引退馬支援に関わる団体に寄付していることが公になったことがその理由だと思われます。
競馬をもっと若者に広めたい。
引退馬の支援の輪を広げたい。
競馬業界の狙いに「ウマ娘」がどこまで寄与していくか、今後の動きにも注目です。
分析概要
今回の分析には、マーケティング分析ツール『Dockpit』および『eMark+』を使用し、2019年4月~2021年3月におけるユーザーの行動を分析しました。
『Dockpit』は、競合サイト分析や消費者のトレンド調査にとても役立ちます。もし宜しければ、無料版もありますので、下記よりご登録ください。
フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。