2021年中国ゴールデンウィークから見た今年のトレンドを徹底調査!|中国トレンド調査

2021年中国ゴールデンウィークから見た今年のトレンドを徹底調査!|中国トレンド調査

2021年に入り新型コロナウイルスが依然として世界中に感染拡大している中、日本と同様に中国も大型連休がありました。今年の中国のゴールデンウィークにはどのようなトレンドがあったのでしょうか。 最新のデータ、特徴を概観した上で、キャンプブーム、航空券の「盲盒(ブラインドボックス)」の発売、国内免税店のショッピングブームという3つの側面から解説します。


2021年中国のゴールデンウィークの実態


2021年の中国のゴールデンウィークがもたらした経済的効果は、昨年より「爆発的な」伸び率を示しています。

中国文化省および観光省の統計データによると、2021年5月1日〜5日、ゴールデンウィークにおいて、中国の国内観光収入は昨年より138.1%伸び、1,132億3,000万元の結果を達成しました。また、様々な消費促進策が引き続き効果を発揮することで、消費市場は大きな回復を遂げたといえそうです。

では、2021年中国ゴールデンウィークは具体的にどのような特徴があったのかを確認していきましょう。

2021年中国のゴールデンウィークの特徴

大規模な人口移動や観光事業の回復

百度地図のビッグデータによると、今年のゴールデンウィークにおいて大規模な人口移動が再び観察されるようになりました。

ゴールデンウィーク期間中全国移動人口グラフ

データによると5月1日から爆発的な人口移動が観察されることが明らかになりました。

中でも、以前と違う、いくつかの特徴が見えてきました。国内観光事業が大きく回復し、中国華東地域のあらゆる観光地への人出が急上昇していました。そのほか、クーポンや割引など、消費刺激策によってショッピングモールの売り上げが爆発的に伸びました。加えて家族旅行、修学旅行などの増加によって、上海ディズニー・ランドなど、遊園地やテーマパークも混雑していました。

ここまで2021年中国のゴールデンウィークについて、データに基づいてその特徴を分析してきました。

続いて今年ゴールデンウィークにおいてとりわけ注目を集めてきたトレンドを3つ取り上げ、それらについて解説していきます。

2021年中国のゴールデンウィークのトレンド

続いて、中国の2021年ゴールデンウィークのトレンドを見ていきましょう。

1. グランピングブーム

出典:小红书@offweek户外
グランピングの一例

近年、様々なタイプやコンセプトを持つキャンプは、ライフスタイルの選択肢としてますます人気が高まっています。特に、施設も充実し豪華なキャンプが楽しめる「グランピング」が注目されるようになってきています。

2020年6月に「小紅書 Red」が発表した「端午」のレポートによると、ユーザーのキャンプへの意欲は、2019年に比べて3倍近く上がっているようです。中国においても「グランピング」ブームが迎えられたと言えるでしょう。

では、「グランピング」はなぜ中国においても人気を集めたのかを具体的に紹介していきましょう。

なぜ中国において「グランピング」が人気になったのか?

中国において「グランピング」が人気になった理由は、以下3つが挙げられます。

① 2020年、新型コロナ流行の影響で外出が制限されたことから、新しい旅行や遊び方を模索し始めた人が多くなり、自然や緑にふれたいという大衆の需要も増えている

② グランピング施設ではキャンプ用品や食材・食事などがあらかじめ用意されているため、キャンプビギナーでも気軽に豪華なキャンプを楽しむことができる

③ SNS映えの写真が撮れるため、「グランピング」はとりわけ若者層において流行している

現在、グランピングという市場には、大資本のプレイヤーはまだ参入しておらず、グランピングの位置づけもまだ明確ではありません。グランピングは、旅行や消費のアップグレードの一方向として、今後どのように発展していくのかについても、さらなる検討が必要といえます。

2. 航空券の「盲盒(ブラインドボックス)」の発売

あらゆるものがブラインドボックス化される時代において、OTA(オンライン・トラベル・プラットフォーム)も「ランダムブーム」に参入し、GW中に行先の分からない「航空券のブラインドボックス」を発売しました。

同城アプリによる「航空券の盲盒」キャンペーン

一見馴染みのない「航空券盲盒(ブラインドボックス)」は果たしてどのようなものなのでしょうか。その特徴は主に2つあります。

第一に「行きたくなければ全額返金」が、このイベントの最大の特徴です。
第二に「航空券の盲盒」にランダムな行き先・日付の国内片道航空券が含まれます。

消費者は、98元で「航空券盲盒」を購入することで、ランダムな行き先・日付が指定された国内片道航空券を手に入れることができます。ただし、ゲットした航空券が期待通りのものでないと思った場合は、開封後30分以内であれば購入者は全額返金を申請することができます。

なぜ中国において「航空券盲盒」が流行し始めたのか?

ではこの「航空券盲盒」はなぜ中国で流行し始めたのかについて考察していきましょう。

その原因を主に3つの側面から説明します。
➀コロナの影響で、海外にいけない人たちの旅行欲求を満たすことができる
②消費者は、目的地・出発時間の選択権の代わりに比較的に旅行コストを抑えることができる
③航空会社に関しても、あらゆるOTAプラットフォームと連携することで、経済的損失を減らしつつ「空き・予備座席」を有効に活用することが期待される

とはいえ、「航空券盲盒」のアフターサービスも問題視されています。航空券の引き渡しプロセスの複雑さや、出発時間も平日の早朝や深夜になることが多いことから、「航空券盲盒」に関して、OTAプラットフォームや航空会社のさらなる対策が必要でしょう。

3. 免税店の爆買いブーム

海口税関の統計によると、5月1日~5月5日まで海南免税店の売上総額は9億9,300万元に達し、昨年同期比248%の増加となっています。つまり中国最南端のリゾート地、海南島への旅行と免税店の利用は、徐々に国民の新しい選択肢となってきていると言えます。

海南免税店の実況

免税店のオンラインプロモーション

香港や日本、韓国に比べて、海南島の出発・到着手続きは便利にであり、また、海南の免税店は、日本の銀座と違い購入時の国籍制限がなく、パスポートだけで免税品をゲットすることができます。もはや日本や韓国に代わって、中国国内消費者のニーズに応えるような新しい商業施設となっているといえるでしょう。

加えて市街地における免税店が続々と設置されるようになっています。海南のほか、長沙、広州、福州、天津など多くの都市が最近、市内に免税店を設置することを発表しています。

なぜ中国において「免税店ショッピング」がブームになったのか?

中国国内の免税店業界が爆発的に成長したのは、主に2つの要因があると考えられます。

➀2020年新型コロナの影響で海外旅行の制限
②2020年7月1日に離島での免税政策に新たな制度が加わったことで買い物がより便利になってきた

特に後者に関しては、2020年7月、海南省は離島での免税に関する新政策を実施し、免税品の買い物枠を1人当たり年間3万元から10万元に増やし、離島での免税品の購入制限を38個から45個に増やし、1品あたり8,000元という上限を廃止しました。

ベイン・アンド・カンパニー社によると世界の旅行業界が2022年、あるいは2023年までに回復することはないだろうと予測しています。

つまり、海南の免税店業界市場にはまだ2〜3年の成長の余地があるといえるでしょう。それに対し中国中央政府や地方政府に免税品消費を介して経済回復を促すためにあらゆる施策が求められるでしょう。

まとめ

コロナの一時的な収束を受けて、2021年中国ゴールデンウィークは再び、その活気を回復させることができました。
ゴールデンウィークのトレンドには人々の新しい価値観やライフスタイルが反映されています。おそらく新型コロナ終息後、これらも市民社会に定着していくと考えられます。

グランピングブーム、航空券の「盲盒(ブラインドボックス)」、国内免税店のキャンペーンをはじめ、中国消費者の消費動向に合わせた商品戦略や広告戦略も、いかにしてそれらの新しい価値観に合わせた形で設計していくことが、政府あるいは企業にとっても今後の重要な課題になるでしょう。

【参考文献】

「五一黄金周的出行和消费密码,全藏在百度地图大数据里了」
http://app.myzaker.com/news/article.php?pk=609752188e9f091fb978d1bb&f=huangli
「图说|火热黄金周如约而至,旅游业强势升温」
https://new.qq.com/omn/20210510/20210510A057YB00.html
「2.65亿人出游,五一黄金周热门目的地出炉」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1698612620837035011&wfr=spider&for=pc
「“史上最热五一黄金周”如约而至 旅游业升温更要升级」
http://www.chinanews.com/cj/2021/05-06/9470902.shtml
「别再说消费降级了!人人都愿意为旅游花钱,精致露营或“解锁”万亿市场」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1697712934010638567&wfr=spider&for=pc
「途居五一持续火爆,露营让假日周边游更精彩」
http://cn.chinadaily.com.cn/a/202105/08/WS60960139a3101e7ce974e0ce.html?ivk_sa=1023197a
「グランピングって何?キャンプとの違いは?今さら聞けない基礎知識」
https://www.travel.co.jp/guide/howto/501/
「机票盲盒,没有输家的一场营销狂欢?」
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_12618227
「最热五一,年轻人的机票盲盒还好吗?」
https://36kr.com/p/1206606358449537
「“五一”海南离岛免税店销售火爆 消费者理性“买买买”」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1698814157068131470&wfr=spider&for=pc
「免税快报 | 最低5折!海南各大免税店五一优惠攻略看过来→」
http://www.hinews.cn/news/system/2021/04/30/032546994.shtml
「海南免税店太火爆!4天,破7亿元!」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1698966668408092311&wfr=spider&for=pc

​​

メールマガジン登録

最新調査やマーケティングに役立つ
トレンド情報をお届けします

この記事のライター

慶應義塾大学在学中。

関連する投稿


中国冬季の新トレンド「冰雪消費」を調査

中国冬季の新トレンド「冰雪消費」を調査

現在中国では、冬季のウィンタースポーツや雪祭り、氷祭りなどの「冰雪経済」「冰雪消費」が盛んになっています。政策の支援や商品の刷新などのプラスの影響を受け、「冰雪消費」は著しく増加しています。本記事では中国における冰雪消費の盛り上がりをデータで確認し、活発な冰雪旅行やウィンタースポーツ関連事業の具体例を紹介します。


ポストコロナ時代における「中国のペット経済」の発展状況とトレンド

ポストコロナ時代における「中国のペット経済」の発展状況とトレンド

中国の独身者の増加と消費能力の向上に伴い、若者の一人暮らしがますます定番化してきています。ペットは人も精神的な支えにもなるため、独身の若者たちのパートナーとして徐々に位置づけられ、ペット経済もそれに伴って成長しています。ポストコロナ時代に中国のペット経済の発展状況や新しいトレンドについて、本稿で詳細にご紹介します。


ポストコロナ時代における中国人の消費変化

ポストコロナ時代における中国人の消費変化

「コロナ時代が過ぎた後、中国は一波の消費ブームを迎えるだろう」という予測の声が上がりました。しかし、「三亜旅行ブーム」を除いて、中国人の消費ブームは現れず、その代わりに中国人はむしろ借金の返済や預金に熱心でした。新型コロナウイルスが終息した後、中国人の消費能力は本当に低下し、もはや消費に熱心ではなくなったのでしょうか?それとも、中国の消費者の消費行為にはどのような変化が起こったのでしょうか?この記事ではポストコロナ時代における中国の消費トレンドの変化を解説します。


“質”重視の消費観がもたらす。2024年中国経済の新傾向

“質”重視の消費観がもたらす。2024年中国経済の新傾向

緩やかな回復を続けている中国経済では、人口の半数近くを占める「80後(1980~89年生まれ)」、「90後(1990~99年生まれ)」、「00後(2000年以降生まれ)」が消費の主力となっています。これらの年代の消費者は生活の質や精神的満足をより重視する傾向にあり、中国経済に新しいトレンドを生み出しています。


未来を拓く中国食品業界。2023年の最新トレンド

未来を拓く中国食品業界。2023年の最新トレンド

中国では日々さまざまな変化が起こっており、食品業界も例外ではありません。中国は多くの消費者を抱える中、食品業界はほぼ毎年革新を遂げ、新たなトレンドを生み出しています。この記事では2023年の中国食品業界の中で、とくに注目すべきトレンドを3つ紹介します。


最新の投稿


日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ、AR撮影装置を活用した「没入体験型CM」の実証実験を開始 GW期間内に大型ショッピングモール内にて

日本テレビ放送網株式会社は、日本テレビが事業展開する XR分野のコンテンツ制作および開発支援サービス『日テレXR』において、新たな広告没入体験ができるサービスの実証実験を開始しました。


ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

ギブリー、生成AIがマーケティング業務を支援するサービス「マーケGAI」の提供を開始

株式会社ギブリーは、生成AI技術を活用してマーケティング業務を自動化・効率化するAIマーケティング支援ツール「マーケGAI」の提供を開始したことを発表しました。


「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

「○○とは」検索に見るトレンドや生活者の気になりごとは?「インボイス」「NISA」「猫ミーム」など

検索エンジンで調べ物をするときによく使われる「〇〇とは」検索。今回は、直近1年間で検索数が多かった注目ワードや、時期によって急上昇したトレンドワードをご紹介します。「とは」検索から見えてくる最新の流行りやみんなの関心事を読み解いていきます。


GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

GWに10連休を取得する人は約2割!連休の予定はインバウンドの影響か「国内旅行」が下降し「家事」が上昇【mitoriz調査】

株式会社mitorizは、消費者購買行動データサービス「Point of Buy®」の会員に対し「大型連休に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

Supportive fans are willing to spend money? “Oshikatsu” insights & applying it to marketing strategy

“Oshikatsu” stimulates consumption in Japan. In fact, more than 80-90% of teens answered that they have an “Oshi.” We will deepen our understanding by investigating the current state of the “Oshikatsu” market, behaviors like time and money spent on “Oshikatsu,” and its connection with collaborations, etc. in marketing.


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ