雑誌に代わる情報収集のメインチャネル?インスタメディアの実態
様々なトレンド情報をインスタグラム上で発信するSNS特化メディアとしてユーザーを集めているインスタメディア。雑誌のページをめくる感覚でスワイプしながら閲覧でき、好みの情報を手軽にキャッチできるツールとして、若い女性を中心に利用者が広がっています。
インスタメディアにはユーザーの投稿を集約・編集する「リポスト」型と、独自コンテンツを投稿する「コンテンツ」型、双方をミックスしたタイプがあります。運用側から見れば、リポスト型は投稿作成の手軽さが、コンテンツ型は統一感を出せる点などが特長です。
登場したばかりの頃はコスメやファッション、グルメなどの若者向けコンテンツに限られていたインスタメディアも、今では節約術や政治情報などへも裾野が広がっています。影響力の高さから、マーケティングにおけるチャネルとしての注目も高まっています。
そこで、本記事では主要インスタメディアの利用実態を調査。「C Channel」「Mery」「sucle(シュクレ)」「RiLi(リリ)」の4メディアを取り上げ、それぞれのフォロワー数や特徴を比較します。
まず、4つのインスタメディアのフォロワー数やカテゴリー別の展開状況、同名で保有するWeb媒体やECストアなどの一覧情報をまとめてみました。
フォロワー数はC Channelが最も多く65.4万人。そのほかの3メディアのフォロワー数はいずれも20万人を超えており、影響力の高さがうかがえます。
また、インスタメディアにはメインアカウントとは別に、コスメやグルメなどカテゴリー毎のアカウントを運用するサービスも多く(一覧表では「カテゴリー展開」と表示)、MeryやRiLiはセレクトショップ(一覧表では「ECストア」と表示)も手掛けています。
では、それぞれのメディアにはどのような特徴があるのでしょうか。掘り下げていきます。
■アプリからインスタへ大きく舵を切った「C Channel」
C Channelは、「誰もがわがままでいられる時代へ」をテーマにした、若い女性をターゲットにしたウェブメディア。元々ファッションやメイクの動画コンテンツをアプリで発信していましたが、2020年8月にアプリサービスを終了し、SNSアカウントでの情報発信を強化することを発表しました(『C Channel、SNS配信とインフルエンサーサービスに集中』)。
インスタ運用に大きく舵を切ったC Channelでは、メインアカウントの「C Channel_girls」のほか、美容情報の「C Channel_beauty」レシピやグルメの「C Channel_food」など、カテゴリー別にアカウントを分散。それぞれのテーマに特化したコンテンツを発信することで、情報の探しやすさと質の高さを担保し、ユーザーに支持されています。
最近、複数アカウントを展開するインスタメディアが増えていますが、C Channelはそれぞれのアカウントでのフォロワー数が圧倒的に多く、業界を牽引する存在。メインアカウントのC Channel_girlsに加え、food、beautyでもフォロワー数はそれぞれ60万人を超え、ハンドメイドのアイデアコンテンツを配信する「cchannel_artandstudy」は、最多の93.7万フォロワー数を誇ります。
インスタグラムでの「C Channel」検索画面。美容コスメを扱うbeautyや、Art&Study、DIY Craftsを扱うartandstudyなど、ジャンルは多岐にわたる。
■統一された世界観で「好き」を届ける「Mery」
Meryは、若い女性をターゲットに、「好き」を届けるウェブメディア。メインアカウントの「mery.jp」は41.5万人フォロワーで、C Channelに次ぐ規模となっています。Meryはストーリーズが人気で引用投稿するユーザーも多く、拡散力の高いインスタメディアです。
また、Meryがセレクトしたファッション・コスメアイテムのEC販売も行っており、「_meryshop_」はストア専用のアカウント。商品単体を紹介するだけでなく、アクセサリーとネイル、ケアアイテムを一つの写真で「ハンドスタイリング」として投稿するなど、組み合わせの楽しみやライフスタイルを提案する工夫が凝らされています。
「mery_shop」投稿より
■まるで雑誌の特集のようなコンテンツ「Sucle(シュクレ)」
Sucle(シュクレ)は、「きょうのわたし、愛おしいわたし」をコンセプトに、旬の「かわいい」情報を届けるインスタメディア。メインアカウントのフォロワー数は20.3万人で、メインアカウントの他、コスメ、ライフスタイル、グルメのカテゴリー別アカウントも運用しています。
Sucleでは投稿を1つのコンテンツと見立て、1枚目には「夏休みの過ごし方5選」「女子向けキャンプグッズ」といったタイトルをつけています。ユーザーは画像をスワイプして自分の気になる情報を楽しめるようになっており、Sucleがユーザー体験を重視していることが見えてきます。
Sucle(シュクレ)インスタグラム投稿より
■みんなの「やりたい」にハウツーで応える「RiLi(リリ)」
RiLiは、みんなの「なりたい」「やりたい」を応援する、若い女性をターゲットにしたインスタメディア。写真で魅せるだけでなく、「〇〇のコツ」「〇〇を教えて!」などのハウツー投稿では写真と解説をミックスした記事コンテンツに仕上げています。具体的なノウハウも伝えつつ、統一感のあるデザインが特徴です。
「rili_tokyo」インスタグラム投稿より
また、MERYと同じようにファッションアイテムのEC販売も手掛けており、メインアカウントの「rili.tokyo」がフォロワー数30.7万人、ストア専用の「rili.shopping」が23.1万人と、どちらも人気のアカウントです。オリジナルファッションブランド「RiLi」も展開し、トレンド女子の間で話題の商品も多数生み出しています。
「rili_shopping」インスタグラム投稿より
Webサイトの閲覧コンテンツ分析でユーザー像の違いを考察
インスタメディアはインスタグラムを中心にユーザーとの接点を構築していますが、インスタ以外のチャネルではどのような運用を行っているのでしょうか。そこで、Webサイトも運用している3サービス「C Channel」「Mery」「RiLi(リリ)」の動向を見てみましょう。
Webサイトのユーザー数や属性がブラウザで簡単に把握できる競合分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて、まず過去1年のユーザー数推移を調べてみました。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
全体の傾向としてユーザー数はダウントレンドとなっています。ユーザーの情報収集はインスタで完結する傾向が続いていると言えるのではないでしょうか。しかしそれでも、C ChannelとMeryに関しては月間訪問者数が40万人〜60万人程度となっており、ユーザーを集めている大きなメディアです。
また、インスタメディアのフォロワー数はC Channelが1位でしたが、WebサイトではMeryがトップ。C ChannelがSNSに力を入れている一方、MeryはWebサイト版のコンテンツも充実させているほか、Meryストアサイトと連動させ、EC利用を促進しているためだと考えられます。
続いて、Webサイトのユーザー層を見ていきます。
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
いずれも、女性が7割以上、20代がメインユーザーというユーザー構成です。中でも、20代の構成比がもっとも多かったのはRiLiとなっていました。
では、各サイト内ではどのようなコンテンツが人気なのでしょうか。上から順に、C Channel、Mery、RiLiのコンテンツランキング上位5ページの一覧を見ていきます。
C Channelコンテンツランキング
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
C Channelで当該の期間中にユーザーを集めていたコンテンツには「服装は「気温」で選んで!」や「サラダチキンのアレンジレシピ」「「アホ毛」は家にあるもので解決できる!」などのタイトルが並んでいます。生活の悩みを動画で解決するコンテンツが人気のようです。
Meryコンテンツランキング
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
Meryでは「爪のピンクの部分を伸ばしたいの!」や「泣き虫女子よ、もう大丈夫。腫れた目をスッキリさせるケアリスト」「「アロエジェル」のすゝめ」といった美容関連の情報が上位にランクインしていました。
RiLiコンテンツランキング
分析ツール:「Dockpit」、分析期間:2020年8月〜2021年7月、対象デバイス:PC、スマートフォン
RiLiは、アイコン画像の作り方やスマホのホーム画面アレンジ、チェキ風アルバムの作り方といったスマホ活用のハウツー記事が上位にランクインしていました。
こうしてコンテンツの並びを見ると、3メディアのユーザーの特徴の違いがなんとなく浮かんでくるのではないでしょうか。C Channelユーザーは日々の生活の上でのちょっとした課題の解決を求めている人、Meryユーザーは一段回上のかわいさを求めて美容情報を集める人、RiLiはSNSなどの写真映えを意識してより良いデジタルライフを送ろうとしている人…というイメージです。
一方、各メディアの共通点としては、写真がメインのインスタ投稿と違っていずれも解説系コンテンツが多く閲覧されている点が挙げられます。ユーザーはインスタよりも詳しく解説されている記事コンテンツを読むことで、自身の課題解決につなげようとしているのではないでしょうか。
このようにインスタメディアとWebサイトでは利用目的がやや異なっており、意識的か無意識的かは分かりませんが、ユーザーは双方を使い分けていると考えられます。
媒体ごとにユーザーは使い分けている…特徴の理解が重要
同じように若い女性をターゲットにしたインスタメディアも、力を入れるコンテンツや世界観、伝える方法はそれぞれ異なっています。ユーザーはこうしたメディアの世界観の違いを敏感に感じ取り、自分が必要としていたり、面白いと感じるアカウントをフォローしているでしょう。
また、Sucleに見られるように、インスタの1投稿だけでできるだけ完結に情報を伝えるやり方も興味深いです。かつてのように雑誌などを買って情報収集する行動はネットメディアの登場によって下火になってきていますが、こうしたインスタメディアはWebサイトへの誘導を行うことをあまり考えず、すべてをインスタ内で完結させています。ユーザー自身も情報を楽しみながら自然と受け取った上で、暮らしに役立てたり、購買行動につなげたりといったアクションをインスタ起点で行っているのではないでしょうか。
ただし、Webサイトの閲覧コンテンツの分析から、ユーザーがより深く興味を持ったものや、知りたいと考えた情報に関しては、自身の課題解決のためにWebサイトに訪問して読んでいることがうかがえました。このことから、Webサイト上のコンテンツとしては、動画などの情報量がリッチなものや、より専門的な深い解説系のコンテンツが今後ますます求められていくのではないでしょうか。
プロモーションやマーケティングを行う際には、こうした媒体特性の違いに十分配慮しつつ、単にいずれかにのみ注力するのではなくて、ユーザーの使い分けに着目して情報の出し分けを行うことが重要でしょう。
今回の分析をぜひ実務に役立ててみてください。
<分析概要>
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「Dockpit」を使用し、2020年8月~2021年7月のネット行動ログデータを分析しました。※ユーザー数はヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
フリーランスPRおよびライターとして活動中。二児の母。