中国でスキーブームの到来。スキービジネスの発展を後押し|中国トレンド調査

中国でスキーブームの到来。スキービジネスの発展を後押し|中国トレンド調査

北京冬季オリンピックの影響を受けて、中国ではスキーブームが到来しました。それに伴い、中国におけるスキー産業も急速に発展し、中国は投資や貿易の対象となりました。本記事では、中国のスキーブームの現状とスキービジネスの実態について考察します。


2022年北京冬季オリンピックが近づくにつれ、ウィンタースポーツは一段と注目を集めるようになりました。昨年度の中国において、スキー・スノーボードは最もポピュラーなウィンタースポーツの一つでした。特に若者の間では、友人との週末のスキーはかなり流行ったようです。本記事では、中国のスキーブームの現状に触れ、それに伴って発展するスキービジネスについて分析していきます。

中国ではスキーブームが到来

2015年に2022年北京冬季オリンピックが決定してから2020年までの5年間、中国のウィンタースポーツビジネスの市場規模は2700億元(約4.6兆円)から6000億元(約10兆円)に上り、2025年には1兆元(17兆円)に達する見込みです。

また、スキーの参加人口に関しては、今年までにはすでに2076万人に達しました。
中国のInstagram「RED(小紅書)」が公表したレポート「2021年ライフスタイルトレンドキーワード」によれば、2020年11月に「RED」において、キーワード「スキー」の検索量の前年同期比は150%に達しており、さらに「スキー」に関する記事の数は前年同期と比較すると3倍も増えました。

中国におけるスキー人口の特徴

「2021〜2027年の中国スキー業界の需要と供給の分析及びスキー市場の潜在性に関する報告」によると、昨年度の中国におけるスキー人口は1051万人で、延べ人数は1724万でした。スキー人口1人当たりの平均スキー回数は1.6回で、その値は2015年から年々増加しています。

若年層に人気のスキー

スキーは全体として男性の参加率が女性よりやや高めだという傾向が見られます。例えば、滞在型と日帰り型のスキーリゾートの利用者はそれぞれ男性が57.7%、52.8%を占めています。

しかしながら、屋内スキー場の利用者では女性の割合が高く、55.63%を占めています。また、年代別で見てみると、40代以下の割合は全体の95%を占めているので、スキーは若年層に人気のスポーツであることが分かります。

屋内スキー場

スキーの地域別参加率

スキー人口の居住地域の分布を確認したところ、上海、北京などの1級都市の割合が最も高く、全体の38.7%を占めていました。それに続いて、新1級都市と2級都市も高めで、それぞれの割合は19.4%と18.7%でした。

スキービジネスの発展

スキーブームに伴って、スキービジネスも発展を遂げています。9月7日に幕を閉じたウィンタースポーツの博覧会「WORLD WINTER SPORTS (BEIJING) EXPO 2021」では、中国国内外の各種ウィンタースポーツ産業の関連事業者が500以上集いました。

スキーウェアやスキー板はもちろん、ゴンドラリフトや人工降雪機、スノーリゾートなども展示の内容となっており、企業間の交流も促進されました。

「WORLD WINTER SPORTS (BEIJING) EXPO 2021」の様子

スキー用品

中国のスキー用品市場は長年、海外のブランドによって支配されてきました。通常、スキー用品は大きく(1)スキー板とストック、スキー靴のような大型道具、(2)スキーウェア、(3)ゴーグルやヘルメットのスキーを安全に楽しむためのグッズ、という3種類に分けられます。

安心してスキーするには高品質のスキー用品が必要であるため、オーストリアやドイツ等の製品技術の優れており、認知度の高いブランドが中国では人気です。また、中国のスキーヤーはレンタルより、自分好みのスキー用品を購入することが多く、その際、K2やBurton、Nitroなどの専門的なスキーメーカーから、DiorやLOUIS VUITTONなどの高級ブランドまでが彼らの守備範囲だそうです。

中国ではネット通販の利用率が高いため、スキー用品は実店舗だけでなく、タオバオなどのECサイトを通してもよく売れています。タオバオでも海外のスキーブランドが人気ですが、NitroやJONESのように店舗を構えているブランドもあれば、冷山(COLD MOUNTAIN)や肆加貳装備庫などの代理店と契約を結んでいるブランドも多数あります。

スキーブランド代理店「冷山」の創立者である頼剛氏によると、スキー用品は依然として伝統的な産業であり、スティッキネスは非常に高いそうです。9月入荷の商品は翌年3月に売り切るのが常で、昨年度だけで8万以上の顧客に対応しましたが、リピート率ががかなり高かったようです。

スキーブランド代理店「冷山」が取り扱うブランド

スキー場の設備・施設

「中国スキー産業白書(2019年度報告)」によると、2019年までに中国には既に770のスキー場が建てられ、北京冬季オリンピックの開催が決定される前の2010年に比べると、3.77%の増加率を見せました。それに伴い、スキー場の設備・施設の需要も高まりました。

スキー場の設備・施設には主にロープウェイやグルーミング、スノーモービルなどがありますが、その中でも特に重要なのはスノーマシンです。「中国スキー産業白書(2019年度報告)」によれば、2019年には新たに1149台のスノーマシンが増設されましたが、そのうちの682台が海外から輸入でした。即ち、国産のスノーマシンが増えつつも、今もなお、輸入に頼っているところがあるということです。

スキーレッスン

2020年までに、中国のスキーヤー数は1,051万人に達しましたが、オンライン旅行会社である「携程旅行(Ctrip)」のテーマツアープラットフォームの責任者である張怡によると、中国では、スキー旅行で初めてスキーを体験する旅行者は全スキーヤーの8割を占めており、年に平均1〜2回しかスキーしていない人は9割も上回っています。

つまり、スキー初心者が多い分、スキーインストラクターが不足しています。しかしながら、中国でのインストラクターの養成システムはまだまだ先進国に追いついておらず、インストラクターの育成が難しいのが現状です。従って、中国でのスキーインストラクター不足の状況はまだまだ改善されないと予想できるでしょう。

一方、現在ではスキーテクニックを分析してくれる製品「カーブ」というウェアラブルデバイスが開発されました。元々、滑り方の分析はスキーインストラクターの指導が必要ですが、「カーブ」を靴に装着すると、「カーブ」は動きや圧力を測定し、リアルタイムでイヤホンにデータを送信してくれます。まさに「デジタルコーチ」です。このような製品を導入することで、スキーインストラクター不足の問題も軽減されるのではないでしょうか。

まとめ

スキー産業において、現在の中国は最も注目されているエマージングマーケット(新興成長市場)であり、投資や貿易の対象として価値があります。これから冬季オリンピックに向けて、中国でのスキー熱はさらに高まるに違いありません。またそれに伴った、スキー産業の更なる発展も期することができるでしょう。

<参考文献>
「万亿滑雪市场,有机会诞生下一个lululemon吗?」
https://www.cbndata.com/information/144366
「冬奥会临近,滑雪产业又「爆」了」
https://www.163.com/dy/article/GKF085MJ05299B1S.html
「中国滑雪行业白皮书」
https://www.sohu.com/a/459478895_100809
「爆红的滑雪,新的万亿市场?」
https://www.tmtpost.com/4928728.html
「为什么雪季一结束,滑雪场就不行了?」
https://www.tmtpost.com/5040292.html
「2021冬博会圆满闭幕 共赴冬奥之约、共享冰雪经济新未来」
http://ent.people.com.cn/n1/2021/0908/c1012-32221521.html
「万亿市场前景下,滑雪教练人才缺口问题何解?」
http://www.ispo.com.cn/news/detail/50fLTxP
「テクノロジーの発展で変わりつつあるスキービジネス」
https://halftime-media.com/sports-market/technology-skiing/
「2020年中国滑雪产业发展现状分析:一线城市滑雪人群占比较高」
https://www.chyxx.com/industry/202107/960685.html
「中国初级滑雪市场探析」
https://www.sohu.com/a/409271081_120046640

この記事のライター

中国出身の留学生。立教大学大学院に在学中。

関連する投稿


エスビー食品、中国挑戦の鍵は「生の声」。スピーディーな調査を叶えたValueQIC活用術

エスビー食品、中国挑戦の鍵は「生の声」。スピーディーな調査を叶えたValueQIC活用術

エスビー食品株式会社は、「S&Bブランドの世界定番化」をミッションに事業を展開しています。ヴァリューズが伴走支援に携わっているのは、レトルトカレーの中国市場への進出。中国人消費者の声を集める「ValueQIC」を活用し、現地の「生の声」を具体的な販売戦略へと落とし込んでいます。本記事では、同社の馬 嘉貝氏に取り組みの全容をうかがいました。


より早いスピード感xリアル感!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」写真調査機能のご紹介【第5回】

より早いスピード感xリアル感!中国市場Web調査ツール「ValueQIC」写真調査機能のご紹介【第5回】

トレンドの変化が速い、と言われている中国市場。「最近、中国市場の変化が掴めない。言語の壁もあり、中国人生活者の考え方がよくわからない。」という声も多く耳にします。従来の調査には1ヶ月以上の時間が必要ですが、Web調査ツール「ValueQIC(ヴァリュークイック)」なら、定量調査に加え、写真や動画を介して、迅速に、中国人の実態調査を実施することが可能です。第5回は、写真調査機能の特徴を事例とともにご紹介します。


中国シニア層に広がる“健康投資”志向〜1本6,500円の機能性オイルが売上拡大

中国シニア層に広がる“健康投資”志向〜1本6,500円の機能性オイルが売上拡大

上海の大型スーパーでは、淡い金色のパッケージが目を引く機能性食用オイルが、次々と棚から消えていきます。1本300元(約6,500円)という高価格にもかかわらず、購入しているのは主に60〜70代のシニア層です。近年、中国ではジアシルグリセロール(DAG)を含む高付加価値オイルの需要が高まり、“健康への投資”を重視するシニア消費の新しいトレンドとして注目を集めています。


【ValueQIC Q&A】中国人の「自分へのご褒美」に対する消費行動・価値観調査 (2025年12月)

【ValueQIC Q&A】中国人の「自分へのご褒美」に対する消費行動・価値観調査 (2025年12月)

2025年、「Treatonomics(ご褒美経済)」や「Self-Reward(自分へのご褒美)」という消費トレンドが台頭し、「自分にはそれだけの価値がある」という心理や「頑張る自分を労わるためのラグジュアリー」を肯定する消費が世界中で広く見られています。本レポートでは、新しいものへの反応が速く流行の変遷も早い中国人に着目し、「自分へのご褒美消費」に関する最新トレンドを把握、性別・世代別の消費傾向を調査しました。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


中国の若者が「固形石鹸」に再注目、そのトレンドは?

中国の若者が「固形石鹸」に再注目、そのトレンドは?

ボディケア用品というと現在の主流は液体の製品ですが、近年中国の若者の間では固形石鹸が人気を集めるようになっています。その背景には 、例えば、さまざまな市場において情緒的な消費トレンドが成長している中、石鹸のニーズにおいても単に洗浄力などボディケアの側面だけでなく、感情的な価値をもたらす側面へと広がっていることが挙げられます。この記事では、固形石鹸の消費が拡大している要因とその様子を紹介します。


最新の投稿


タイの美容市場トレンド2025年版|韓国美容・メンズ美容・AI技術が変える美容ビジネス

タイの美容市場トレンド2025年版|韓国美容・メンズ美容・AI技術が変える美容ビジネス

東南アジアの美容・スキンケア市場は、ここ数年で急速に拡大しています。なかでもタイは、美意識の高さと購買力を兼ね備えた有力市場として注目を集めています。韓国美容の影響を受けた高機能スキンケア製品の人気や、ジェンダーを問わず広がるセルフケア文化など、美容の価値観が多様化。2025年のタイでは、エイジングケアからメンズスキンケアまで、幅広いカテゴリーで新たなトレンドが生まれています。


Z世代の約7割が提出前の「AIチェック」を実践!狙いはタイパより「上司との対話の質向上」【LINEヤフーコミュニケーションズ調べ】

Z世代の約7割が提出前の「AIチェック」を実践!狙いはタイパより「上司との対話の質向上」【LINEヤフーコミュニケーションズ調べ】

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社は、生成AIを導入している企業で働くZ世代(22〜28歳)の会社員を対象に、「生成AI時代の業務意識と上司への期待に関する調査」を実施し、結果を公開しました。


TikTokを使ったタイのスーパーLotus’s(ロータス)のSNS戦略

TikTokを使ったタイのスーパーLotus’s(ロータス)のSNS戦略

タイのスーパーLotus’s(ロータス)が、TikTokフォロワー数200万人を突破し、小売ブランドとして国内No.1になりました。本記事では、Lotus’sがどのようにしてTikTokで成功を収めたのかを、世代別コンテンツ戦略やタイにおけるSNSショッピングの土壌、さらには個人主導のライブコマースを象徴するpimrypieの事例とあわせて紐解いていきます。


【無料レポート/特典付き】デジタル・トレンド白書2025 – 金融編|ダウンロードページ

【無料レポート/特典付き】デジタル・トレンド白書2025 – 金融編|ダウンロードページ

「デジタル・トレンド白書2025 金融編」は、開始1年を迎えた「新NISA」や暗号資産、話題のカブアンドなどの投資のトピック、富裕層の動向や電子マネーの進化など11の自主調査が収録されたレポートです。日経平均株価が史上初の5万円台に到達し 、日銀による追加利上げやトランプ関税による市場の乱高下など 、消費者の関心が非常に高まった金融業界の一年をまとめています。ダウンロード特典として「金融各業界サイトランキング」も収録。


BtoBマーケ担当者の約9割が「業界別コンテンツは必要」と回答!一方で「手間・コスト」が障壁に【IDEATECH調査】

BtoBマーケ担当者の約9割が「業界別コンテンツは必要」と回答!一方で「手間・コスト」が障壁に【IDEATECH調査】

株式会社IDEATECHは、同社が運営する「リサピー®︎」にてBtoB向け商材を扱う企業で、マーケティングやコンテンツ制作(ホワイトペーパー、事例集、調査レポート等)を1年以上担当している会社員を対象に、BtoBマーケティングコンテンツ制作担当者の実態調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ