こんにちは、リサーチャーの菅原です。私は調査会社を経たのち、国内大手の総合EC企業で物販とサービス両方のビジネスの中期経営計画やカテゴリ戦略を担当しており、個人でもリサーチのノウハウを普及させるための書籍執筆や寄稿などに取り組んでいます。
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https://note.com/diisuket/n/n0cde498ca01e初めましての方向けの自己紹介&活動紹介ページです。 リサーチャー 菅原大介を何卒よろしくお願いします! (※2021年5月13日更新) ▼ プロフィール リサーチャー 菅原大介 リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で株式会社学研ホールディングスを経て、株式会社マクロミルで月次500問以上の調査を運用するリサーチ業務に従事。現在は国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略・中期経営計画の立案を担当する。
ウェブサービスの運営において、アンケートフォームの作成は職種を問わず今や必須のスキルです。しかし、なかなか周りの誰かからやり方を教わる機会は少なく、ウェブ上のテンプレートを使用しようにも、たいていテーマを変えても同じ質問が並んでいます。
実はこうしたアンケートフォームは、用途に合った質問と選択肢を用意することができてはじめて高いパフォーマンスを得られます。このコラムでは、誰もが自分の業務目的に合ったアンケートを作成できるよう、「基本の型」となるフォーム作成法を解説します。
今回のテーマは「満足度アンケート」(BtoC編)。既に実施している方が多いテーマだけに、質問文と選択肢が粗いまま運用されていないか注意したり、平凡な結果からも傾向と対策を読み取る力が必要です。この機会にぜひブラッシュアップしてみてください。
※隣接するテーマ領域である、会員属性調査、利用実態調査、障害要因調査などの内容は今回含みません。
BtoC編~満足度アンケートで聞くべき基本3項目
まず、満足度アンケートにおいて必ず設定すべき基本の3質問を解説します。それぞれについて質問のねらいと、選択肢設計のポイントを記載していますので、自社のサービスを念頭に置きながら見てみてください。
■Q1:満足度(単一回答)
[○○](サービス名称)での今回の利用体験には、どの程度満足いただけましたか。
○ | 大変満足 |
○ | 満足 |
○ | どちらともいえない |
○ | 不満 |
○ | 大変不満 |
選択肢
- 選択肢の表記は両側を対の形で構成する (ポジティブ側「大変満足」~ネガティブ側「大変不満」) (修飾語の使い方を一致させる→「大変・とても・非常に・やや・少し」など) (「大変不満足」のような表記は誤読を誘うので使わない)
- 選択肢の尺度は基本的に5段階で尋ねる (回答者の素の状態に適した選択肢を用意することが原則) (「どちらともいえない」が実情を表していることもある)
Q1は満足度についての質問です。
この質問のねらいは、「サービスの体験評価を定量的に測定する」ことにあります。満足度は極めてメジャーな評価方法であり、その分スムーズなイメージ伝達が可能です。回答者は数段階の中から評価を選ぶことに慣れていますし、実施者である私たちも「満足度○%」という指標から良し悪しを直感的に理解することができます。
選択肢の表記は、「両側を対の形で構成する」ことがポイントです。最もポジティブな選択肢が「大変満足」であれば、最もネガティブな選択肢は「大変不満」となります。
ここで特に、程度を表す修飾語の使い方を一致させましょう。満足度を問う選択肢では、「大変・とても・非常に・やや・少し」などの語句をよく使用します。これらの修飾語が両側で同じ形式で使われているか、あらためて点検してみてください。
また、事例数はそれほど多くないものの、ネガティブ側の選択肢で「大変不満足」と書くケースも一定数見かけます。これは字面で「満足」と読み間違えやすい表記なので、意味は合っていたとしても、できるだけ使わないようにしましょう。
選択肢の尺度は、基本的に5段階で尋ねます(4段階で尋ねたい人が多いかと思いますが)。アンケートではできるだけ回答者の素の状態に適した選択肢を用意することが原則です。中間の選択肢:「どちらともいえない」を入れておきましょう。
この「どちらともいえない」という中間の選択肢は、サービスに対する回答者の印象が「毒にも薬にもならない」という実情をよく表していることが多々あります。無理に白黒つけようとするよりも、回答結果の解釈に慣れていく方をお勧めします。
■Q2:満足理由(自由回答)
[○○](サービス名称)での今回の利用体験について、前問のように回答された理由を詳しく教えてください。
[ ]
ねらい
- 回答傾向の大勢を見極めつつ変化の予兆をつかむ (記述式は選択回答結果の裏づけ+意見の見落とし防止に役立つ)
注意点
- 記述式の総合評価は詳細を問う質問の前に入れる (選択式よりも前に回答者の頭の中にある印象や体験を引き出す)
Q2は満足理由についての質問です。
この質問のねらいは、「回答傾向の大勢を見極めつつ変化の予兆をつかむ」ことにあります。前問で得た満足度の評点に対して、主だった自由意見を裏づけとして、回答傾向の大勢を見極めます。
また少数の意見でも、点数評価には表れていない「変化の予兆」を含むことがあります。この予兆はポジティブなものもネガティブなものもありますが、意見の見落としの防止に役立てていきます。
質問の注意点として、全体の質問順序を組み立てるにあたり、記述式の総合評価は選択式の質問の前に入れることがポイントです。詳細を問う質問よりも前に配置することで、回答者の頭の中にある印象や体験をストレートに引き出します。
■Q3:項目別満足度(単一回答)
[○○](サービス名称)での今回の利用体験について、
[○○](評価項目)はいかがでしたか。
あなたの評価にあてはまるものを一つだけお選びください。
○ | 大変満足 |
○ | 満足 |
○ | どちらともいえない |
○ | 不満 |
○ | 大変不満 |
※評価項目の箇所には、「品揃え」「クオリティ」「スピード」「料金」「担当者の対応」などに相当する項目を入れる。
ねらい
- サービスの構成要素ごとに評価のレベルを知る (決めた項目ごとに確実に評価の判断を得られる)
質問文
- 評価項目の箇所には、「品揃え」「クオリティ」「スピード」「料金」「担当者の対応」などに相当する項目を入れる。 (回答結果は、特に「自社のミッションと紐づく項目」や「サービスのウリに関する項目」の出来に着目する)
注意点
- 項目別満足度の質問数は5~7問程度で構成する (10問以上は回答負荷が高く分析難易度も上がる)
Q3は項目別満足度についての質問です。
この質問のねらいは、「サービスの構成要素ごとに評価のレベルを知る」ことにあります。主要な項目ごとに段階別のスコアを測定できるため、複数回答で「満足」の有る・無しを選択させる時と異なり、決めた項目ごとに確実に評価の判断を得ることができます。
質問文の評価項目の箇所には、「品揃え」「クオリティ」「スピード」「料金」「担当者の対応」などに相当する項目を入れます。回答結果を見る時は、「自社のミッションと紐づく項目」や「サービスのウリに関する項目」に着目すると、分析データを実際の業務に活かしやすくなります。
この質問の注意点として、質問数は5~7問程度で構成するようにします。つまり、前述の評価項目は5~7個程度が適量だということです。10問以上になってくると回答負荷が高いうえに、得られた評価の分析も難しくなるので、自力での調査は避けた方がベターです。
BtoC編~満足度アンケートで聞くべき応用2項目
ここまで「基本項目」を解説しました。以降の「発展項目」は、必要に応じて取り入れてみてください。質問番号は継続して付けていますが、良いと思ったものだけを前問までの質問構成の中に取り入れる形でOKです。
■Q4:推奨意向度(単一回答)
[○○](サービス名称)を親しい友人や家族にお薦めする可能性はどれくらいありますか。
10点(お薦めできる)~0点(お薦めしない)でお答えください。
○ | 10点 |
○ | 9点 |
○ | 8点 |
○ | 7点 |
○ | 6点 |
○ | 5点 |
○ | 4点 |
○ | 3点 |
○ | 2点 |
○ | 1点 |
○ | 0点 |
ねらい
- 推奨者・中立者・批判者の割合を把握する/NPS®のスコアを測定する (推奨者:10点~9点、中立者:8点~7点、批判者:6点~0点)
注意点
- 前提1:回答者にサービス内容がある程度浸透していること (ほとんど知られていない状態で実施する意義は薄い)
- 前提2:回収サンプル数がある程度集まること (回答が散りやすいので母数が少ないと誤差が大きい)
選択肢
- 選択肢の最小得点項目に「0点」を入れる (0点を含む11段階が正式な設計)
- 選択肢「5点」の箇所に定性的な注釈を書き加えない (5点が「ふつう」「どちらでもない」という解釈は誤り)
Q4は推奨意向度についての質問です。
この質問のねらいは、「推奨者・中立者・批判者の割合を把握する/NPS®のスコアを測定する」ことにあります。NPS®(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)は、0点~10点の11段階でサービスの「推奨意向」を尋ねる調査手法です。「大切な人に薦めたくなる状態」は、「自分が満足するだけの状態」よりも顧客ロイヤルティが高いという見地に基づいて運用され、推奨者:10点~9点、中立者:8点~7点、批判者:6点~0点、回答者をこのように分類し、推奨者の割合-批判者の割合=NPS®のスコアとして算出します。
※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)、フレッド・ライクヘルド(Fred Reichheld)、サトメトリックス・システムズ(Satmetrix Systems)の登録商標です。
※NPS®の説明については以下の記事が詳しいので、基本的な設計理解にあたってはこちらをご参照ください。
CV増が「正解」とは限らない?顧客ロイヤルティを表すNPS®とネット行動の関係とは?
https://manamina.valuesccg.com/articles/1484「ブランドや商品・サービスに対する顧客のロイヤルティを数値化したNPS®(Net Promoter Score)」は、日本でも様々な業界で取り入れられつつあります。しかし、NPS®と実際のネット行動の関係性はまだあまり明らかにされていません。本稿では、「NPS®とは」のそもそもの定義から、調査事例、批判者~中立者のネット行動の傾向までを解説します。
NPS®の質問を成り立たせるには、前提が2つあります。
1つめは、回答者にサービス内容がある程度浸透していること。サービスがほとんど知られていない状態でアンケートを実施する意義は極めて薄いです。
2つめは、回収サンプル数がある程度集まること。選択肢が多段階あると回答が散りやすく、母数が少ないと結果の誤差も大きくなってしまいます。この2点をクリアできないうちは、普通に満足度を尋ねる形式が無難です。
選択肢の構成では、最小得点項目に「0点」を入れます。日本の一般的な評点では、最小項目は1点から始まることが多いですが、0点を含む11段階がNPS®の正式な設計なので注意しましょう。
選択肢の表記では、5点の箇所に定性的な注釈を書き加えないようにしてください。中間の選択肢に、「ふつう」あるいは「どちらでもない」という注釈が入っている設計を見かけますが、この解釈は誤りです。※全般的に、単純な10段階評価の質問と異なるので注意しましょう。
■Q5:推奨意向理由(自由回答)
[○○](サービス名称)をお薦めする可能性について、前問のように回答された理由を詳しく教えてください。※10点以外を選択された方は、サービスのどのような点が改善されると10点に近づくか、という観点からお書きください。
[ ]
ねらい
- 点数ステータスに応じた推奨理由を確認する (推奨者→サービスにハマっている要因を確認) (中立者→利用の支障となっている要因を確認) (批判者→基本価値が実感されない要因を確認)
質問文
- 10点満点を基準にして満点と差分がある理由を尋ねる聴き方にする (精度の高い改善意見を引き出すことができる)
Q5は推奨意向理由についての質問です。
この質問のねらいは、「点数ステータスに応じた推奨理由を確認する」ことにあります。回答結果を見る時は、次のような観点で分析していきます。
・推奨者は、サービスモデルにうまくハマっている要因を確認します。
・中立者は、利用にあたり支障となっている要因を確認します。
・批判者は、サービスの基本価値が実感されない要因を確認します。
質問文では、「10点満点を基準にして満点と差分がある理由を尋ねる聴き方にする」ことがポイントです。真の推奨者のみで構成される満点の状態をあるべき姿と捉え、現在とは差分がある理由を尋ねることで、精度の高い改善意見を引き出すことができます。
まとめ
今回は「満足度アンケート」のテンプレート(BtoC編)を解説しました。これから自身の業務でアンケートを作成予定の方は、Googleフォームで簡単につくることができますので、ぜひ参考にしてみてください。また、既にアンケートを運用中の方も、質問文あるいは選択肢ベースで、自社ではどういう形式がベストか、点検用に参照してみてください。
▼リサーチャーの菅原さんがアンケートフォーム設計の基礎を解説したYouTubeの動画もあります(Googleフォームのサンプル付)。ぜひ合わせてご覧ください。
▼今回のきほんのアンケートフォーム「満足度アンケート(BtoC)」編について、実際に設計を行う際に注意すべきリストをExcel形式でまとめました。このチェックリストをダウンロードしてぜひ実務に活用してみてください。
■「満足度アンケート チェックリスト」をダウンロード(BtoC編)
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