キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

新型コロナウイルスの拡大の時期に、キャンプが注目を集め、一大トレンドになりました。日常を取り戻した現在、キャンプブームは下火になっているようにみえます。一方で、キャンプブームが収まったのではなく、人々の生活にキャンプが文化として根付いたという意見もあります。今回は、キャンプブームをデータで分析し、その変遷と現状について考察します。


コロナ禍でキャンプは再びブームに

日本では1990年代に第一次キャンプブームが起こり、キャンプへの関心が高まり始めました。その後2010年代からは第二次ブームが徐々に広まり、特に新型コロナウイルスの影響でアウトドアへの関心が急増しました。

パンデミック中、人々は「密集・密接・密閉」を避けるように強く推奨されたことは記憶に新しいでしょう。キャンプなどの屋外活動では換気の必要がなく、他者との距離も確保しやすいため感染リスクを低減できるため、人気が拡大したと考えられています。コロナ禍で、自由を制限されるストレスや閉塞感から心身のリフレッシュを求める人が増えたことも、アウトドアの人気を押し上げる一因となりました。

キャンプには様々な種類があります。ソロキャンプは、準備から設営、料理などのすべての活動を一人で行うキャンプスタイル。そのためスキルや装備が重要です。また、グランピング(グラマラス+キャンピング)は高級なテントやキャビン、ベッド、食事が用意されており、豪華で快適なキャンプ体験を提供するスタイルです。

本記事では、「キャンプ」の実態についてWeb行動ログデータやアンケートデータを用いて調査していきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行える株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

「キャンプ」検索者は減少傾向も、平均キャンプ回数は上昇

新型コロナウイルスが落ち着いたのち、キャンプに興味を持っている層はどのように変化したのでしょうか。「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」キーワードの検索者数の推移をみていきます。

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者数推移

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者数推移
期間:2022年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

キャンプ検索者数は、2年前と比較して約46%減少していることがわかりました。ソロキャンプ、グランピングの検索も同様に減少傾向にあります。キャンプブームは、確かに全盛期と比較して落ち着いたと言えるでしょう。

一方で、日本オートキャンプ協会が発表した「オートキャンプ白書2024―キャンプはより暮らしの中へ」には以下のようなデータが掲載されていました。1年間の平均キャンプ回数・泊数の推移についてです。

1年間の平均キャンプ回数・泊数の推移

2020年に新型コロナウイルスの感染が確認されて以来、2022年には1年間の平均キャンプ泊数が7日を超えました。2023年には、2022年と比較して泊数はわずかに減少したものの、宿泊回数は増加傾向にあります。

2024年のデータは記載されていませんが、これらの情報から、より強くキャンプに興味のある層が増えたと言えるかもしれません。また、先述したキャンプ検索者数の減少のデータを踏まえると、一過性のキャンプへの興味があった人のキャンプ離れが起きたとも考えられます。

キャンプ検索者の検索ニーズはキャンプ場の予約、グッズ、レシピなど

続いて、キャンプ検索者のニーズを知るために、「キャンプ」検索者に焦点をあてて、検索後の流入ページを見ていきます。

「キャンプ」検索者数の流入ページ(訪問者数上位10ページ)

「キャンプ」検索者数の流入ページ(訪問者数上位10ページ)
期間:2022年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

キャンプ地の予約には「なっぷ」、キャンプの情報収集には「CAMPHACK」のサイトに多く流入していることがわかりました。

また、流入ページ10位にある「100均キャンプギア2024」記事のユーザー数推移にも注目です。2年前には、100円均一ショップなどで安くキャンプ用品を買い求めるため、情報を探していた人が多かったことがわかりますが、直近半年ではこのようなサイトへの流入が減少しています。ライト層の減少はこうした点からも読み取れると言えるでしょう。

男性人気のソロキャンプ、女性が興味をもつグランピング

キャンプに興味を持っている人たちはどのような層でしょうか。属性を分析していきます。

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者の男女割合

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者の男女割合
期間:2022年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者の年代別割合

「キャンプ」「ソロキャンプ」「グランピング」検索者の年代別割合
期間:2022年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

キャンプ検索者には、男女の割合に大きな差はないものの、少し男性が多いようです。ソロキャンプは男性が約7割という一方、グランピングは女性が約6割を占めています。また、年代割合を見ると、キャンプ検索者はネット利用者全体と比較して30代・40代が多いことがわかります。

また、グランピング検索者は、キャンプ・ソロキャンプ検索者と比較して20代の割合が多く、若年層の支持を集めていることがわかります。

キャンプ歴セグメント別に、ギア購入経験やキャンプへの意向を調査

キャンプ検索者数やキャンプ需要は、トレンド全盛期と比較して減少しました。しかし新型コロナウイルスの流行を経て、キャンプに興味を持った人やキャンプを経験したことがある人は増加し、「キャンプ」というアクティビティがより身近な体験になったことに変わりはありません。ここからは、今後どのようなキャンプニーズが予想されるのか考えていきます。

以下は、株式会社ヴァリューズが実施したアンケート※によって、今後のキャンプの意向をキャンプ歴セグメント別に調査したデータです。今回の調査では、アンケート回答者を「直近キャンプに行った時期」「キャンプ歴」の2軸を用いて、「一過性キャンパー」「コロナ開始離脱キャンパー」などとセグメント分けを行いました。

※全国のモニター会員(15歳以上の男女)を対象に、2024年8月にアンケート調査を実施(回答者 43,510人)。

キャンプ経験者は約半数、8人に1人が直近4年でキャンプの経験あり

それぞれのセグメントに該当する人数は以下の通りです。

キャンプ歴セグメント別人数

キャンプ歴セグメント別人数

キャンプ未経験者は21,316と、全体の48%となりました。約半分の人がキャンプをしたことがあるということが分かります。

また、直近4年以内にキャンプに行った「一過性キャンパー」「コロナ開始趣味キャンパー」「コロナ開始離脱キャンパー」「コロナ前から趣味キャンパー」「コロナ前開始離脱キャンパー」は合計して5,506と約12%。おおよそ8人に1人が直近4年のうちにキャンプをしている計算になります。

「直近4年以内にキャンプした人」の約半数以上がキャンプ意欲あり

キャンプをしたい人の人数グラフ

現状予定はないが今後、キャンプをしたい

まず、キャンプ実施意向についての質問を行いました。「現状予定はないが今後、キャンプをしたい」と答えた人の割合は、各セグメントで以下の通りです。

直近4年(新型コロナウイルス流行前後)で、1度でもキャンプの経験がある人の約半数以上が、キャンプに行きたいと考えていることがわかります。

次に、キャンプ歴セグメント別で、購入経験のあるキャンプ用品の割合のデータを見てみましょう。ここでは「コロナ前から趣味キャンパー」「コロナ開始趣味キャンパー」「コロナ開始離脱キャンパー」の3セグメントに絞ってみていきます。

キャンプ歴長い人の方がキャンプチェアを重視している?

キャンプ用品購入グラフ

購入したことがあるキャンプ用品(「コロナ前から趣味キャンパー」「コロナ開始趣味キャンパー」「「コロナ開始離脱キャンパー」のみ)

グラフからはまず、もっともキャンプへの愛が高いと思われる「コロナ前から趣味キャンパー」が、すべてのキャンプ用品において購入経験がもっとも高いことがうかがえます。これは妥当な結果といえるでしょう。

また、各キャンプ用品について購入経験の割合でいえば、いずれも「コロナ開始離脱キャンパー」→「コロナ開始趣味キャンパー」→「コロナ前から趣味キャンパー」とキャンプへの愛が強いと思われる順に増えています。“初心者層だけが買う特定のキャンプ用品ジャンル”は、このグラフでは見当たらず、キャンプに必須なもの順にギアを集めていくような購買傾向がうかがえます。

購入割合のギャップが大きいキャンプ用品を見ていきましょう。「コロナ前から趣味キャンパー」と「コロナ開始趣味キャンパー」を比較すると、キャンプチェアの購入割合が特に差があることが分かります。「コロナ開始趣味キャンパー(=ライト層)」の方がキャンプチェアの購入の優先度が低いようです。

キャンプを極めていくと、キャンプ場での滞在時間や作業時間が長くなり、ちゃんとした椅子が欲しい、などが出てくるのかもしれません。

ほかにも、様々な角度からこのデータは検証できるでしょう。ぜひご自身の手元の情報やデータと照らし合わせつつ、考察を深めてみてください。

「#自然界隈」など、新たな価値観のトレンドも

近年若者の間では「自然界隈」が流行しています。SHIBUYA109 lab.が発表したトレンド予測2024で、モノ・コト部門にランクインした「自然界隈」。高原や川、海などの主に自然豊かな場所に友人や恋人と出向き、デトックスしている写真や動画に「#自然界隈」をつけて投稿するZ世代が増えてきています。SNSやBeRealの映えの対象にもなっています。

TikTok 自然界隈

また、#自然界隈 を付けた投稿ではアウトドアなファッションをして写真を載せることも人気のため、「映え」を意識したアウトドアのアパレルのニーズは今後も継続していくと考えられます。

消費行動タイプはブランド、トレンド、エコ・サステナブル

さらにキャンプ関心層のニーズを深掘るため、キャンプ検索者の価値観を調べてみましょう。Web行動データとアンケートデータを用いたペルソナ分析やクラスタ分析で、誰でも簡単に顧客理解ができる、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用いて分析を行います。

以下は、「キャンプ」検索者の消費行動タイプを示したものです。

「キャンプ」検索者の消費行動タイプ

「キャンプ」検索者の消費行動タイプ
期間:2023年10月~2024年9月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット人口全体と比較して、ブランド志向(有名ブランドの信頼性やステータスを重視し、高価格なものでも選ぶ)、トレンド志向(SNSなどでの最新のトレンドを追求し、流行の商品をいち早く手に入れる)、エコ・サステナブルの観点(環境保護や地域社会貢献を重視し商品やサービスを選ぶ)を重要視しているようです。

キャンプは環境意識の高まりとも連動しており、エコなキャンプ道具や、自然を傷つけない「Leave No Trace」精神が広まっています。この精神を強調したキャンププランを提案することは、彼らにとって興味を惹くきっかけになるかもしれません。

次なるキャンプブームに期待

今回の調査を振り返ります。キャンプの検索者数は減少傾向にある一方で、平均のキャンプ日数は増加しており、愛好家の熱量は変わらず高いと考えられます。「#自然界隈」といったZ世代特有のあらたなタグも注目が集まっています。コロナ禍を経て一過性の熱は去ったものの、次なるブームへの過渡期ともいえるかもしれません。

今後のキャンプに関する消費者動向の変化にも、引き続き要注目です。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

▼また、生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』も使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

Perscope 詳細はこちら

この記事のライター

2025年入社予定の大学4年生です。

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