複数のリンクをまとめられる「link in bio」とは
「link in bio(リンクインバイオ)」は、主にSNSのプロフィール欄から他のWebサイトへ遷移するためのURLリンクです。SNSの発信者が、自身の詳細なビジネスプロフィールや、手がけるプロダクト・ブランドなどをPRするために、「私の商品はこちらのリンクから見てね」といった風に誘導するのに用いられます。
Katy Perryさんのインスタグラムより
また、「URLリンクをクリックした先に表示される、SNSやブログページなど複数の情報発信プラットフォームをひとつにまとめるWebサービス」のことも、link In bioと呼称される傾向にあります。
Red Hot Chili Peppersのlink in bio(Linktree)
link in bioサービスの利用者増にはインスタのURL制限がある?
link in bioのサービスは海外を中心にユーザーが増えていき、徐々に日本国内にも広がってきました。その拡大には主に以下3点の背景があります。
• 複数のSNSやプラットフォームで情報発信するユーザーが増えていること
• コロナ禍を通じて企業のオンライン活用やSNSの利用も増えていること
• Instagramのプロフィール欄に載せられるURLに制限があること
社会全体にSNSが普及してから久しいですが、様々なプラットフォームが増えていく中で、複数の情報発信元を利用しているユーザーも多くなりました。また、2020年の新型コロナによるパンデミック以降はWebへ販路を切り替える企業も多くなり、以前よりさらにSNSを活用した営利活動が盛んになっています。要は、Web上の複数の媒体を通じたブランディングや販促が増え、それをまとめてユーザーに届ける仕組みへの需要が増えているということです。
そして、おそらく最もクリティカルなポイントは、過去数年で急激に利用者が増えているInstagramのプロフィール欄に設置できるURLが1つに限定されている、という点があります。複数の媒体を通じてユーザーに接触しようとする企業やインフルエンサーがあったとしても、すべてのリンク先をInstagramへ掲載することができません。
なので、Instagram自体の存在感が増すにつれ、この「1つのURLしか設置できない」という仕様への対策としてlink in bioの利用者が増えている、という理由も大きいのではと考えられます。
link in bioの国内の主要3サービス
2022年3月現時点における、link in bioの主要サービスを紹介します。
■1.lit.link(リットリンク)
lit.linkはTieUps株式会社が手掛けるlink in bioのサービスで、2021年1月に提供が開始されました。リリースから1年ほどで55万人を超えるユーザーを獲得し、累計PV数も2億6,000万と急成長しているサービスです。
テンプレートを活用してデザイン性の優れたリンクまとめが作成できる点が、サービスの主な特徴です。
■2.Linktree(リンクツリー)
Linktreeはオーストラリア発のlink in bioのサービスで、提供開始は2016年からです。2022年3月現在では日本語に対応しておらず、また一部機能が有料プランでのみ提供されています。
無料版ではlit.linkと異なり、テンプレートを使用したページ作成ができませんが、「背景画像を自由に設定できる」「簡易的なアクセス解析が行える」などのサービス差異を持ちます。
■3.Blink(ブリンク)
Blinkはサイバーエージェント社の子会社である、株式会社CAMが提供するlink in bioの無料サービスとして2021年11月よりサービスが開始されました。lit.linkのようにデザインテンプレートが用意されており、またLinktreeのようなアクセス分析機能も持ち合わせます。
lit.linkのWebサイト訪問者数は2021年にLinktree超え
以降は国内のlink in bioのサービスとしてユーザーを二分していると思われるlit.linkとLinktreeを取り上げ、Webサイトへの訪問者数や属性などを調査していきます。なお、分析には毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用します。
「lit.link」と「Linktree」のサイト訪問ユーザー数の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン
上記グラフを見ると、過去1年でlit.linkとLinktreeともにユーザー数が上昇しています。やはり、Link in Bio全体のサービス利用者が増えていることが窺えます。
また、国内発サービスの「lit.link」のWebサイト訪問者数がLinktreeを追い抜いていることが見て取れます。2021年3月時点ではlit.linkのユーザーが30万ほどだったのに対して、2022年2月では150万を超える急成長を見せています。同期間のLinktreeのユーザーが90万弱から100万~130万といった値までしか伸びていないことを考えると、国内発のlit.linkが急激にサービス拡大を見せていることは間違いなさそうです。
訪問者は20〜30代が中心、流入元はTwitterが多い
次に、Dockpitを用いてlit.linkとLinktreeの利用ユーザー像を見ていきます。はじめに、性別と年齢のデータからです。
「lit.link」と「Linktree」の利用ユーザーの「性別」「年代」データ(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン
ユーザーの男女比はほぼ半々で、年代は20代~30代が中心の様子です。年代に関しては特に若者が大きな割合を占めており、50代以上の利用者は全体の20~25%ほどに留まります。
この割合は、InstagramやTwitterのユーザー年代と比較するとどうなっているのでしょうか。次のデータを見ると、これらのSNSではlink in bioの利用者ほど若者のユーザー割合が多いわけではないようです。
「Instagram」と「Twitter」の利用ユーザーの「年代」データ(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン
インスタグラムやTwitterは若年層にとどまらず、全年代において広く利用されているサービスとなっている様子。この対比から、link in bioはまだ若年層に限定された認知・利用に留まっているかもしれないと推察します。
続いて、lit.linkとLinktreeのサイトに訪れたユーザーのうち、SNSが流入元だったセッションはどれくらいなのか見てみましょう。
「lit.link」と「Linktree」の「ソーシャル」データ(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年3月〜2022年2月
デバイス: PC・スマートフォン
※「シェア」欄…青色はlit.link、赤色がLinktree
送客元のSNSとして圧倒的に多いのがTwitter、次点でInstagram、Youtubeと続いています。
2022年3月現在、国内ではTwitterのほうがInstagramよりも1.4倍ほど月間アクティブユーザーが多い程度であるとされていますが(※出典)、link in bioの利用(セッション)という数で比べると、Twitter経由がInstagramの8倍ほどある計算になります。インスタでは個別の投稿に対してURLを貼り付けられないため、双方からのセッション数を計測した場合に大きな差異が出ているものと思われます。
3位にはYouTubeが登場しています。YouTubeも、投稿者と閲覧者の主なタッチポイントは動画の概要欄になるため、YouTuberや企業アカウントがファンを誘導するのに用いられているようです。
link in bioサービス分析のまとめ
いまlink in bioの拡大する背景には、年々増えていく情報発信サービスと、 Webを介して個人や企業がブランディングを行っていくのに適した特性があるからだと考えられます。特に、企業のように広告宣伝費に大きな投資ができない個人は、一期一会にもなり得るSNS上でのタッチポイントを活かし、いかに自身の認知を広めていくかが重要です。
そのうえで、link in bio上で「自分が何をしている人間で」「どこに自身の情報は置かれていて」という発信やマーケティングを手軽に行えることで、個人がファンを囲い込んでいく構図ができているのではないかと感じました。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年3月〜2022年2月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。