2022年も、早くも下半期に突入。今年の上半期は、4月から6月ごろまでコロナの勢いが比較的落ち着き、旅行需要の回復やフェスの開催など、コロナ禍以前の社会情勢が徐々に戻りつつあったという印象です。今回は、そんな2022年2~7月までの半年間に注目を集めたトレンドアプリを、20代以上のユーザーを対象に調査してみました。
なお調査には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使用しています。2022年2~7月の半年間で利用ユーザー数の伸び率が高い順にランキングを作成し、年代別にトレンドアプリの傾向を見ていきます。
2022年のアプリトレンドサマリ
まずは、複数の世代で共通してランキング入りしていたアプリをご紹介します。
■マイナポイント関連のアプリが全世代でTOP10入り
2020年9月開始のマイナポイント事業。今年6月から第二弾の受付が開始されたことで話題になりました。その影響を受けてか、全ての年代でマイナポイントアプリがTOP10にランクインしています。
■楽天西友アプリが全世代でTOP10入り
以前マナミナでも特集した楽天西友アプリが、全世代でTOP10入りしました。西友の専用アプリが、店舗やネットスーパーで楽天ポイントを貯める・使う機能が追加された「楽天西友アプリ」としてリニューアル。これを記念してポイント付与やクーポンプレゼントなどのキャンペーンを行ったことも後押しとなり、ユーザー獲得に成功しているようです。
楽天西友アプリのユーザーが急増!OMO施策とネットスーパーの動向を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/1882今年4月のリニューアル以後、ユーザー数を急増させている「楽天西友ネットスーパー」のアプリ。同事業が見据えている展望や、国内のネットスーパーにおけるOMOの現状について、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて分析します。
■「旅行&地域カテゴリ」のアプリは、年代ごとに利用シーンが異なる
50代を除く全世代で「旅行&地域カテゴリ」のアプリがランクインしました。JTBの調査では2022年の旅行需要は前年度比で197%にのぼると推測されており、今年4-6月頃のコロナの収束傾向も追い風になったと考えられます。興味深いのは、年代によってアプリの利用シーンが異なる点。20-30代は新幹線の利用、40代は旅行の計画立て、60代以上は飛行機の利用を目的としたアプリがランクインしました。
■30-60代でエアウォレットが人気上昇中
30-60代で共通してランクインしたのは、2021年12月からサービスを開始した、キャッシュレスアプリ「エアウォレット」。リクルートと三菱UFJ銀行が提供するこちらのアプリは、無料で送金や銀行口座からの入出金が出来るほか、COIN+によるQR決済機能を備えています。今年5月から8月末にかけて実施された新規利用者が対象のポイント付与キャンペーンも後押しとなり、ランクインしたと考えられます。
年代別でトレンドアプリを調査
ここまで、今年上半期のアプリトレンド全体像を調査してきました。ここからは年代別に注目されたアプリについて詳細に見ていきます。
■20代:ライブ・フェス関連のアプリがランクイン
トレンドアプリランキング|20代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス: スマートフォン
20代では、チケットぴあやローチケ電子チケットといったライブ・フェス関連のアプリがランクインしました。コンサートプロモーターズ協会の調査によれば、2021年度のライブ公演数は前年度比248%であり、コロナ禍前の8割水準にまで回復。今年は「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」も3年ぶりに開催され、ライブ産業も徐々に盛り上がりを取り戻している様子が伺える結果となりました。
さらに、新幹線チケットの予約ができる「EXアプリ」も5位にランクイン。旅行や帰省に加え、ライブ会場に向かう交通手段としても、アプリで予約して新幹線を利用しようという動きがこの年代では高まっているようです。
■30代:自宅から医師に相談できるアプリが人気に
トレンドアプリランキング|30代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス: スマートフォン
LEBER(リーバー)は、24時間いつでもスマホで医師に相談できるドクターシェアリングプラットホームと健康観察の機能を備えたアプリです。コロナ禍の追い風もあってか、第10位にランクインしました。
こちらは、LEBER30代ユーザーの子供の有無を割合で示したグラフです。
LEBER 30代ユーザーの子供有無(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
LEBERの30代ユーザーを調査してみると、子供ありのユーザーが9割を占めています。自宅から24時間相談可能という点から、特に小さな子供を持つ父親・母親層を中心に今後さらにユーザーが増加していくのではないでしょうか。
また、他の上位入りアプリを見ていくと、20代に引き続き、新幹線や特急列車を予約できる「えきねっとアプリ」が7位に、ロッキング・オンのフェス公式アプリ「Jフェス」が9位にランクインしていました。同じ新幹線の予約アプリでも、使っているアプリが20代と異なるのが面白いですね。
■40代:旅行&地域カテゴリのアプリが3つランクイン
トレンドアプリランキング|40代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
40代は旅行関連のアプリが3つランクイン。冒頭でもお伝えした旅行需要の増加によるものと思われます。特徴的なのは、その内2つが旅行のスケジューリングに活用できるアプリである点。まっぷるリンクは、ガイドブックを電子書籍として持ち運べる機能や、観光・グルメスポット検索機能を備えたアプリです。またtabioriは、旅のしおりを作成し共有できる旅行アプリ。スケジュール管理機能や位置情報共有機能など、旅行に必要な機能を網羅的に備えています。
以上を踏まえると、40代は旅行の計画を入念に立てたいという傾向が強く、またその際にはガイドブック等の紙媒体をよく参考にすることが推測できます。そして今回、旅行のスケジューリングアプリがランクインした背景には、紙媒体からアプリへの移行があると考えられるのではないでしょうか。
■50代:レストランの公式アプリが人気を集める
トレンドアプリランキング|50代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス: スマートフォン
50代の4位にランクインしたのは、チョコクロで有名なサンマルクカフェの姉妹店、ベーカリーレストラン サンマルクの公式アプリ「サンマルク」でした。こちらの店舗は、レストランサンマルクカフェよりも価格帯が高めに設定されており、ホテル並みのホスピタリティを目指したサービスが特徴となっています。
以下は、アプリの利用者を年代別に割合で示したグラフです。
サンマルクユーザーの年代別割合(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
50代を中心に支持を集めていることが読み取れます。
続いては、レストランサンマルクの公式アプリと、その姉妹店舗サンマルクカフェの公式アプリそれぞれについて、50代ユーザーの世帯年収を比較したグラフです。
サンマルク公式アプリ・サンマルクカフェ公式アプリユーザーの世帯年収割合|50代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
サンマルクカフェのアプリ(赤色)と比較して、レストランサンマルクのアプリ(青色)のユーザーは世帯年収が高くなっています。
以上から、サンマルクのブランド内で、イメージや顧客層のすみわけが確立されている様子が読み取れるのではないでしょうか。
■60代:若者向けファッション通販アプリがランクイン
トレンドアプリランキング|60代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
まず旅行関連アプリとしては、格安航空券を比較・購入できる「エアトリ」が6位にランクインしました。
60代で目立っているのが、8位のアプリです。
以前マナミナでも特集した、アメリカ発ファッションブランド「SHEIN」。主に10-20代の若年層女性をターゲットとしたファストファッションを提供していますが、なんと60代でSHEIN公式アプリがランクインしました。
革新的ビジネスモデルでファストファッションの黒船に?「SHEIN」ユーザー急増の理由を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/1812ショッピングセンターや百貨店などの度重なる休業要請はまだ記憶に新しいことでしょう。新型コロナウイルスはファッション業界にも大きな影響を及ぼしています。そのような背景がある中でも、いま急成長をしている企業があります。2012年に中国で設立された.アパレルブランド「SHEIN(シーイン)」です。注目が集まる理由を紐解くべく、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って調査しました。
SHEINアプリ60代利用者割合の推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
60代のSHEINアプリ利用者割合の推移を見てみると、波はあるものの、近年は上昇傾向にあることが分かります。
またこちらは、SHEIN公式サイトの20代・60代ユーザーの流入元を、それぞれ割合で表示したグラフです。
20代
SHEIN公式サイトの集客構造の推移(セッション数)|20代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年7月
デバイス:PC・スマートフォン
60代
SHEIN公式サイトの集客構造の推移(セッション数)|60代(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年7月
デバイス:PC・スマートフォン
2つ目の、60代ユーザーの流入元に関するグラフを見てみると、60代のSHEINアプリユーザーが安定的に伸び始めた2022年4月から、アフィリエイト広告からの60代ユーザーの流入(黄緑色)が急増していることがわかりました。「若者向け」というイメージを覆すような、SHEINの戦略が背景にあるのかもしれません。
■70才以上:格安航空券予約アプリ・ディズニーランド関連アプリがランクイン
トレンドアプリランキング|70代以上(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2022年2月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
格安航空券の検索・予約が出来るサービス、スカイチケットの公式アプリが第7位にランクインしました。こちらも旅行需要の増加による影響と推測できます。
下のグラフは、スカイチケットの70代以上のユーザー数推移を示したグラフです。2022年に入り、70代以上のユーザーが安定的に増加している様子が見受けられます。
20-30代は新幹線の予約アプリがランクインしていたのに対し、60代以上は飛行機の予約アプリが上位入りしていることから、60代以上の方が遠出を楽しみたい、移動時間を短縮したい、空の旅を楽しみたい、という人が多いといえるのではないでしょうか。
スカイチケット70才以上利用者数推移(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
加えて、東京ディズニーリゾートの公式アプリTokyo Disney Resortが第9位にランクイン。こちらは、パークに関する情報収集や、各種予約・購入が出来る東京ディズニーリゾートの総合アプリです。
以下は、Tokyo Disney Resortの70代以上の利用者数推移を示したものです。
Tokyo Disney Resort 70代以上利用者数(「Dockpit」画面キャプチャ)
期間:2021年7月〜2022年7月
デバイス:スマートフォン
70代以上の利用者数の推移を見てみると、2022年4月頃から徐々にユーザー数が増加。コロナ収束に期待し、密が予想されるこうしたテーマパークなどのレジャーが、旅行の目的として注目を集めているのかもしれません。
まとめ
今回は、2022年の最新トレンドアプリを20代以上の年代別に調査。その結果、以下のようなトレンドが見られました。
・「旅行&地域カテゴリ」のアプリは年代ごとに利用シーンが異なる
・マイナポイント事業関連のアプリが注目を浴びる
・非接触を実現するキャッシュレスアプリによる新規顧客獲得のキャンペーンが成功
コロナ禍での情勢変化が影響を及ぼしていることが推測できる、非常に興味深いトレンドとなりました。今後しばらくは、コロナによる影響を慎重に見ていくことも、アプリやサービスのトレンドを読み解くヒントの1つなりそうです。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
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