コト消費とは
コト消費とは、商品・サービスの購買自体ではなく、その先にある体験を重視する消費行動です。
経済産業省は、以下のように定義しています。
「コト消費とは、製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのではなく、
個別の事象とが連なった総体である“一連の体験”を対象とした消費活動のこと」
出典:コト消費空間づくり研究会 取りまとめ|経済産業省 地域経済産業グループ
具体例を挙げてみましょう。
・カラオケ店で歌うより、楽器演奏やライブ鑑賞を楽しむ
・インテリアの既製品を買うより、材料を買ってDIYする
・着物のレンタルサービスを使って、京都の街を散策する
希少性のある高級ブランド品に価値を置く「モノ消費」の時代から、商品・サービスを通じた体験を重視するようになりました。
■コト消費が流行した背景
コト消費が流行した背景の一つは、モノにあふれ所有から解放される時代の到来です。食べる物にも事欠いた戦後から高度経済成長期を経て、平成・令和の世はモノにあふれ返るようになりました。
ファストファッションの登場でお金をかけずオシャレを楽しめたり、高級車やカメラ、腕時計、ジュエリーなどのサブスクリプションサービスも台頭しています。例えば「KIRA SHARE」では月々2,780円から好みのジュエリーをレンタル可能です。
高級ブランド品をわざわざ所有しなくとも、手軽に利用できるようになっています。
また消費者庁の分析によると20代、30代前半の若者は消費に対して消極的になったことも明らかになりました。長期にわたるデフレで賃金アップも見込めない中、節約志向の若者は所有することを重視せず、その先にある体験に価値を見出していると考えられます。
■7種類のコト消費
コト消費を細かく分類すると、以下の7種類に分けられます。
種類 | 特徴 |
純粋体験型 | ホテル・旅館への宿泊やキャンプ、現地でのスキーやBBQといった体験自体を楽しむ |
イベント型 | 有名人が登場するイベントを目的として商業施設へ向かい、ついでにショッピングや飲食をする |
アトラクション施設型 | 映画館や美術館に行くついでに、併設の商業施設でショッピングや飲食をする |
時間滞在型 | アウトレットモールなどの施設に長時間滞在しながら、ついでにショッピングや飲食をする |
コミュニティ型 | コミュニティから情報収集して、購入する 例)ロードバイクのオンラインサロンに所属し、そこで得た情報をもとに用具を購入する |
ライフスタイル型 | ライフスタイルを意識して、購入する 例)週末をソロキャンプで過ごすために、必要な用品をセットで購入する |
買い物ワクワク型 | 商品のレイアウトや演出で、ワクワクして購入する |
参考:川上 徹也, 「コト消費」の嘘, 角川出版社, 2017
https://www.kadokawa.co.jp/product/321708000027/
「イベント型」や「アトラクション型」、「時間滞在型」、「コミュニティ型」の共通点は、モノ消費以外に目的があることです。イベントやアトラクションなどの体験が優先され、“ついで”にモノ消費をしていることがわかります。
「ライフスタイル型」や「買い物ワクワク型」はモノ消費の側面が強いものの、消費者への見せ方、提案方法を工夫してコト消費につなげています。
このようにコト消費にモノ消費をからめることで、相乗的に購買を促せるでしょう。
歴代消費スタイルの比較・事例集
新たな消費行動はコト消費にとどまりません。トキ消費からエモ消費、ヒト消費、イミ消費へと「Z世代」を中心に消費行動が次々と生まれているのです。
それぞれの消費行動は、明確に区切られるわけではありません。例えばトキ消費・エモ消費・ヒト消費は重複している部分もあります。
消費スタイル | 特徴 | 流行した年代 |
モノ消費 | 希少性のあるブランド品を重視する | 1970年代〜 |
コト消費 | 商品・サービスを通じた体験を重視する | 1980年代 後半〜 |
トキ消費 | 一度きりの体験に消費行動で貢献する | 2000年代 後半〜 |
イミ消費 | 社会貢献できる商品・サービスを選ぶ | 2010年代 前半〜 |
エモ消費 | 感情を満たす消費体験を重視する | 2010年代 後半〜 |
ヒト消費 | 好きな人に関連する消費体験を重視する | 2020年代 前半〜 |
(※流行した年代は厳密に定義されていないため、一般に顕在化した時期を記載)
■トキ消費
トキ消費とは、その瞬間にしか味わえない体験に参加し、何らかの貢献をする消費行動です。博報堂生活総合研究所が提唱しました。
再現性のあるモノ消費・コト消費とは違い、一生に一度しか体験できないことへ自分も参画することに価値を見出します。
トキ消費 3つの特徴 | |
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非再現性 | 時間や場所が限定されていて、同じ体験が二度とできない |
参加性 | コンテンツというよりも、その場にいて参加することが目的の運動体 |
貢献性 | 参加した成果が目に見えて分かり、貢献していることが実感できる |
出典:「コト消費」では説明できない。博報堂生活総研が新たに提案する「トキ消費」とは?|-HAKUHODO-
https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/42742/
・アイドルグループが東京ドームライブを成功させるまで応援する
・ワールドカップの日本代表戦をスポーツバーから応援する
・クラウドファンディングに参加し、アーティストの個展開催をサポートする
例えば、「アイドルグループがデビューしてから東京ドームライブを初めて成功させる」プロセスは一度しかありません。そこへただ楽曲を聴くだけでなく、ライブチケットやグッズの購入を通して自分も貢献し、ファン同士で夢が叶った感動を分かち合います。
一度しかないお祭りに参加するイメージに近く、コト消費からもう一歩先に進んだ体験型の消費行動と言えるでしょう。
■イミ消費
イミ消費とは、商品やサービスの社会的・文化的な意味を重視する消費行動です。その商品・サービスを購買することで、二次的にどのような価値を生み出すかを大切にしています。ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が提唱しました。
イミ消費は、2011年の東日本大震をきっかけに生まれたと考えられています。被災地に生活費需品を送ったり、現地の商品・サービスを購入することで復興を支援するという消費行動が行われました。
その他にも次の消費行動が当てはまります。
・フェアトレードにつながるチョコレートを購入する
・温室効果ガス削減につながる、環境負荷を抑えたエコ商品を買う
・ふるさと納税を利用し、地元の地域活性化につなげる
・健康のために無農薬野菜やオーガニック食品を購買する
消費行動を通して、間接的に社会に貢献するだけでなく、本人の健康・予防につながる食品を選ぶといった個人主体のイミ消費もあります。
■エモ消費
エモ消費とは、精神的な満足度を得るための消費行動です。コラムニストの荒川和久氏が提唱しました。
「エモ」とは「emotional(感情的)」に由来する俗語。若者は「エモい」を「感情が満たされた、心が揺さぶられた」という意味合いで使っています。
エモ消費が流行したきっかけは、単身世帯の増加です。一人暮らしによる孤独や寂しさを満たすため、社会的な役割を果たし、刹那のコミュニティに所属する消費行動とも言えます。「刹那のコミュニティ」とは、SNS上で同じ趣味や属性のある人たちと、いいねやコメントで一時的につながるものです。
参考:モノ・コト消費から次なる段階へ|BBT
http://www.bbt757.com/servlet/content/41590.html
・ツーリングで絶景スポットに行き、インスタに写真を投稿する
・好きな動画配信者に会いに行き、そのことをTwitterに投稿する
・あえて現像に手間のかかるフィルムカメラで写真を撮影する
絶景スポットへ向かうためのガソリンや飲食の購入は手段であり、あくまで“エモい体験”によって心が満たされることを目的とします。
■ヒト消費
ヒト消費とは、商品・サービスではなく“ヒト”自体をエンタメとして消費するものです。
ここで言う“ヒト”には、芸能人やアーティスト、YouTuber、スポーツ選手といった実在する人物だけでなく、アニメや漫画、ゲームに登場する架空のキャラクターも含まれます。
コロナ禍でイベントやコミュニティでの集まりを中止せざるを得なかった2020年〜、オンラインを介して好きなヒトを応援するための消費行動が活発になりました。
・動画配信ライブでYouTuberに投げ銭(スパチャ)する
・アイドルグループの総選挙で、選挙チケットを大量に購入する
・新人アイドル発掘のオーディション番組をきっかけに、グッズ購入で応援する
・アニメキャラクターのイベント展に行き、限定グッズをSNSに投稿する
いわゆるアイドルやキャラクターを応援する「推し活」もヒト消費の一種であり、若者は“推し”を作ることに対して積極的です。
【関連レポート】トレンドの「推し活」。ファン活動の実態と行動原理を探る
https://manamina.valuesccg.com/articles/20552021年の流行語大賞にもノミネートされた「推し活」。急速に知名度を上げたこのワードの検索者数は、2020年9月から2022年8月までの2年間で10倍以上に急増しました。どういう人が、どういう媒体を利用して、どんなものを推しているのか?熱量が減少する要素とは?「推し活」の実態を徹底調査しました。(ページ数|34ページ)
Z世代のマーケティングには「Dockpit」
これからも人々の消費行動は変化し続けます。それを牽引するのは10代〜20代の若者、いわゆる「Z世代」です。
彼(彼女)らはSNSを巧みに操り、次から次へと流行を消費し続けていきます。彼(彼女)らの消費行動を理解し、自社のマーケティングに活かすためには、インターネット上でのタイムリーなデータ分析が欠かせません。
本メディア「マナミナ」を運営する株式会社ヴァリューズでは、消費行動のビッグデータを分析できるマーケティングツール「Dockpit」を展開しています。
■特徴①:消費者ニーズ・トレンド把握
Dockpitでは、検索キーワードやWebサイトの閲覧データから、消費者ニーズとトレンドを把握可能です。簡単な操作、一目でわかるダッシュボードで、ターゲット層のWeb行動を分析できます。年代や世帯年収といった属性で絞り、狙いたいグループに訴求できるでしょう。
■特徴②:競合調査・市場動向把握
Dockpitでは、競合の動きと市場の変化をタイムリーにキャッチできます。そのデータソースは、株式会社ヴァリューズが独自に保有する国内250万人規模の消費者パネルです。
ビッグデータに基づいた競合調査・市場動向把握で、的確なマーケティング戦略を実現します。
■特徴③:Googleアナリティクス連携
Googleアナリティクスのデータとも連携し、グラフでわかりやすく表示できます。データ分析を一元で管理できるため、切り替える手間もかかりません。
Dockpitはこうした機能でZ世代のWeb行動、ひいては消費行動を分析可能です。直感的なダッシュボードで傾向を把握し、日々のマーケティング活動に活かすことができるでしょう。
まとめ
今回はコト消費を中心にトキ消費、エモ消費、ヒト消費、イミ消費について解説しました。単なるモノ消費ではなく、体験や応援、社会貢献といった側面を重視した消費行動が生まれてきています。
今後も年代ごとに消費行動は変化していくため「どのような消費スタイルに変わるか」を把握し、流行を先取りするマーケティング戦略が求められます。
SNSを駆使するZ世代に訴求するためには、トレンドのキーワードの裏側にあるニーズを紐解くことが重要です。
「Z世代の消費心理を知りたい」、「タイムリーなデータ分析をしたい」、「的確な広告の出稿先を選定したい」というマーケターの方は、ユーザーのニーズを詳しく分析できるDockpitの活用をおすすめします。
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販促ライター。ITベンチャーを経て2015年からライターとして独立し、2023年に株式会社SHIKIを創業。ライター兼編集者として大手企業が発信するコンテンツの企画や制作管理を担う。多岐にわたる業界の制作経験から、見込み客のステージに応じた文脈の使い分けを得意とする。会社員や主婦など92名のライターを育成。ライター採用やレギュレーション制作の実績もあり。ご依頼はokada@shikcorp.comまで。