MaaSとは?トヨタのMaaS事例「my route」の利用実態を分析

MaaSとは?トヨタのMaaS事例「my route」の利用実態を分析

近年、都市部においては車の持ち方が変化しつつあり、自家用車を所有するのではなく、必要に応じて乗り物を利用するMobility as a Service (MaaS) が注目を集めています。トヨタはこのMaaS分野で、「my route」というサービスを提供しています。 そこで、今回はトヨタの「my route」を実際に利用しているのはどのようなユーザーなのか、どのように活用されているのか、利用実態を分析していきます。


いま注目の「MaaS」とは?

MaaSとは、Mobility as a Serviceの略称で、自動車や自転車、公共交通機関などの交通手段を利用し、最適化された移動ルートを提供するサービスです。

インターネット上で予約や運賃の決済を簡単かつ効率的に行うことが可能で、車を所有しなくても、必要なときに様々な交通手段を使い分けることで、よりスマートで持続可能な交通システムを実現することを目的としています。

世界中でMaaSに関する様々な取り組みが進んでおり、自動車メーカーや交通・鉄道会社を中心に、新しいビジネスモデルの開発が進んでいます。

これまでは、電車やバスなど個別の交通手段をそれぞれ手配していたが、
MaaSでは、そうした手配がスマホアプリ1つに集約できる

世界のMaaS事例:フィンランド発のサービス「Whim」

Whimは、単一のアプリを通じて複数の交通手段を計画、予約、支払いができるMaaSプラットフォームです。

ユーザーは、公共交通機関、タクシー、レンタカー、バイクなど、さまざまなオプションから選択できます。アプリは、地元の交通システムと統合されており、チケットの購入ができたり、スケジュール・遅延のリアルタイムアップデートを受け取ることが可能です。

日本でも2022年9月に東京でサービスを開始しました。

トヨタのMaaS「my route」とは?

トヨタが手がけるMaaSアプリ「my route」は2020年にサービスを開始したアプリです。

・おでかけメモ:URL、テキスト、写真などで行きたい場所を記録しておける
・myステーション:最寄り駅を登録し、電車やバスの運行情報をすぐに確認できる
・お役立ち情報:利用情報からお出かけ情報を見つけることができる
・ルート検索:さまざまな交通手段を掛け合わせてルート検索ができる
・交通チケット:電子化した交通チケットを事前購入できる
・クーポン:提携サービスや店舗のクーポンを利用できる

ルート検索や店舗検索などの地図機能に関してはどの地域でも利用ができるものの、交通手段の予約やクーポンの利用といったサービスは、2023年2月現在以下の地域のみで先行的に利用できます。

<利用可能エリア>
横浜、富山、愛知、愛媛、北九州、福岡、糸島、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎・日南、沖縄、北九州

また、トヨタレンタカーをアプリ内で予約したり、トヨタシェアでカーシェアをすることも可能です。
では、ここからmy routeの利用実態を分析していきます。

ユーザー数は同社アプリの「moviLink」と同じくらい

トヨタ主要アプリのユーザー数比較

トヨタ主要アプリのユーザー数比較
調査期間:2022年11月〜2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

my routeのユーザー数は193,000人と、同じトヨタのカーナビアプリであるmovLinkの238,000人と同じくらいです。トヨタ車のコネクトカーアプリであるMyTOYOTA+、カーナビアプリであるmoviLinkはトヨタ車を持っている、もしくは車を運転する必要があるため、利用するユーザーが限られます。

しかし、my routeと同じように、車を持っていない人でも使う可能性があるスマホ決済アプリのTOYOTA Walletについては、ユーザー数は1,960,000人となっています。MaaSアプリであるmy routeと、スマホ決済アプリであるTOYOTA Walletではアプリの種類も対応エリアも違いますが、my routeの本格的な利用の拡大はまだこれからなのかもしれません。だとすれば、既にアプリを利用している人はイノベーター・アーリーアダプターに当たると言えるでしょう。
では、そんなユーザーはどんな人々なのか、詳しく見ていきましょう。

ミドル世代を中心に幅広いユーザー層

my route利用ユーザーの性別

my route利用ユーザーの性別
調査期間:2022年11月〜2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

アプリを利用しているユーザーの属性を分析していきます。
利用者層みると、男性が54.7%、女性45.3%と、5%ほど男性が多い結果になりましたが、男女関係なく利用されていることがわかります。

my route利用ユーザーの年代

my route利用ユーザーの年代
調査期間:2022年11月〜2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

年齢層は40代、60代で割合が高くなっていて、50代の割合が少なくなるものの、どちらかというとミドル世代に多く使われていることがわかります。

もしかしたらデジタルネイティブ世代でもある20代、30代の若い世代はサービスごとのアプリの切り替えに抵抗がなく、利用する機会が少ないのかもしれません。アプリを使い慣れており、「この検討フェーズではこれ」という利用アプリが既に固まっている可能性もあります。

my route利用ユーザーの未既婚、子供の有無

my route利用ユーザーの未既婚、子供の有無
調査期間:2022年11月〜2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

続いてユーザーの未既婚、子供の有無といった属性情報を見てみると、独身からファミリー層まで、幅広いユーザーに利用されていることがわかります。

my routeのアプリ内のチケットを購入する画面

my routeのアプリ内のチケット購入画面

アプリの中をみると、バスや電車の1日乗り放題乗車券を予約でき、乗車券には子供料金もあります。現地で乗車券を探して調達するのも一苦労な子供連れのユーザーにとっては特に、事前に予約できるのは便利なシステムなのかもしれません。

アプリやキャッシュレスを使いこなしている都会的な人物像

次に、my routeを利用している人が関心のある他のアプリを分析し、人物像を探ってみます。

my route利用ユーザーの関心があるアプリ

my route利用ユーザーの関心アプリ
調査期間:2022年1月〜2023年1月
デバイス:PC、スマートフォン

関心のあるアプリは大まかに2種類に分類できます。

●店舗、ポイント系アプリ
Coke ON(コークオン)、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、セブン-イレブン、ローソン、UNIQLO

●キャッシュレス決済アプリ
楽天ペイ、d払い、Google Pay

店舗、ポイントアプリやキャッシュレス決済を使いこなしている都会的な人物が浮かびます。

全国的に使えるわけではなく、ユーザー数がそこまで多くないことも考えると、やはり新しい情報をキャッチアップしていているイノベーター、アーリーアダプター層が利用している段階なのかもしれません。

まとめ

今回は、MaaSアプリのトヨタ「my route」の利用実態を分析しました。
対応エリアが限られていることから、ユーザー数も少なく、本格的な拡大はこれからなのかもしれません。サービスをリリースした2020年2月から2023年の間、コロナ禍で外出機会が少なく、MaaSを利用する機会がなかったことも影響している可能性があります。

乗り物という規模が大きく、自治体や同地域の他社も巻き込まなくてはいけない、地域性が強いサービスの特性もあり、各地域ごとにMaaSが点在している現状があります。

今後、my routeが交通系ICカードのように各MaaSサービスと連携をして使いやすくなったり、MaaSを統括するハブのような役割になると、さらに利用が拡大していくかもしれません。今後も日本のMaaSの動きに注目です。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

アメリカ留学中にWebの仕事に出会い、帰国後に起業。自社で物販を行う側、ライターとして活動。アウトドアが趣味

関連する投稿


SuicaとPASMOの大きな違いはポイント経済圏?利用者の数や属性を比較

SuicaとPASMOの大きな違いはポイント経済圏?利用者の数や属性を比較

首都圏の交通系ICカードといえばSuicaとPASMO。みなさんはその違いを知っているでしょうか。この記事では、SuicaとPASMOの共通点や相違点、ポイント経済圏の特徴について調査・考察します。また、モバイルSuicaアプリ、モバイルPASMOアプリユーザーのデータからアプリユーザー数や関心のあるアプリについても分析します。


LINEで「友達削除」をする中高年、「送信取り消し」をする若者

LINEで「友達削除」をする中高年、「送信取り消し」をする若者

世代を問わず活用されているLINE。人それぞれ使い方があるなかで、「友達削除」と「メッセージの送信取り消し」に年代により検索行動に傾向が見られました。今回は、LINEの機能の「友達削除」「送信取り消し」をもとに、世代間のメッセージアプリの使われ方を分析、考察していきます。


「ポケポケ」大ヒットの実態とは? 類似ゲームアプリと利用者データを比較

「ポケポケ」大ヒットの実態とは? 類似ゲームアプリと利用者データを比較

ポケモンのトレーディングカードアプリ「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」が社会現象となっています。リリースから3ヶ月近くが経ち、人気の実態が明らかになってきました。本稿ではそんな「ポケポケ」のMAUやユーザー層を他のゲームアプリと比較することで、流行の要因を分析するとともに、今後の人気について予測していきます。


【2月22日は猫の日】女性が特に好きな猫種は?「猫」検索者を調査

【2月22日は猫の日】女性が特に好きな猫種は?「猫」検索者を調査

日本では2月22日が「猫の日」とされ、「にゃん・にゃん・にゃん」という猫の鳴き声にちなんで1987年に日本の愛猫家団体「猫の日実行委員会」と動物愛護団体が制定しました。この時期にちなんで、インターネットで「猫」について検索する人は、なにが気になっているかを分析します。


【ユーザー徹底検証】サプリメント利用調査(2025年1月最新版)

【ユーザー徹底検証】サプリメント利用調査(2025年1月最新版)

ドラッグストア、コンビニ、ECと手軽に手にすることのできるサプリメント。実際にはどれくらいのユーザーが利用しているのでしょう。そして、その目的や購入の決め手となることは?本レポートでは、サプリメントの摂取層を対象に調査を行い、どのような商品が選ばれ、どのように利用されているのか、その購買行動や利用実態を具体的に把握、検証しました。※本レポートは無料でダウンロードできます。


最新の投稿


「タイパ疲れ」する現代人?約7割が「タイパを意識しない生活を望む」【Repro調査】

「タイパ疲れ」する現代人?約7割が「タイパを意識しない生活を望む」【Repro調査】

Repro株式会社は、企業のマーケティング戦略やサービス設計に影響する、消費者の「タイムパフォーマンス(タイパ、時間対価値)」に対する意識を明らかにすべく、全国10代から60代の男女を対象に「日常生活とデジタルデバイス利用時におけるタイムパフォーマンスに対する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


アテンションエコノミー ~ 課題と今後

アテンションエコノミー ~ 課題と今後

インターネットが一般消費者に普及し始めて何年経ったでしょうか。Windows95が発売された頃からと見做せば、30数年という年月で、インターネットは私たちの生活にはなくてはならないテクノロジーとなりました。そして今や私たちの受け取る情報は溢れるほどに。その情報は真偽だけでなく善悪という側面を持ち、経済活動にも大きく影響しています。本稿では「アテンションエコノミー」と題し、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が今後の課題へも言及し解説します。


イード、多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper」を提供開始

イード、多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper」を提供開始

株式会社イードは、同社が運営する多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper(ピーアール ディーパー)」を提供開始したことを発表しました。


HAKUHODO EC+、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始

HAKUHODO EC+、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始

株式会社博報堂のEC領域に特化した組織横断型プロジェクト「HAKUHODO EC+」は、ライブコマースと独自開発のMAツールを起点に新しいSNSライブマーケティング戦略を展開する株式会社Tailor Appと連携し、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始したことを発表しました。


スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

近年のデジタル化や購入支援政策も相まって、中国国内でスマート家電が広く普及し始めました。スマート化によって利便性や機能性が向上すると謳われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「ValueQIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ