進むカー用品販売店のDX。アプリ利用実態を調査

進むカー用品販売店のDX。アプリ利用実態を調査

大手販売店でDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として盛んに取り入れられている専用アプリ。飲食店をはじめとするさまざまな業態の小売店で活用されています。 カー用品販売店もその例外ではなく、「オートバックス」をはじめ「イエローハット」や「タイヤ館」などでも活用されています。今回はこれら3つのカー用品販売店のアプリについてその利用実態を調査します。


カー用品販売店大手3社のアプリの機能やサービス内容

「カー用品販売店」と聞いて思い浮かぶのが「オートバックス」ではないでしょうか。クルマの消耗品やパーツのほか、クルマに関する雑貨にいたるまで幅広い商品ラインナップが魅力で、オイルやタイヤの交換や各種整備、車検などのサービスもあります。

「オートバックスアプリ」では、オイル交換やタイヤ交換、車検の予約ができるほか、アプリ限定クーポンやセールの情報配信、デジタル会員証機能を搭載。また車検証をアプリで読み込み登録しておくことで愛車に適合する商品を簡単に調べることができ、過去のメンテナンス履歴の確認も簡単に確認できるのも特徴です。

続いて「イエローハット」。タイヤの販売・交換をメインに各種メンテナンスや車検などのサービスを行うお店です。

「イエローハットアプリ」の機能は、会員カードとして使えるほか、クーポンの配信、オイル交換やタイヤ交換などの作業の予約、店舗での購入履歴と登録者の作業履歴を確認することができます。

タイヤメーカーであるブリヂストン系のカー用品販売店が「タイヤ館」。その名の通りブリヂストンのタイヤ専門店で、タイヤの販売・交換のほか、クルマのメンテナンスや車検などのサービスも行っています。

「タイヤ館アプリ」ではデジタル会員証機能やクーポンの配信のほか、クルマのメンテナンス作業の予約やメンテナンス履歴を登録車両ごとに記録し、次回メンテナンスに最適な推奨日のお知らせなどの機能があります。

今回は、ヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツール「Dockpit 」を用いて、これら3社のアプリの利用実態について調べてみました。

年間利用者数が800万人を超える「オートバックス」アプリ

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」それぞれのアプリユーザーはどのくらいいるのでしょうか。ユーザー数と月間平均アプリ起動日数を調べてみました。

ユーザー数は、2022年2月〜2023年1月の1年間で、「オートバックス」は約803万人「イエローハット」は約90万人「タイヤ館」は約77万人。ユーザー数は「オートバックス」がほかの2社と比べ大差をつけていることが分かりました。またアプリの月平均起動日数は、「オートバックス」は2.07日「イエローハット」は1.59日「タイヤ館」は2.05日となっています。3社とも概ね月に2日くらいの割合で使われているようです。

ユーザー数 月平均アプリ起動日数
オートバックス
8,030,000
2.07
イエローハット
896,000
1.59
タイヤ館
769,000
2.05
「オートバックス」」「イエローハット」「タイヤ館」基本指標
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

アプリ登録が多い月は? 年末商戦にも影響か?

それではアプリ利用者数の推移について見ていきましょう。

「オートバックス」では月によって変化が見られ、一番利用者が多い月は12月で、200万人を超えています。これは冬タイヤへの履き替えキャンペーンなど年末のセールが関係していると考えられます。次いで多いのが4月と8月。こちらはクルマでのお出かけが増える行楽シーズンでカー用品の購入頻度が高くなっているからではないかと推察されます。

「オートバックス」」「イエローハット」「タイヤ館」ユーザー推移数
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

週末に利用頻度が高くなる傾向

曜日によってアプリの起動率の差はあるのでしょうか。

各社それほど大きな差はないようですが、金曜日から土曜日、日曜日と週末にかけて比較的多く使われているようです。また「オートバックス」と「タイヤ館」に関しては、水曜日のアプリ起動率がやや低下しています。

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」アプリ起動曜日
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

アプリ併用率は低い傾向

各社のアプリの利用割合は、「オートバックス」が87.0%、「イエローハット」が9.6%、「タイヤ館」が8.5%。「オートバックス」が圧倒的なシェアを誇る形となっています。

3社でユーザーはどの程度アプリを併用しているのでしょうか。

「オートバックス」と「イエローハット」の併用は3.2%、「オートバックス」と「タイヤ館」の併用は1.8%、「イエローハット」と「タイヤ館」の併用は0.3%、3社すべての併用は0.1%となりました。併用率は低く、ユーザーは自分が普段よく利用するカー用品販売店のアプリを使い続ける傾向にあると考えられます。

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」併用ベン図
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

各社とも約8割が男性ユーザー

次にアプリのユーザーの属性を調べてみましょう。まずは性別から。各社とも男性が圧倒的な割合を占めています。「オートバックス」は男性ユーザーが79.4%で女性ユーザーは20.6%。「イエローハット」は男性が84.3%で女性が15.7%、「タイヤ館」は76.5%が男性で女性は23.5%となりました。

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」ユーザー属性性別
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

40代と50代に多いアプリ利用者

アプリ利用者の年代では、各社とも40代と50代がほぼ同ポイントで最もユーザーが多いという結果になりました。ネット利用者全体と比べても50代はネット全体では18.9%なのに対してアプリ利用者は各社とも25%を超えています。60代もネット利用者全体よりもアプリ利用者のほうが高ポイントとなっていおり、カー用品販売店アプリは比較的年齢の高い層で使われていることがわかります。

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」ユーザー属性年代
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

関東地方と中部地方に多いアプリユーザー

アプリユーザーの居住地域に関して調べてみました。3社とも関東地方と中部地方に利用者が多いという状況です。関東地方では特に「イエローハット」のアプリユーザーが多いようです。また「オートバックス」に関しては近畿地方のユーザーが比較的多く、中部地方と変わらない比率で、逆に東北地方では他2社と比べ少ないという結果になりました。

「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」ユーザー属性居住地域
期間:2022年2月〜2023年1月
デバイス:スマートフォン

オートバックスアプリ利用者の興味関心

さらに「オートバックス」のアプリ利用者について掘り下げていきたいと思います。

分析には、アンケートで聴取した項目から、対象となるWeb行動をとった人たちがどのようなジャンルに興味関心が高いのかがわかるツール「story bank 」を用いました。

「国内旅行」が目立つのは、カー用品販売店のアプリ利用者だからでしょう。そのほかの興味関心ごとは多岐に渡るように見えます。現在はクルマ好き層を取り込んでいるようですが、これら多岐に渡る興味関心を持つライトユーザーを取り込んでいくことが今後の課題となるかもしれません。

集計期間:2022年1月~2022年12月
対象:「オートバックス アプリ」利用者
デバイス:スマートフォン
前後180分のネット行動およびアンケート調査結果を分析
n=2000人

競合となるのはカー用品販売店だけではない

オートバックスアプリのユーザーの買い物行動についても調べました。アプリ利用者は普段の生活ではどこでよく買い物をしているのでしょうか。

ネット利用者全体と比べポイントが高かったのは、総合スーパー(衣食住を扱う大型店)、ホームセンター、家電量販店、ディスカウントストアなど。特にスコアが高いのはホームセンターです。「オートバックス」の場合、カー用品でも雑貨的な色合いを持つ商品も数多く扱うため、ホームセンターが潜在的な競合店となっている可能性が考えられるという結果となりました。

集計期間:2022年1月~2022年12月
対象:「オートバックス アプリ」利用者
デバイス:スマートフォン
前後180分のネット行動およびアンケート調査結果を分析
n=2000人

まとめ

今回調べてみたところ、「オートバックス」「イエローハット」「タイヤ館」の各アプリは機機能的にはそれほど差はありませんでしたが、ユーザー数では「オートバックス」がその他2社に大きな差をつけていました

また各社のアプリを併用するユーザーはそれほどいないという結果も出ました。これは各社が提供するサービスが似通っており、アプリで整備履歴を確認することができるため、同じ店舗を利用し続けることがユーザーにとってメリットとなることもあるからだと推測できます。

最もユーザーが多い「オートバックス」は、今後はクルマのヘビーユーザーだけでなくライトユーザーの取り込み、そしてホームセンターなどカー用品販売店以外の業態との競合が課題となってくると予測されます。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

エディター兼ライター兼フォトグラファー。
紙媒体からウェブまでメディアを問わず活躍中。
広告に関するセミナー講師も務める。

関連する投稿


新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

新時代のフランス発SNS「BeReal(ビーリアル)」MAUは過去1年で4倍に。広告にも期待感高まる

リリースされてから、Z世代を中心に強い支持を集めている「BeReal(ビーリアル)」。2023年初頭から人気を集め始めていますが、いまだにその人気は衰えていません。2024年7月には、日本で広告事業を本格化しはじめたことが大きな話題になりました。今回は、BeRealの最新動向をデータを用いて分析するとともに、広告ビジネスの可能性を調査していきます。


いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

いすゞの「だれでもトラック」エルフミオは変革を起こすか? Webサイト訪問者データで初動を分析

2024年7月、いすゞ自動車は新型トラック「ELFmio」を発表しました。普通自動車免許で運転でき、「だれでもトラック」と銘打たれるこのトラック。狙いは物流を担うトラックドライバー不足の解決です。そんなエルフミオのインパクトを、Webサイト訪問者データを通じて分析しました。


ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトにおけるKPI策定のポイント

ECサイトの売り上げをあげるためには、KGIの設定だけではなく、KPIの策定が重要なポイントになります。そこで、気になるKPIの策定ポイントや、課題の洗い出し・分析についてご紹介します。効果的なマーケティング施策にお悩みの方や、ECサイトの売り上げが伸び悩んでいる方はぜひ参考になさってください。


“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

“第2次”アサイーブームは続くのか? 検索者属性や検索ニーズからカテゴリ浸透の未来を考察

近年再び話題になっている「アサイー」。若い女性を中心に人気を集めているようです。他にはどのような特徴を持つ人がアサイーに関心を持っているのか、アサイー検索者がアサイーのどんなことに興味を持っているのかについて、Web行動ログデータから分析・考察します。そして、アサイーブームのこれからを考えます。


電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

電通デジタル、DX組織の持続的発展に繋げる簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を提供開始

株式会社電通デジタルは、DX組織※の現状と課題を診断し、DX組織の持続的成長に向けた戦略を提案する簡易診断プログラム「DX組織クイックスキャン」を開発し、提供開始しました。


最新の投稿


DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

DB型サイトでSEO施策を実行して対策ページが上位化するまでにかかった期間は"6か月"が最多【eclore調査】

株式会社ecloreは、同社が運営する「ランクエスト」にて、データベース型サイト運営者を対象に、SEOの実施状況やその効果について調査を実施し、結果を公開しました。


SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

SEOに積極的に取り組んでいるサイトの9割以上が表示速度の重要性を認識!改善に取り組む目的は「顧客体験の向上」と「リピート率の改善」が上位【Repro調査】

Repro株式会社は、Webサイト運営・管理者を対象とした、「Webサイトの表示速度改善についての実態調査」を実施し、結果を公開しました。


感性について ~ マーケティングとハプティクス

感性について ~ マーケティングとハプティクス

人には5感が備わっています。さらに突き詰めれば第6感という感覚も。それら人の持つ感性や感覚を補うべくあらゆる技術も日々進歩していますが、人のそれらの代替となるような技術はまだ未完の途上です。それほどに他に取って代われない私たちの感性・感覚。本稿では、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、広告やマーケティングを通して人の感性の深さを説き、ハプティクス(Haptics)を用いて人の感覚の重要性を解説します。


イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

イードとガイエ、リアルとデジタルの融合でアニメファンの推し活を支援する広告パッケージを提供開始

株式会社イードと株式会社ガイエは、全国のファミリーマート、ローソン(※一部店舗を除く)に設置されているマルチコピー機で展開するコンテンツサービス「エンタメプリント」を活用した広告パッケージ「Anime Touch Ad」を共同開発し、販売開始することを発表しました。


ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

ネオマーケティング、ボーダーリンクとの協業で在日外国人リサーチサービスを提供開始

株式会社ネオマーケティングは、株式会社ボーダーリンクと協業し、在日外国人リサーチサービスを提供開始したことを発表しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ