2023年5月の急上昇アプリランキングTOP20
早速、アプリトレンドランキングを見ていきましょう。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
下記の表は、2023年5月時点で、20代ユーザー(※)の利用者数の前月比が高い順にアプリをランキングしたものです。
※20代後半の、Z世代に含まれないユーザーも一部含みます
20代のアプリ利用者数の前月比上昇率ランキング
集計期間:2023年5月
デバイス:スマートフォン
ここからは、特に注目のアプリについてピックアップして詳しく見ていきます。
ChatGPTのアプリ版がついに登場?
■ChatGPTの偽物アプリに注意
最近、ChatGPTの偽物アプリが流行していることはご存じでしょうか。このようなアプリでは、本物と同じように質問を打ち込むと回答を得ることが出来ます。しかし実際には、運営者が受け取った質問をそのままChatGPTに流し、受け取った回答を質問者に返すことで本物のように見せているに過ぎません。このような偽物アプリは、異常に広告が多い場合や、有料のプランに勧誘される場合があるため注意が必要です。
9位にランクインした日本語対応ChatGPTアプリ「Nova」も、提供元が「OpenAI」ではなく「ScaleUp」と表示されているため、公式のものではありません。OpenAIが公式にリリースしているChatGPTのアプリは、App Store で提供されている、下記画像のアイコンのアプリだけです。2023年5月時点では、公式アプリはGoogle Play ストアではリリースされていません。
基本的な機能はWeb版もアプリ版も同じですが、ここではアプリ版ならではのメリットを2つご紹介します。1つ目は音声認識に対応していることです。Web版では質問を文字で打ち込む必要がありますが、アプリ版は音声で質問文を自動生成してくれます。2つ目は、カメラからの読み取りにも対応していることです。スマホのカメラに映った文字を自動で起こしてくれるため、街中で見つけた外国語を翻訳したいときなどに役立ちます。
このように、アプリ版のChatGPTは質問文の打ち込み方が多様化し、日常の中でより気軽に利用できるようになっています。
季節性を感じるアプリがランクイン
■公式アプリで8月のフェスに備える
ロッキング・オンの公式アプリ「Jフェス」が14位にランクインしました。こちらのアプリはロッキング・オン主催のフェスを対象に、チケットの申込みからガイドまで幅広くサポートしてくれます。2023年の「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」は8月上旬に開催されます。チケットの申込みは既に始まっているため、この時期に「Jフェス」アプリが急上昇していることには季節性を感じます。
2023年のフェスは新型コロナウイルスによる行動規制もかなり緩和され、観客は以前のように一体感のあるステージで自由に楽しめるようになりました。ライブやコンサートなど、音楽業界の今後の盛り上がりに期待が高まります。
若者の投資への関心もトレンドに表れる
■初心者に易しいFX取引アプリ
19位にランクインしたのは、FX取引アプリ『外貨ネクストネオ「GFX」』でした。積み立てNISAの制度改正や老後2000万円問題など、資産運用の重要性が意識される昨今、若者の投資に対する関心も高まっているのではないでしょうか。『外貨ネクストネオ「GFX」』は、ワンタップのシンプルな操作でFX取引が可能なアプリで、2023年3月ごろから急速に利用者数を伸ばしています。
『外貨ネクストネオ「GFX」』利用者数の推移
集計期間:2022年6月~2023年5月
デバイス:スマートフォン
『外貨ネクストネオ「GFX」』は投資初心者にも易しい点が魅力的なアプリです。こちらのアプリを利用すると、最新のマーケット情報や著名アナリストの動画講座を視聴することが出来ます。必ずしも取引をしなければいけないわけではなく、これらの情報を得るために口座を開設した方も一定数いるのではないでしょうか。投資に興味はあるけれど何から始めたらいいか分からないという若者に対して、まずは情報を集めたいというニーズに応えることに成功したと考えられます。
Z世代はメタバースでもSNS映えを意識?
■KDDI株式会社がメタバースに進出
KDDI株式会社が提供するメタバースアプリ「αU metaverse(アルファユーメタバース)」が21位にランクインしました。「αU metaverse」では、バーチャル空間上の渋谷や大阪で、アーティストによる音楽ライブや利用者同士の会話を楽しむことが出来ます。こちらのサービスで特徴的なのは、テキストではなく音声の会話が重視されている点や、メタバースならではのイベントや展覧会が充実している点です。
他の人気メタバースアプリ「cluster(クラスター)」や「ZEPETO(ゼペット)」と利用者層を比較してみると、「αU metaverse」は男性の割合が高く、30代からの人気が高いようです。一方で、20代の割合はネット利用者全体よりは高いものの、他のアプリと比べると低いことが分かりました。
「αU metaverse」「cluster」「ZEPETO」利用者の性別・年代割合
集計期間:2022年6月~2023年5月
デバイス:スマートフォン
特に女性、20代からの人気が顕著だった3Dアバターソーシャルアプリ「ZEPETO」は、アバターのカスタマイズの柔軟性が特徴的です。「ZEPETO」はリリース当初、自分の顔を撮影することで自分そっくりなアバターを作成できることが話題となり、人気を集めました。自分そっくりなアバターを自由に着せ替えしてかわいいコーディネートを楽しめることが、特に女性の心を掴むことに成功したと考えられます。また、「ZEPETO」で作成したアバターや、オリジナルの絵文字は他のSNSでシェアしやすいような工夫が施されています。
Z世代にとっては、同じメタバースアプリの中でも、自己表現の要素が強い方が好まれやすいと考えられます。また、メタバースに限らずSNSでのシェアのしやすさや写真映えを意識すると、Z世代に刺さりやすいコンテンツが生まれるかもしれません。
KDDI株式会社は、今回ご紹介した「αU metaverse」に加えて、「αU market」や「αU live」といったサービスを展開し、「αU」の世界観を作りあげようとしています。今後、これらのアプリが相乗効果でどのようにサービスの質を向上させていくのか、引き続き注目です。
マッチングアプリ業界も差別化を図る
■通話から楽しめる新感覚アプリ
続いてご紹介するのは22位にランクインしたマッチングアプリ「scenario(シナリオ)」です。「scenario」は2022年3月にリリースされたアプリですが、マッチングする前の段階で通話やタイムラインを楽しめる点が斬新で注目を集めています。
内面を重視した真剣度の高いアプリであるため、恋活目的よりも婚活を目的とした利用者の方が多いと考えられます。実際にDockpitのデータからも、他の大手マッチングアプリと比べて20代の利用者割合が低いことが分かります。
「scenario」「Pairs」「タップル」「with」利用者の年代割合
集計期間:2022年6月~2023年5月
デバイス:スマートフォン
近年はマッチングアプリも身近な存在となり、それに伴ってアプリの数も増えてきました。このような状況下で、アプリ運営側も他のアプリとの違いを明確にするために、日々試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。
通話機能は斬新でしたが、Z世代は単に目新しいものなら何でも飛びつくというわけではないようです。近年ではオンラインゲームで知らない人と通話をしながら協力プレイを楽しむという人も珍しくなくなりましたが、「ながら通話」ではなく真剣な場で知らない人といきなり通話するのはハードルが高いと感じる若者も多いのではないでしょうか。また、マッチング前にじっくり相手を吟味したいというニーズは、若者よりも年上の層に多い可能性も考えられます。
タイパ抜群のアプリが今月も複数ランクイン
■曲名が分からないときは「鼻歌検索」
24位にランクインしたのは、20〜30代の若い世代で注目が集まっている音楽発見アプリ「SoundHound」でした。こちらのアプリでは、街中でふと気になる曲が聞こえた時やメロディは分かるものの曲名が分からない時に、鼻歌から曲を検索することが出来ます。また、検索して見つかった曲は、そのままアプリ内で購入して繰り返し聴くことも可能です。利用者はこの機能によって、「気になった曲の名前をわざわざ調べて、別の音楽再生アプリで購入する」という手間を省くことができます。
「SoundHound」利用者の年代割合
集計期間:2022年6月~2023年5月
デバイス:スマートフォン
Z世代というと、タイパを意識していることが特徴的ですが、「SoundHound」もまさにタイパ抜群のアプリといえるのではないでしょうか。
タイパについておさらいしたい方は、こちらの記事も合わせていかがでしょうか。
タイパとは?Z世代が重視する「タイパ至上主義」の背景とマーケティング事例
https://manamina.valuesccg.com/articles/2112Z世代の多くは、生活のさまざまな場面でタイパ(タイムパフォーマンス)を意識しています。「タイパ至上主義」という言葉が登場するほど、Z世代は時間効率を重視しているのです。この記事では、Z世代の購買心理・最新のトレンドを知るために、タイパの概要や価値観、マーケティング事例を解説します。
【三菱UFJ信託銀行×ヴァリューズ共同研究調査】 「タイパ」実態 “動画の倍速再生”は約5割が実践 “タイパ意識”は男性20代、女性30代が最も高い
https://manamina.valuesccg.com/articles/2343ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸)と三菱UFJ信託銀行株式会社(本部:東京都千代田区、取締役社長:長島 巌)は協同で、三菱UFJ信託銀行が提供する情報銀行サービス「Dprimeの個人ユーザー」を対象にアンケートを実施し、Z世代を中心に注目が高まる「タイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)」の実態調査をおこないました。
■コーディネートもアプリにお任せ
25位には着こなし発見アプリ「StyleHint(スタイルヒント)」がランクインしました。ユニクロとGUが共同で企画・開発したこの「StyleHint」では、着こなしのアイデアを探し、気に入ったものが見つかればそのままアプリから購入することが出来ます。「StyleHint」の検索方法は非常に豊富で、キーワード検索や人気の着こなしが見れるだけでなく、手持ちの画像から類似アイテムを使った着こなしを見つけることもできます。
利用者層を確認してみると、性別は女性が約7割を占めていることが分かりました。「最新の着こなしトレンドを把握したい」というニーズは、美容やファッションに関心の高い女性に多かったのかもしれません。また、年代に関しては幅広い層で利用されていますが、特に20代の利用者の割合が高いことがわかります。ユニクロやGUでは、取り扱っている商品はリーズナブルなものが多いため、大学生や働き始めの若い世代は重宝するのではないでしょうか。
「StyleHint」利用者の性別・年代割合
集計期間:2022年5月~2023年6月
デバイス:PC、スマートフォン
「StyleHint」を活用すれば、わざわざ店舗に行かなくても着こなしの発見から購入までスムーズに完結することが出来ます。「StyleHint」で着こなしを検索する際は、身長指定などの機能で自分と似た雰囲気のモデルを探すことも可能です。これによって、「モデルが着ていると綺麗に見えたのに、自分が着てみたらなんか違った」というオンラインショッピングにありがちなリスクを最小限に出来るのも魅力です。
「StyleHint」も先ほど紹介した「SoundHound」と同様に、商品の検索から購入まで一つのアプリ内で簡単に済ませることができます。タイパを向上させるには、このように消費者の導線をシンプルにすることが有効なのかもしれません。
まとめ
今回は、急上昇アプリランキングTOP30のなかから、ChatGPTアプリ、フェス公式アプリ、FX取引アプリ、メタバースアプリ、マッチングアプリ、音楽発見アプリ、着こなし発見アプリをピックアップして紹介しました。
毎月実施しているこのアプリトレンド調査ですが、やはりタイパのいいアプリはZ世代の人気を集めやすい傾向があるようです。もはやタイパは、「心がけると差をつけられる」項目ではなく「意識することは必須」の条件になりつつあるのかもしれません。
マナミナでは引き続き、Z世代のトレンドを調査し、評価の高いサービスの共通点を探ります。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。