タイパとは?Z世代が重視する「タイパ至上主義」の背景とマーケティング事例

タイパとは?Z世代が重視する「タイパ至上主義」の背景とマーケティング事例

Z世代の多くは、生活のさまざまな場面でタイパ(タイムパフォーマンス)を意識しています。「タイパ至上主義」という言葉が登場するほど、Z世代は時間効率を重視しているのです。この記事では、Z世代の購買心理・最新のトレンドを知るために、タイパの概要や価値観、マーケティング事例を解説します。


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タイパとは

タイパとは、タイムパフォーマンス(時間対効果)を意味する略語です。かけた時間に対する効果、かけた時間に対する満足度がどの程度なのかを表します。

お金の有効活用を考える「コスパ(コストパフォーマンス)」に対し、「タイパ」は時間の有効活用を考えます。

例えばタイパを意識した行動例は以下の通りです。

・タイパを感じられない無駄な飲み会に参加することを辞めた
・打ち合わせのタイパを上げるために、事前に質問事項を整理しておく
・趣味のタイパを上げるため、映画を倍速再生にして1時間で観る

このようにプライベートからビジネスまでさまざまなシーンで、タイパを重視する行動が若年層を中心に増えています。

タイパがトレンドになった背景

2022年4月に『映画を早送りで観る人たち』(稲田豊史/光文社新書)が出版されたことをきっかけに、タイパはトレンドワードとなりました。『映画を早送りで観る人たち』では、Z世代があらゆることにタイパを強く意識していることが紹介されています。

映画の視聴方法には、下記のような方法があります。

・ながら見:別の作業をしながら映像を見る
・倍速視聴:再生速度を倍にして視聴する
・スキップ視聴:興味のないコンテンツを飛ばしながら見る
・ネタバレ視聴:作品を楽しむ前にある程度の内容を把握しておく

またSHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)の調査では、Z世代の約半数がコンテンツの「倍速視聴」をしており、80%以上が「ながら見」していることがわかりました。

SHIBUYA109 lab.調べ

タイパが意識されるようになった要因

Z世代がタイパを意識する要因が2つあります。

彼らはとにかく観たい映像、観なければならない映像のあふれている環境にいます。またSNSの普及も合間って、友達との会話についていくために、効率良くコンテンツを観る必要があるのです。

映像系サブスクリプションの普及

まず、NetflixやAmazon primeなど動画配信サービスの普及です。安価で大量の映像作品を観られるようになったことで、Z世代の間で話題になるコンテンツが爆発的に増加しました。

限られた時間の中で多量のコンテンツを視聴する必要があるため、タイパを意識していると考えられます。

目まぐるしく変化するSNSのトレンド

SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)の調査では、Z世代の80%以上がSNSを日常的に利用していることが明らかになりました。

SNSでは日単位、時間単位でトレンドが変化していきます。友達との会話についていくためには、トレンドをいち早くキャッチし、そのコンテンツを体験しなければなりません。

可処分時間も限られる中で、タイパ良くコンテンツを消化していく必要があるのです。

SHIBUYA109 lab.調べ

タイパの良い動画コンテンツ例

Z世代のような若年層を中心に時間効率を重視するタイパは広まっています。ここでは、タイパを重視するZ世代がどのような動画コンテンツを好むのか、具体例を挙げます。

ファスト映画

ファスト映画とは、映画の映像を、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめてストーリーを明かす動画です。

映画のあらすじや結末まで手短に紹介するという動画で、動画共有サイトに投稿されていました。2020年春頃からYouTubeへの投稿が増加し、コロナの巣ごもり需要を背景に人気になったコンテンツです。

タイパ良く楽しめるため、「実際の映画を観るよりも、無料のファスト映画をたくさん視聴したほうが得」という心理が働き視聴数が増加しました。

ただし、ファスト映画は著作権に違反する場合があります。2021年にはファスト映画の投稿者3人が逮捕・起訴されました。2022年現在、ファスト映画のほとんどはYouTube上から削除されています。

ショート動画

ショート動画とは、スマートフォンで視聴できる縦型の短い動画を指します。代表的なショート動画は、
「TikTok」「YouTubeショート」「Instagramリール」「LINEVOOM」など。

動画の尺は、60秒前後で設定されていることが多いです。

スキマ時間に手軽に視聴することができることから、ショート動画はZ世代に人気のサービスとなっています。

サムライト社が行ったショート動画の利用状況調査では、Z世代の約7割がショート動画を利用していることがわかりました。

サムライト調べ

タイパを意識したマーケティング事例

Z世代が重視するタイパという価値観は、マーケティングに活かすことも可能です。

以下では、動画コンテンツを活かしてマーケティングに成功した事例をいくつか紹介します。個人発信と企業発信どちらも参考にできるでしょう。

1995年の小説が緊急重版!「残像に口紅を」

2021年に、小説『残像に口紅を』(筒井康隆/1995年/中央公論新社)が3万5000部も緊急重版されました。きっかけは「けんご(@kengo_book)」さんの小説紹介をするTikTok投稿。この動画はTikTokで960万回再生され、30年越しに売上を大きく伸ばしました。

動画リンク

TikTokでの反響により「書店の店頭でオリジナルPOPを作成」「小学生の読書感想文に使用」するなど、衝撃をもたらしました。

キムチの売上が40倍!「キムチの家 佐渡島」

新潟県の佐渡島でキムチを製造している「キムチの家(@kimuti.house.jp.ne.co)」では、売上を飛躍させた好例です。

ダイナミックな包丁さばきで白菜を切りキムチをつくる動画は310万再生に。全国から通販に注文が殺到し、TikTokを始めて2ヶ月で売上は40倍以上となりました。  

TikTokのライブストリーミング機能「TikTok LIVE」も利用しており、数量限定で販売を呼びかけたTikTok LIVEでは、『白菜キムチ』200個(約30万円分)が、わずか3分で完売することもありました。

動画リンク

採用応募増にもつながった「鳥羽ビューホテル花真珠」

三重県のホテル「鳥羽ビューホテル花真珠(@tobaview)」は、TikTokの活用で旅行予約サイト「じゃらん」で地域1位になりました。

スーツに身を包んだフロントマン3人が、流行のダンスチューンに合わせて踊るという動画が220万回再生を超えトレンドに。真面目そうなフロントマンが、ダンスを踊るギャップが刺さりました。

動画リンク

Watch on TikTok

また、求人にも影響がありました。TikTokの動画をきっかけに風通しが良い雰囲気を感じ「こんな旅館で働きたい」と高校生からの応募が増加。例年苦労していた採用活動にもかかわらず、2021年は順調に進みました。

商品・サービスのマーケティングのみならず、ブランドイメージの向上にも寄与した好例です。

タイパを意識する人の価値観

タイパを意識しているZ世代は、どのような価値観や消費行動をしているのでしょうか。他の世代にはない、Z世代特有の価値観や消費行動を紹介します。

素早くSNSで調べる

インターネットの普及に伴い情報にアクセスしやすくなったことで、わからないことや知らないことがあれば、現地に行って確かめたり、調べたりすることなく、すぐにSNSで調べる傾向にあります。

例えば以下のように、素早くSNSを使用して情報を取得します。

・近くのレストランを探すには、Instagramのレビューを見て決める
・新しいことを学習するとき、YouTube動画を視聴する
・学習したことの復習には、Instagramでシェアされているパワーポイント資料を使う

企業のマーケティングでは、公式のSNSアカウントを開設するなどして、商品・サービスに関連するコンテンツを充実させておくことが対策となるでしょう。

ネタバレ消費を好む

ネタバレ消費とは、事前に内容を調べた上で商品・サービスを利用することです。Z世代は「時間をムダにしたくない」、「最小の労力で最大の成果を得たい」というタイパの意識から、ネタバレ消費を好む傾向にあるようです。

具体例は以下を挙げられます。

・映画の結末をレビューサイトで調べてから映画を観る
・書籍の要約サイトを見てから本を読む
・誕生日に欲しいものを本人に聴いてからプレゼントを買う

「ネタバレをして面白いのか?」との意見もあがりそうですが、以下のようにポジティブにとらえています。

・映画の内容を知っていたほうが楽しめる
・内容に納得した上で後悔せず本を購入できる
・本人の満足度が高い誕生日プレゼントを確実に渡せる

事前にネタバレすることで、無駄なお金を支払わずに済むというコスパ面も重視しているともいえるでしょう。

「タグる」と「タブる」

タグるとは、SNSのハッシュタグを用いて検索をすることです。Googleで検索することを「ググる」と呼ぶのに対して、SNSの「ハッシュタグ(#)」で検索することを「タグる」と呼びます。

「かわいい」「おしゃれ」などの感情や共感を表すキーワードを使用して、写真から欲しい情報を検索することが可能です。

一方のタブるとは、Instagramの発見タブからユーザーの好む情報を探すことです。発見タブは、Instagramのホーム画面にある虫眼鏡マークをタップすると表示される画面のことです。閲覧・コメント・滞在時間から、ユーザーが好きな投稿をレコメンドして表示させます。

ユーザーの好きな情報がすぐに表示されるため、Z世代は情報を「タグる」「タブる」で探しています。

このような検索行動も踏まえて、SNSのハッシュタグ設定や、発見タブの設定をしておくといいでしょう。

まとめ

タイパ(タイムパフォーマンス)とは、時間効率を重視するものです。映像の「ながら見」や「倍速」再生をしているZ世代が増えています。Tiktokを中心に動画コンテンツを用いて、マーケティング事例に成功した事業も増えており、今後はタイパを踏まえたマーケティング活動が重要となるでしょう。

動画コンテンツを制作する際には、ユーザーが関心のあるキーワードや、行動データをもとに企画を練ることが重要です。Dockpit(※)は、約250万人のWeb行動ログデータをもとに、市場や消費者を調査します。「Z世代がどのようなキーワードを検索しているか」、「どういったWebコンテンツを見ているか」を参考にすれば、適切な動画コンテンツを企画できるでしょう。

Z世代のタイパ至上主義に対応するために、マーケティングデータ分析を有効活用してはいかがでしょうか。

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この記事のライター

販促ライター。ITベンチャーを経て2015年からライターとして独立し、2023年に株式会社SHIKIを創業。ライター兼編集者として大手企業が発信するコンテンツの企画や制作管理を担う。多岐にわたる業界の制作経験から、見込み客のステージに応じた文脈の使い分けを得意とする。会社員や主婦など92名のライターを育成。ライター採用やレギュレーション制作の実績もあり。ご依頼はokada@shikcorp.comまで。

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