マーケティング業務への生成AIの取り入れ方 ~ マーケティングのワークフローはAIでどう変わる? | マナミナ・トークLIVEイベントレポート

マーケティング業務への生成AIの取り入れ方 ~ マーケティングのワークフローはAIでどう変わる? | マナミナ・トークLIVEイベントレポート

ChatGPTをはじめとした生成AI技術の進化は目覚ましく、マーケティングの土台が変わりつつあります。しかし、その恩恵を受けるためには業務への適切な取り入れ方が重要です。本稿では『マーケティング思考力トレーニング』の著者でもある、ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員の黒澤友貴さんと、『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』などリサーチに関する著作を持つ、リサーチャーの菅原大介さんによる対談イベントより、生成AIをマーケティング業務に取り入れるポイントや、具体的な活用方法を対話形式で解説します。


スピーカー紹介

業務に取り入れやすい生成系AI 4選

リサーチャー 菅原大介さん(以下、菅原):早速ですが、黒澤さんは、普段どんなAIを業務で活用していますか?

ブランディングテクノロジー株式会社 黒澤友貴さん(以下、黒澤):私が使用しているAIツールはこちらになります。業務中はChromeから常に開いている状態にしています。

黒澤:まずはこれらの中から以下4つのAIツールについて、私が業務へどのように取り入れているのかを紹介します。

1. ChatGPT
利用者が質問を打ち込むと会話形式で応答するサービス

2. Midjourney
チャットにテキストを打ち込むとAIにより画像を生成するサービス

3. ChatPDF
読み込ませたPDFの文章要約の作成や、内容に関する質問に対話形式で応答するサービス

4. Notta
日本語・英語など104言語に対応する、AIが音声を自動的にテキスト化するサービス

AIを導入することでマーケティングの業務領域を広げ、効率化を図る

黒澤:はじめに、私がどんなマーケティング業務でAIを活用しているのかをご紹介します。マーケティングのワークフローは組織によって異なりますが、今回は私が使っている基本的なワークフローをもとにお話します。

1. 調査

黒澤外部調査などのデスクトップリサーチには、ChatGPTを活用しています。PEST分析などフレームワークを使った調査を進める際、例えば「外部環境を理解するためにPEST分析の実行をお願いします」とChatGPTにプロンプトを入れることで、分析に必要な情報を得ることができます。取得した情報のエビデンスを確認した後、マーケティングの戦略を考える参考データとして活用しています。

また、ChatGPTは情報を組み合わせて未来に起こりえることの仮説づくりが得意だと考えています。PEST分析から得られた情報をもとに、未来のシナリオ(変化)を考えることは、ブランド戦略を大きな視点で考え直すことに繋がります。

2. 戦略仮説設計

黒澤:目的・目標など方向性を決める戦略・コンセプト定義においても、ChatGPTを活用しています。個人情報を伏せた調査結果の要約や将来のシナリオをChatGPTに読み込ませ、戦略仮説の素材となる情報を取得します。

さらに検討を進める際に使うのが、miro AI です。miro AIは一つのテーマに対し、複数の観点でマインドマップを作成するツールで、人が考えるテーマをベースに複数のアイデア案を取得することができます。

3. 体験設計

黒澤理想の顧客体験を設計するフェーズで表現方針を検討する際は、ChatGPTを活用しコピー案を生成しています。こちらは皆様もよく使う方法ではないでしょうか。

4. 実践と検証

黒澤:プロトタイプを作成し検証するフェーズでは、画像生成AIのMidjourneyを活用し、ChatGPTで取得した仮説アイデアを読み込ませることでビジュアル化し、プレスリリースやアイデア案の作成時に活用しています。コンセプトやアイデア案をビジュアル化することで、社内外からフィードバックをもらいやすくなり、議論の質も高まっていると思います。

マーケティングのワークフローでAIを活用すると効率化が図れるほか、AIで取得した情報を加え人同士がディスカッションを行うことで、マーケティング業務の領域を広げることができます。計画策定や実行に関しては、人が主に実施するフェーズになるため、今回は1.調査~4.実践と検証に活用できるAIをご紹介しました。

菅原:個人ワークで収集したAIの調査結果をもとに、プロジェクトとして検討を進めるという流れは、AIと人の業務におけるコラボレーションを感じます。

黒澤:私も業務でAIを活用しているとは言え、まだAIの可能性を探っている段階ですが、時間のかかっていたリサーチや情報のまとめなどをAIで補助することで、仮説の精度や作業効率は今まで以上に上がっていると感じます。

日常業務の情報収集先となるデータベースや環境に合わせたAI活用

黒澤:ここからはマーケティング業務だけではなく、日常の業務でAIをどのように活用できるのか、どんな業務でも発生する「情報収集→情報を編集し要約から情報を理解→アウトプット作成」といった基本的なワークフローをもとに、私がどのようにAIを活用しているのかをご紹介します。

まずその一つとして、noteなどブログ執筆のための情報収集をする際、最新の情報を効率よく理解する手段として、AIをワークフローに取り入れています。

黒澤Webサイトで気になる情報を見つけた時はGoogle Chromeの拡張機能である「Save to Notion 」を使い、Notionのデータベース上に記事を保存します。海外のホワイトペーパーなどPDFのデータはChatPDFに読み込ませ、情報の確認や深堀します。

Notionデータベース内の情報をNotion AI を活用して、文章を要約し、情報理解を深めます。さらに情報を詳しく知りたい場合は、ChatGPTを使用します。この方法は、プログラミングの知識が無くても設計することができます。AIを日常業務に活用できる環境を整備することができます。

ブログの執筆時は、文章の構成やコピーライトの案出しにChatGPTを使用しますが、文章をAIで書くことについては、クオリティの問題から現状は難しいと感じます。

菅原:ご紹介いただいたAIの中でNotion AIなど有料ツールが含まれていますが、自己学習費用として負担することを考慮して、AIを選定した方が良いのでしょうか?

黒澤:私の場合Notionに全ての情報を集約しているので、作業効率を優先しNotion AIは課金して使用しています。情報を収集する領域や、日常業務で情報収集先となるデータベースやツールと連携できるAIが有料ツールである場合には、ご自身の業務環境に合うAIを取り入れることをお勧めします。

インタビューの要約やプロトタイプ画像生成などリサ―チ業務に最適なAIとは

黒澤:続いて、ユーザーリサ―チのワークフローにおいて、どのようにAIを活用しているのかをご紹介します。

黒澤インタビューの設問設計・ロールプレイングをする際は、ChatGPTを活用します。基本的な設問をもとにChatGPTで深堀すると、新たな設問案を取得できるので、どのような切り口でインタビューを進めるべきか、シミュレーションしながら設問設計を検討します。

インタビューを実施した際の動画は、音声を取り込むと自動でテキスト化されるNottaを活用し文字起こしを行った後、Notionでインタビュー記録データを要約します。カスタマージャーニー設計やペルソナ設計で顧客のニーズを構造化する際はChatGPTを活用し、作成したペルソナ像をMidjourneyに取り込み、生成したビジュアルをプロトタイプに活用します。

菅原:インタビューのロールプレイングする際、通常ウォークスルーやパイロットテストなどを行うことがありますが、AIを活用することで効率的に進めることができますね。ペルソナを作成する際は、嗜好性も含めた情報をAIで取得できるところは、非常に利便性を感じました。

黒澤:他にも、顧客のニーズを深く掘り下げるためにジョブ理論の考え方を反映させた設問にAIが返答できるところも、画期的だと思います。生成AIを活用することで、インタビュー前に、顧客ニーズや行動に対する仮説を深められるようになりました。

AIの特性・対応領域を把握し業務に合わせたツールを選定

黒澤:まとめとして、 AIツールの選定ポイントを2つ解説します。

1つ目は、生成系AIの代表的なツールであるChatGPTを基本的に使用することです。日常業務で使っているツールと連動したAI機能があれば、ChatGPTと合わせて優先的に使用することをお勧めします。

2つ目は、「日常のワークフローの中でどんなツールが使えるのか」という観点で、自分に合うツールではなく業務に合うツールを選定することです。まずは、AIが一番得意な分野である情報収集の要約・編集業務で活用し慣れていくことで、AIの特徴や対応領域を掴むことができると思います。

業務へのAI活用が組織として推奨されていない場合は、仮想企業のケーススタディーや業務研修用の情報収集などの社内業務に取り入れ、AIに触れる機会を作ることをおすすめします。

セミナー中のQ&A紹介 ~ プロンプト入力や生成された情報の利用範囲

菅原:最後に、セミナーにご参加いただいた方からの質問を一部ご紹介します。

質問:AIへの質問は基本英語で行うべきなのでしょうか?

黒澤: Midjourneyのようにプロンプトを英語で入力しないと認識されにくいツールもあるので、英語を使った方がより幅広いツールを活用することができると思います。ChatGPTやNotionAIなど日本語のプロンプトを認識できるツールであれば、無理に英語を使う必要はないですが、英語で入力した方が返ってくる情報量が多いところがあります。

菅原:英語で対応する際、DeepL などの翻訳ソフトを合わせて使うのも良いですね。

質問:AIから生成された情報を、そのままマーケティングコンテンツとして使うことはまだ難しいでしょうか?文字を含んだ画像などを生成することが難しい現状で、Midjourneyが生成した画像をそのまま広告などに使うのは難しい気がします。

黒澤:生成系AIを活用し、ネット広告のコピーなど短文を取得することはできますが、現状AIが作成した文章は、人に伝わる文章ではないと感じています。Midjourneyは、大まかなコンセプトをもとにビジュアル化するツールで、プロンプトを工夫しても実画像として使用できるクオリティを担保したビジュアルを生成するのは難しいのが現状です。実装時に使う文章やビジュアルは、ライターやデザイナーの力が必要ですが、AIは業務を補助するツールとしてより多くの環境で利用していくべきだと思います。

質問:ChatGPTを使って、パーセッションフローの作成などへ活用することは可能なのでしょうか?また、広告などのコミュニケーションとそれに対するユーザーの反応など予想することは可能になるのでしょうか?

黒澤:カスタマージャーニーを作る際の土台となる仮説はChatGPTを使って情報素材を生成できますが、ブランドが理想として描くカスタマージャーニーやパーセッションフローを作る際、AI任せにすると求めている情報を得ることができないので、ユーザーリサ―チなどを合わせながら人が進めるべき業務であると考えます。

菅原:今回はマーケティング業務への生成AIの取り入れ方について、黒澤さんにお話をおうかがいしました。ありがとうございました。

この記事のライター

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