ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』宣伝なし戦略でユーザーはどう動いたかを調査

ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』宣伝なし戦略でユーザーはどう動いたかを調査

宮﨑駿監督10年ぶりとなる長編監督作品『君たちはどう生きるか』が、2023年7月に公開されました。この作品は宣伝や試写会、キャスト発表などを行わずに公開される異例のスタートとなったことでも話題になりました。 今回はジブリ最新作『君たちはどう生きるか』の宣伝なし戦略の中でユーザーがどのように動いたのか、インターネットでの行動ログから調査し、探っていきます。


『君たちはどう生きるか』異例の宣伝なし戦略

2023年7月14日に劇場公開が始まった『君たちはどう生きるか』。なんとプロモーションビデオも大きな看板もチラシ類もなく、さらには登場キャラクターも分からないという状態での異例のスタートでした。事前情報と言えば1枚の不思議な鳥の絵と、宮﨑駿監督によるジブリ作品だということのみ。キャストの情報もなく、まるで都市伝説か何かのようにひっそりと公開され、そのことが逆に大きな話題となりました。

目につく情報が少ないため、多くの人がインターネットでの検索をしたようです。以下のグラフは『君たちはどう生きるか』を検索したユーザー数の推移です。公開日の7月に急増していたことがわかります。

2022年12月に検索ユーザー数が増加したのは、夏公開のニュースとビジュアル(鳥の絵のみ)が発表されたためだと推測されます。ニュース発表の後、大々的な宣伝が一切なかったため、公開日までほとんど検索されなかったことがわかります。

「君たちはどう生きるか」検索ユーザー数推移

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

『君たちはどう生きるか』を検索したユーザーとは

次に、『君たちはどう生きるか』を検索したユーザーの属性について見ていきましょう。
以下のグラフのように、男女比は女性が53.0%とやや多く、年代は40代が最多ですが、さすがジブリ映画で20代から50代まで幅広いようです。

『君たちはどう生きるか』検索ユーザー属性/性別

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

『君たちはどう生きるか』検索ユーザー属性/年代

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

『君たちはどう生きるか』のどんな情報が知りたかったのか

では、『君たちはどう生きるか』のどんな情報が知りたかったのか、同時検索ワードから探ります。

3位に「あらすじ」がランクイン。ほとんど情報がない中で、どんな内容なのか知りたいユーザーが多かったようです。注目したいのは「声優(4位)」「キャスト(7位)」です。ジブリ映画は毎回豪華キャストで吹き替えを行なっているため、今回も期待が集まったようです。

ちなみにキャストが発表されたのは公開初日。木村拓哉、菅田将暉、あいみょんなど、またしても豪華なメンバーで話題になりました。

『君たちはどう生きるか』同時検索ワード

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

ジブリ作品の中でどのようなポジショニングになるか予想

謎のベールに包まれた『君たちはどう生きるか』について、検索ユーザーの動向を見てきました。
次に、この作品が数あるジブリ作品の中でどンなポジショニングになるかを予想していきます。

まずはユーザー属性を、他の人気作品と比較します。

『君たちはどう生きるか』検索ユーザーは『風立ちぬ』ファンと類似?

以下のグラフは、ジブリの人気作品のユーザー属性です。
ピックアップしたのは、直近(2013年公開)の作品『風立ちぬ』と、テレビ地上波での放送回数が多い『風の谷のナウシカ(20回)』『天空の城ラピュタ(18回)』『となりのトトロ(18回)』です。

性別、年代のシェアを見ると、『風立ちぬ』検索ユーザーと類似していることがわかります。

ジブリ5作品ユーザー属性比較/性別

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2021年8月〜2023年7月

ジブリ5作品ユーザー属性比較/年代

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2021年8月〜2023年7月

実はジブリらしいユニークな宣伝も……

異例の宣伝なし戦略が注目された『君たちはどう生きるか』ですが、実はジブリらしいユニークなプロモーションがSNSのX(旧ツイッター)で展開されていたのをご存知でしょうか。
それが、「常識の範囲内で、自由に使ってください。」シリーズと、「カヘッカヘッ」と鳴く(話す?)アオサギです。

突如公式X(旧ツイッター)のプロフィール画像に登場したアオサギと、ナウシカのイラストには7.14の『君たちはどう生きるか』公開日付き。この日以降もアオサギは頻繁に登場しています。

スタジオジブリ STUDIO GHIBLI 公式(@JP_GHIBLI)

スタジオジブリ STUDIO GHIBLI 公式(@JP_GHIBLI)

X(旧ツイッター)を使った人海戦術でファンの心を掴む

では、X(旧ツイッター)でのプロモーションはどれくらい効果があったのか、分析してみましょう。

下のグラフはスタジオジブリ公式サイトおよび公式X (旧ツイッター)のユーザー数の推移です。どちらも2023年7月に急増していることがわかります。

スタジオジブリ公式サイトおよび公式X (旧ツイッター)のユーザー数の推移

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

また、公式サイトへのソーシャル経由での流入ユーザー数も、7月は大幅に伸びました。
ジブリ公式X (旧ツイッター)の投稿は、必ずしも公式サイトへのリンクがあるわけではありませんが、それでも7月のソーシャル流入については9割がX (旧ツイッター)でした。

ジブリ公式サイトへのソーシャル流入セッション数推移

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2022年8月〜2023年7月

2023年7月のソーシャル経由流入の構成

デバイス:PCおよびスマホ
期間:2023年7月

まとめ

今回は、宮﨑駿監督10年ぶりとなる長編監督作品『君たちはどう生きるか』について、宣伝なし戦略の中でユーザーがどのように動いたのか、インターネットでの行動ログから探りました。

『君たちはどう生きるか』を検索したユーザー数は?

『君たちはどう生きるか』を検索したユーザー数は公開日の7月に急増しました。また、大々的な宣伝が一切なかったため、公開日までほとんど検索されなかったこともわかりました。

『君たちはどう生きるか』を検索したユーザーの属性は?

男女比は女性が53.0%とやや多く、年代は40代が最多ですが、20代から50代まで幅広いユーザーが興味を持ったようです。また、その属性パターンから、『君たちはどう生きるか』検索ユーザーは『風立ちぬ』ファンと類似していることがわかりました。

スタジオジブリ公式サイトおよび公式X (旧ツイッター)のユーザー数の推移は?

スタジオジブリ公式サイトおよび公式X (旧ツイッター)のユーザー数は、『君たちはどう生きるか』の検索数に比例して、どちらも2023年7月に急増していることがわかりました。

ジブリらしいX(旧ツイッター)を使ったプロモーションも人気?

突如公式X(旧ツイッター)のプロフィール画像に登場したアオサギを使って、ファンに向けたジブリらしいプロモーションも奏功。7月の公式サイトへのソーシャル経由流入の9割がX(旧ツイッター)だったことが判明しました。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

フリーライター。大手キャリア系企業で編集の仕事に出会い、その後、3つのメディアの立ち上げなど行い、2014年にフリーランスに。医療系、就活系、教育系、結婚系のサイトで執筆中。

関連する投稿


SuicaとPASMOの大きな違いはポイント経済圏?利用者の数や属性を比較

SuicaとPASMOの大きな違いはポイント経済圏?利用者の数や属性を比較

首都圏の交通系ICカードといえばSuicaとPASMO。みなさんはその違いを知っているでしょうか。この記事では、SuicaとPASMOの共通点や相違点、ポイント経済圏の特徴について調査・考察します。また、モバイルSuicaアプリ、モバイルPASMOアプリユーザーのデータからアプリユーザー数や関心のあるアプリについても分析します。


LINEで「友達削除」をする中高年、「送信取り消し」をする若者

LINEで「友達削除」をする中高年、「送信取り消し」をする若者

世代を問わず活用されているLINE。人それぞれ使い方があるなかで、「友達削除」と「メッセージの送信取り消し」に年代により検索行動に傾向が見られました。今回は、LINEの機能の「友達削除」「送信取り消し」をもとに、世代間のメッセージアプリの使われ方を分析、考察していきます。


「ポケポケ」大ヒットの実態とは? 類似ゲームアプリと利用者データを比較

「ポケポケ」大ヒットの実態とは? 類似ゲームアプリと利用者データを比較

ポケモンのトレーディングカードアプリ「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」が社会現象となっています。リリースから3ヶ月近くが経ち、人気の実態が明らかになってきました。本稿ではそんな「ポケポケ」のMAUやユーザー層を他のゲームアプリと比較することで、流行の要因を分析するとともに、今後の人気について予測していきます。


【2月22日は猫の日】女性が特に好きな猫種は?「猫」検索者を調査

【2月22日は猫の日】女性が特に好きな猫種は?「猫」検索者を調査

日本では2月22日が「猫の日」とされ、「にゃん・にゃん・にゃん」という猫の鳴き声にちなんで1987年に日本の愛猫家団体「猫の日実行委員会」と動物愛護団体が制定しました。この時期にちなんで、インターネットで「猫」について検索する人は、なにが気になっているかを分析します。


【ユーザー徹底検証】サプリメント利用調査(2025年1月最新版)

【ユーザー徹底検証】サプリメント利用調査(2025年1月最新版)

ドラッグストア、コンビニ、ECと手軽に手にすることのできるサプリメント。実際にはどれくらいのユーザーが利用しているのでしょう。そして、その目的や購入の決め手となることは?本レポートでは、サプリメントの摂取層を対象に調査を行い、どのような商品が選ばれ、どのように利用されているのか、その購買行動や利用実態を具体的に把握、検証しました。※本レポートは無料でダウンロードできます。


最新の投稿


「タイパ疲れ」する現代人?約7割が「タイパを意識しない生活を望む」【Repro調査】

「タイパ疲れ」する現代人?約7割が「タイパを意識しない生活を望む」【Repro調査】

Repro株式会社は、企業のマーケティング戦略やサービス設計に影響する、消費者の「タイムパフォーマンス(タイパ、時間対価値)」に対する意識を明らかにすべく、全国10代から60代の男女を対象に「日常生活とデジタルデバイス利用時におけるタイムパフォーマンスに対する意識調査」を実施し、結果を公開しました。


アテンションエコノミー ~ 課題と今後

アテンションエコノミー ~ 課題と今後

インターネットが一般消費者に普及し始めて何年経ったでしょうか。Windows95が発売された頃からと見做せば、30数年という年月で、インターネットは私たちの生活にはなくてはならないテクノロジーとなりました。そして今や私たちの受け取る情報は溢れるほどに。その情報は真偽だけでなく善悪という側面を持ち、経済活動にも大きく影響しています。本稿では「アテンションエコノミー」と題し、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が今後の課題へも言及し解説します。


イード、多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper」を提供開始

イード、多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper」を提供開始

株式会社イードは、同社が運営する多彩なバーティカルメディアを活用したPR活動支援サービス「PR Deeper(ピーアール ディーパー)」を提供開始したことを発表しました。


HAKUHODO EC+、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始

HAKUHODO EC+、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始

株式会社博報堂のEC領域に特化した組織横断型プロジェクト「HAKUHODO EC+」は、ライブコマースと独自開発のMAツールを起点に新しいSNSライブマーケティング戦略を展開する株式会社Tailor Appと連携し、ライブ配信をリサーチに活用するソリューション「ライブエンタメリサーチ」を提供開始したことを発表しました。


スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

スマート家電は生活の質を向上させる?中国におけるスマート家電の利用実態を調査

近年のデジタル化や購入支援政策も相まって、中国国内でスマート家電が広く普及し始めました。スマート化によって利便性や機能性が向上すると謳われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?ヴァリューズ独自の中国定性調査サービス「ValueQIC(ヴァリュークイック)」を用いて、ユーザーの本音を明らかにしました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ