中国の若者世代で「精致抠」の消費観が普及。消費スタイルの変化を調査

中国の若者世代で「精致抠」の消費観が普及。消費スタイルの変化を調査

現代中国の若者世代が持つ独特な消費観に、「精致抠」というものがあります。できる限り無駄遣いを減らして、自分が本当に欲しい物を買うという価値観です。本記事では、「精致抠」はどのような考えか、そして「精致抠」の消費観のもと、若者世代を中心とした中国の人々の消費スタイルがどのように変化しているかを紹介します。


若者世代で広まる「精致抠」の価値観

「カフェにマイボトルを持参してコーヒーを買う」「バーゲンセールでは商品のコストパフォーマンスを計算して選ぶ」「使わない物は中古品販売サイトに出品する」。これらはすべて、中国の若者たちが行っている節約術です。
近年中国では多くの若者が、できる限り無駄遣いを減らして、自分が本当に欲しい物や生活の質を上げるための物を買うという、「精致抠」の生活を選択しています。「精致抠」の消費観は、ただ盲目的に節約するのではなく、節約できる部分は節約をしてお金をかけるべきところはお金をかける、節約と品質の間のバランスを探すというものです。目的は「買わない」ことではなく「無駄遣いを削減すること」であり、生活の質を保証すると同時にできる限りの節約を行っているのです。
若者世代はさらに、SNSなどで「精致抠」の生活の様子をシェアし、より多くの共感を集めています。

例えば、中国の掲示板サイト・豆瓣内の「低消費研究所」というチャットグループは16万人近くの会員数を有し、そこでは無駄遣いを減らすための情報がシェアされています。

小红书(RED)で「精致抠」と検索した結果。総いいね数が1万以上の投稿が複数見受けられる

それでは、どれほどの若者ができる限り無駄遣いを減らして、自分が本当に欲しい物を買うという、「精致抠」の消費観を持っているのでしょうか。「中国青年消费报告(中国青年消費報告)」によると、55.8%の若者が消費時に「自分の生活に必要な物だけを買う」傾向にあると答え、40%の若者が「少なく、良い物を(買う)」と答えました。
また、DT财经と美团外卖は共同で、2100名の対象のうち約70%が1990年以降生まれであるアンケート調査を実施。若者世代を対象の中心にしたこの調査のデータによると、2000年以降生まれの若者において、消費時に最も重視することは「自分にとって必要か」、反対に最も重視しないことは「流行度」という結果になりました。

1990年~99年生まれの世代も、「商品の質」に次いで「自分にとって必要か」どうかを消費時に重視しています。このことから、中国の若者世代の消費観において、商品購入に当たっては「自分にとって必要か」が重視されていることが分かりました。
また同じ調査では、若者世代が「自分をどのタイプの消費者だと自認しているか」の問いも設けられました。回答は以下のグラフの通りで、消費前に理性的に必要か否か、使えるか否か、買うに値するかを分析し盲目的な購入はしないという「理性分析師」が56.6%と最も高い数値を記録しました。

DT财经と美团外卖のデータをもとにヴァリューズが作成

2番目に多い「実用践行者」とは、商品の実用性を重視しメンツや見栄えのための出費がほとんどない集団を指します。このグラフから、現代の若者世代は意識的に理性的な消費行動を選択していることが分かりました。

理性的な消費へ価値観は全体的に変化

理性的な消費の傾向は、若者世代だけでなく中国の消費者全体からも窺えます。

徳勤が発表した「2023中国消费者洞察与市场展望白皮书(2023年中国消費者洞察及び市場展望白書)」内の記述によると、中国の社会消費財小売総額は2021年下半期から増加速度が減速しています。原因としては、主要都市における新型コロナウイルス流行の打撃により経済活動が減退したことや、消費に慎重な姿勢をとるようになった消費者が増えたことが考えられます。

消費が減少したと回答した消費者に、消費意欲が減少した要因をアンケート調査した結果、以下のグラフのようになりました。

徳勤のデータをもとにヴァリューズが作成

「消費観の変化」は消費意欲減少の要因として2番目に多く挙げられています。また、消費観のアンケート調査では、「本当に必要な物を買う」が16%で最も多く、次いで「コストパフォーマンスが最も良い物を選ぶ」が11%と並びました。このことからも、中国の消費者は全体的に、衝動的な買い物はせず様々な商品を比較したうえで本当に欲しい物を購入する、「理性的な消費」を重視していることが分かります。

「精致抠」に基づく具体的な消費行動

「精致抠」の消費観に基づく具体的な消費行動を紹介します。
大众日报(大衆日報)の記事では、95後(1995年~99年生まれを指す)の若者・王帆を取り上げました。王帆は「精致抠」を積極的に実施しており、SNSに載せられた動画を通じて節約術を学んでいます。
例えば、除湿機の中の水を花の水やりに使う、食べ終わったケーキの箱を収納ボックスにする、などです。王帆は大众日报の記者に「少しずつ節約することが大金の出費を可能にし、自分が本当に欲しい物が消費の対象に代わる」と語りました。宣言通り彼女は、昨年秋のバーゲンセール期間で、3000元以上の値がするロボット掃除機を購入しました。

また前述の調査において、DT财经と美团外卖は消費者がどのような消費行動を実践しているかについてもアンケート調査を行いました。

DT财经と美团外卖のデータをもとにヴァリューズが作成

上記のグラフの調査結果からも、若者世代の消費者はクーポンを探す、共同購入する、返品するなどの節約行為や、事前に攻略法を立てるなどの理性的な消費行動を実施していることが分かりました。
さらに「精致抠」の消費観は、若者世代の自己投資の需要も高めています。将来の経済的な不安や生活の不安定さなどが背景にある現代においては、頼れるのは自分だけと考える若者が多くいます。昨年の「双11」バーゲンセール期間においては、オンライン講座に多くの注目が集まりました。教育カテゴリは販売開始をしてから10分の間で10万人以上に購入され、会計に関する授業は販売開始1時間後に3万セット以上が売れました。

まとめ

「精致抠」という、現代の中国の若者世代が強く持つ消費観について紹介しました。できる限り無駄遣いを減らして、自分が本当に欲しい物や生活の質を上げるための物を買う「精致抠」の消費観の下、中国の消費者たちはより理性的な消費を選択しています。以前のように欲しい物のために惜しげもなくお金を消費するのではなく、使うべきところにお金を使うという消費スタイルは、中国の消費者に新しい消費行動を生み出しています。

参考URL

文化观察|从“精致穷”到“精致抠”
https://dzrb.dzng.com/articleContent/2131_1079350.html 
当代青年“抠门”消费报告:00后和90后会为什么下单?
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1730702996788108652&wfr=spider&for=pc 
2023中国消费者洞察与市场展望白皮书
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/cn/Documents/consumer-business/deloitte-cn-cb-consumer-insight-zh-230118.pdf
年轻人越变越“抠”,原价购物的都是大冤种?
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_24154410 
年轻人的快乐,从“精致抠”开始
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1747805978672154703&wfr=spider&for=pc 

この記事のライター

横浜国立大学、早稲田大学を卒業後、2024年に新卒でヴァリューズに入社。
海外領域のリサーチャーとして、中国、東南アジア、アメリカなどの地域において、定量調査だけでなくSNS分析などの技術型調査手法を活用し、これまで家電、食品、飲料、小売系の企業様のマーケティング支援に携わる。

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