高級BEV(SUV)ターゲット層のボリュームと人物像は?国産車と海外メーカーも比較

高級BEV(SUV)ターゲット層のボリュームと人物像は?国産車と海外メーカーも比較

さまざまなメーカーが開発を進めるBEV(バッテリ式電動自動車)。発売当初はセダン車が主でしたが近年はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)も登場し人気を集めています。特にSUVのBEVは高級車と言われるメーカーが販売をしています。今回は「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」の3つを調査し、ターゲット層として想定されるボリュームや人物像を分析していきます。


BEV(ベブ)とはどんな車?

BEVとは「Battery Electric Vehicle」の略で、電気を充電するバッテリー式の電気自動車を意味します。同じ意味で使われる用語にEV(Electric Vehicle)がありますが、EVは広義で「電気を動力に変換して動く車」を意味します。

EVno

・BEV(Battery Electric Vehicle)
電気を充電するバッテリー式の電気自動車、モーターで動く
・HEV(Hybrid Electric Vehicle)
電気と化石燃料のハイブリッドで動く電気自動車、エンジンとモーターで動く、外部電源で充電ができない
・PHEV(Plug in Hybrid Electric Vehicle)
電気と化石燃料のハイブリッドで動く電気自動車、エンジンとモーターで動く、外部電源で充電ができる
・FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)
燃料電池(水素)で動く電気自動車、モーターで動く

紛らわしいため、BEV以外はPHVのように「E( Electric)」を省略して使われることが一般的で、BEVも「EV」と略されて使われます。

公式サイト訪問者数はレクサス RZが最多

今回は、高級車メーカーのBEVの中でもSUVの「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」を比較調査していきます。

調査は、毎月更新されるWeb行動ログデータを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて行っています。

まず、以下が各公式サイトの基本指標です。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」の各公式サイトの基本指標

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」の各公式サイトの基本指標
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

国産メーカーということもあるからか、レクサス RZの公式サイト訪問者数が最も多い結果となりました。さらに、平均滞在時間が高く直帰率が低いので、訪問者がじっくりとページを閲覧していることがうかがえます。

レクサス RZは車の紹介に動画を複数シーンで使っていることが、訪問者の興味を惹きつけているのかもしれません。

レクサス RZの公式サイトより

ジャガー I-PACEは、一人当たりのセッション数が3.1、ページビュー数も4.3pvと3社の中でも多い結果となっています。ジャガー I-PACEは販売チャネルがオンラインであることが影響している可能性があります。

また、メルセデスベンツ EQSはファーストビューに見積もりシミュレーションやオンラインショールームへの遷移を促すCTA(Call To Action)ボタンがあることが、平均滞在時間などの指標に影響を与えている可能性があります。

メルセデスベンツ EQSの公式サイトより

サイト訪問者の属性を調査

続いて、どのような人が各社のWebサイトを訪問しているのかを調査していきます。

3社とも男性のサイト訪問者が多い。年代は微妙に異なる

訪問者の性別は3社とも同じような傾向になりました。

どのメーカーも訪問者の80%以上が男性です。今回の比較対象が、走りや性能を重視するSUVという車種であることも関係しているかもしれません。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の男女比

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の男女比
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

性別とは対照的に、少し違いが出たのが年代です。

レクサス RZとジャガー I-PACEは50代、60代の訪問者が多いのに比べて、メルセデスは40、50代が多く、30代にも一定の訪問者がいるなど、若い年代の訪問者も多くなっています。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の年代

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の年代
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

例えば、藤田ニコルさんによる試乗動画が公式YouTubeチャンネルに投稿されるなど、若い世代をターゲットにしたマーケティングが行われており、その効果が見られるかもしれません。

メルセデスベンツ EQSのYouTube動画より

各社で差が出たのが訪問者の世帯年収です。

レクサス RZはどの世帯年収でも大体同じくらいの割合ですが、メルセデス EQSは世帯年収が高くなるほどサイト訪問者の割合が高くなっています。一方、ジャガー I-PACEは400万円未満が最も訪問者が多く、900万円ほどで訪問者割合が下がりますが、1,000〜1,500万円以上でまた関心が高まっています。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の世帯年収

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の世帯年収
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

【各社の価格帯】
レクサス RZ
820万円〜
メルセデス EQS
1,578万円〜
ジャガー I-PACE
1,517万円〜

レクサス RZは820万円から購入可能ですが、他の2社の車種は1,500万円以上となっています。実際に購入する層だけが、公式サイトへ訪問しているわけではないようです。

メルセデスベンツ EQSが関東・九州で比率が高い

訪問者の居住地域はメーカーによって関心が分かれています。

メルセデスベンツ EQSが関東・九州で比率が高くなっています。レクサス RZは中部、関西を中心に全国的にサイト訪問者は多く、ジャガー I-PACEも全国的にサイト訪問者がいますが、北海道、秋田、宮城といった積雪する地域からの訪問も多くなっています。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の居住地域

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の居住地域
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

未既婚・子どもの有無は3社とも同じ傾向がみられました。

既婚の訪問者、子どもありの訪問者が多くなっています。どのブランドもボリュームゾーンの年代が40代、50代と高いことが影響しているのかもしれません。

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の未既婚、子どもの有無

「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」のサイト訪問者の未既婚、子どもの有無
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

Webサイト集客構造はそれぞれ異なる

Webサイトの集客構造は3社とも構造が異なる結果となりました。

レクサス RZは自然検索によるサイト訪問者が50%を超え、次いでディスプレイ広告からのサイト訪問者が31.1%となっています。

「レクサス RZ」のサイト集客構造

「レクサス RZ」のサイト集客構造
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

ディスプレイ広告の割合をみてみると、Yahoo!広告が66.3%、Googleディスプレイ広告が32.8%を占めています。

「レクサス RZ」のディスプレイ広告の出稿割合

「レクサス RZ」のディスプレイ広告の出稿割合
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

メルセデスベンツ EQSもレクサス RZと同じく、自然検索が最も多く48.2%。続いてリスティングが32.7%となっています。

「メルセデスベンツ EQS」の集客構造

「メルセデスベンツ EQS」の集客構造
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

リスティングのキーワードをみると、モデル名の「EQS」以外に「ベンツ」「メルセデスベンツ」など自社ブランド名での出稿が見られました。

「メルセデスベンツ EQS」のリスティング出稿キーワード

「メルセデスベンツ EQS」のリスティング出稿キーワード
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

前述の2社とはかなり違う集客構造なのが、ジャガー I-PACE。ディスプレイ広告が約9割を占めています。

「ジャガー I-PACE」の集客構造

「ジャガー I-PACE」の集客構造
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

ディスプレイ広告はLINE広告が57.0%と、Yahoo!広告が多かったレクサス RZとは違う構成となっています。
販売チャネルがオンラインのみであることが、集客方法の違いに影響している可能性があります。

「ジャガー I-PACE」のディスプレイ広告の出稿割合

「ジャガー I-PACE」のディスプレイ広告の出稿割合
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

レクサスRZに関心を持つ人々の特徴は?

ここからは今回の調査対象の中で最もサイト訪問者の多かった、レクサスRZに絞って趣味嗜好やどんなことに関心があるかを深掘りしていきます。

ペルソナ調査は、Web行動データとアンケートデータを用いて、ターゲットユーザーにおける特定の Web行動の前後の動きと属性を集計できる、ヴァリューズの分析ツール「story bank」を用いて行っています。

「国内旅行」「住宅・エクステリア」への関心が高い

まずは、どのような物事に興味関心があるかをみていきます。

チャートは横軸が特徴値、縦軸がリーチ率で右上にいくほど、分析対象者がネット利用者全体よりも特徴的に興味関心があるジャンルを示しています。

「レクサス RZ」公式サイト訪問者の興味関心

「レクサス RZ」公式サイト訪問者の興味関心
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

マネー、投資やビジネス関連など経済関係や車に興味関心がある人が多いですが、注目したいのが、国内旅行や住宅、エクステリアに興味関心がある人が多いこと。どちらもある程度の支出が想定されることから、安定した収入があることが想定されます。

「スキー」や「サーフィン」を自身でするアクティブな層も

続いて、興味関心のあるスポーツをみていきます。

「レクサス RZ」公式サイト訪問者の興味関心があるスポーツ

「レクサス RZ」公式サイト訪問者の興味関心があるスポーツ
集計期間:2023年3月~2023年11月
デバイス:PC・スマートフォン

「サッカー日本代表」「国内プロ野球」の観戦の割合が高いですが、一方で「スキー」や「ウィンドサーフィン」を実践する人が多いようです。荷物がたくさん積載できるSUVだからこそできるスポーツでしょう。

また、「スポーツジムでのトレーニング、エクササイズ」「ジョギング、マラソン」も実践することが多いことから健康に気を使っている人物像も浮かびます。

まとめ

今回は高級車メーカーのBEVでSUVの「レクサス RZ」「メルセデスベンツ EQS」「ジャガー I-PACE」の3つの公式サイトを調査し、ターゲット層として想定されるユーザーのボリュームや人物像を分析しました。

レクサス RZの訪問者が多く、ジャガー I-PACEは販売チャネルがオンラインのみであることが関係しているのか、サイト訪問者の行動や集客構造が他社とは異なっているようです。

各社どのような戦略で他社との差別化をはかり、販売戦略でユーザー数を増やしていくのか目が離せません。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

アメリカ留学中にWebの仕事に出会い、帰国後に起業。自社で物販を行う側、ライターとして活動。アウトドアが趣味

関連する投稿


デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

即時払いで決済を行うデビットカード。キャッシュレス決済全体に占める割合はまだまだ低いものの、利用者や利用場面は着実に増加しており、成長の兆しを見せています。本稿では、そんなデビットカードの検討状況について、キャッシュレス決済カテゴリのマーケットリーダーであるクレジットカードと比較し、今後の市場動向を占います。


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

新型コロナウイルスの拡大の時期に、キャンプが注目を集め、一大トレンドになりました。日常を取り戻した現在、キャンプブームは下火になっているようにみえます。一方で、キャンプブームが収まったのではなく、人々の生活にキャンプが文化として根付いたという意見もあります。今回は、キャンプブームをデータで分析し、その変遷と現状について考察します。


2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

パリ2024オリンピックや衆議院選挙が行われた2024年は、どのような1年だったのでしょうか?2024年新語・流行語大賞の分析とヴァリューズで分析した今年1年間の週間検索キーワードランキングから2024年のトレンドを分析しました。


Will Isuzu's "Truck for Everyone," ELFmio, Be a Game Changer? Analyzing Initial Response with Website Visitor Data

Will Isuzu's "Truck for Everyone," ELFmio, Be a Game Changer? Analyzing Initial Response with Website Visitor Data

In July 2024, Isuzu Motors announced its new ELFmio truck. This truck can be driven with a regular driver's license and is marketed as a "Truck for Everyone." The aim is to address the shortage of truck drivers in the logistics sector. We analyzed the impact of ELFmio through website visitor data.


最新の投稿


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

株式会社Creative Groupは、同社が運営するメディア『トレンドメディアTrepo(トレポ)』にて、10代~20代の女性を対象に、2025年上半期のZ世代トレンド予想調査を実施し、結果を公開しました。


ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズは、ゲームプレイヤーの心理・行動を分析し、分かりやすく彼らの実態を可視化した「ゲーム総合調査レポート2024」を作成し、公開しました。


スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ