Z世代の集客に挑む!ドリンクに特化したマクドナルドの新店舗『CosMc’s』とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年1月)

Z世代の集客に挑む!ドリンクに特化したマクドナルドの新店舗『CosMc’s』とは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2024年1月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、アメリカ出身の著者が、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、マクドナルドの新スピンオフブランドとして話題の「CosMc’s」を紹介します。


2023年7月、マクドナルドは新しいスピンオフブランドのコンセプトを発表しました。忙しい現代消費者向けの簡単な軽食とドリンクに特化をしたカフェ風のお店です。

メニューには、エッグマックマフィンやM&Mマックフルーリーなどのマクドナルドの定番メニューも含まれていますが、「チュロスフラッペ」、「サワーチェリーエナジーバースト」、「プレッツェルバイツ」など、オリジナルのドリンクやフードも多数含まれています。フードメニューには一口サイズの軽食が多数あり、すべて簡単かつ迅速に食べられるように開発されていると見られます。

41種類もあるドリンクの多くは、カフェイン入りの甘いコーヒーや紅茶系の飲み物です。「ブースト」メニューカテゴリには「エナジーショット」、「ビタミンCショット」、運動前にエネルギーを補給したいときに摂るする「プレワークアウトショット」など、さまざまな種類の「ショット」を追加するオプションもあります。

この新ブランド「CosMc's」の名前とデザインは、1980 年代から 1990 年代にかけて広告に登場したマクドナルドのキャラクターからインスピレーションを得たものです。サービス形態としては、レトロな雰囲気を醸し出すドライブスルーのみ。2023年12月に米国初の実験店舗をオープンし、2024年末までに合計 10 店舗 CosMc’s店舗を展開する予定で、反響次第でグローバル展開を検討していくそうです。

マクドナルド自体が強力なブランドである中、なぜ全く新しいコンセプトの店舗を立ち上げるという大胆な事業に挑むことにしたのでしょうか?

カジュアルドリンクの人気急増中

スターバックスの圧倒的人気から見られるように、ドリンクに特化したカジュアルダイニングは、利益性の高い市場です。スターバックスはアイスコーヒーと象徴的な甘いフラペチーノという1つの「カルチャー」を築き上げ、カスタマーエクスペリアンスを向上させるエキサイティングな季節限定ドリンクも提供しています。

ここ数年、スペシャルティコーヒーや持ち歩きながら楽しめるドリンクの人気が高まる中、多くの企業が独創的なオリジナルドリンクを提供。マクドナルドもCosMc'sの飲み物に特化したメニューと専用店舗によって、クイックなサービスと軽食を提供することができるようになります。

注目すべき消費者の需要は「カスタマイズ」です。
消費者は自分好みの味にこだわり、甘さの調整をしたり、嫌いな材料を抜いたり、追加でトッピングできることを望んでいます。

若者層の習慣に対応

前述したように、スターバックスはコーヒーを中心としたドリンクで大成功を収めていますが、価格設定はやや高めであることが多く、Z世代よりは可処分所得の多いミレニアル世代に人気があります。

CosMc’sは公式に「Z世代消費者を取り込むための戦略として、低価格に設定している」と発表はしていませんが、メディアサイトBusiness Insiderの記事では
「大量解雇などを考慮すると、多くの人(特に若者)は、より低コストな選択肢に引かれるのでしょう」
「言い換えれば、マクドナルドは(CosMc’sによって)スターバックス中毒者に明確な代替手段を提供しているということになります」
などと書かれています。

またデータによると、若い消費者は冷たい飲み物を好み、年配の消費者は温かい飲み物を好むことがわかりました。そのため、CosMc’sではホットのコーヒーやお茶も提供しているものの、「アイス ターメリック スパイス ラテ」や「ザクロ ハイビスカス スラッシュ」など、冷たいドリンクもたくさんあります。

またCosMc'sは、Z世代やアルファ世代の「色んな珍しいドリンクを試してみたい!」というニーズを認識した上で、彼ら若い世代をターゲットにしているようです。

若者世代は複雑な注文でドリンクをカスタマイズすることを好み、こうして出来上がった特別なドリンクがTikTokなどのSNSで広まり、バズることも少なくありません。イリノイ州に第一CosMc's 店舗がオープンしてからまだ 1か月も経っていませんが、#CosMcs は TikTokで3,900 万回以上の再生回数を誇り (2023 年12月13日現在)、「デジタル ネイティブ」と言われているZ世代とアルファ世代からの認知を高めつつあります。


世界の「マクドナルド」ブランドを崩さず、新しいコンセプトを試す

マクドナルドは「マックカフェ」 メニューのコーヒーを年間 5 億杯以上販売しています。その中で、マクドナルドは既存のメニューに新しい飲み物と食品を追加するのでなく、全く別の「CosMc’s」ブランドを立ち上げました。これは、「リブランディング」や「期間限定メニューの提供」といった方向性になりがちな他の飲食店との大きな違いです。

世界が慣れ親しんだ「マクドナルド」のコンセプトを変えずに、そのブランド力を借りて「CosMc’s」を売り込む作戦なのです。

またマクドナルドは近年、店舗従業員の業務の簡素化に力を入れていますが、カスタマイズできるドリンクを追加すると食材も業務も増えてしまいます。そこで、CosMc’sという新ブランドを立ち上げることで、既存のマクドナルド店舗で必要な作業や扱う材料を増やさずに、全くの新事業開発としてマクドナルド社のビジネスを広げることができるというわけです。

人気キャラクターを借りて

マクドナルドは、レトロで懐かしいデザインで、昔ながらのキャラクターを組み込むという戦略が功を奏してきました。2023年の初めには、80・90年代に広告によく出ていたマクドナルドの紫色のキャラクター「グリマス」をイメージした紫色のシェイクが付く、限定版「グリマスのバースデーセット」を販売。これはSNSで話題を呼び、マクドナルドへの足を運ぶ客が増加しました。

この大ヒットが原動力の1つとなり、レトロな雰囲気が漂うカフェ「CosMc’s」の開発が進んだと言われています。CosMc’s店舗では、80・90年代のグリマスを知るY世代には「懐かしさ」で、Z世代には「Y2K」「レトロ」で、ブランドをアピールをしているのです。

CosMc's は、マクドナルド自体のブランドを守りながら、一方でエキサイティングな新プロジェクトを宣伝するためにマクドナルドのブランド力を利用すると同時に、マクドナルドというクラシックなファストフードブランドのイメージを固めていく戦略のようです。

【参考】BE@RBRICK(ベアブリック)に姿を変えて登場した、マクドナルドのキャラクターたち(ハンバーグラー、グリマス、バーディ)。
日本マクドナルドが「ゴジラVSマクドナルド」キャンペーンで展開しているもの。

出典URL:
3 trends are dividing restaurant companies into winners and losers
https://www.cnbc.com/2023/08/18/mcdonalds-chipotle-among-restaurant-earnings-winners-and-losers.html?&qsearchterm=trends
CosMc’s: Why McDonald’s wants its own coffee chain
https://cnn.com/2023/12/09/business/cosmcs-mcdonalds-drinks/index.html
McDonald’s concept CosMc’s could win the coffee war against Starbucks and Dunkin’
https://www.bbc.com/worklife/article/20231212-mcdonalds-concept-cosmcs-could-win-the-coffee-war-against-starbucks-and-dunkin
McDonald’s to open first CosMc’s spinoff restaurant this week
https://www.cnbc.com/2023/12/06/mcdonalds-to-open-first-cosmcs-spinoff-restaurant-this-week.html
McDonald’s Stock (NYSE:MCD): Understanding Its Emerging Customers is Key
https://markets.businessinsider.com/news/stocks/mcdonald-s-stock-nyse-mcd-understanding-its-emerging-customers-is-key-1032920260

この記事のライター

Born and raised in the Bay Area, U.S.A, I was fascinated by the different social and purchasing behaviors between Japanese and American consumers. I studied communication for undergrad and international marketing for my graduate studies. My professional background is in bilingual recruitment and Japanese-English translation.

関連する投稿


「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

変わりゆく中国の高齢化の現状やシニア層の価値観・ライフスタイル。その変化を体系的に紹介するとともに、従来の医療・保障を中心とした「防老」(老後の備え)から、自我実現や社会参加を目的とした「享老」(老後の享受)へとシフトする消費心理および市場動向について解説。中国市場参入を計画する日本企業にとって、参考となる中国シニア市場の今をまとめました。


中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の社会人の若者の間で、「人糧」と呼ばれる食事が今、人気を集めています。「ドッグフードの人間版」のような自虐的なニュアンスの名前を持ちながら、忙しい彼らにとって生活の助けになっています。本稿では、この人糧の特徴や魅力について紹介します。


タコスブーム到来!検索数"2.2倍"を支える「お家・外食」のダブル需要とは

タコスブーム到来!検索数"2.2倍"を支える「お家・外食」のダブル需要とは

近年、専門店のオープンやイベントの開催、自宅で楽しむ「タコスパーティー」など、タコスに触れる機会が広がっています。実際に、「タコス」の検索者数はこの2年間で2.2倍に増加しました。こうした人気の背景には、どのような人々の関心や楽しみ方があるのでしょうか。今回は、Web行動ログデータをもとに、タコス検索者の特徴と、外食・家庭の両方に広がる需要を探ります。


中国自動車市場は新時代へ~中古車取引量急増で新車販売数に肩を並べる

中国自動車市場は新時代へ~中古車取引量急増で新車販売数に肩を並べる

2026年、中国の自動車市場は歴史的なターニングポイントを迎えました。2026年7月のデータによると、新車と中古車の取引比率が初めて1:1に達しました。この構造的変化の背景にはどのような要因が隠されているのでしょうか。そして、この変化は業界エコシステムの再構築にどのような可能性をもたらすのでしょうか。さらに、中国の中古車市場が直面する新たな機会、課題、そして取り組むべきテーマとは何なのか、この全く新しい領域についてレポートをします。


中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国乳製品市場が健康ニーズと共に拡大中

中国では、冷蔵牛乳やチーズ、バターなどはもちろん、日本では馴染みのない、常温保存が可能で半年以上鮮度を保つロングライフの牛乳やヨーグルトも親しまれています。基礎的な栄養補給が目的だった乳製品は、消費者のニーズに伴ってより高い付加価値が求められるようになりました。この記事では、現在の中国乳製品市場のトレンドを紹介します。


最新の投稿


日本直販、ByteDanceと提携 AI広告制作・ライブコマース展開へ

日本直販、ByteDanceと提携 AI広告制作・ライブコマース展開へ

日本直販株式会社は、TikTokなどを展開するByteDance株式会社とグローバルパートナー契約を締結したことを発表しました。TikTok ShopやAIライブコマース、動画生成AI「Seedance」を活用したCM・動画広告制作、クリエイター育成など、4領域での取り組みを検討します。


BtoB記事・資料、8割超が「既知情報中心では読む価値低下」【IDEATECH・Bizibl調査】

BtoB記事・資料、8割超が「既知情報中心では読む価値低下」【IDEATECH・Bizibl調査】

株式会社IDEATECHと株式会社Bizibl Technologiesは、直近6か月以内に勤務先で使う製品・サービスの導入・乗り換え・契約更新の検討に関与し、その検討で自らAIサービスに質問して情報収集を行った会社員・経営者211名を対象に、「AI検索時代の法人購買における情報活用の実態調査」を共同で実施し、結果を発表しました。


「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

変わりゆく中国の高齢化の現状やシニア層の価値観・ライフスタイル。その変化を体系的に紹介するとともに、従来の医療・保障を中心とした「防老」(老後の備え)から、自我実現や社会参加を目的とした「享老」(老後の享受)へとシフトする消費心理および市場動向について解説。中国市場参入を計画する日本企業にとって、参考となる中国シニア市場の今をまとめました。


AI検索対策、9割超が実施 課題は効果測定【GMO NIKKO調査】

AI検索対策、9割超が実施 課題は効果測定【GMO NIKKO調査】

GMO NIKKO株式会社は、企業のマーケティング・広報・Web領域の担当者および責任者1,003名を対象に、「AI検索時代における企業のAIO/LLMO対応の実態と課題」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


欲しい商品でも約6割が「悪い口コミ」を確認【システムリサーチ調査】

欲しい商品でも約6割が「悪い口コミ」を確認【システムリサーチ調査】

株式会社システムリサーチが運営する「創作品モールあるる」は、全国の20歳~59歳の男女250名を対象に「購入前の検索行動」に関するアンケート調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ