炭酸飲料の新ジャンル「プレバイオティックソーダ」がアメリカで人気上昇中 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年3月)

炭酸飲料の新ジャンル「プレバイオティックソーダ」がアメリカで人気上昇中 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年3月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカで健康意識の高い人々を中心に人気を伸ばしている腸活ドリンク「プレバイオティックソーダ」について取り上げます。


より健康的に炭酸飲料を楽しめる「プレバイオティックソーダ」の登場

スーパーマーケットで缶飲料を手に取っている女性

トレンドの背景にあるのは健康意識の高まり

ここ数年アメリカでは健康志向の食品需要が伸びています。背景には、コロナ禍で経験した外出自粛による体重増加や、自身の健康と向き合う時間が増えたことがきっかけとしてあり、人々の健康意識が高まっています。

この流れを受け、健康に悪影響を及ぼすイメージが強かった従来の炭酸飲料の消費量は年々減少傾向にあります。一方で、従来の炭酸飲料に代わる、より健康的な商品が数多く登場し消費者のソフトドリンクの選択肢が多様化しています。

特に売り上げを伸ばしている商品のジャンルが「プレバイオティックソーダ(prebiotic soda)」です。プレバイオティックソーダは、従来の炭酸飲料の美味しさをキープしたまま、ヘルシーで健康効果が期待される成分も含んでいることが人気の理由となっています。健康を意識しつつも、炭酸飲料の味を楽しみたいと感じている人々のニーズに応える商品となっています。

プレバイオティックソーダとは

では、プレバイオティックソーダとは具体的にどのようなドリンクなのでしょうか。

プレバイオティックソーダに含まれるプレバイオティクス(prebiotics)は、腸内の有用菌のエサとなる成分(食物繊維やオリゴ糖など)のこと。プレバイオティクスを摂取することで、善玉菌を増やす助けとなり、整腸効果、便秘解消、肥満対策などの効果が期待されています。ちなみに、ヨーグルトや納豆など発酵食品に含まれている「プロバイオティクス」というものもありますが、こちらは善玉菌そのもの(乳酸菌やビフィズス菌など)のことを指します。

また、プレバイオティックソーダは従来の炭酸飲料に多く含まれていた砂糖や人工甘味料の量を抑え、低糖、低カロリーであることを売りにしています。このように健康に配慮した機能性を備えつつも、多様なフレーバー展開をしていることが大きな特徴です。

OLIPOP(オリポップ)とPoppi(ポッピ)がトレンドを牽引

プレバイオティックソーダの代表的なブランドには、OLIPOP(オリポップ)とPoppi(ポッピ)があります。

OLIPOP(オリポップ)

OLIPOPはここ数年で急速に売り上げを伸ばし、プレバイオティックソーダのカテゴリーの成長を担ってきました。米放送局CNBCによると、OLIPOPの2024年の年間売上高は4億ドルに達し、前年の2023年から倍増しています。

OLIPOPの商品は、キャッサバやチコリーの根、キクイモなど、様々な植物性の食物繊維を独自にブレンドしたものをベースに使っていることが特徴です。低糖(2〜5g)、低カロリー(50カロリー以下)かつ、原材料がプラントベースなビーガン対応となっています。

ヴィンテージコーラ、クラシックルートビアのような昔ながらのフレーバーから、チェリーバニラ、バナナクリーム、スイカライムのような目新しいフレーバーまで幅広く全18種展開されています(2025年3月時点)。

Poppi(ポッピ)

Poppiは、リンゴ酢をベースにフルーツジュースを掛け合わせたドリンクを販売しています。またイヌリンとキャッサバの根の食物繊維からなるプレバイオティクスを含んでおり、低糖(5g以下)、低カロリー(35カロリー以下)、グルテンフリーを謳っています。

リンゴ酢がベースとはいえ、フレーバーのラインナップは幅広く、クラシックコーラ、ルートビア、オレンジ、クリームソーダ、ジンジャーライム、ストロベリーレモン、ラズベリーローズなど全部で約15種展開しています(2025年3月時点)。

Poppiの商品は、元々Mother(マザー)という名前でしたが、2018年にShark Tankという起業家リアリティ番組に出演したことをきっかけにリブランディングされ、現在のPoppiに生まれ変わりました。パッケージが明るくカラフルで目を引くものとなっています。最近では2025年2月に開催されたスーパーボウルの試合でCMが放映され、さらなる注目を集めています。

新たにマーケット参入を試みるブランド各社

健康志向のトレンドに乗って、ますます需要拡大が期待されているプレバイオティックソーダ。人気の火付け役となったOLIPOPやPoppiに続いて、新たに参入を試みるブランドも登場しています。

コカ・コーラ

2025年2月、コカ・コーラ社はジュースブランド「Simply」の新商品として「Simply Pop」というプレバイオティックソーダを発表しました。

ラインナップは、パイナップルマンゴー、ライム、ストロベリー、フルーツパンチ、シトラスパンチの全5種。公式サイトによると、6gのプレバイオティクスだけでなくビタミンCと亜鉛も含んでおり、腸活に加えて免疫サポートが期待されるということです。ジュースブランドの強みを活かし、本物のフルーツジュースを使用していることを強調しています。従来の炭酸飲料の消費者とは異なる健康意識の高い顧客層の獲得が期待されます。

コカ・コーラ社の他にも、プロバイオティクス飲料コンブチャの販売で有名なブランドHealth-Adeや、エナジードリンクなどを取り扱うウェルネスブランドBloom Nutritionもプレバイオティックソーダの商品を新たに展開しています。各社の新たな参入によりプレバイオティックソーダの商品がこれからますます増えていくことが予想されます。どのような商品が消費者に響くのか、今後の動きにも注目です。

【参考】
https://www.cnbc.com/2025/02/12/olipop-prebiotic-soda-valued-at-1point85-billion-in-funding-round.html
https://drinkolipop.com/pages/ingredients
https://drinkolipop.com/pages/faq
https://drinkpoppi.com/pages/whypoppi
https://drinkpoppi.com/pages/our-story
https://www.nbcnews.com/business/business-news/coca-cola-takes-olipop-poppi-new-prebiotic-soda-brand-simply-pop-rcna192655
https://www.coca-colacompany.com/media-center/simply-brings-a-juicy-pop-to-booming-prebiotic-soda-category
https://www.fooddive.com/news/health-ade-splashes-into-prebiotic-soda-with-sunsip-launch/706513/
https://nutraceuticalbusinessreview.com/bloom-nutrition-launches-functional-prebiotic-soda-bloom-pop

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。

関連する投稿


アメリカで多様化するプロテイン市場 ポップコーンやコーヒーなど、手軽に摂れる商品が拡大 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年10月)

アメリカで多様化するプロテイン市場 ポップコーンやコーヒーなど、手軽に摂れる商品が拡大 | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年10月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカにおけるプロテイン(タンパク質)人気について取り上げます。フィットネス界だけにとどまらず、一般の人々の間でも意識的に摂取されるようになっているプロテイン。自宅で作れる高タンパク質レシピがSNS上で話題になったり、様々なプロテイン配合商品が展開されたりと、流行は盛り上がりを見せています。


中国EV市場 〜 爆発的成長の裏で進行する4つの課題

中国EV市場 〜 爆発的成長の裏で進行する4つの課題

中国の電気自動車(EV)市場は、販売台数で世界トップを誇り、街には新ブランドの車があふれています。価格競争も激しく、「誰でもEVを買える時代」が到来したかのように見えます。しかし、その華やかな表舞台の裏では、値下げ合戦による収益悪化、生産過剰による中小メーカーの淘汰、中古市場の急拡大、そしてバッテリー寿命という深刻な課題が同時進行しています。本記事では、この急成長市場を揺るがす4つの課題を整理し、今後の行方を探ります。


高まる健康意識!中国サプリメント市場が需給共に拡大中

高まる健康意識!中国サプリメント市場が需給共に拡大中

2024年、中国では65歳以上の高齢層が2.3億人を突破し、高齢化がますます加速しています。さらに健康意識の高まりや生活の質を追求する動きが重なる中、高まってきた需要の一つがサプリメントです。この記事では、サプリメントの市場動向と注目製品を紹介します。


ヴィーガン・ベジタリアンを呼び込むには 〜 PB食志向者の「食事実態」と「訪日ニーズ」を徹底解剖

ヴィーガン・ベジタリアンを呼び込むには 〜 PB食志向者の「食事実態」と「訪日ニーズ」を徹底解剖

昨今、その嗜好性の高さが謳われている「植物性食(PB食)※以下PB」。中でも米国の植物性食品市場は成長が著しく注目を集めています。本レポートでは米国人PB志向者の普段の食事実態や嗜好を把握するとともに、海外旅行時における食事場所やインサイトを探ります。日本の飲食事業・インバウンド観光関連事業関係者、また、日本の食産業における、海外(米国)向けの商品開発戦略にご活用いただける内容となっています。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードできます。


インバウンドのリアルな動向把握とデータ活用とは 現場で活かす、人流・オープンデータの活用術と旅行実態レポート

インバウンドのリアルな動向把握とデータ活用とは 現場で活かす、人流・オープンデータの活用術と旅行実態レポート

昨今は事業成長のためのデータ活用やDXという言葉が様々な場所で耳にされるようになりました。 データ活用を通じてDXを実現するためには、段階的にステップを踏んで取り組む必要があります。段階に応じて取り組むべき内容を変化させつつ、これらのステップを繰り返していくことが事業成長に繋がるその方法とは。本レポートでは、インバウンドの現状把握や情報のキャッチアップをメイントピックとして、データの種類や活用法を解説します。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


最新の投稿


BeRealの魅力は「比較からの解放」。Z世代の50%がリアルな友情の深化を実感、「SNS疲れ」の受け皿に【Z-SOZOKEN調査】

BeRealの魅力は「比較からの解放」。Z世代の50%がリアルな友情の深化を実感、「SNS疲れ」の受け皿に【Z-SOZOKEN調査】

Fiom合同会社は、同社が運営する、Z世代当事者が実態や価値観を分析するシンクタンク「Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)」にて、全国のZ世代(18歳〜24歳)を対象に「Z世代のBeRealについての意識調査」を実施し、結果を公開しました。


Z世代の約半数が顔出し強制ならSNSを辞める!55%は複数人格を使い分け、匿名空間にアイデンティティ【Z-SOZOKEN調査】

Z世代の約半数が顔出し強制ならSNSを辞める!55%は複数人格を使い分け、匿名空間にアイデンティティ【Z-SOZOKEN調査】

Fiom合同会社は、同社が運営する、Z世代当事者が実態や価値観を分析するシンクタンク「Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)」 にて、全国のZ世代(18歳〜24歳)を対象に「Z世代のアイコン人格についての実態調査」 を実施し、結果を公開しました。


食べ放題ファンの生態。ケンタ・ミスド・かっぱ寿司の食べ放題って知ってる?

食べ放題ファンの生態。ケンタ・ミスド・かっぱ寿司の食べ放題って知ってる?

好きなものを好きなだけ選べる「食べ放題」は、友人や家族との食事で人気の選択肢です。焼肉やしゃぶしゃぶといった定番に加え、近年はさまざまなジャンルで食べ放題を展開するお店が増えています。本記事では、「食べ放題」を検索するユーザーを分析し、今注目の食べ放題を紹介します。


エレベーターピッチ(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

エレベーターピッチ(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はエレベーターピッチ(アイデア探索のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


地球温暖化 ~ 極端気象の現実

地球温暖化 ~ 極端気象の現実

2025年の夏も酷暑と呼ぶにふさわしい厳しい暑さでした。この暑さは年々厳しさを増していると感じている人も少なくないでしょう。実際2024年には、「パリ協定」で定められている抑えるべき産業革命以前からの気温上昇幅「1.5℃以内」という基準を超えたことからも、その深刻さは明らかです。では、この温暖化はどのように経済にも影響を及ぼすのか、広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が具体的事例を用いて解説します。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ