競合調査(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

競合調査(環境分析のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回は、競合調査(環境分析のアウトプット)について寄稿いただきました。


1.競合調査とは

●概要

本稿で解説する競合調査とは、競合プロダクトの状況を企業・機能・特典・商品などの単位で調べ、結果をマトリクス形式の一覧表にまとめるアウトプットです。

競合調査を通じて、競合プロダクトの営業的な展開状況、機能的な対応状況を把握し、相対的な比較により自社プロダクトの対応アクションを検討していきます。

もとになる情報収集の方法には以下のような手段があります。

a. リサーチ担当者がウェブや資料集を通じて直接データを探すデスクリサーチ
b. UI/UXの専門家に依頼して評価の観点を固定して知見や経験に照らして分析するヒューリスティック調査
c. 事業ドメインに詳しい専門家にヒアリングを行う専門家インタビュー

●種類

競合調査の代表的な実施方法には以下のようなものがあります。

①企業版
・競合他社のアセットやパフォーマンスの比較

②機能版
・競合プロダクトの機能実装や表示対応の比較

③特典版
・競合プロダクトの会員特典や販促施策の比較

④商品版
・プロダクト内で取り扱う販売品目の特性比較
(例示の図表では個社にフォーカスして分析する方法を取っています)

●構成要素

競合調査の構成要素は以下のようになります。

○企業版 ※物販業態の場合の一例

●1.企業プロフィール
・サービスLP
・サービスイン
・運営プロダクト
・コンセプト
・キーワード
・資本金
・従業員数
・営業拠点
・アライアンス

●2.業績パフォーマンス
・売上高
・売上シェア
・会員数
・取引社数

●3.アンケート調査結果
・認知率
・利用率
・利用金額(月次平均)
・満足度(上位項目)
・満足度(独自項目)

○機能版 ※検索機能の場合の一例

●1.主要な検索方法
・キーワード検索
・カテゴリー検索
・ランキング検索

●2.絞り込み機能
・カテゴリー
・ブランド
・価格帯
・在庫状況
・送料無料
・配送方法
・レビュー点数

●3.並び替え機能
・価格順(高い・安い)
・新着順
・レビュー件数順
・レビュー評価順

○特典版 ※会員特典場合の一例

●1.サービス体系
・会員数
・サービスモデル
・料金
・キャンペーン

●2.特典
・優待情報
・優先利用
・デリバリー便宜
・コンシェルジュ
・イベント招待
・限定コンテンツ
・割引・ポイント還元
・アップグレード
・機能カスタマイズ
・オリジナル特典
・期日条件緩和
・提携サービス特典

○商品版 ※日用品の場合の一例

●1.価格情報
・プライスポイント
・プライスライン
・プライスゾーン

●2.顧客情報
・一回あたり購入個数
・一般的な購入周期
・ユーザーリーチの広さ
・購入者のデモグラ属性

●3.購買特性
・仕入れのしやすさ

●4.管理特性
・一般的な在庫稼働率
・商品の管理環境特性
・配送の取り回しやすさ

●5.販売特性
・ウェブでの売れやすさ
・競合のイメージの強さ
・ギフトとの相性
・定期便との相性
・セール期の位置づけ
・季節商品の投入回数
・量販店の売り出し方
・メーカー協賛の得やすさ

2.作り方

①調査範囲の競合を定義する

・競合となる運営会社3社〜5社程度を表の列タイトルに並べる
(網羅性が高いほど役に立つが、作成負荷にも気をつけること)

②調査結果の情報を記載する

・基本的には各社のステータスをテキストで記載する(○○円、○%など)
・機能実装や表示情報への対応状況は記号で記載する(○、×)
・該当なしの空欄セルは「ー」などの記号を記載する(※空行にしない)

この記事のライター

株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。

デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)

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